陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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DAY20

 一斉に攻撃が襲いかかる。

 一番最初に来るのは最も手数が多くて、多角的な攻撃が望める七本の尾だ。

「セブン、テイルズ!」

「だいぶ慣れてきているようですね」

 七本の尾の波状攻撃を両手を使って全て防ぐ。正面から槍のように迫ってくるそれを左腕で捌いていると、後ろから隙を狙っていた尾が襲い掛かってくる。が、もちろんそちらの警戒を怠る事はない。というよりも、警戒を怠っている場所はない。半径数百メートル以内であればネズミが動いた程度でも完全に感知できる。だから、隙を狙うなどとは無理だ。少なくとも、まだ未熟なこの者たちには無理だと断言できる。だから背後から襲いかかってくる三尾を右手で掴み、そして左腕でさばいていた四尾を叩き、纏め、掴む。

「武器が同時に弱点であることも念頭に置きなさい」

「にゃっ!?」


 力任せな動きで尻尾を引き寄せる。引っ張られた力でノワールの小柄な体が引き寄せられる。可愛らしい悲鳴がノーワルの口から洩れ、教えたナインテイルズの劣化系とも言える技、セブンテイルズが解除されノワールが飛んでくる。尻尾とは急所の一つで、引き寄せられるほどに引っ張られれば、それこそかなりのダメージだ。飛んでくるノワールの体が爆発し、煙を撒き散らしながらけものだまになる。

「ごめんノワ! その犠牲は忘れない!」

 そんなノワールがけものだまになった瞬間を狙い、煙の中からジョーヌが姿を現す。既に得物である戦斧は振り上げられ、いつでも振るえる状態にある。しかし、本当の斧の使い方と比べると、

「ジョーヌ、武器を無駄に高く上げ過ぎです。重力に物を言わせて振るのではなく技量を持って振りなさい。もっと脇を締めて、破壊力のある得物だからこそ速度と威力を殺さない様コンパクトに」

 あっさりとジョーヌの戦斧の軌道を見切り、それを紙一重で回避しつつジョーヌの額を片手でつかむ。力を込めて、ジョーヌの頭の圧迫を始める。

「痛い。ダメージはないのに痛い。痛い痛い痛い痛い痛い! 痛いですって!」

「何度その出来の悪い頭に同じことを繰り返し教えればいいんでしょうね、ジョーヌ。これで何回目でしょうか……本当に中身が入っているんでしょうかね、この頭は」

「殿下ぁー! 助けて殿下ぁー! 教官の目から光がぁ―――!!」

「その屍を踏み越えて私達は強くなるのよ……!」

 ジョーヌが俺によって拘束された隙に、今まで隠れていたベールが姿を現し、紋章術による強化を得た矢で攻撃する。単純に言って回避は難しい攻撃だが、攻撃前に声を出す事、そして姿を現している事で台無しだ。

「ベール、貴女も弓術で戦うのなら絶対に姿を現さない、声を出さない、気配を漏らさない。このス・コ・ケを守れと何度も言ったはずですよ」

「あっ」

 迷わずジョーヌを盾にベールの攻撃を防ぐ。ベールの矢がジョーヌに中り、ジョーヌが爆発しけものだまになる。その瞬間ベールが逃げようとするが、その前にけものだまジョーヌをベールの足元に投げつけ、ベールを転倒させる。

「げ、外道……!」

「あるものを完璧に利用するのが侍女というものです!」

「絶対おかしい―――!」

 転倒したベールに一息で追いつき、その足を掴み、全力のスイングを後方に向かって放つ。瞬間、

「おわっ!?」

 背後から気配を殺して迫っていたガウルが、間一髪といったタイミングで鈍器化したベールを回避する。そこで此方はベールを握っていた手を解放し、

「あーれ―――……」

 そのまま城壁に衝突し、けものだまになるまでベールの飛翔は終わらなかった。その姿を最後まで確認する事もなく、ガウルが両手の爪を輝力を纏うことで強化し、一つの武装として磨き上げる。

「今日こそ一本!」

「本日も心を鬼にしてダメ出しさせていただきます」

 爪を振り上げ、振り下ろしながら踏み込むガウルの手の甲を叩き、その矛先を僅かにズラす。だがズラすだけで目的は達成され、攻撃の軌道は完全に逸れる。

「爪を振るう腕に無駄に力が入っています。爪とは叩くのではなく、裂く武器です。必要なのは刀と同じく技術です。力任せに振るってはなりません。裂くべき場所に重ね、そして引き裂くのです」

「うぐっ!?」

 ガウルの攻撃を流すのと同時に掌底をガウルの腹に叩き込む。大抵の兵士はこれ一発でけものだまになってダウンする所だが、ジェノワーズやガウル殿下はしっかりと堪えてくれる。教官の真似事を何年も続けている身としては成長を感じられ、少し嬉しくなるところだ。

 攻撃に耐えたガウルが衝撃を殺すため後ろへと跳び、体勢を低し、

「引き裂く、様にッ!」

 獣の様な動きで迫ってくる。構えずに、再び一直線の動きを受け流そうとし、

 ―――おや。

「こっちだ!」

 ガウルが衝突直前で横へと抜け、爪を振るう。それはフェイントとしてはあまりにも稚拙な動きだが―――猪突猛進が多いガウルの中では中々見る事の出来ない、珍しく行ったフェイントだ。ジェノワーズの場合は叩いて伸ばすのが方針だが、ガウルの場合は少しだけ、飴を混ぜるのがポイントだと思っている。故に、

 回避の動きは本当にギリギリに抑える。ギリギリ、爪の先だけが服に引っ掛かる様に回避する。

「よっしゃっ!」

 その結果、

 ―――メイド服の胸元が切り裂かれ、メイド服の下、ブラジャーが露出する。

「おめでとうございます殿下」

「ぬ、ぬわぁあああああ!?」

 喜んだのも束の間、一瞬で戦意を散らし、ガウルが両手で顔を隠す。その瞬間、

「しかし―――王手です」

 腹に崩拳を叩き込む。回転しながらガウルの姿が跳んで行き、何度かバウンドを繰り返しながら城壁に叩きつけられ、目を回しながら倒れる。中庭、訓練所を見渡し、もう立っている者がいないことを確認し、片手で胸元を隠す。今更な話だし、隠す必要もないが、これも淑女の嗜みだ。

「本日の組手はここまでとします。ノワールは少々尻尾の制御が甘いので、尾を増やす事よりも制御の方に意識を置いてください。ジョーヌは純粋な技量不足です。派手に決めようとしているので色々と失敗しています。基本を思い出して戦斧を振るってください。ベールは集団での戦いであればそのままでもいいですが、個人での戦いであれば如何に見つからず相手を狙撃できるかが勝負になります。見つかった弓兵は死体も同然な事を覚えておきましょう」

 軽く手を叩き、輝力を振りまく、それを吸収してジェノワーズがけものだまの姿から元の姿に戻り、

「全力を一蹴された……」

「教官マジ容赦ねぇ……」

「卒業したら自由……そう思っていた時期が私にもありました」

 口々に文句を言いつつも最終的にはい、と声を揃えて了解を示す。最後に、

「ガウル殿下」

 城壁に叩きつけられているガウルに言葉を送る。

「―――基本的に上位陣は女性で構成されています。もう少し慣れましょう。倒した場合に相手は服が脱げるんですから。国際的な常識です」

「……はい」

 こうやって戦っている限り、まだまだガウル殿下もジェノワーズも未熟に感じられる。レオンミシェリ閣下に補佐を、御側役を命令されて既に数年が経過しているが、まだまだ俺の助けが要らない日は来ない。

「はい、それでは本日の訓練は以上です。殿下も直属の騎士選びがありますので、何時までも伸びていないで頑張ってください」

「……少しだけ、少しだけふがいない自分を責めさせてくれ」

「駄目です。ガウル殿下も男性なので下着に興味を持つことぐらい熟知済みで、見られてもいいのを着ています。ご心配なく」

「もう俺死にたい」

「領主として大成し、子供を残してもらうまでは死なせません」

「これだけ聞いてると……―――はぁ。うん。おし!」

 ガウルが復帰し、体を大きく伸ばし、

「恋も戦争も仕事も頑張るぞ!」

 俺が安心して引退できるように、早く殿下とジェノワーズには大成してもらいたいものだと思う。
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| 短編 | 20:00 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

がんばれ…ガウル殿下がんばれ…っ

| 雑食性 | 2012/10/11 20:50 | URL |















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