陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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銃と弾丸 ―――ガン・パレード

推奨BGM:Deus Vult
*1推奨BGM:Bottomless Pit


 一回戦が始まるのと同時に体が慣れた転送の感覚に引っ張られるようにして、黒い空間に導かれたのを認識する。会場から転送されて到着した場所には何もない。ただ黒い空間だけが広がり、足元には六角形のパネルが存在している。どうやらこの黒い空間にこのパネルが浮かんでおり、その上にいるから立っていられるようだ。そして、目の前に表示が現れる。

『試合開始まで残り―――』

 そうやって表示は六十から開始し、一秒ごとにゼロへと向かって数字を減少させる。つまりこの空間は準備のための場所だ。他のプレイヤーに見られず、邪魔されず、作戦を考えたり装備を整える場所だ。だが既に装備の確認も装備自体も武器屋で済ませてしまっている。だからそこはもう気にすることではない。そこで残りの五十秒、どう過ごすべきか、そんな事を考えていると、別の表示を見つけた。

『ステージ・森林地帯B』

「ん? これはステージか」

 森林地帯B、おそらくこれがこれから転送される先、これから銃撃を行うステージの名前なのだろう。と、なれば、森の中になるのだから色々と気をつけなくてはならない。相手がカモフラージュで隠れている事や、トラップを仕掛けやすい場所ではないかと。だが、GGOに不慣れな時点で既にアドバンテージは能力以外にないのだ。そしてその能力も、フル稼働させてしまえばチートとして扱われ世界から弾かれてしまう。それは困る。だからチート扱いされない程度に派手に暴れ、そして同時に勝利しなくてはならない。

「俺も面倒な事を引き受けたなあ」


 これは終わったら絶対に菊岡に何か報酬を貰わなくてはやってられない。そうだ。バイト扱いにしよう。そして時給何千円ぐらいでふっかける。そう、それがいい。菊岡は仕事が終わって俺は過去とおさらばするのと同時にお金がもらえる。まさに理想の展開。

「ないな」

 菊岡が金を出すわけがない。あの銀座で食べている菓子もおそらく領収書をちゃんと切ってるし。というか確実に切ってるし。アレがギリギリのラインなんだろう。未成年の学生にバイト代を出す為に経費が落ちるわけがないし。

 あぁ、

 早く帰ってユイに頬擦りしたい。

 こんな思考しているからダメ人間って言われるのかもしれないけど。

『残り時間八―――七―――六―――五―――』

 くだらない事を考えていると準備時間がゼロに近づく。となると一回戦の開始が近い。左手でP90を握り、構えておく。基本的な構えと打ち方に関しては既にシノンからレクチャーを受けている。本当にシノン様様とでもいうか、あのまま別れたのは個人的には寂しいのでどうやってか関係を修復する方法を見つけ出したい。難しいとは思うが、口八丁で治めるのは得意だ。

 転移の光が体を包む瞬間、嫌な事を考える。

 ―――口八丁でどうにでもなるってなんか悪役っぽい……!

 俺、黒いし。


                           ◆


 転移が終わって目を開けると、そこに見えたのは木々だった。隙間なく生い茂る木々は視界を防ぎ、同時に鼻に新鮮な緑の匂いを押し付けてくる。ここまで強い緑の匂いも珍しい。それに肌にじっとりとくっつくこの感覚は慣れている温暖な気候ではなく、もっと熱く、そして湿度が高い、熱帯地域の感覚だ。森林地帯と表記が出ていたが、森林というよりは熱帯雨林に近い感覚だと思う。実際に見た事も行った事もないが、知識として、映画で見る分には大体こんな感じだったと思う。

 さて、

 素早く周りを見渡すが、視界に入ってくるのは緑の木々だけだ。とてもだがプレイヤーは見えない。視界は最悪だ。ALOでのセオリーで言えばサーチャー系の魔法を使用し、相手の場所を特定したらそこへ範囲系の魔法を打ち込むのがベストだ。遮蔽物の多い森の中で近接系の武装を上手く使うことはできないし、接近して戦うよりは見えない場所から範囲で潰した方が当たるし、逃げられにくい。だからこういう場合では、

 動き回る事だ。

 ホロウィンドウを出現させればそこにはマップが表示される。リアルであればありえない現象で、むやみやたら動き回るのは死亡フラグの塊でしかない。だがここはバーチャルゲームの世界で、マップが存在するため迷うことなどあり得ない。稀にマップを見ていても迷う様な猛者もいるが、俺はそこまで狂っていない。故に歩き回って、まずは敵を見つける事から始める。

 光剣は目立つためそれは腰に差したまま、P90を構え、映画で見たような軍隊の動きを真似、周りを警戒しながら熱帯の中を進む。気配を探れば周りに気配を感じる―――が、それも数が多い。何やら色々とあちらこちらに気配があり、どうやら動物っぽい生物まで多数存在しているようだ。予選ステージとはいえ、かなり本格的なつくりをしているんだな、と感想を抱いた瞬間、

 カチッ、という音が足元でする。

「……カチ?」

 視線を下に降ろすと、

 地雷を踏んでいた。

 もちろん爆発した。


                           ◆


 地雷が作動するのと同時に体を可能な限り横へと飛ばす。一拍遅れてやってきた爆風は周りの木々を薙ぎ倒すどころか燃やしながら破壊を撒き散らしていた。おそらくただの地雷ではなく、プラズマ系のものだろう。存在は武器屋で見る事があった。ただ初心者お断りのアイテムであり、その上GGO日本サーバー自体で人気のないアイテムであり使用者が少ないとはシノン談。

 それを躊躇なく使えるのはマイナー派の人間か―――勝利に対して貪欲な相手だ。

 空から何かが投げ込まれるのを感覚的に認識する。体が爆風に押されながらも視線だけを上に向ければ、プラズマグレネードが落ちてくるのが見える。頭上から真っ直ぐに落ちてくるグレネードは高い高度へと投げ飛ばされ、時間をかけて垂直に落ちてくる様に計算されている。それが投擲された方向は判断できない。気配を探るが、別の生き物の気配が邪魔になって投げた相手の位置がつかめない。落ちてくるグレネードに銃を向けて引き金を引く。

 GGOの銃、その弾丸の命中率とは銃の性能に、プレイヤーのスキルによって決定する。正確に言えばスキルではなく、精神状態によって決定するらしい。銃を向けた時に発生する弾道予測線はあくまでも予測であり、”その中であればどこでも弾丸は通過する”というサインでもある。つまり弾道予測線とはその範囲が狭まれ狭まるほど精度が上昇し、そして受ける側からも予測しやすい仕様となっている。そして、その円を狭めるのは―――落ち着きだ。精神が冷静であれば冷静であるほど円は小さくなり、弾丸を当てたい所に当てられるようになる。

 そしてそこらへんの精神的な調整はあっさりと完了する。常に極限状態で戦い続けて来た結果、精神はこの程度の危機を明らかに余裕のある状況として認め、受け入れている。命の危機がない戦闘などまるで児戯だと言わんばかりに冷静であり、P90の銃口から伸びる弾道予測線は弾丸一発分の細さを持って伸びる。その狙う先はもちろん―――プラズマグレネード。

 弾丸を叩き込まれたグレネードが空中でプラズマの爆発を起こし、頭上から熱風を叩きつける。先ほどの地雷と合わせて凄まじい爆風と衝撃を肌で感じ取る。それは直撃ではないが、常人にとっては十分に驚異的な破壊力だ。だか、俺は違う。あのALO事件を境にどうしようもなくステータスは、数値以上に異常をきたしている。筋力や敏捷力などは加減すれば騙せない事もないが、唯一騙せないのが―――防御力。

 故にシステム内の攻撃を受けたところで体には傷一つつかない。それを悟らせないために素早く体を動かし爆風から逃れる。肌をジリジリ焼く熱は、前に味わった焦熱の炎と比べれば生温い。それから逃れ、銃を構え、素早く気配を探る。今までよりも強く、そして鋭く、気配だけではなく、その裏側にある”心”を探る。NPCとPCの絶対的差異を気配で探り―――そして見つける。木々の向こう側に、伏せる様に隠れる姿がある。同時に胸を中心に弾道予測線が中る。その出所を見れば敵は木々の合間、小さな隙間を使って此方に銃を向けている。

 おそらく、この戦闘フィールドは研究されつくした物なのだろう。熟練者からすれば遮蔽物が多いが、それでもこういう銃を遠距離から打ち込める場所があったりと、遊び心の多い、そんなステージなのかもしれない。

 銃声が聞こえる。

 弾道予測線を通り、弾丸が高速で回転しながら此方へと向かってくるのを確認する。避けている間にまた何かをしかけられたら面倒なことになる。

 故に、

 弾丸が到達するのと同時に腰の光剣を抜き、

 スイッチを入れた瞬間に放つ抜き打ちによって弾丸を叩き斬る。

「―――What the fuck!?」

 英語による罵倒が聞こえる。それもそうだ。今のは自分でも結構ないと思う。銃の世界観のゲームなのにマイナー武器で銃弾を斬るとか製作者すら考えていないんじゃないだろうか。だが、

 これぐらい派手にやれば食いつきそうだ。

 弾丸を切り裂かれ相手が放心しているうちに一気に踏み込み体を加速させる。超人的な視力で接近されている事に気づいた相手が手にグレネードを取り、それを置いて場所を移そうとしているのが見える。だがそんな事をさせる前に、光剣を男の手首に向かって投擲する。弾丸を超える速度で投擲された光剣はグレネードが手を離れる前に手首に突き刺さり、グレネードを片手ごと落とさせる。

「Shit―――」

 聞こえる英語が距離を詰めた事で結構流暢なことが解った。ギリースーツを着ている相手、中身はおそらく外国人かもしれない。が、これ以上戦闘を長引かせても面倒だ。この先は長く、そして敵はまだ多い。逃げ出そうとする姿に追いつき、

 首に銃を叩き込む。

 グキ、と嫌な音を立てた相手の体に対してそのまま体当たりを食らわせると、相手の腰に大口径の銃が収まっているのが見えた。それを光剣を投げてフリーになった片手でつかみ、心臓の位置に当てる。

「えぇ、こういう時は―――ジャック・ポット! だったかな」

 そのまま引き金を連続で引く。銃声とともに何度も男の体が跳ねて、頭上のライフバーが一気に砕け散る。六発目を打ち込む頃には完全にライフバーは空になり、体が灰色になって崩れ落ちる。

『Winner! kirito!』

 頭上に、そんな表示が現れるのが見える。

「貰ってくぜ」

 大口径の銃を指の中で軽く、くるっと回してから腰に差し、地に落ちた光剣を回収する。そんな所で転移の光が体を包み始める。

 BoB、その一回戦目は勝利によって終わった。


                           ◆


 転移が終わって、光が消えた事を確認すると周りを見渡す。立っている場所は再び総督府の地下、BoBの会場だ。ちらほらと見えるプレイヤーの姿は悔しがっていたり、喜んでいたりといろいろだ。だが一様にして、全員が会場の前方へと視線を向けている。そこにはホロディスプレイが何個もあって、現在進行形で第一回戦を表示していた。

「なるほど、早く終わらせれば他人の試合を見る事が出来るのか」

 これは情報収集の為にも早く試合を終わらせた方がいいのかもしれない。そんな事を思いつつスクリーンを見ていると、

「お」

 見た事のある姿が映っている。確か武器屋で見た人物―――イナンナだったか、右手にリボルバーを握って、マシンガンを握る相手に接近しているのが見える。遮蔽物のない荒野のステージに見えるが、弾丸をいくつか銃で受け止めつつ接近し、頭に銃を突き付けて発射している。乱暴な戦い方だがそれで勝利している。

 また別のスクリーンを見れば―――

「―――……」

 ミハエルが映っていた。軍服姿で。しかも銃とかなしで。拳だけで立っていた。

 お前はどこに行ってもそのスタンスだな。

 GGOにハマってるという話自体は明広から聞いていたが、BoBに参加するようなタイプじゃないからいない事を祈っていた。そう、祈っていた。絶対にあたりたくない。もうALOの時のように戦いたくない。ブロックが違ってよかった。

「あ、吹き飛んだ」

 ミハエルの対戦相手がミハエルの拳を受けて、何十回も地面をバウンドしながらどこかへ吹き飛んでゆく。既にライフはゼロなのに、それでもまだ地面を撥ね跳びながら吹き飛ぶ敵の姿は憐れでしかない。オーバキルにもほどがある。

 予想通りワンパンKOでミハエルが勝利していた。あの男、自重する気が全く見えない。

 これでもまだラインハルトよりもマシだというあたり世の中おかしい。

 軽く苦笑しながら視線を別のスクリーンに移す。そしてそれを目にし―――心臓が止まるような感覚に陥る。

「―――え……?」

 ありえない。何故だ。何故ここにいる。何故お前がここにいるんだ―――

「―――ナハト」

 黒い死神はスクリーンの中で、対戦相手の首を握りつぶしながら挑発的な笑みを浮かべていた。
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| 断頭の剣鬼 | 10:34 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

おい銃で戦えよ
せめて素手で戦え、別ゲーになるから!

| おk | 2012/10/12 15:59 | URL |

アストたんマダー?←

| 空 | 2012/10/12 17:29 | URL |

お前ら銃使えよwww
何しにGGO来てんだよwww

| 裸エプロン閣下 | 2012/10/12 17:31 | URL |

みはえる~~!
こいつそういえば手加減を何か間違ってたね……

| 羽屯十一 | 2012/10/12 17:57 | URL |

ジューダスは何時出てくるんだろ

| 練炭 | 2012/10/12 18:03 | URL |















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