陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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プロローグ ―――スメル・オブ・ザ・パスト

推奨BGM:Burlesque
*1推奨BGM:Mors Certa


 頼んだスコーンとダージリンが運ばれてきた。運ばれてきた食べ物はリアルでは見た事がない程に高そうに見える。正直桁が四つ見えた時点で食欲はわく所が減退を見せているが、国民の血税を使ってオーダーされているのだ―――俺にはこれを食べる義務がある。そう、食べ物に罪はないのだ。食べ物には。

 だから遠慮なくスコーンを食べる。

「あ、食べたね? もう逃がさないよー!」

「うわぁ……」

 やり方が古い上に地味に陰湿だ。

「菊岡サン、友達いないでしょ?」

「残念な事に部下には恵まれているんだけどね。どうして友達ができないのか不思議でならないよ」


 これで既婚者らしいので怖い。人生、どんな人間がどんな人生を送ってきたのかよく解らないものだ。見た目で判断するな、という所だろう。あぁ、もういいだろう。毒を食らわば皿まで、だ。こうなったらとことん腹を括ろう。

 スコーンに食いつき、それを一気に平らげる。そしてダージリンも飲み干す、普通なら火傷しそうな勢いで飲んでいるが―――そんな事を心配しなくていい体になったことを喜ぶべきか、悲しむべきか。とりあえず。

「……今回の件でチャラって事で」

「交渉成立。キリト君なら絶対に受けてくれると信じてたよ」

 嬉しそうにそう言うメガネの公務員は、嬉しそうにパフェを食べながら、横の椅子に置いておいたカバンから書類を何枚か取り出す。それを整理し、数枚手渡してくる。それを受けとりながら確認する書類のタイトルは―――

「デス……ガン?」

 なんだろう、アインクラッド初期の黒い記憶を思い出しそうになるその香ばしいネーミングセンスは。自分や友人の傷を抉る可能性がデカいのであえて口を閉ざすが、端的に言って―――厨二ネーミング臭い。

「そう、死銃(デス・ガン)。これがキリト君に頼みたい事なんだ」

 未だにパフェを食べているが、菊岡の声は仕事モードに入ったためか少しだけ引き締められている。此方も相応の態度で対応を始める。

「初めに、キリト君―――君はネットで死ねばリアルでも死ねると思うかい?」

 反射的に頷きそうになるのを止める。

 ―――一般的に言ってアレが少数派だよなぁ……。

 結婚式の時に教えてもらったが、須郷の死因はALOで……いや、あの時はグラズヘイムか。ともかく力を求めすぎた須郷が自壊したのと、明広の攻撃によって内臓の大半を消失したことが原因だったらしい。それでも執念深くアスナを殺そうと銃を握っていたのだから凄い。しかしそんな戯言を公務員が信じる筈もないし、教える必要性もない。

「ま、SAOみたいな処刑システムがなきゃ無理だな」

「だけどそこの死銃君はものの見事やってくれたんだよ。バーチャル世界において我々が作った安全性の保障を真正面から潰してくれたんだ」

 菊岡の書類を見る。そこには死銃と呼ばれる存在の写真が出ている。ログをさかのぼってチェックした絵なのか、姿は少し乱れて見えるが―――ギリーマントというのだろうか、それにガスマスクをかぶった、不吉な恰好の存在だった。

 それが黒円卓や自分の友人でもなく、そして同時にSAOで決着をつける事が出来なかった二人の死神、ナハトとジューダスではない事に安堵する。今の所自分の中であんな非常識な事ができると解っているのは黒円卓に所属する人間、司狼と明広、あとは今もその行方がつかめないナハトとジューダスだけだ。変装をしている可能性もあり得るが、俺の知り合いに変装を楽しむ様な人間はいない。寧ろ正面からド派手に行く脳筋ばかりだ。

 あぁ、安心できない。激しく安心できない。キッチンの横に火薬庫を置いてある気分だ。

 身内から犯罪者が出たらどうするんだこれ。

 いや、まて。

 ―――司狼ガチ犯罪者じゃん。どうするんだよこれ。弁解の余地ゼロじゃん。

「うん? どうしたんだいキリト君? 顔が青ざめているよ?」

「い、イヤァ……ナンデモアリマセンヨ……?」

「うん? そうかい? ともかくそれを見てくれれば解るんだけど、数日前に死銃って名乗る人が丁寧にも人の多い場所でバン、と銃をスクリーンに向けて放って、そこに映っていたプレイヤーを殺したんだ」

「ストップ」

 今の言葉に軽い違和感があった。一旦菊岡の言葉を止めて、書類を見ながら確認する。ここに書いてある情報では、この死銃なる人物はスクリーンに向けて銃を撃ったのだ。直接的な攻撃ではない。酒場で放送していた≪勝ち組いらっしゃい≫という番組のゲストに向かって発砲したと出ている。

 さすがにあの非常識な集団でも、直接的な攻撃以外では殺せないような気もする。

 としたら、これは……―――

「システムの穴を利用した……のか?」

「うん。僕たちもそう思った」

 菊岡がパフェを食べながら肯定してくる。パフェのスプーンを行儀悪くこっちへと向けながら、

「出来る事が限られてくる現実と違って、この事件のあったゲーム≪ガンゲイル・オンライン≫は仮想世界だ。そして仮想世界の進化は終わっていないだ。まだ見ぬ新たな技術を引っさげたハッカーが直接なんかやってるかもしれないし、何らかのバグを利用した方法かもしれない。そこで、まずキリト君に聞きたいんだけど―――どうすれば人は殺せると思う?」

 先ほどの質問とは少し質が違う。こっちは殺せる方法を聞いてきている。とは言え永劫破壊やら心意の口を出すわけにもいかないし、

「んー、ショッキングな映像を使ったテロが少し前にはやらなかったっけ」

「あー! 確かにそんなものがあったね」

 アミュスフィアのプログラムの一つにメール機能があって、ダイブした状態で使用すると分を”見る”事が出来るのだが、これを利用した性質の悪い悪戯が一時期流行った。メールの中には映像ファイルが入っており、メールを開くと自動で視界いっぱいに強烈な色の爆発を見せつけるのだ。そうやって見ている人間の脳にダメージを与えるといった内容なのだが、アミュスフィアのデータのアップデートによってそれは不可能となっている。

 というよりも、

「でも、元々アミュスフィアの設計思想が”安全性”になっているから、こういう類のテロは不可能なはず。映像の他……味覚を通しての攻撃? いや、アミュスフィアの設定上、そこまで強烈なダメージを与える事も不可能なはずだ。そんなダメージになる前にアミュスフィアが回線切ってくれる筈だろ?」

「そうだから今こうやって僕が君に話しているんじゃないか。実際かなり困った話なんだよ? 死体は見つかるわ、謎の男が安全設計を無視してくれるわで」

 書類を確認していると、現実の方で亡くなった体の方のデータが出てくる。それによると、

「ん? 銃撃で死ななかったのか」

「うん。どうやら心臓麻痺で死んでいるんだ」

 これで身内の犯行の線が消えた。アイツらが撃てば体に銃を撃ち込んだ痕が絶対にできる。アレは仮想とか空想とか、そんな非現実的な世界を飛び出す”流出”の法則だ。俺の予想じゃ何時か現実にまで出てきそうな気がする。

 いや、俺が知らないだけでもう―――。

 と、書類のページを進めていた指が動きを止める。

*1

 今、俺の手は書類のある一枚のページで動きを止め、もう一回ゆっくりとそのページを読む。

「どうしたんだいキリト君?」

 此方の異変に気づいて菊岡が声をかけてくる。

「なあ、これを死銃が言ってたのは本当か?」

 そう言って菊岡に書類を見せる。

「うん? あぁ、それね。なんだかスクリーンに向かっていろいろぶつぶつ言った後、消える前に酒場の人間に向かって演説をするように言ったんだって。―――”悪夢はまだまだ終わらない。殺戮の宴はまだ始まったばかりだ―――”」

「”―――イッツ・ショウタイム”、か」

 菊岡の言葉を俺が完結させる。非常に嫌な事だが、このフレーズには聞き覚えがある。

「まさかまたこれを聞く事になるとはな……」

 どうやらSAOの悪夢は終わっていない。ALOで終わったと思っていたものがまだまだ残っていたようだ。俺も男女問わずに人気があるようで頭が痛くなる一方だ。これはもう一種の呪いかもしれない。永遠にこんな人生を送る運命なのかもしれない。冗談じゃない。

「どうやらキリト君は何かを知っているようだね?」

 菊岡が目を光らせる。普段は羊の皮を被っているが、こいつも狼側の人間だ。決してただのお人よしだとか昼行灯等と思ってはいけない。そうやった認識をしていて、身を滅ぼすのは俺自身だ。だからタメを作り、あまり出したくない名前を吐き出す。

「―――≪ラフィン・コフィン≫」

「……ラフィン・コフィンというと……」

「あぁ、SAOに存在した人殺し大歓迎のキチガイギルドだよ。とりあえず犯罪しようぜって感じの連中が集まった結果、取りあえず殺そうぜって感じのスローガン掲げてプレイヤーを殺しまわったサイコ集団だよ。殺すのが楽しければ殺されるのも楽しい。そんなサイコ集団だったから前線プレイヤーに連合を組まれて滅ぼされたんだけどな」

「報告では聞いていたけど、本当にSAOの中にはそんなものが……」

「菊岡サンが知らないだけでSAOの中は結構ひどかったぞ? システム的に売春を止めるものはなかったからお金の為に体を売るのもいれば、暗殺専門ギルドもあったし、犯罪者ギルドが率先してシステムの穴を突くようなPK方法を探して回ってた。茅場晶彦が願ったように、あそこはもう一つの現実世界だったよ。システムって縛りが存在してルールは存在した。それでも、アレは確かに否定のできない現実世界だった」

「いや、正直そんな事はどうでもいいからさっきの話を続けてくれないかな」

「おい。おい!」

 人が折角SAOの暗い現実を教えてやっているというのに、それをどうでもいいと片付けやがった。あぁ、なんだか脱力する……。

「はぁ……」

「で、そのラフィン・コフィンってギルドが使ってた決め台詞なのかい?」

「いや、違う。その言葉はラフコフのとある人物が良く好んで使ってた口癖みたいなもんなんだ」

「へぇ?」

 そう、その言葉はラフィン・コフィンにとっては特別の意味がある言葉でもあった。

「―――≪Poh≫」

「プー? なんというか……」

 菊岡の言葉の意味は解る。あまりにふざけた名前だ。英語表記でPoh、日本語表記でプー。名前はふざけているが、

「名前以上に中の人物がふざけている。多分SAOで非攻略組みのプレイヤーが死んだ一番の原因は、あの男が犯罪者ギルドを活性化させたからだと思う」

 アレは”悪”のカリスマとでもいうべき存在だ。元々心に影のある存在であればあの男を心地よく思う。そしてそのうちに心酔する。こと犯罪者に対しては、あの男は天性のカリスマを発揮する。指揮能力にも戦闘能力にも優れ、間違いなくプレイヤーとしてもトップクラスの実力者だった。

 今なら話は別だが、心意のなかったころにPohと戦って生きていられるか、俺にその自信はない。

「正直色んな意味で絶対に戦いたくない相手だな。戦闘力以前にアイツとあって平静でいられるかが怪しい。ラフコフは壊滅したけどアイツは討伐の時にはいなかった。確実に逃げてたんだけど―――あの時は会わなくて正解だったかもしれない」

 ナハトとジューダスのいたあの場に、Pohまでいたら絶望ってレベルじゃなかったかもしれない。

「へぇ、あの”黒の英雄”にそんな事を言わせるとはまた凄いやつだねー」

 パフェを食べるペースが少し落ちている。菊岡も誰が相手か、それが見えて来たらしい。

「あぁ、でもラフコフの討伐時、Pohの他に幹部が一人一緒に逃げているし、アインクラッド解放で黒鉄宮の中にぶっこんだラフコフ幹部も出てきているはずだ。あの二人は誰よりもPohに近いから真似の一つや二つはすると思うぞ」

 特にジョニーブラックに関してはPohに心酔し、その姿にリスペクトを抱いていた。

「ふむ、Pohか。うん。此方ではその方向で調べようか」

 此方では。

 菊岡は今、そう言った。あぁ、まあ、大体こうなる事は見えていた。もう大体こんな感じの流れだとは思ったさ。

「キリト君―――」

「―――ガンゲイル・オンランで確かめて来い、だろ?」

 半ばあきらめと共に言葉を放つと、菊岡は笑みを浮かべてくる。

「いやぁ! 話が通じるのはいいねぇ! キリト君が受けてくれなかったら困ったよ! はははは!」

 俺が今受けなかったとしても、受けざるを得ないような状況に持っていくサブプランを用意していただろう、こいつは。逃げ道をふさがれている以上絶対受けなくてはならない。それに、これは身から出た錆だ。元々ラフィン・コフィンがあの時、俺達の手によって完全に殲滅されていればこれ以上の死者は出なかったはずだ。

 書類によれば同じような死に方をした死者は数名。

 これが全てPohの仕業だとすれば、あの日Pohを逃がしてしまった俺に責任がある。

 SAOの悪夢はここで終わらせなければならない。

 いや、

 ―――ここで、終わらせるんだ。

 そう決意する。いい加減あの悪夢を、その残滓に世界を傷つけさせることは許さない、許せない。だがこれをするにあたって一つだけ問題がある。

「なあ、菊岡サン、俺に問題はないんだけど……」

「うん? どうしたんだい?」

「―――アスナにどう言い訳しよう……」

「あぁ……」

 それが最大の難関だった。
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| 断頭の剣鬼 | 11:42 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

とうとう来ましたね、GGO編。
黒円卓とジューダス達の戦いが早くみたいです!

| 通行人D | 2012/10/07 12:53 | URL |

今回はキリキリ君も強くなってるし
明広は既に天元突破してるし
ジューダス達も変化してそうだなあ

……スメル・オブ・ザ・バストに見えt

| | 2012/10/07 13:11 | URL |

このまま行けばまたふざけた現実の被害者(シノン)が仲間入りする訳ですね。
中尉の胃薬シーンはまだですか?
平和な中尉なんだ。苦労しr(

自分も上に同じく。
つまり乳のにお(

| Falandia | 2012/10/07 22:35 | URL | ≫ EDIT















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