陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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プロローグ ―――オータム・メモリーズ

推奨BGM:Mein Kampf


「あっ」

 ばきっ、と音を立てて手の中に握られている物が折れる。またやってしまったと思い、軽い溜息が口から洩れる。真っ二つに折れてしまった割り箸を握りつぶしながら近くのゴミ箱の中へと軽く放る。軽く投げた割りばしは放物線を描き見事ゴミ箱の中へ落ちる。見事シュートが成功したのを見届けると、台所の方へ顔を向ける。

「スグー、割りばし取ってくれー」

「またー?」

 テーブルの上には二つの皿がある。

 片方の更には豆が乗っており、もう片方の皿は空だ。その代りに大量の豆が皿の周りに落ちている。よく箸になれていない人にやらせる箸使いの練習だ。子供の頃はこれを何回もやって練習したものだが、今更箸の練習をしているわけではない。

 直葉が新たな割りばしを持ってきた。一本ではなく、数本だ。それを受けとり、

「サンキュ」


「別にいいけどさ……」

 直葉から視線を外し、割りばしに視線を注ぐ。力を入れすぎない様に、少しずつ割りばしを割ろうとして―――

「あっ」

 割りばしが音を立てて折れる。それも望んでいない方向に。また一本割り箸が無駄になってしまった。駄目になってしまったものをゴミ箱の中へと投げ入れ、次の割りばしを持ち上げる。

「むむむむ……」

 少しずつ、ゆっくりと、再び箸を割る。ゆっくりと力を込めて、無駄に急ぎ過ぎないのがコツだ。神経を集中し、戦うときよりも丁寧に力を込めてゆく。そして、

「うし! 割れた!」

 箸が割れた。快音と共に綺麗に真っ二つに割れた割りばしの姿に軽いエクスタシーを感じる。

「いや、お兄ちゃん。箸一つ割るのに一分もかけないでよ」

「そうは言ってもさ、これ、出来る様にならないと辛いし。いや、まあ、大雑把な事は出来るんだぜ? 物を持ち上げるとかさ。ただ細かい作業になった途端なぁ?」

 細かい作業となるとどうしても指の先に力が入ってしまう。

「それは解ってるんだけどさ……」

 そう言って一緒にゴミ箱の中を覗き込む。その中には先ほどの様に折れてしまったり変に割れた割りばしで溢れかえっていた。どれもこれも割るのに失敗した割り箸しの末路だ。地球の資源を浪費している事に関しては申し訳なく思うところもあるが、仕方がない話なのでスッパリと犠牲を受け入れてもらおう。

 しかし、

「これ見てると、改めて思う」

 直葉がそんな事を言う。

「アレ、全部現実だったんだね」

「だろうな……」

 アインクラッドもアルヴヘイムも、全部悪い夢だったら人生はどんなに楽だっただろう……。

 そう嘆いてしまうのも仕方がない話だが、なるべくそう思いたくもない。結局のところ、”俺”という自己は今までの行動を経て生まれてきた人格であり、一つでも違う出来事があれば今の俺はいないのだ。だから感謝はすれど、否定だけはしてはいけないのだ。過去を変える、そんな事は人間のできる範疇を超えている。人間が願っていい様な願いではないのだ。アスナとの関係良好は良好だし、明広や司狼に無理やり連れ去られ色々と凄い人生体験もできている。前者はいいが後者に関しては今すぐにでも投げ出したい。

「スグ」

「お兄ちゃん?」

「俺、幸せになる白い粉ってテレビや小説で見るだけの物だと思ってたよ……」

「怖いから絶対にその先は聞かないよ?」

「お金って怖いよなぁ」

「駄目! それ以上はヤバイから駄目! 何も言わないで!」

 実際は司狼が持っていたのをクラブで見せられただけの話しなのだが、それでも普通の人間には経験の出来ない事だと思う。だが最近は結構充実している。アスナとの恋愛事情以外の出来事としては、ALOの運営に何故か黒円卓が降臨し、雇われGMとして働く明広の姿が笑えたり、そんな明広にヘルプに呼ばれて軽いバイトをしたりなどがある。おかげでデートができるぐらいには懐が温かい。

「あっ」

「あーあ」

 再び箸を真っ二つに折ってしまった。これ、明広やラインハルトはどうやって慣れたのか非常に気になるところだ。折れた箸を捨てながら考える。

「―――アレからもう十か月か」

 窓の外を見れば木は枯れ、緑を見る事が出来ない。既に住宅街はハロウィーンを抜けだし、来るべきクリスマスに向けて少し早い飾り付けを始めている。まだ十二月にも入っていないのに既に飾り付けが始まっている辺り、人間という生き物は基本的にお祭りが好きだと思う。その人間の中には当然俺も含まれるわけで、

「クリスマスイベントどんなんだろうな?」

「うーん、どうなんだろうね。ALO今は明広さんたちが運営してるし。今年に入ってからのイベントはどれも楽しかったし、外れはないと思うよ。ハロウィーンもほら、色々とイベント用意されてたし」

 直葉に言われて終わったばかりのハロウィーンイベントを思い出す。ハロウィーンイベントの内容は数種類あった。カボチャをくりぬいてジャック・オ・ランタンを作るイベント、作ったジャック・オ・ランタンをハロウィーン限定アイテムと交換できるイベント、そしてアインクラッドのホラー階層に出現したお化け屋敷の探検系イベント。どれもステータスなどには関係なく遂行できるようになっていて、基本的に楽しめるようになっている仕様だった。

 だがお化け屋敷イベントに関しては設計したのがシュピーネで、人間心理学に基づく人間の恐怖の感じ方、これを徹底的に計算し、そして設計したため、寝オチならぬ失神オチという新種のログアウト方法を生み出す恐怖の館と化した。心臓の悪い人はお断り的な意味では非常に難易度が高かった。

「クリスマスかぁ……」

「まだ考えるの早いんじゃない?」

「もう周りを見ると飾り付けが始まってるから、嫌でも意識するって話しだよ」

「まあ、それは解るけどさ」

 窓の外、気の早い家は既にクリスマスデコレーションを終わらせている。

 ―――クリスマス、か。

 二年前、アインクラッドで迎える二度目のクリスマスは最悪だった。クリスマスの事を考えると何時もあの時の事を思い出してしまう。いや、忘れてはけないのだ。忘れない様にこうやって思い出しているんだ。今の俺という存在ができているその奇跡に、今までの出来事に感謝をしなければいけないのだろう……だが、素直に人の喪失を喜べるような破綻者になったつもりはない。

「お兄ちゃん?」

「ん? あ、ぼうっとしてた」

 何故だかもう練習を続ける気持ちにはなれない。あまり思い出したくない事を思い出して、テンションが少しダウンに入ってしまったのかもしれない。男のくせに妙な所で繊細だな、と自分の事を評価し、テーブルの上に落ちている、”潰れた”豆を拾い上げ、それ皿の上に置く。ダイニングに置いてある時計を確認すればもうすでに結構な時間が経っている。

「少し早いけど、俺もう行くよ」

 皿を二枚とも運び、無事な豆を袋の中へ、潰れたものをゴミ箱へと捨てる。こんなにもツルツル滑る豆が箸で握りつぶされる事態って一体何なんだろうな、と思いながら皿をシンクに置く。

「アレ? お兄ちゃん今日は用事あったの?」

「まあな」

 非常に不本意ながら、あわなくてはいけない人物がいるのだ。お世話になってしまった手前、その人物の頼みを断る事はこっちには出来ない。なるべくなら関わりたくな人種の人間だ。それはここ数ヶ月、敏感になった気配察知能力が訴えてくる事だ。

「どこへ行くの?」

 皿を置いたところで椅子に掛けておいたジャケットを取り、それに腕を通す。ポケットの中に鍵や財布があるのを確認し、バイクの鍵を取り出す。司狼のオススメで安く購入したガソリンタイプのバイクだが、やはりバイクとはあの五月蠅いエンジン音があって、そこで初めてバイクを名乗れるものだと思っている。

「銀座」

「え? お兄ちゃんが銀座?」

 なんだその一生縁がないと信じてたのを裏切られたって感じの顔は。

 直葉も直葉で、あの事件があってから結構変わった。今まではほとんど接点がなかった直葉だが、あの日以来結構ストレートに話すようになった。それは俺がALOで知っているリーファがそのまま現実に出てきたようで、同時に俺が見ていた直葉という少女が、それで全てじゃなかったと、少しだけ寂しさを感じる物だった。今まで家族を蔑ろにしすぎていたのかもしれないと、俺は思い始めた。

 世界はあの仮想世界だけじゃないんだ。

 この現実も、俺は大事にしないといけない。

「っと、じゃ、俺は行くから」

「うん、行ってらっしゃいお兄ちゃん」

 笑顔の妹に見送られ、家を出る。


                           ◆


 エンジンを鳴り響かせながら銀座の交差点で信号が赤から緑へと変わるのを待つ。近年はガソリンよりも電気式の自動車やバイクの方がスタイリッシュという風潮があって、特にここらへんになると走ってるのはほとんど電気式だ。何でも最近じゃあ政治家たちがガソリン式のを違法にしようって話になっている。確かに電気式は音が出ないから綺麗に走るのだが、そこにはロマンが足りないと思う。

 信号の色が変わり、バイクを再び走らせる。

 携帯電話に目的地までの地図が入っている。赤信号の間に確認したそれは目的が近い事を教えてくれている。止まっていた交差点からバイクを走らせて数分、目的の場所が見える。直ぐには止まらずに、そのまま回り込むように店の裏手へと行き、そこで駐車場を見つける。バイクをそこに止め、エンジンが切ってあるのを確認し、カギもちゃんと持ったことを確認してから、やっと店の中へと進む。

 正直、店の名前はあまり確認したくない。

 俺の様な小市民が来れるような店ではないからだ。

 時間よりも少し早く来てしまったが、さて、目的の人物はいるのだろうか―――。

 そんな事を思い店内に踏み入れた瞬間、

「おーい! こっちこっち! キリト君こっちだよ!」

「……す、すみません……」

 無言で此方を睨む入り口受付の店員に軽く誤り、大人げなく名前を叫んでくるスーツ姿の男の下へと行く。無言で怒りのオーラを出しているつもりだが、どうやらスーツ姿の男には通じないようだ。目の前の席に座る様に促してくる。

 認めよう。

 俺は、この男―――菊岡誠二郎が苦手だ。

 なんというか、気配があの水銀の王に少しだけ、ほんの少しだけ似ている部分がある。アレほどひどくはないが、どうも信頼しがたい雰囲気だ。

 菊岡は目の前に置いてあるパフェにスプーンをうめながら、

「さあ、さあ、好きなものを何でも頼んでくれ! 今日は僕のオゴリだからね!」

「国民の血税がこんなことに使われてるのかぁ……」

 パフェに使うぐらいだったらもう少しマシな事に使えないのだろうか。だがそんな皮肉が菊岡に通じるわけもなく、美味しそうにこの甘党の公務員はパフェを食べている。そう、公務員。特に電脳に関する局で働いている人間だ。正式な所属を思い出すのは面倒だから省くとして―――この男がSAO事件の際、SAOのプレイヤー達を収容する病院の手配をした男で、そして同時に、俺に明広やアスナの居る病院の場所を教えてくれた人物でもある。

 非常に否定したいところだが、この男は恩人だ。その事実だけはどうしようもなく、そしてそのせいで強く出る事ができない。

「ささ、好きなものを頼んでくれ」

「はぁ……」

 溜息を漏らす以外できる事はない。が、

「これから嫌な話をするから、せめて糖分でも摂取しないとやってられないよ?」

 なら、仕方がないか。

「すいません、ダージリンとスコーンお願いします」

 メニューで名前だけを確認し、オーダーする。

 値段など絶対に見ない。

 絶対に、値段など見たくはない。

「……来るんじゃなかったなあ……」

「あははは」

 笑うなよ。

 ともかく、この男に呼び出されたのだ―――ロクでもない事に違いない。そんな予感が俺にはあった。
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| 断頭の剣鬼 | 11:33 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

シュピーネさん何やってるんだw

| きのこる | 2012/10/06 12:04 | URL |

そのお化け屋敷きっと蜘蛛型モンスターいっぱいいるんだぜ。
しかもアンデッド蜘蛛とか水生蜘蛛とか無駄に種類も見た目もいっぱいで。

| | 2012/10/06 22:18 | URL |















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