陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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銃と弾丸 ―――プリパレーション

推奨BGM:Bottomless Pit


 シノンの忠告を振り切ってゲームを開始する。前に踏み込むのと同時にカウボーイ型のロボが挑発的な英語を喋り、此方に銃を向けるのが解る。そして同時に、その視線は無機質ながら此方を確実な獲物として狙っている、そんな感覚が体を襲う。正直な話、ちょうどいい機会だと思う。ALOで弓という遠距離武器に触れた事はあるし、襲われたこともある。だがALOでの弓という武器は非常に使いにくい武器で、その使い手は数が圧倒的に少ない。使用する場合は確実にタンクがいなきゃ意味のない装備なのだ。

 だからこうやって距離を作られ、それでも脅威を得るという感覚は新鮮だ。ALOで遊んでいる内では中々感じられない。これは魔法とは違って避けられる脅威だとデータ上の設定を確認し、体を横へズラすのと同時に今までいた場所を細長い線が貫通する。ロボットの銃口から伸びる線は銃口からその先へと真直ぐ伸び、現れた0.5秒後に銃弾を通す。その瞬間には体は既に弾道予測線と思われるラインから離れている。が、今ので初期段階における反応と銃撃のスピードを認識できた。

「ノロマだな」

 そう、遅い。あまりにも遅すぎる。なんだその動きは。こっちを舐めてるのか。銃を向けて、引き金を引く。この動作に何故0.3秒もかけているのだ。それではあまりにも遅すぎる。そのコンマ数秒の間にどれだけの斬撃を、どれだけの魔法を繰り出さていると思っているんだ。ベイの繰り出す杭よりも鈍い。トリファでさえ欠伸と共に避けられる。

「キリト! 一度横へ避けたら後は追いこまれるだけよ!」

「―――本当にそうかなっ!」


 次の一歩で一気に五メートル踏み込む。ロボットが俺を近づけないために反応し、銃口を此方へと向けてくる。しかしその視線を追えば銃口がどこへ向くかなど容易く見切れる。茅場晶彦の生んだシステム、この≪ザ・シード≫に茅場晶彦がリアリティを求めているのは解っていた。これを受け取ったのは俺ではなくアスナだが、これは異世界構築における天才・茅場晶彦の最高傑作だ。そして、どこまでも”新たな現実”を求めている茅場晶彦が、モンスターにまで目の動きや癖等といった特徴をつけている事も有名で、このゲームの運営はどうやらこのマシンを”モンスター”枠でジェネレートしたようだ。

 銃口を此方へと向ける前に、向ける場所へ視線が一瞬だけだが移動している。

 それではまるで避けろと言ってるようなものだ。

 故に弾道予測線がどこに出現するか容易に予測できる。

 次の一歩で素早い跳躍を行い、

 ―――一気に十メートル踏み込む。

 シノンが最初に話していた十五メートルの距離に入る。ロボットは急にその表情を怒りに染め、そして照準、弾道予測線表示、銃撃、この三つのアクションをシームレスに、コンマ一秒以下でやってのけるようになった。確かに普通の人間ならここで脱落するのも解る。かなり素早く、普通の人間であれば理不尽に感じるレベルの速さだ。だが光速を経験した事があればこんなもの止まって見える。

 これ以上このロボットに付き合う予定も興味もない。体を少し低くし、銃弾から潜る様に一気に加速して―――残り五メートルの距離を銃撃と銃撃の間のコンマ以下の時間で詰める。

 そして、ロボットを軽く叩く。

『OH! NO!!』

 コミカルなアクションと声と共に、ロボットが頭を抱える。同時にロボットの背後の壁が崩れてそこに隠されていて大量の金が現れ、あふれ出てくる。インベントリを開いて確認すると、クレジットの表示額が一秒ごとに凄まじい速度で上昇を見せ、このゲームの勝者であることを俺に対して示していた。軽い優越感に浸り、ロボット風情がざまぁ見ろなどと軽い感想を抱いていると、

「す、すごいじゃない!!」

 そんな声がして、肩を強く掴まれる。大人しめの女の子だと思っていたシノンが目を大きく見開き、こっちの肩を掴んで驚愕の表情を表していた。

「あ、貴女いったい何者なのよ? いや、アレどうやってクリアしたのよ!」

 どうやって、と言われても―――。

「≪ザ・シード≫で生まれたVRゲームのモンスターやNPCは、リアリティを追及するために視線の移動などがプログラムされてるから、それを利用して弾道予測線がどこに出るのかを予測して動いたんだけど、これってそういうゲームなんでしょ?」

 銃を構え、弾道予測線を使って相手を追い込み、そして確実に仕留められる場所で敵を仕留める―――それがガンゲイル・オンラインだとしたら予想以上に頭脳派のゲームだ。どうやって相手を追い込むか、その勝負だ。

「視線を、弾道予測線を予測って……アンタ、そんな事できるわけないでしょ!? ここに来る前はどこで遊んでたのよ!?」

「あ、あははは……」

 そんな頭脳派ゲームではなかったらしい。普通に銃を使って撃ち合う、ウェスタンムービーの様な世界観だと思えばいいのだろうか。いや、ジャンルとしてはミリタリーの方が近いのかもしれない。ともあれ、こうやって装備を整える軍資金を得る事が出来た。まあ、幸先はいいという事だ。

「おめでとう!」

「お前凄いよ!」

「素晴らしい!」

「俺もっかい挑戦するわ!」

 同じ店内にいたプレイヤーの称賛を浴び、なんだか恥ずかしくなってくる。ぶっちゃけ罵られたり呪いの言葉を投げかけられる方が回数が多い為、そっちには慣れている。だが純粋に褒められるようなことは滅多にないから、少しだけ恥ずかしくなってくる。俺は何て謙虚なんだろうか。

「シノン、武器を選んでくれると……」

「あぁ、そうだったわね。……ったく、何て非常識なのよ……」

 シューティングイベイジョンでやって見せた事にまだ納得がいかないのか、シノンはまだ少しぼやきながら歩き始める。ガンショップ部分に戻ると前行った初級の銃ではなく、上級や中級といった銃のコーナーに移動する。

「銃の趣味とかはある?」

「んーそうだね……」

 スタイルがスピード重視のインファイト型なのだ。できたら、

「近接戦で使える武器が欲しい、かな。私、ファンタジーなゲーム出身なので、剣とかそういうのは得意なんです。逆に距離を開けると戦い方が解らなくて……」

「そうね、だとしたら下手にライフルとかに手を出すよりは、アサルトマシンガンとか良いかもしれないわね。。アレだけ動けるのだから―――」

 さっきの弾道予測線の回避をシノンは思い出しているのだろう。真剣に考えてくれている辺り、少しだけだまして利用している事に良心が痛む。だがあくまでも少しだけだ。俺は大義を忘れない。だから少しだました程度では折れる事はない。あぁ、悪いなシノン。全部終わったらなんか奢るよ。たぶん全部終わったらソッコで逃げるからもう二度と会えないと思うが。

「そうね、やっぱりFN P90辺りがいいんじゃないかしら」

 そう言ってシノンが見せてくれたのは片手で握る事の出来る短機関銃だった。予想していたより、というより自分が知っている短機関銃の類よりは圧倒的に小さく、そしてフォルムが全体的に丸い。すこし可愛らしい、ともいえる形かもしれない。だがそれに設定されている攻撃力はかなり凶悪で、値段もかなり高い。

「片手で持てるし、筋力値が高いと反動も抑え込めるから連射出来てオススメよ。威力が高くて、貫通弾も使用できる設定になっているし、これを適当に撃っているだけでもかなりの弾幕になるはずよ。牽制にも攻撃にも使える優秀なメインアームね」

「へぇ……」

 銃の事はよく解らないが、これがかなり強力な銃だという事は把握できた。片手で握れるという事はもう片手に何かを握る事や、動かす事ができるという意味でもある。片手をフリーにしておくことは咄嗟の状況で何かに活かせるはずだ。

「購入、っと」

「迷いがないわね」

「シノンを信じてるから」

「責任重大ね?」

 そこでシノンが少しだけ笑みを浮かべた。やはり女子という生き物は買い物を通して笑顔になるものらしい。男の自分にはよくわからない感覚だが、確かに武器に触れていると自然に笑みになる事はある。たとえばあの剣を使ってドラゴンでもぶった切ればさぞや爽快なんじゃないか、等と。とにかく合わせるためにも笑みを浮かべる。

「それじゃ次はサブアームを考える必要があるわね。やっぱりここはハンドガンよね―――」

「―――いいえ、違うわね、そこの少女に足りてないのは銃じゃないわ。剣よ」

 後ろから新たな声がする。何事かと思って振り返れば、そこには初めて見る女性と、そして男のペアがいた。いや、正確には見た事だけはある。先ほど歓声を送っていた集団の中に交じっていたのを見ていた。

 女の方は腰まで届く青髪を持った女だ。上半身は素肌の上に直接タイトな革のジャケットを着ており、胸元の前のボタン一つでそれを止めている。そしてボトムスは黒のスラックスを穿いているが、へそは丸見えだ。しかし正直その事実よりも、圧迫された胸によって今にもジャケットのボタンが弾けそうな事実の方に目が行きそうになる。全体的にクールな雰囲気のする服装を着こなし、不思議と親近感を持てる声の持ち主。そんな印象を抱く女性だった。

「おい」

 そう言って止めに入ろうとするのは仮面を被った男だ。

 シェイクスピアの戯曲にでも出てきそうな、顔の上半分だけを隠す白い仮面。そしてスラックス、シャツ、そしてロングコートの全てが赤色で、全身を赤一色で染め上げている。服装のセンスは最悪だったが、不思議とそれを着こなしている男だった。灰色の髪をオールバックで流す男は女に注意の言葉を放つが、

「いいじゃないー。ちょっとした遊び心よ。人生に他者との交流は必要よ?」

「イナンナ!」

「この小五月蠅いのは無視していいわよ? とにかく、貴方が見るべきなのはこっちのコーナーじゃなくてあっちあっち」

「あ、ちょ、ちょっと!」

 強引に俺を引っ張るイナンナと呼ばれた女に対してシノンが講義の声を上げる。が、イナンナはそれを躊躇することなく無視し、俺を店の一角に引っ張る。そして、引っ張った先に置いてあったのは―――

「はい、光剣」

「こーけん?」

「そそ、光剣。あとやっぱり銃と言ったらピースメーカーとウィンチェスターだと私は思うわよ。じゃあねー」

「お前は……あぁ、いい。そう言えば貴様はそういうやつだったな……」

 生真面目な仮面の男と、そしてイナンナのデコボココンビは嵐の様にやってきては直ぐに去って行った。しかしそんな事実よりも、イナンナが見せた光剣という武器の存在に今は心を奪われていた。横に置いてあるディスプレイには光剣の使用法が書かれており、この武器がビームサーベルの類の装備であることを示している。

 値段は三十万。

 残りの所持金は五十万弱。

「二本は無理か……」

「買うの? 止めた方がいいわよ。光剣何て完全にネタ武器だし。リーチは短いわ、攻撃範囲が狭いわネタスタイル以外でそれを持っている奴なんていないわよ。それを購入するぐらいだったら時代遅れのウィンチェスターを購入した方がまだいいわよ」

 地味にイナンナの行動を根に持っているらしい。

 が、

「剣が一番得意なので、一本持っておくと安心できるんですよ」

「そう、なら何も言わないけど」

 迷わず光剣を購入した。慣れた得物がこれで手に入る。重量や握りの感触は実戦で使って慣れないといけないが、これで近接戦もいつも通りできる。

 んじゃ、とシノンが声を上げる。

「銃弾と爆弾の類を揃えましょうか。弾丸がなければ戦えないし、グレネードとかを用意しておくと便利よ」

「うん、ぜひともお願いします」

 そこらへんの細かいチョイスは完全にシノンに任せるとし、

 これで―――BoBの最低限の準備は整った。あとは総督府へと向かい、出場登録を済ませるだけだ。
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| 断頭の剣鬼 | 09:01 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

金星さん、何してはるんですか…w
並行世界で境ホラのブルイユくんもTSすればコンプリート!

| あも | 2012/10/10 10:23 | URL |

イナンナでその格好、灰色の髪のオールバックで目元を隠している男ってので、かなり懐かしいゲーム「I/O」を思い出してしまった。
そういえば、あれもネットを題材にしたサイコサスペンスだったね。

| 木鶏 | 2012/10/10 17:41 | URL | ≫ EDIT















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