陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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境界線上の写本保持者 序章 日常

 日が少しずつ落ち始める夕方、そこには三百に届く集団が武器を持って戦っていた。

「第五、第六、第七部隊―――弓兵掃射」

 表示枠(サインフレーム)を通して出す命令を手足となって働く部下達が忠実に従う。魚鱗の陣の背後で弓を持つ三つの部隊が前方の空へと向けて弦を引き、そして弓を放つ。魚鱗の陣で防御を固める三河警護隊総勢三百名のうち百五十名で構成されているそのチームは勝利の為に命令に対して一切の疑いを持つ事はない。


『術式防御を起動! 確実に弓を防いで進攻する! 槍兵構え! 進むで御座る!』

 対応する声が演習場となっている地の反対側から聞こえてくる。表示枠を通して聞こえる女武者の支持が聞こえてくる。車懸りの陣で対抗する女武者は前線の防御を術による防御と受け流しによって進め、その横に配置している槍兵へと素早く回転させる事で攻撃と防御の入れ替えを素早くしている。ならば此方がとる行動とは車懸りの陣のローテーションを崩す事だ。

「全部隊弓兵掃射! 第五から第七まで広がれ! 変えるぞ!」

魚鱗の最後尾の部隊が広がりを見せる。弓で敵の動きを制限しながら広がって雪、その陣はもっと攻撃的な姿に変える。つまり戦国でも一二を争う人気を持ってた陣形、鶴翼の陣だ。

「第一から第三まで敵を引き込め! 第五から第七は弓を捨てて近接戦闘用意!」

『勝利の時は近い! 相手が引き込もうとするのを利用してそのまま押し切るで御座る! 確実に受け止めて反撃しろ!』

 此方の陣形が鶴翼になる中で、それに対応する様に偃月の陣に女武者の陣形が変わる。互いに大将は戦闘に参加できないというルールのため、戦闘の進みは遅い。だから純粋に部隊運用の技術的差がここでは出てくる。だからこそ偃月で対応するのは悪手だ。

「偃月の陣は複数方向からの攻撃を行える場合にしようするべきです。鶴翼の陣に対して偃月の陣で対抗すれば―――」

 偃月の陣と鶴翼の陣が合致するように接触する。前線は槍と槍、そして刀と刀がぶつかり合う戦場となっている。どれも模擬戦用の物だが、それでも一定量以上命中すれば電流が流れて強制的に失神させる仕様となっている。そして偃月の陣を包囲するように鶴翼は動き出し、そう時間はかからずに偃月の陣が丸く固まり、鶴翼の陣に完全に包囲される。そこから矢継ぎ早に指示を女武者が飛ばすが、それが意味を出す事無く包囲された部隊は次々と落ちてゆく。

 数分後には勝者と敗者が別れていた。

「そこまで! 立てる人は立って大丈夫か確認してください。失神してる人は起こすか介抱をお願いします! それでは本日の演習はここまでです! 二日後には武蔵、そして教皇総長(パパ・スコウラ)が来ます。明日は当番以外の人は休みなので各自体調管理を徹底してくださーい!」

 表示枠で敗戦の将の方に通神を繋げる。どこか悔しそうな顔の女武者が表示枠には移っている。

『それでは本日はここまでとするで御座る。やる事やったら解散』

「Jud.!」

 演習場に響き渡る隊員達の声にその日の演習は終了した。やっと終わった大規模演習に肩からやっと力を抜く事ができ、安堵の息を口から漏らす。

 ……三河警護隊のトップ二人が二人揃って部隊指揮が苦手ってどうなんでしょうね。

 後方指揮タイプの人間はやっぱり重要な人材なのかもしれないな、などと考えていると表示枠を通して此方へと届く声がする。

『竜馬』

 表示枠は女武者が映るものだった。思考を一旦放棄し、視線を表示枠へと向ける。

「二代さん」

『お疲れ様、次は負けぬで御座るよ』

「俺も、二代さんに勝てる分野では負けたくないですから、そう簡単に負けるわけには行きませんよ」

 苦笑しながら答えていると女武者本多・二代が演習場のグラウンドを横切ってくるのが解る。途中通り過ぎる二代に対して隊員が片手を上げて挨拶したり、失敗を反省するのが見えるのは、やはり歳が近いことからだろう。三河も、武蔵と同じ年齢制限のかけられた国だ。トップであり国主である松平・元信公と、彼の側近であり重臣である松平四天王が十八歳を超えておりながら総長連合、生徒会に所属していられるのは単に聖連による温情でしかない。いや、温情ですらない。なぜならば三河は大罪武装を作り上げ、それを献上する必要があったからだ。

 二日後もそうだ。二日後にやってくる教皇総長は三河に新しい大罪武装の作成と引渡しの要求に来ているはずだ。一つだけでも驚異的な破壊力と戦略性を持っているのに、それを二つも欲しがるとは貪欲としか言いようがない。それに大罪武装の作成には地脈炉が必要となる。地脈炉はその性能ゆえにその周囲で怪異を発生させやすい。

 つまり、三河の現状は多くの犠牲と共に成り立っているのだ。

「竜馬」

「どうも、二代さん」

 近づいてきた二代に片手を上げる事で挨拶とする。肩の上の走狗が対抗心を燃やして存在を主張するように髪を軽く掴む。忘れてるはずはないと、教えるために軽く頭を撫でる。

「二代さんはこの後どうなってます?」

「拙者はこの後父上に稽古をつけてもらうために家に帰るで御座る」

「でしたか」

 ……となると、帰りは一緒には無理だな。

「今日明日は夜の警邏にでないといけませんので」

「Jud.家で待っているに御座る」

「いえ、先に寝てしまったも構いませんよ、どうせ戻るのは明るくなってからでしょうし」

「拙者が」

 二代が笑顔を向けてくる。

「待ちたいので御座るよ」

 その笑顔が眩しくて、好きになった日のその笑顔から全く変わらないのが嬉しくて、恥ずかしくて、照れて空に顔を向ける。

「え、えーと、そ、それじゃあ……お願いします」

「Jud.」

 勝ち誇った顔をする二代と照れている自分の様子を見て、

「おい、また隊長相手にヘタれてるぞ」

「仕方がないだろ」

「別に隊長って恐妻でも何でもないんだけどなぁ……若干脳筋だけど良妻カテゴリだと俺思うんだが」

「アレは副体長がヘタレなだけよ」

「あぁ、なるほど」

「……」

 なんだか直ぐ傍でボロクソ言われているようだが言い返せる事ではないし黙って受け入れる事とする。溜息を吐き出しながら演習場の出口へと向かう二代を見送っていると、その姿が止り、振り返る。

「竜馬」

「二代さん?」

 名前を呼ばれたので聞き返す。と、

「拙者、竜馬の格好の良いところを十分に知っている故、あまり気にする必要はないと思うで御座るよ」

「二代さーん!」

 そう言って貰えるのは嬉しい、嬉しいのだが―――

「っけ」

「っかっぺ」

「クソ、嫁持ちはこれだから」

「釘……釘と藁人形……」

 ―――正直人前でやらないほうが寿命のためになる……!

 それでも嬉しいので、手を振って愛を叫ぶ。


                   ●


 場所は変わり三河の旧市街、名古屋城のお膝元。時は進み暗くなった旧市街からは全く人の気配が感じられない。その理由は単純明快であり、

「”人払い”か……」

 隊員の一人がそう呟く。

 ”人払い”、それは松平・元信が行った事の一つ。襲名者を自動人形に移し、自らの周囲から人を遠ざけた事だ。もちろんそれだけで旧市街から人がいなくなるわけではないが、それが大罪武装の作成のための地脈炉と重なり、怪異の出現による殺人、神隠し。怪異に耐え切れなかった人たちはどんどん三河の郊外へ居を移す―――そういう事を一つの流れとして”人払い”とも言う。基本t系には襲名者の”人払い”としては認識されているが、状況をわきまえるか三河の人間であれば通じる話しだ。

 周りを見て確認する隊員の数は少ない。全部で住人ほどしかいないのは厳選しているのも一つの理由だがもう一つに純粋に必要とする能力の所持者がいないから、と言う事もある。

「正直警護隊に三百人もいて熱田神社の術を使えるのがこれだけってすっごい不安なんですが」

 それを聞いて苦笑する人間がいる。

「基本的に熱田神社って戦争向けの術が多いですからね」

 それ以上言う必要はない。

 武蔵と三河に武力は期待されていない。そもそも武装させてはならない。いくつか条件の下で武器の所持や訓練が許されているのであって、戦科授業は禁止されている。この国の防備は聖連加盟国に任せられており、戦争に巻き込まれる事は一切ないというシナリオになっているのだ。故に、戦闘用の術式はあっても戦争用の術を持っている人間は限りなく少なく、貴重だ。

 昨今、三河を悩ませる怪異は酷くなってきている。旧市街を歩けば血の跡や悲鳴なんて良く聞こえてくる。酔っ払いが迷い込めば確実に神隠しに会う。怪異の巣とも言っていい常態に現在の三河はなっている。そして怪異はここ数年、その歪みを大きくしている。数年前ならば小規模の術式でも問題はなかったが、

「えーとそれでは皆さん”城壁級”の術式を持ってきてますか?」

 城壁級。それこそ篭城戦すら考慮するほどの堅牢さを持つ術式だ。とてもだが歪みや怪異相手に持ち出すようなレベルの術ではない。

「Jud.」

 隊員達が表示枠を表示させる。それを確認して頷き、

「エセルお願い」

「Jud.熱田神社の流体槽へ皆様を一時的に繋げます感謝しやがりなさいませ」

 無礼なのかそうではないのか判断に難しい事を言うエセルドレーダだが、既にその他人向けの態度は知られ、納得されている。一瞬で熱田神社へ許可を申請受理されるとプールされている流体と術式を繋ぐ。これによりこれから使う術は全て神社に溜めてある流体の消費で済ませられる。そして神社に溜めてある流体とは膨大だ。

 エセルドレーダが仕事をした事を確認し、頷く。

「それでは三組、三組、四組ってグループに分かれましょうか。何時もやってるので解ってると思いますけどここら辺は完全に撤退が完了しています。俺達の仕事はこれ以上怪異を三河市外へと寄せ付けない事と、旧市街に封じ込める事です。人払いも済ませてあるので人影を見たらそれは確実に酔っ払った忠勝様か怪異です。容赦なく攻撃しましょう。なるべく一人にならない様に気をつけましょう」

「Jud.」

 揃って帰ってくる声は慣れたものだ。少し前は毎週、最近は毎日繰り返しもすれば嫌でも慣れるか、等と思いながら手を振る。

「はい、それでは教皇総長に痛い所を刺されたくないので今日明日は貫徹のつもりで頑張りましょう」

 開始の許可を貰ってグループに分かれた隊員たちが去って行く。

「エロゲの攻略はしばらくお預けかあ……楽しみにしてたんだがなあ」

「俺も御神体の胸を削る作業があるんだけど」

「お前ら案外暇だな。いや、俺もエロ草子書くので忙しいんだけど」

「何で男子組はああも駄目なのかしら」

 そう言うお前は腐った女の筆頭だろう。

 くだらない事を言っているが、ほうっておいても大丈夫な事は今までの経験が教えてくれている。だからグループ分けされた隊員たちに背を向けて比較的危険なエリア、つまりは新名古屋城の方へと向かう。

 持ち上げる片手にはどこからともなく一冊の本が現れる。

「さて、今日も今日とて怪異を狩りますか」

「Jud.マスターと友であればダンウィッチの怪ですら恐れるに足らず」

「今日もSAN値を確かめながら進むかぁ」

 こうやって、また一日が終わる。
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| 境界線上の写本保持者 | 20:23 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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| | 2012/07/20 20:35 | |















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