陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

DAY19

 その日、ジェノワーズはついに解放された事実を喜んでいた。

 何年も続けてきた従騎士の訓練、それからついに解放されたノワール、ベール、そしてジョーヌはその能力の高さからガウルの親衛隊として、ジェノワーズという部隊を結成させられた。三人だけの親衛隊で、ガウルが初めてもつ部下だった。成績が優秀な事で教官からも相応の実力を発揮できると信頼されていた。

 しかし、彼女たちには問題があった。

「終わったぁー……」

「解放されたぁー……」

「終わったねー……」

「お前ら俺の部屋に来てやることがそれかよ」

 ―――人格面に多大な不安あり。


 それがジェノワーズに対して押された烙印だった。能力だけを見るのであればジェノワーズの三人娘は優秀すぎるの一言だった。三人が全体的な能力を高いレベルで有しているだけではなく、それぞれが突出した分野を持っており、それで互いの短所を補う、三人で初めて最大限の実力を発揮できるタイプの娘たちだった。正直な話、運用するのであればそれなりに大変となるだろう。だからこそ、彼女たちがガウルの親衛隊、その人員として選ばれた。

 問題があるからこそ挑める。

 挑むからこそ、成長する。

 つまり、あえて扱いの難しい人員を送り込むことによってガウル殿下の成長を促進させようという目論見である。実際ガウルも後十年もすればレオンミシェリ閣下の立場を継ぎ、ガレットを完全に掌握できるようにならなくてはならない。成長を望んでいるのは周りだけではなく、彼自身も立場を理解して、成長を望んでいる。故の親衛隊の存在であり、そしてジェノワーズの人選だった。

 だがその三人娘は卒業式が終わり、任官した瞬間、仮面を投げ捨てていた。

 だらしなく床やソファの上を占領し、倒れるジェノワーズの姿は千年の恋も冷めそうな姿だった。端的に言ってだらしなく、そして同時に王族に対する態度ではない。この三人娘には恥だとか、無礼だという概念が足りていなかった。ようやく卒業し、従騎士から騎士、そして親衛隊にまで上り詰めた事を全身で喜びながら、それまでの疲労を感じ取って倒れていた。

「俺一応お前らの主なんだけど」

「よろしくお願いしますー」

「よろしく殿下ぁー」

「よろしくお願いします」

 最後、ノワールだけがまともに返事しているように見えて、結構だらけている。この卒業の直前まで卒業試験と称して普段の数倍は辛い訓練をさせられていたのだ。だから疲れているのも理解できるが、それでも王族の前だ。最低限の礼を見せるべき立場にいる筈なのだ。この三人娘は。

 と、そこで、ドアを軽くノックした音が響く。

「―――失礼します」

 その声にビクっとしたのはジェノワーズの三人であり、そしてガウルもそうであった。ま、まさかと冷や汗を流しながらジェノワーズが互いを見渡し、そしてガウルが入っていいと許しを出す。

「では」

 扉を開けて現れたのは―――サイアスだった。しかも通常の親衛隊の服ではなく、ルージュなどが来ている様なメイド服だった。その姿を見たジェノワーズが完全に動きを停止させ、そしてガウルも動きを完全に固まらせる。まさかの人物、そしてその人物の見慣れない格好にフリーズするジェノワーズを放置し、ガウルが口を開く、

「さ、サイアス?」

「はい、殿下。サイアス・ノエルで御座います」

 サイアスがスカートを軽く持ち上げて礼をする。優雅に、訓練された動作であることが解る。一種の美しさがそれにはあるが―――これぐらいはガレット城のメイドであればできて当然というレベルの事だ。しかしこれをやっている人物が問題だ。ガウルは目の前の存在が姉であるレオンミシェリの従者であるという事を思い出す。

「い、いや、何をしているんだよ」

 極めて平静を保とうとしながらガウルはサイアスに質問し、

「本日、ガウル殿下の親衛隊である”ジェノワーズ”が創設されますが、はねっ返りばかりでガウル殿下も大変でしょうと、レオンミシェリ閣下が私をしばらく御側役としてガウル殿下につけました。これよりガウル殿下が十全にジェノワーズを指揮できるまでは、私がガウル殿下の公私を支える所存であります故、どうか気兼ねなく御頼りください」

「あ……? あ……?」

「う、嘘……」

「きょ、教官からやっと解放されたと思ったのに……こんなことなんて……!」

 絶望するジェノワーズとは裏腹に、ガウルは自室の窓を開け放ち、

「姉上ェェエエエエエ―――!!! ありがとォ―――!!!」

 隠しようもない歓喜を窓の外へ叫んでいた。

『うるさいわ阿呆がぁ!!』

 同時にレオンミシェリの怒声が城のどこかから響いてくる。だがそんな事を無視するほどにガウルのテンションは高く、それを何とか抑え込もうと全力で取り組んでいた。

「ガウル殿下」

「はい!」

 満面の笑みを隠すことなく、ガウルはサイアスの声に反応して振り向いた。

「これから少々乱暴な所をお見せするので、なるべく耳をふさぎ、此方を見ないでくださると嬉しいのです。私もこう見えて一応乙女なものですから、あまりの粗暴さに殿下に幻滅されますと……」

「ううん! 俺は部屋から出てるから! ゆっくりジェノワーズと話し合うといいよ!」

「そんなぁ……」

「あぁ、最後の希望がぁ……」

「希望なんてなかったんや……」

 半分スキップしながらガウルが自室を出て行く。それを確認したジェノワーズは一か所に集まり、互いの体を守る様に抱き合い始める。そして、出て行くガウルに対して頭を下げていたサイアスが頭を上げ―――

「―――貴様ら殿下を前にしてなんという態度をしているんだ。えぇ?」


「ひぃ」

 それしか声が漏れなかった。もはや蛇に睨まれたカエルというか、サイアスの視線に睨まれたジェノワーズはそれ以外に言葉が口から洩れなかった。

「貴様らのかいた恥は同時に殿下の恥でもあるのだぞ? あぁ? 貴様らは戦争の時や公務で人の前に出た時もそのままでいるつもりだったのか? おい、答えろよジェノワーズ。今日の私は淑女的な気分なんだ。返答しだいじゃ許してやるぞ」


 圧倒的覇気の前に委縮していたジェノワーズだったが、生存の可能性が見えたその瞬間、三人娘の中で一番の知性派であるノワールが手を挙げ、

「そ、そんな事はありません。こうしているのは仕事がないときや、別に大したことのない時だけで、ガウル殿下も暇な―――」

「ほう、つまり臣下としての忠誠を誓うこの日は特に大したこともないと? 私がレオンミシェリ閣下に忠誠を誓った日が大した事もないと? ほう、その舌は良く囀るなノワール……」


 盛大に地雷を踏み抜いた。ノワールの目が死んだ。ベールが本気で震え、

「アカン。これ死んだ」

「礼儀作法の時間だ、最低限必要な事を今日中に一から叩き込んで殺る―――覚悟しろ」


「アカン。これガチで殺される。ガチで殺しに来とる」

 ―――その日、ガレット城にはジェノワーズの悲鳴が夜遅くまで響いたとか。
スポンサーサイト

| 短編 | 11:30 | comments:7 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

メイドサイアス……だと……!?

| とろつき | 2012/10/10 11:47 | URL |

十日ほど出かけて、帰ってきたらサイアスが女になってた。
お風呂シーンとかあった。
死ぬほどびっくりした。
たった十日の間に、どれほど世界は進んだというのだ……

| 羽屯十一 | 2012/10/10 12:02 | URL |

サイアスがどんどん突き抜けた方向に…… いつかマリィに見られた日には恥ずか死ぬのでは…… わくわく

| フィールド | 2012/10/10 12:31 | URL | ≫ EDIT

サイアスのリスペクトはエレオノーレ様かな?
何となく黄昏な勇者様が思い浮かぶ。

| 御神楽 湊 | 2012/10/10 13:57 | URL |

エレオノーレのことをとやかく言えなくなったなぁ、サイアス
黒円卓の連中に爆笑されそう

| sasa | 2012/10/10 15:33 | URL | ≫ EDIT

マリィとか黒円卓とか司郎とかマダー?

| 椎茸 | 2012/10/10 16:26 | URL |

燃やされるのと首獲られんのどっちがマシだろう…?

| 雑食性 | 2012/10/11 20:45 | URL |















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://tenzodogeza.blog.fc2.com/tb.php/221-c159ee02

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。