陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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DAY7

 一回戦目はあっけない勝利で終わり、そして同時にショコラ少年は、この年齢としてはそこそこの使い手だと発覚した。つまり―――他の参加者も同じような実力である以上、俺に勝てる事はない、と確信した。

 そして来た二回戦、三回戦、四回戦に準決勝。

 大凡の予想取り誰も俺を止める事は出来なかった。

 トーナメント形式であるために勝ち進めば進むほど残る相手は強く、より訓練が施されている存在だ。だがそれでも所詮生まれてから七年も生きていない少年少女ばかりだ。中学入学から死ぬ寸前まで壮絶な人生を歩んできた俺のそれと比べると、あまりにも軽すぎる。拳が、それに宿る思いが、積み重ねてきた経験と年月が、あまりにも軽い。

 たとえ相手が紋章術という自分にない武器を駆使して来ても、それは”もう見た事がある”のだ。砲撃とか、斬撃とか、衝撃波とか、今更その程度で怖気づく事はない。どれもこれも既知の範囲内だ。と言ってもそれは昔の様な煩わしい感覚ではないが。とにかく茅場晶彦にはドッキリ系の魔法をたっぷり味わわされているし、黒円卓の人外秘儀も見飽きている。


 一撃二撃、その程度を食らう事があっても接戦など起きるわけもなく、余裕を残した状態で決勝戦へと来てしまった。もちろん途中で負ける気はないし、決勝で負けるつもりもなかった。だがあまりにも物事が調子よく進んでしまうと、どうしても運命の介入を思い浮かべてしまい、絶対に安心する事が出来ない。それは前の人生を考えれば当たり前の事で、今のところそんなご都合主義があったことは一度もないが、それでもどうしても疑ってしまう。

 そして、こうやって決勝の舞台に立った今、

 目の前に立っているのがビオレだという事を考えると……やはり運命の介入があったのではないかと疑ってしまう。

「決勝で会うことになりましたね」

「そうですねー……」

 今までの対戦相手が全員男だったから気兼ねなく殴り飛ばしてきたが、いきなり女となると若干躊躇……する事もないな。あぁ、遠慮する理由なんてない。そう言えばフェミニスト何て生物とは無縁だった。あぁ、問題なく殴り飛ばせる。

 当面の最大の問題が解決できたところで、

「しかし不幸ですねぇ」

「そうですか?」

「えぇ、まぁ、俺と当たったという事は必然的に負けるって事だから、ね」

 決勝戦となる舞台の上でそんな事を言うと会話がマイクに拾われていたのか、観客達が大いに騒ぎ、そして楽しそうな声を上げる。

『さぁ、此方解説席! サイアス君がビオレ嬢に早速言葉のブローを叩き込みましたよ! いやぁ、しかし言葉のキレは拳ほどはありませんね。女の子の口説き方を知らないんでしょうか』

 俺のアナウンサーに対する怒りのボルテージは既に限界へと達しつつある。あのアナウンサーは何故こうも俺を狙うのだろうか。いや、そんな事はどうでもいい。重要なのはこれが終わった瞬間俺がアナウンサーを殺しにかかる時間があるかどうかだ。それが今、一番大事な事だ。

「そんな事はありませんよ」

 と、ビオレが反論してくる。どうしてかと問う前に、

「―――勝つのは私になるでしょうから」

『おっとぉ! これはビオレ嬢も中々強い言葉! 両者ともいい戦意が漲っていますね!』

『そうですね、今までの戦いを見るに今年は優秀な子が揃っていますが、その中でもビオレちゃんとサイアス君はレベルが違いますね。サイアス君は所持していないから仕方ありませんが、ビオレちゃんもここに来るまで紋章術を一度も使っていません。紋章を所持している事は確認済みですから、サイアス君がそれを出すに足る人物か、とても楽しみですね』

『では、予想としてはどちらの方が有利だと思いでしょうか?』

『そうですね……』

 何時になく解説らしい解説席。騎士の男も真剣に考える様な仕草を取り、その姿をビオレと共に眺め―――

『―――やはり、ここは輝力を使って戦うことのできるビオレちゃん、ではないかと思いますね。基本的に輝力のあるないは素の身体能力への影響が大きいです。おそらく単純な腕相撲でもすればサイアス君は確実に負けるでしょう。真に驚くべきはサイアス君の身体能力をものともしないあの技術です。ですがそれも、心技体が高いレベルで揃っているビオレちゃんが相手となりますと……』

『なるほど、では、本当にそうなるのでしょうか?』

 へぇ……。

 自然と口の端が吊り上るのを自覚する。なるほど、そこに悪意はないが―――第三者にはそんな風に判断されるか。なるほど。

 ―――ならば。

『おや?』

 構える。

 今までの様な我流のそれではなく、何度も実践で猛威を振るうところを見た、ちゃんとした型にはまった構え。我流での構えもちゃんとした物には違いない構えだ。だが此方はちゃんと”教わって”得た、戦闘のための技術。

『―――これは面白い事になってきましたね』

『あの構え、格闘技の構えですね。今まで武に通ずるところを見せてきましたが、構えだけはデタラメな物でした。これはどうなるか解らなくなってきました。今までのが本気ではなく、まだまだ余裕を残したものだと仮定すれば―――』

「―――さて、全力の套路を見せて上げましょうか」

「よろしくお願いします―――私も全力にてお相手します」

 戦意を振り絞り、ビオレが構えるのが見える。彼女は得物として短剣を装備している。その事を脳内に留めておき、自らも戦意を滾らせ、それを己の内に溜め込んでゆく。殺意は論外、輝力を紋章なしで練る様な器用さもない。だから純粋に戦意と覇気を滾らせ、

『さあ、どうやら二人の方は準備が整いました!』

『とてもですが従騎士候補の雰囲気ではないですね。本当に今年の受験者は優秀ですね。入学してからが楽しみです』

『もはや入学は決定済みの様ですが、この一戦で主席を決定してしまいましょう! 両者、準備はいいですか?』

 構えには一部の揺らぎもない―――その年齢でそこまで行ける実力には、少しだけ嫉妬してしまいそうになる。こんな平和な世界で、それだけの才能が俺にも最初からあれば―――。

『最終試合、決勝戦! それでは―――初め!』

 開始の声が響くのと同時に踏み込む。

 踏み込み、

 ―――ビオレの前に姿を現す。

「なっ!?」

『サイアス攻め込んだー! 防御もせずに踏み込んだサイアス、ビオレの反撃が怖くないか!?』

 解説席からはそう見えるだろう。しかしビオレは違う。彼女には対応できないし、一瞬で現れたようにしか見えない。少々卑怯だが、

 意識の合間を縫った。

 呼吸と呼吸の間、瞬きと瞬きの間、一瞬だけ人間が意識しない無意識。卑怯かもしれないが、会話は既に控室とここで何度も行っている。それは呼吸を把握するには十分すぎる時間だ。この構えからは短く、素早く、そして精確な一撃を繰り出せる。故に拳を掠らせるように顎に当てる。

「あっ……」

 声が漏れるのと同時にビオレの脳が揺さぶられ、その体が後ろへ数歩倒れそうに進み、

 俺は溜め込んでいた覇気と戦意を拳に乗せて叩きつける。

 サイアス式必勝術。

 自分よりも有利な状況、道具、もしくは攻撃手段を相手が有している場合どうやって倒せばいいのか。それは実に簡単な話だ。

「―――実力を出し切る前に潰す」

「しま―――」

 遅い。

「陀羅尼孔雀王ォ―――!」

 容赦なくビオレの胸に全力で必殺の拳を打ち込む。これが通じないのであれば更にビオレの動きを止めつつ次の一撃を打ち込む必要があるが、それは杞憂だった。

 ぼん、と音を立ててビオレがけものだまになる。

 瞬間、俺の学費免除が決定した。

『しょ、勝者サイアス! なんと一切攻撃の機会を与えずに勝利しました!! しかも容赦なく一撃で倒すだけの威力の拳を女の子に! こいつ許せない!』

「許せねぇのはお前の方だ!! 首洗って待ってろアナウンサー!! お前絶対に泣かせてやる!」

 けものだまになったビオレがにゃあにゃあ泣きながら舞台の上で跳ねている。その姿に軽く和まされつつ、観客の爆発するような声援に応えるべく、

 右腕を空に突き出す。

『何はともあれ、これにて入学試験を終了いたします! 見事優勝したサイアス君は文句なしで主席入学、学費免除にての入学権が与えられます!』

「学費免除ぉぉぉおおおおお!!!」

『相当貧乏な家から来たんでしょうか……今の叫び声で泣けてきますね。やはり奨学金制度は導入して正解だったと、この喜びようを見ればわかりますね』

「奨学金制度万歳!!」

 腕を上げて叫ぶと同じように観客が万歳と叫んでくる。

 ……悪くない国だと思う、ここ、ガレットは。
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| 短編 | 22:54 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

アスアス学費免除喜びすぎwww
いや学校通う身…というか奨学金とか将来返さなきゃいけない私としては大いに理解できるけどもw
戦いの後だからテンションがおかしいことになってるのかなあ。

| ろくぞー | 2012/10/03 23:10 | URL |

アスアス殺し愛夫婦の技術両方修得してますよww

| 神無月 | 2012/10/03 23:20 | URL | ≫ EDIT

学費免除万歳!

| 雑食性 | 2012/10/04 20:25 | URL |















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