陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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銃と弾丸 ―――ガンスリンガー・ガール

推奨BGM:Bottomless Pit


 ―――目を開けて真っ先に見えたのは崩れた建物だった。廃ビル、と呼ぶよりは”荒廃している”、そういう風に呼んだ方が正しく思える感じのビルだった。それはアルヴヘイムでは絶対に見る事の出来ない景色で、同時に自分が全く違う世界に入り込んでしまったという証であり、そして、

「成功か」

 アバターのコンバートが成功した証でもある。まず最初にインベントリとステータスを確認する。ステータスはこの世界に準ずるものへと変化し、そしてインベントリの中にクレジットが1000だけと、初期装備が入れられていた。これで確実にコンバートが成功しているのを感じられた。

「……うん。あるな」

 同時に、自分の中にあの首切り刀が眠っている気配も感じられる。万事抜かりなし。

「他愛なし、何て言ってられないか」

 ALO事件の時は最初からユイがいて心強かったものだが、今回は彼女もいない。と、歩き出そうと思い、周りを見渡したところで鏡を見つける。おそらくゲームを開始したばかりのプレイヤーを助けるための鏡なのだろう。これだけ妙に綺麗に残っている気がする。

 って、

「なんじゃこりゃあ」


 鏡に映っているのは黒髪の美少女だ。どこからどう見ても黒の剣士キリトらしい姿はない。髪が長く、肌も白い。

「……あるな」

 股間をチェックするがちゃんとついている。つまり何らかのミスで性転換しているわけではない。アバターがコンバートされたさい、ランダムでこんな女性っぽいアバターを引き当ててしまったという事だろう。運がいいのか悪いのかよく解らない。

「なんか出鼻をくじかれた気分……」

 とはいえ、ここで折れていてもしょうがない話だ。容姿に関しては戦闘力に関係ないし、女の姿をしていた方が情報収集はしやすいという点もある。そう考えると悪いものでもない。ただこの長ったらしい髪は邪魔になる可能性があるから、切る必要があるかもしれない。容姿に関してはスッパリ割り切り、スタート地点の外を目指す。

 荒廃したビルからでて、目前に広がるのは黄色と茶色の世界。とことん緑が排除されていると思う。自然など欠片も存在せず、地平線の向こうには荒野に突き立つ銀色の姿―――街が見える。あそこがまず目指すべき場所なのだろう。ビルから外へと踏み出した瞬間、靴の裏の感触がむき出しのコンクリートを踏むそれから、砂と、砕けたコンクリートの混じった感触に変わる。よく見ればこの場所から目的地となる場所までは道が続いているようだった。コンクリート―――アメリカの田舎のハイウェイを思わせる様な道路が半ば砂に侵食されながらも続いていた。これをたどれば迷うこともないだろう、

「距離は……十キロって程度か」

 普通に歩い二時間半ぐらいだろうか? そんなに時間をかけている暇もない。菊岡の話が正しければ確か今日中に”バレット・オブ・バレッツ”とか、そんな感じの名前の大会があったはずだ。コンバートしたのはいいが大会に参加できませんでした、そして帰ったらアスナに怒られる―――考えられる限り最悪のコンボだ。

 そんなコンボ死んでも嫌だ。

 怒られるのは何かを成してからにしたい。少なくともそうだったら菊岡を盾に言い訳ができる。

 だから、

「良し!」

 軽く体をほぐし、体の調子を確かめる。こっちの世界では完全に初心者だとはいえ―――中身はステータスの表記以上に壊れている。いや、狂っているという表現が正しいのだろう。常識的なステータスではないことは確かだ。ともあれ、この脚力であれば、

 二時間半の所を一分以下で走破する事も可能だろう。

 あまりにも早すぎたら見られた場合言い訳ができないために適当な速度を決め、

 ―――降り立ったガンゲイル・オンラインの世界を駆ける。


                           ◆


 大体予想していた通りの時間で街へと到着する事が出来た。速度はそれなり、常に気配を察知しながら移動した結果、初心者狩りにあうこともなかった。そこは結果として上々だった。だが問題は街へと到着してからだった。

 この街、構造がおかしい。

 設定上、宇宙船が解体されて作られたのがこの≪グロッケン≫という街らしく、上に下に右に左に、道路の全てが裏道の様に感じるこの感覚はアルゲードの路地裏を思い出させる構造となっている。非常に解り辛く、今、ここにきて、武器屋を見つける前に迷子になっている。

 本当にこれは困った。

 総督府に行って出場登録しなきゃいけないんだけどなぁ……。

 身体能力に物を言わせて大ジャンプでもすればまた簡単に道が解るのだろうが、そんな事をするつもりはない。とりあえずは標識を求めて周りを見渡すが、それらしきものは一向に見えない。諦めて再び歩き出そうとしたところで、

 此方を見ている少女の姿を見つけた。青と緑の中間とも言える色の、少しツンツンとした髪にミニスカートとマフラーが特徴的な少女だ。しかし重要な所はそこではなく、

 ―――こいつ、螢と同じにおいがする。

 つまりツンデレ。

 つまり隠れアホ属性。

 つまり利用しやすそう。

 なんだかんだ言って情に流されやすいツンデレで、実は少しアホで結構簡単に利用されやすい人物。と、司狼が評価してた。そして、この少女からはそれに似た気配がする。つまり―――頼むのならこの人物しかいない。

 少女の視線の中で少し恥ずかしそうに、顔を染める様にして、声はハスキーボイスを意識する。女性の声として通るレベルの声を意識し、

「あ、あの……すいません……」

 青髪の少女に話しかける。やはり女性プレイヤーが珍しいのか、青髪の少女は此方の声に反応して視線を向けてくる。これは行けるな、とある種の確信を持ちながら話を続ける。

「あの、実は初めてで……出来たら安い武器屋と……総督府がどこか教えて貰えれば嬉しいのですけど……」

 少しわざとらしいかもしれないが、これぐらいが丁度いいと俺の直感が告げている。そしてそれが正しい事だと彼女のリアクションが告げる。

「女性プレイヤーがこんな夢も希望もない世界で何をしてるの? そんなぼうっと歩いてたらPKされるわよ」

「今までファンタジーな世界観のゲームで遊んでいましたから、ちょっとこういう感じもいいかなぁ、って思いまして」

「そう」

 そこで少女があからさまに溜息を吐くが―――どうやら思惑は成功し、離れる様子はないようだ。

「私はシノン」

「キリトです」

 握手を交わす。シノンはマフラーを軽くゆるめると此方の全身を眺めてくる。

「お金―――あるわけないわよね。どこからどう見ても初心者だし」

「え、えぇ……」

 この世界、武器の強奪が許されているらしいので大会に参加できれば、後は対戦相手から武器を強奪して進めるという手段もあるのだが、一応は安い武器を購入してそれで戦いたい。

「ステータスは? どんな感じ?」

「あ、筋力多めの速度型です」

「ふーん、となると少し重い銃も装備できるのか。と言っても初期の1000クレジットじゃ購入できるものも限られるわね。いいわ、ついてきて。どうせ私も弾を購入しなきゃいけなかったし、購入ついでに案内してあげる」

 心の中でチョロイと思いながら見えない様にガッツポーズを決め、笑顔で頭を下げる。

「ありがとうございます、助かります」

「お礼なんていいわよ別に。それよりほら、行くわよ」

 そう言って歩き出すシノンの背後を追う。少しでもシノンを見失えばそのまま一生迷子になって出てこれなさそうな街を網羅しているのか、シノンは複雑に入り組んだ道を迷うことなく右へ左へと曲がりながら進みながら、レクチャーを始める。

「このゲーム、GGOでは銃は二種類に分けられるわ。光学系のと実弾系のね。光学系のは対モンスター用、狩り向けの銃でショップとかで売ってる小型防御装置を装備すればダメージを減らす事が出来るから、正直モンスターと戦う以外ではお勧めできないわ。実弾系が対人用ね。こっちは防弾チョッキとかで威力を落とせるけど、それでもヘッドショットを狙えば一撃だし、全体的に光学系よりも威力は高いわ。その代りに光学系よりも弾速はおちるし、リロードも時間がかかる。このゲームになれている人はそこらへんのリロード、アホみたいに早いんだけど、まあ貴女には関係のない話よね。ともあれ、この時期に総督府に行きたいって事はBoBに参加するわけでしょう?」

「えぇ、はい」

 一気に説明をするシノンに少しだけ圧倒される。意外とこの少女、銃とかそういうことに関してはマニアックな所があるのかもしれない。いや、俺も見た事のない武器を露店で見かけたら購入して飾ったりもするから、そこらへん人の事は言えない。やはり、ゲーマーとはどこに行ってもこんな人種ばかりなのだろう。

「なら実弾系の銃をお勧めするわ。まあ、初級の銃でどこまで戦えるかは解らないけど……何もないよりはいいわよね。っと、ここよ」

 シノンが説明を進めているうちに第一の目的地であり武器屋へと到着する。世界観を守る様に錆びた外観の武器屋だ。シノンが開ける扉も、キキキキ、と、オイルが必要だと訴えながら開いた。ただ中は意外と整えられていて、オイルの匂いと火薬のにおいが充満していること以外は予想よりも綺麗だった。

「こっちこっち」

 シノンがガンショップの棚まで移動し、一番安い銃のコーナーの前で止まる。

「1000クレジットとなると本当に性能が低い、改造前の銃しか購入できないから、あまり性能は期待できないわよ」

「うーん……」

 正直銃の性能はあまり重視していなく、能力に物を言わせた戦い方を計画していたのだが、こう、男としては銃を見ると少しときめいてくる所がある。

 と、

「あー! 失敗したー!」

 そこで大きな声で何らかの失敗を叫んでいる人の声がする。その声の主を確かめるためにも後ろを向くと、棚の反対側、小さなレーンが存在し、

「……ミニゲーム?」

「弾を避けるゲームよ、それ」

 失敗し、悔しそうに去って行くプレイヤーの姿を見ながらシンンが解説を入れる。

「あそこの奥にガンマン型ロボがいるでしょ? アレが射撃してくるからそれを避けて一番奥のロボに触れれば勝ち、ってゲーム。このゲームは銃を構えると弾道予測線って”今からここを弾丸が通過します”ってラインが出るわけ。だからそれを上手く見切って前に進むんだけど―――」

 そこでシノンが溜息を吐く。

「アレ、全部で二十メートルほどの長さなんだけど、十五メートルまで進むと急に狂ったような三点バーストを始めて、残り三メートルの時点でリロードなしの乱射になるのよ。それが乗り越えられなくて、今まで誰もアレを成功できていないのよ。おかげで賞金はプールされる一方よ」

 ゲームのルールは把握できた。そして賞金がプールされているという事は、

「―――アレ、クリアしたらどれぐらいお金貰えるんです?」

 その言葉の意味を理解したシノンが即座にムリムリと言葉を放ち、

「確かにアレをクリアできれば、この店に置いてある銃で一番高いものを三つぐらい購入する事が出来るわよ。でも誰もクリアした事のないゲームなのよ?」

 ―――誰にもできないからといって、そこで自分もできないと諦めるのは馬鹿のやる事だ。

 何時だって不可能を可能にしてきたのが俺のSAOとALOでの冒険で、たかがゲームの一つや二つで俺を止められるはずがない。

 第一、弾丸は小さすぎて避けるのは簡単すぎる。

 少なくとも崩壊したアルンの街を岩塊にしてぶち込むアアレを避けるよりは、イージーなゲームだ。

「一回どれぐらい?」

「800よ。でもそれやったら銃を買うお金がが―――」

「大丈夫大丈夫! 私、前のゲームでそれなりに強かったから!」

 迷うことなくレーンに立ち、出てきたホロウィンドウにゲームのプレイ料金を支払う。

「―――弾丸を避けて賞金を手に入れろ!」

 最初は気の乗らない話だったが、少しだけテンションが上がってきた。
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| 断頭の剣鬼 | 08:34 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

GGOになって私とか言っちゃうキリト君ェ・・・

| おk | 2012/10/09 16:05 | URL |

キリト……腹黒くなったな。
まあ、シノンぇ……。

| 空 | 2012/10/09 16:12 | URL |

キリコェ……
あれ、こう表記するとむしろ究極の主人公補正こと異能生存体チックになって絶対死ななさそうな気がしてくる不思議

| | 2012/10/09 19:22 | URL |

奥さん。
お宅の旦那、浮気してるよ。



つか、キリト腹黒ォォッ!

| 断章の接合者 | 2012/10/10 09:42 | URL | ≫ EDIT

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| | 2013/11/18 18:05 | |















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