陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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DAY16

「はい、一! 二! 三! 四!」

「一! 二! 三! 四!」

「声が小さい! もっと大きな声で!」

「一! 二! 三! 四!」

「そのまま素振りを続けて!」

「一! 二! 三! 四!」

 ガレットは今日も平和だ。隣国と戦争興業以外で争うこともないし、魔物が現れる事もない。いや、正確に言えば魔物は出現する。しかしガレットの騎士団は優秀だ。それは自他ともに認める事実であり、それは魔物の処理に対する事であっても同じ話だ。ガレット領のあちらこちらにはガレットの戦士団や騎士団が派遣されており、彼らは魔物が現れ次第何時でも動けるようになっているし、力量を超える存在であれば直ぐに連絡が出来る様に通信システムを構築している。


「そこ! 腕が落ちている! 百回追加!」

「マジっすかぁ―――!」

「マジっすよ―――! はい、口答えしたので追加五十回。私ってものすごく優しいですねー」

「うぐぐぐぐぐ……!」

「ジョーヌ」

「解ってるよー! ノワもそんなに睨まないでよ!」

 故に、ガレットが致命的なレベルまで侵攻を受けるという事態に陥る事は滅多に、というか存在しない。このシステムを思いついたのが何代も前の領主だというから凄い。その機構を受け継ぎ、常にフロニャ力の加護を受ける為にガレットの戦士達と騎士達は、日夜平和の為に戦い続けている。全ては国の繁栄、そして同時に隣人を守る為。

「そうですか、ジョーヌさんは友達思いなのですね? ではその友情に敬意を表してもう三十回追加しましょう。皆さん、一緒にトータル百八十回追加ですよ? 良かったですね―――当初の予定は二百回追加でしたから」

「……!」

「ふー! ふー!」

「ひぃー!」

「と言うか教官の敬語あってない」

「はい、更に二百回追加」

「教官の目が笑ってないよぉ……」

 そんな平和なご時世となると戦争以外では特に忙しい時期はなくなる。そうなると親衛隊も仕事が減って、暇なときは別の仕事を貰う事となる。

 五年前に、戦争デビューを飾ってから何度も戦争に参加し、レオンミシェリ姫の為に何度も首を集め、喝采を浴びてきた。しかし何度も何度も戦争を続けるわけにもいかない。戦争をし続ければそれに人が飽きてしまう。そのため、全く戦争をしないという時期ができる。そうなると書類も数が少なくなり、今までできなかった事に着手出来るようになる。そんなわけで、俺がここ、ガレットに来て十五年、初めての経験となるものに挑戦していた。

 即ち新人育成。

 目の前で剣を素振りする騎士候補生、つまり従騎士達の存在を見ていると嫌でもそこに並んで木刀を振っていた自分の幼少期を思い出す。本当に色々と懐かしい。こうやって細かい基礎を重ねて今の自分の体は出来上がっているのだ。だからこういう面倒だと思える事も、今は鬱陶しくても後で感謝する要因になる。

 だから絶対に容赦しない。

 新人育成なんてやるのは初めてだが、基本的に任されるのは基礎の基礎の部分だ。もっと長期的な育成プログラムをを組むことは教官歴の長い人がやってくれており、そう言うのも少しずつだが教わっている。二十歳にもなってまだまだ習う事があるのは正直言っていろいろと楽しい。世間の広さと自分の底はまだ見えないと、そんな事を教えてくれる。

「ノワール、背筋が少し丸まってきてますね。ジョーヌ、力が入りすぎてます。ベール、は逆に力を抜きすぎですね。三人とももっと周りを見習って真剣にやってください。色々と期待されて重圧を感じているのは解りますが、それも後で糧になりますから、ね?」

 あぁ、俺、何ていい話をしているのだろう―――。

「サイアス教官! 周りは無心で素振りしているんじゃないと思います! 全員死んだ魚のような光の無い目で素振りしてます!」

「ぶっちゃけると心が折れてないの私達だけ」

「素振り、普通は千回程度で終わるのに何故か五倍はやっている気がします!」

「うーん、はりきりすぎちゃったんでしょうか……」

「はい! はい! むしろ殺しにかかってるようにしか思えません!」

「そうですか―――まぁ、止めませんけど」

「た、耐えるのよジョーヌ! あ、ノワの瞳から光が消えそう」

「の、ノワ―――!!」

 むしろ今までが甘いので甘やかされすぎだとも言う。俺の時代では夕暮れになるまで素振りを続けていたのに、今ではその量が減っているというではないか。それではあまりにも理不尽だ。主に苦労した俺達が。故に、この悪習は何時までも続いて従騎士達を苦しめ続けるべきなのだ。

「ノワール、心が折れたふりをしてこっそり尻尾を支えにするのは駄目ですよ」

「ちぇっ」

 少しでも油断すればすぐこうなのだ。

 これが今期最優秀の三人だと思うと少しだけ頭が痛くなる思いだ。所々欠点はあるが、それぞれ格闘、座学、そして紋章術の分野でトップを張るトリオだ。彼女らの卒業時期に合わせてガウ殿下の親衛隊の設立の話が出ているのだが、このトリオをガウ殿下につけようという話が出ているのに……このままではあまりにもみっともなくて、殿下の下へ送り出す事が出来ない。

「ほら、あと五十回、それが終わったら夕飯までは自由ですよ」

「うおぉっしゃああ―――!」

「がんばるっ!」

「お風呂! お風呂! お風呂!」

 元気がいい連中だな、と思いつつも、自分も昔はこんな感じで元気にやってたのかもしれない、と思う。手を軽く叩き素振りのタイミングを修正させ、崩れているフォームを直す様に軽く指示し、次世代を担うガレットの若者たちが育ってきている事を実感する。彼らが十五になる頃には世代交代で、戦争から離れてレオンミシェリ閣下のメイドとしての活動に集中すべきかもしれない。

「んー、ルージュとビオレにでも相談しようかしら……」

 今夜、大浴場に一緒に入って話し合ってみるべきか。

「サイアス教官ー! やっぱどう足掻いてもプライベート知ってるとその喋り方に違和感があるんですけどー」

「もうあと五回で終了でしたけど、どうやらまだ疲れ切ってないようですね。うん、もう百回追加しますか」

「いやああ―――!!」

 ガレットの未来は割と明るい。
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| 短編 | 23:33 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

確かに違和感あるよなぁ…これはこれでいけるが

| 雑食性 | 2012/10/11 20:27 | URL |















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