陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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DAY10

 ビオレと共に身嗜みを終わらせれば部屋にもう用事は残っていない。座学にしたって訓練にしたって、それらの道具は全部教室や訓練所に置いてある。そのため部部屋にはほとんど私物しか置いてない。だから安心して部屋から出る。この領地における一番安全な街、一番安全な城の中である為、鍵をかける必要もない。朝食の時間の中でもかなり早いうちに俺とビオレで廊下に出て、食堂へと向かう。石畳の廊下は歩くごとに足音が反響し、今はさみしい姿を見せている。だがそれも今だけの話だ。

 従騎士が暮らしている事からも解る様に、此処には騎士も、メイドも、多くの人間が住んでいる。ガレット領主はかなり情に厚い人物で、城で働く人物全てを家族のように思っている。ガレットの城が他の領の城と比べて少々つくりが大きいのは、城で働く者全てに寝食できる場所を提供するためらしい。

 ともあれ、そう言う事情もあって本来のガレット城という場所は結構騒がしくなっている。それが静かだというのは、やはりビオレと共に活動を始めるこの時間が周りにとっては少々早い時間だから、という所にある。こうやって俺達が外に出る時間は、周りにとっては起きる時間だ。つまりあと十分か二十分は騒がしくなるまでの時間があるとなる。


「早起きの特権だよな、これは」

「ですね」

 ビオレと共に歩く早朝の廊下は本当に静かで、いつも見ている景色とは違う様に思えてくる。言うなれば、夜の学校と似たようなものだ。時間帯によって全く別の空間に見えてくる、そんな効果がこのガレット城にもある。そして俺とビオレはそれを楽しんでいる。堂々と廊下の真ん中を占拠し、両腕を広げて存在感をアピールするのは中々の快感がある。特にこんな、高級な場所で出来るとなると素晴らしい感覚である。

 まあ、小市民精神が抜けきってない事は認めよう。

 二階にある部屋から階段を下りて一階に行くと、そこには従業員や騎士用の食堂がある。騎士や従騎士と別れているし、上司と部下の関係はあるが、古い中世の様なキツイ上下関係ではない。上のものが食べ終わるまでは食べられないだとか、ずっと食べるところを見なくてはいけないだとか、そんな事は一切なく、騎士達と一緒に笑い合いながら食べる、そんな食堂だ。そんな光景を見るたびに地球との文化の違いを痛感させられ、この世界は発達せずにこのまま停滞している方が美しく、幸せだと認識する。

 到着した食堂には大方の予想通り、というよりも普段通り働いている人間以外は誰もいない……と、思ったが、そうでもなかった。よく食堂の方を見てみれば、そこには訓練を共にする仲間の姿があった。

「おはようございます」

「おはよう、サイアス、ビオレ」

「おはようバナード」

 バナード・サブラージュ、これもまた将来を約束されたような美しさを持つ少年だ。年齢は俺達よりも少し上だというぐらいなのに、もう将来の姿が想像できるぐらいに完成されたような”美”を持っている。今のうちに唾をつけておけば将来確実に勝ち組になれるような男だ。だが基本的に美形の多いこの世界では、あまりそう言う発想に至る人間がいないのも事実だ。ともあれ、

「早いな」

「昨日、二人が早起きして食堂に来るのもいいって話していたからね」

「おい、聴いたかよビオレ、お前のストーカーだぞ」

「サイアス、それ、失礼じゃありません?」

 こういう所は少し、ノリが悪いと思うが、まあ、そこはノリの違いというか、キャラの違いというか、まあ人種的問題だから仕方がないとすっぱり諦めよう。ともあれ、

「俺とビオレの満たされタイムを邪魔しに来たのかバナードめ……!」

「あー、もしかして迷惑だったかい?」

「あ、いえ、これは威嚇しているように見えて、実は歓迎しているだけですから別に気にしないでください」

「そうなの……かな?」

 よく解ってるじゃないか、流石五年来の相棒というべきか。ビオレは俺のことを解ってきていると思う。

「ま、追い返す理由もないし、野郎の一人でもいないと絵にはならないだろう」

 バナードの横を抜けながら肩を軽く叩く。そのまま食堂の、食べ物を受け取る為のカウンターにまで歩き、トレイを棚からとってそれをカウンターに乗せる。カウンターの向こう側から用意されている朝食の匂いがむわっと湯気と共に香って来て、食欲を誘う。

「おばさーん」

「はいはい、サイアスちゃんにビオレちゃん、今日も早いねぇ。あら、今日は坊やも一緒かい」

「おはようございます、今朝もご苦労様です」

「おはようございます、えぇ、偶には一緒なのもいいかと思いまして」

 返事も結構イケメン。内心までイケメンとなると中々絡み辛いキャラになって個人的には困る部分もあるが、それは置いておくとし、食堂のおばさんにトレイの上に本日の朝食を乗せて行ってもらう。

 ガレットの食文化は西洋の物に近い。どちらかというとイングリッシュブレックファーストに近い所がある。出てくる朝食がコーンスープ、トースト、ベーコンにサラダと目玉焼き―――よく見る朝食のメニューがこれで、地球で見たそれとあまりに変わらない事で若干驚きもした。

 食堂のテーブルにつき、ビオレと並び、バナードとは向かい合うように座る。トレイを前に置き、それぞれの朝食に手を伸ばし始める。

「今日も座学に訓練かぁー」

 トースとの上に目玉焼きとベーコンを乗せ、それを口に運びながらそんな事を話題提供のつもりでつぶやく。真っ先に話題に食らいついたのはバナードだった。

「もしかして辛いのかい?」

「いんや」

 そんなわけがない。寧ろ故郷で子供たちの相手をしている方が何倍も辛い。あの餓鬼どもは本当に加減というものを知らないから、何度もけものだまになる様に狙ってきて―――。

「サイアス?」

「あ、うん。大丈夫。つらい過去を思い出してただけだ……そう、けものだまになっては元に戻って、またすぐにけものだまにされるあの地獄の無限ループを……」

「あ、あははは……」

 バナードが笑ってごまかそうとしているが、その笑みは引きつっている。隠しきれていないのは明白だった。バナードもほぼ同期の従騎士とはいえ、ビオレほど俺との付き合いは深くないから、まだ俺のキャラには対応しきれてないのだろう。

 ……もう少し優しくするか?

 と、思っていると、

「でも、そう言いながら主席をキープするサイアスって凄いよね。いつも辛い辛いとか、面倒だとか言いながらも絶対に主席を落としたりしないわよね」

 それはだって、まあ、

「奨学金かかってますしねぇ?」

「そう言えば入学試験でも奨学金万歳って叫んでたわね……」

「そこまでサイアスの実家は辛い状況なのかい?」

「いや、別に貧乏ってわけでもないし、裕福ってわけでもないよ。普通に普通な家庭。まあ、東洋街の普通、って言葉が付くけど。全体的に言って収入のレベルで言えば王都の平均以下だから、ここに通おうと思うと金額的に少しきついかな、多分。だからまあ」

 子供心というべきか、

「親の期待は裏切りたくないし、なるべく家計を助ける意味でも奨学金を貰い続けたいんだよなぁ……」

「そう言って維持し続けられるのは凄い事だよ」

「そこは純粋に尊敬する所よね」

「いやいや、バナードはバナードの年のトップだし、ビオレだって真後ろマークしてんじゃん。俺、何時ビオレに抜かれるか実はすっごいはらはらしてるのよ? そうなった時―――どうやってこの友情を裏切るべきか」

「あははは……」

 バナードが苦笑いを浮かべている。やはりこのノリにはついていけないか。ノリにはついていけないか。トーストを食べ終わりスープに手を付けるながら、ざっくりと話題を変えるつもりで、

「所でバナードくんや」

「はい?」

「俺とビオレどっち狙いで来てんの?」

「ぐふっ」

「げほっ」

 バナードとビオレが同時に喉を詰まらせた。おやおや、これは予想以上に面白いものが見れるか?

「な、何を言っているんですか!」

「そ、そうよ、そんな意図はないですってば!」

 慌てるのが怪しい。追求したいところだが、食堂の入り口に他の従騎士達の姿が見え始める。少しだけフリーダムな時間ももうここで終わりだ。

 これを食べ終われば座学の時間が来て、そして訓練の時間が来る。

 こうやって、従騎士の一日は始まる。
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| 短編 | 22:43 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

わぉ、「俺とビオレどっち狙いで来てんの?」ですって。
アスアスちゃん女の子してるなぁ。何故か私は嬉しいよ。成長したね(?)サイアス。

| ろくぞー | 2012/10/08 22:48 | URL |

アスアス、女の子してますねぇ!

さて、TSアスアスの活躍を楽しみにしてますね~!!

| 尚識 | 2012/10/08 23:15 | URL | ≫ EDIT

女子化してきたなぁかわいいなぁ。

バナード少年は原作通りの嫁じゃなくてサイアス狙いなのか⁈

| アンデス | 2012/10/08 23:48 | URL |

女子化進行中ですなぁ青春してるなぁ
この世界だと泥沼三角関係とかはなさそうだしなぁ・・・

| 雑食性 | 2012/10/09 20:16 | URL |















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