陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

IF外伝 境ホラ11

 空が白い。

 武蔵の住民なら口に出さなくても解る。ステルス航行の為の障壁だ。これがかかっている内は武蔵は周りから攻撃を受ける事はない、出来ないのだ。今の所同じだけのステルス技術を所有している国はほぼないとも言えるレベルなのだ。武装解除されている武蔵は武装を所有していない代わりにその防護は凄まじいものとなっている。

 まあ、それぐらいは武蔵での基本的な知識だ。自慢するほどではない。長く武蔵で暮らしていれば嫌でも知ってしまう知識。だから今はもう慣れてしまったこの白い空に関する意見は捨て、手の中に握られている湯飲みに口を付ける。新しい茶葉を使用した物なのか味が若干違う。あえて言うのなら、前よりも味がスッキリしているのか?

 まあ、その道のプロでもないので、

「美味しいですね」

「うん。美味しいねぇ」

 酒井学長と二人で並び、お茶を美味しいと評す。結局この学長も学長で不味いか美味いとしか言葉を出す事が出来ない。そこらへんは非常に似ていると思う。いや、私生活がだらしなく怠惰であることも結構似ている。こういう大人になってはいけないのだろうが、今のこれは仕事だ。だから問題はないはずだ。


 しかし、その返答に”武蔵”―――武蔵の統括自動人形である彼女は不満そうな気配を見せてくる。

「正直、酒井様も明広様も美味しいとしか仰って頂けませんので、あまり参考になりませんね。―――以上」

「まあ、俺達そこまで舌が肥えているわけでもないしね? 評論家みたいな意見を求められてもしょうがないよね?」

 そこで酒井学長が同意を求めて視線を送ってくる。

「そうですねー。今回のは前回と比べてちょっとスッキリする感じでした。個人的な趣味としては此方の方が好ましいでしょうか。実にいいお茶です」

「うわ、顔を見てから裏切ったよ」

「Jud.ありがとうございます。これで酒井様が無能であるというデータが更に集まりました。―――以上」

「やったね酒井様! データが増えましたよ!」

「君、いい空気吸ってるよね。特に最近」

 酒井の言葉に苦笑し白い空を見る。ステルス障壁の展開時間は今まで以上に長くなっている。それはもちろん、今の武蔵の情勢を反映した結果、こうなったのだ。今の武蔵は戦争状態に入っており、特にK.P.A.Italiaと三征西班牙との関係は先の一戦の事もあり、あまりいい状況とは言えない。ステルスを解除したら此方を特定し、襲い掛かってこないともいえない。故に戦いを回避するために武蔵はステルスをなるべく維持し、そして航路マーカーを打ち出すためだけにステルスを解除している。

 だから、まあ、頬を掻き、少し言い辛いため口籠ってから、

「―――……二代ちゃん、俺以上に部隊の指揮とかできる子でして、仕事奪われました」

 可哀想な者を見る目を向けられた。


                           ◆


 三河で合流を果たした、と言っていいのかは不明だが、とにかく本多という少女は予想外に多才で、部隊の調練や指揮などができる人間だった。自分もできなくはないが、直接本多・忠勝から薫陶を受けている本多家の長女と比べられるとやはりクオリティではこっちの方が劣る。

「直接殴ったり斬ったりする方で負ける気はしないんですけどねー。皆も女の子に指示されている方が嬉しいそうで、命令される度にビクンビクン体を震わせながら心を一つにしてますよ。アイツ等そんなに俺の指示に従うのが嫌なのか」

「そこらへんダっちゃんと似なくて良かったところなのかなあ……むしろ君の方がそういう所にてるよね―――特攻隊長っぽい所」

 なんだったか、確か酒井の話によると、忠勝は特攻して、敵を単身で蹂躙しながら突撃と命令してたのだったか。ああ、確かに自分のタイプと同じだと判断する。細かい指示を考えるのが面倒なタイプで、本当に必要な時以外は雑になるやつだ。

 あんまり嬉しくない……。

 湯飲みの中を覗き込んでも茶柱は立っていない。立たないようなタイプの茶だからここら辺は仕方がない。少し残念に思いながらも茶を口に運ぶ。

 こうやって、酒井の周りで茶を飲んでいるのが自分の今の仕事だ。

 戦争が始まり、それで武蔵が活性化。そして、いろんなところで戦争の準備が始まっている。相変わらず校則法を遵守している事で武蔵は不利益を得ているが、聖連はまだ存在するしK.P.A.Italiaも監視の目を鋭く光らせている。ここで堂々と校則法を破ってしまえば更に目をつけられ、圧力が強くなるだろう。そのため校則法に引っかからない程度に武蔵は色々やっている。

 その最たるが部隊の調練だろ。

 三河で武蔵に合流した三河警護隊は、三河が消滅し、その存在が武蔵へと組み込まれたことによって武蔵とホライゾンの警護隊に近いものとなった。それなのに名称が三河警護隊のままなのは今後の為だ。そして三河警護隊と武蔵の学生部隊、この二つで連携を取れるように今調整や訓練を指揮しているのが、二代だ。本来なら俺がやるべき事なのだが、

「うーん」

「どうしたのでしょうか。明広様が思い悩むとは中々珍しい事だと判断します。―――以上」

「いえ、色々手を出して納めてきましたが、まだまだ未熟ですねー、と再痛感している所でして。もうチョイ的を絞るべきだったかな、と」

「君、資格を取る感じで手を出してたもんね」

「ものすげぇ俗っぽい答え」

 このくたびれたオッサンにしか見えない人物が、過去にグランヘッドと呼ばれた酒井・忠次の現在の姿。時間とは実に嘆かわしい結果を生むものである。これが昔にはK.P.A.Italiaと何日も戦い続けたうえで策を弄して勝利した風には見えない。

「君、何か失礼な事を考えていない」

 酒井の疑問にいえいえ、と作り笑いを浮かべて対応すると、その時、

 空が割れた。

 白一色の空は割れ、青空が一面に広がる。奥多摩からはそれだけではなく、武蔵野左右に広がる海までもが見える。武蔵が推進のために生み出す流体の海と、そして本当の海。太陽が波に反射しキラキラと光る様子は、中々飽きをこさせない。しかしステルスの解除と言うことは、

「もうそろそろマーカーポイントですか」

 その言葉に応えたのは”武蔵”だった。

「Jud.聖連に対して”我々はこの航路を通っている”と示す、今までと同じ事ですね。ただ今までのマーカー打ち出し作業と比べるとステルス障壁の解除がやや遅いです。―――以上」

「普通に襲撃を警戒してるからね。ステルス解除した時に攻撃でもされたら面倒なものだよ―――武蔵と戦う予定の国は今頃ステルス対策してるんじゃないかなぁ」

 武蔵と相対する予定の国―――主に大罪武装を所持する国の事だろう。K.P.A.Italiaは奪えなかったために後々もう一度だし、、三征西班牙ももう片方を奪還する必要がある。あとは英国、六護式仏蘭西、M.H.R.R.、上杉露西亜という所だろう。まだまだ回る場所も敵も多いものだと思う。

 顔の横に表示枠が出現し、同時に他にも数個出現する。点蔵、ネイト、そしてマルゴットにマルガだ。この共通点は全員が本日の見張りの担当だという事で、

「ちーっす」

『嫌に挨拶が軽いですわね……ってお茶を飲んでますのね』

「仕事。全部。二代。Take」

『何故単語でしかも最後だけ英語で御座るか!?』

「だからお前には金髪巨乳嫁が出来ねぇんだよ」

『ひ、酷い! しかも本当に金髪巨乳嫁を持っている相手だと説得力違うで御座る!』

『馬鹿話はそこまでにするわよー』

 マルガによってポーズが入る。点蔵はいいリアクションをくれるから遊んでいてなかなかに飽きが来ない、いいおもちゃだと思っている。だがさて、

『こちらに敵の姿はないで御座るな』

『左舷なし』

『右舷もないよー』

「奥多摩から見える範囲もねぇな」

『此方もありませんわね。では”武蔵”、航路マーカーの射出の方をよろしくお願いしますわ』

「Jud.お任せくださいませ。―――以上」

 ”武蔵”の目が少しだけだが、情報を整理する自動人形特有の光を持ち、即座に元の普通の目に戻る。そこで一礼し、

「此方”武蔵”。全艦に告げます。これより聖連に対する位置の証明の為に、航路マーカーの射出を行います。航路マーカーを射出後、武蔵は再びステルス航行へと戻り、引き続き英国へと航路を―――」

 市民向けに”武蔵”が説明等を進める中で、”武蔵”の邪魔にならない様に表示枠を引き寄せながらその向こうの人物たちを見る。

『次の行先は英国ですわね』

 そう、俺達の向う場所は英国だ。


                           ◆


 英国も中々に厄介な国だとは思う。三征西班牙の保有する超祝福艦隊との勝負を控えているし、メアリ・スチュアートの処刑も近いとの話だった。処刑と言われるとどうも親近感がわいてしまうが、今はそれを忘れ、

「英国かぁ、困ったな」

『何か英国には不都合でもあるので御座るか?』

「いや、今の情勢だとゆっくりと英国文化を楽しむ暇がなさそうだなって嘆いているだけ。こんな時代じゃなければオックスフォード教導院を見たり、英国料理を楽しんだり、まあ、色々とやれることはあったんだろうがなぁ……あ、別に愚痴ってるわけじゃないからな? 今の俺の人生って最高に輝いているし」

『むしろたまに輝きすぎて私達迷惑なんですけど』

 それは酷い。俺だって頑張って短い人生を全力で謳歌しているだけなのにこの仕打ちとは。しかしまあ、

『英国は現在、色々と問題を抱えている国で御座るからなあ』

『選択肢がないとはいえ、あまりいい時期ではないわね。運動会とか消化しなきゃいけない時期だし、英国に行ったら”内政干渉はお断り”って言われて入国拒否もありえるわよ』

 マルガの言うとおりだ。事実現状、それが一番怖い。入国拒否されたら武蔵が取れる行動は少ない。一つは正純の説得、二つは政治的な決着、三つ目は強硬手段。ついでに言えば英国に到着して英国といい関係を示す事が出来ても、英国は聖連加盟国だ。英国と手を組むにしたって一度は英国と戦闘をしておく必要がある。そうでなければ英国は、聖連に対する言い訳が出来ない。

「どうあっても戦闘は回避できないんだよなぁ」

 非常に面倒な事態だと思う。

『あら、貴方ってもっとバーサーカータイプだと思ってたんだけど違うの? ほら、酷い首フェチだし』

 首フェチじゃない、といってももう数百回繰り返された議論なのでマルガの言葉を半分スルーしつつ、

「だって平和の中でマリィと一緒に居られればそれだけで俺幸せだし」

『はいはいはい』

「なんだろう……俺……副長なのに……なんだろうこのぞんざいな扱いは……なあ、お前もどうなんだよ点蔵」

『そこで自分を仲間の様に引き込まないでほしいで御座るよ! 自分そこまで扱い酷くないで御座るよ!』

『そうよね―――犬臭いだけで』

『……』

 点蔵が黙った。顔が見えない代わりに帽子が色々と感情表現しているが、仕組みは一体どうなっているのだろうか。一度点蔵を抜いた全員で話し合った結果、点蔵ではなく帽子が本体だという結論にたどり着いたが、何時かあの帽子をはぎ取って調べる必要があるのかもしれない。

 しかしステルス障壁が解かれて、海が見え、塩の匂いも感じられるようになって―――

「―――ネイト」

『はい?』

「お前、何か匂いを感じないか?」

 それは海の塩の匂い以外に僅かにだが、鼻を刺激するような匂いが混じっていた。それが何の匂いかは自分には判別がつかないが、確かに感じられる。どこかで嗅いだことのあるこの匂いは―――

『―――油の匂いですわ。機械に使うような!』

 ネイトの言葉を聞いて表示枠を増やし、緩んでいた気を誰もが一瞬で引き締める。マルガとマルゴットのどちらもが警戒態勢に入り、

『―――敵襲ですわ!』

 ネイトの言葉が聞こえるのと同時に空から空間を破る様に姿を現すものがある。

 船だ。

 三征西班牙の船だ。

 広げた表示枠を通し素早く指示を飛ばす。

「魔女は後輩達纏めて牽制頼む! ネイトは二代と合流して迎撃に回ってくれ! 二代、聞こえるな? そっちにネイト行くから頼む。えーと、メガネ! おい、メガネ!」

『もう艦橋に向かってる!』

 表示枠の中で走っている姿のネシンバラが見える。戦闘に関する作戦とかはこの男に任せ、部隊の動きに関しては二代に丸投げする。他の連中も点蔵を通して状況を知っているはずだ。

「”武蔵”さん、避難勧告をお願いします」

「Jud.お任せくださいませ。―――以上」

「頑張りたまえ若人。俺こっから茶飲んで見守ってるから」

 働けよ、と叫びたい衝動を抑え込みつつ、トーリとホライゾンの居場所を確認し、正純が動き出す事を確認する。そうだ、敵は武蔵を落としに来ているのだ。既に大罪武装を一個奪い取ってメンツは潰しているのだ、ステルス障壁が切れた瞬間に勝負を仕掛けてくるのは見えていた。

「怠慢だな」

 自嘲しつつ表示枠を通して状況を把握し、

「行ってきます!」

「適当にがんばんな」

「行ってらっしゃいませ。―――以上」

 軽い跳躍で空へと跳び上がる。表示枠を複数出現させ状況を把握しながら三征西班牙の船に目を向ければ、既に部隊の降下準備が整っているのが見える。得物を取り出し、体が落下するのを感じながら叫ぶ。

「―――総員戦闘用意!」

『Jud.!』

 武蔵が迎える第二戦―――三征西班牙による攻撃が始まった。
スポンサーサイト

| 短編 | 09:57 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

むむっ、境ホラ更新ですかー
前回の更新で二代参戦してサイアスさらにいらない子にw

| 水無月 | 2012/10/03 17:44 | URL |

まぁサイアスさんの指示って「ガンガンいこうぜ(首置いてけ的に)」がメインだろうしなぁ・・・

| 雑食性 | 2012/10/04 20:20 | URL |















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://tenzodogeza.blog.fc2.com/tb.php/200-b8f1e4fd

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。