陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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未来 ―――ハピリー・エヴァー・アフター

推奨BGM:Omnia vincit Amor


 超大型VRMMORPG≪アルヴヘイム・オンライン≫で発生した一連の事件はかなり有名になっていた。SAOから始まる一連の流れを汲んだこの事件は、俗に≪ALO事件≫と呼ばれる事となる。その始まりはレクト・プログレスのフルダイブ研究部門の主任、須郷伸之が死体として発見される事から始まる。

 とある街の病院の近く、須郷の物と思われる死体が発見される。それが”思われる”等と言われる理由は、その死体が本人なのかかなり判断しづらい状態にあったからだ。簡単に言えばバラバラ、少し細かく言えば体が砕けていた。

 常識ではありえない死にざまだ。

 肉や血は結晶化して崩れ落ちて、体は所々で固まっていたのだ。それだけではない。須郷の死体は一部の臓器が紛失していた。それも凶器で引き抜かれたような跡はなく、綺麗に消え去ったかのような痕であったらしい。須郷の死にはあまりにも不審な点が多すぎるらしく、銃を所持していた経歴、砕け散った体、そして消えた内臓に怪現象の体。その全てを解明するために警察は尽力する、というのがALO事件の始まりだった。


 須郷の死が発生するのと同時にレクト・プログレスにガサ入れが入る。もちろん須郷がいなくなったレクト・プログレスに国家権力を言いくるめるだけの力はなく、レクト・プログレス、いや、アルヴヘイム・オンラインのサーバーにアインクラッドの未帰還者達が多数取り残されている事が発見され、違法研究が繰り広げられている事も発見された。研究内容はペインジェネレーターと精神制御装置、VR業界では禁じられている分野の研究だった。やはり、禁断の果実に手を出したがる人間は何時の時代もいるという事だろう。

 ともあれ、レクト・プログレスの悪行が明るみに出るのと同時にレクト・プログレスは解体に追い込まれ、アルヴヘイム・オンラインの存在が宙に浮く。ソードアート・オンラインより始まった負の連鎖、負の遺産とも言うべきこの流れは確実にVR業界に致命的なダメージを与えていた。もはやVR業界に手を出そうとする企業はいなかった。世論も完全にVR技術を危険なものと断定し、そして排除の方向性に向かっていた。確実にアルヴヘイム・オンライン、そしてVR世界は終わりに向かっていた。

 かのように見えた。

 レクト・プログレスが解体されレクトがアルヴヘイム・オンラインの所有権を有した時に、アルヴヘイムを買い取らせてほしいと言いだした人物が現れた。かなり高い値段でもはや未来のないアルヴヘイム・オンラインを購入し、これから自分で運営すると言った。もちろんレクトはアルヴヘイム・オンラインを売った。もはや商品としての価値はほとんどアルヴヘイムにはなかったのだ。

 そしてこれが、後になってレクト最大の誤算と言われる事となる。

 ―――≪ザ・シード≫。

 とある日、ネットの片隅にそれが出現した。

 衰退をはじめていたVR業界に現れた≪ザ・シード≫だが、その影響は劇的だった。今まではレクトが膨大な金を払って運営していたアルヴヘイム・オンラインだったが、≪ザ・シード≫は企業だけではなく個人でも、サーバーさえ所持していればVRゲームを作れるというパッケージだった。突如ネットの片隅に現れた≪ザ・シード≫は無料でサーバーにアップロードされ、

 ―――たった一晩で一万ダウンロードを超えた。

 今までVRに手を出せなかった小企業も、自分のVRゲームを作りたかった人も、誰もが平等に新たな世界を生み出せる≪ザ・シード≫パッケージ―――それは世界を生み出すだけではなく、≪ザ・シード≫によって生み出された世界同士をつなぐことまでできた。

 もはや衰退の道を歩んでいたVR業界の姿はなかった。VR、いや、仮想世界は一気に繁栄の道を突き進んだ。もはや生まれてくる仮想世界の数は百や二百、千でも足りなかった。ALOの事件でVR業界の規制はほぼ確定と思われたが、取り締まりが不可能なレベルに巨大化してしまったVR業界、そして様々な圧力によってそれは消えた。

 そしてアルヴヘイム・オンラインは個人の運営によるゲームとなった。

 今までのPvPのシステムや飛行限界などを見直しながら様々なテコ入れをし、アルヴヘイム・オンラインは新生アルヴヘイム・オンラインとして蘇った。ソードアート・オンラインのデータも見つかったことでアップデートとしてアインクラッドそのものを導入しつつ、SAOのプレイヤーにはアインクラッドで使っていたアバターの復活までをもしている。元々の所有者であるレクトとある程度提携しつつ運営されるアルヴヘイム・オンラインを止める人間は驚くほどに少なかった。

 全体を通して止めた人間は一割以下、逆に元SAOプレイヤーが参加し、利用者自体は増えていた。

 これがALO事件。

 これが、ソードアート・オンラインから始まった一連の事件の終わり。

 これが、表向きに出回っている情報。

 だが真実は少し違う。

 須郷の死はもちろん自業自得だ。力を求めた須郷は耐えきれず自爆し、そして力のなくなった須郷では死の風に耐え切れなく体は蝕まれ、内臓は消え去った。司狼はその光景を見届けてから逃亡した。ALOを購入したのは黒円卓で、そして―――≪ザ・シード≫は茅場晶彦の”魂”が譲ったものだ。

 そう、真実はそうだ。

 なんてことはない、いつも通り黒幕が裏から糸を引いて世論を操作し、都合のいい方向に捻じ曲げている。そういう話だ。だが今は、今だけはそういうことは重要ではなく―――


                           ◆


「和人?」

「あ、いや、少しぼぉっとしてた」

「あぁ、今日はいい天気だからな」

「その歳でボケが始まってたら致命的だからな」

「ちげぇねぇ」

「酷いなぁ……」

 その他愛のない会話を椅子に座って眺める。控室だからそこまで広くはないが、男を何人か入れる位ならば、十分すぎるほどに広い部屋だ。大鏡の前の椅子に座り、それに反射する自分の姿の後ろには、

「ふむ、こんな所でどうでしょうか?」

 髪の毛を整えてくれているシュピーネがいた。手馴れているらしく、片手に鋏、もう片手に櫛を、テーブルの上にスプレーを置いて髪のセッティングをしてくれている。鏡に映る自分の髪型は珍しく決まっているように見える。普段はファッションとかそこらへんにはそこまで興味を持たないため、髪は寝癖を下ろす程度に程度にとどめている。だが今日はバッチシ決まっている。これもシュピーネのおかげだろう。

「ありがとう、シュピーネさん」

 鏡に映るシュピーネに向かって笑みを送る。シュピーネもいえいえ、と手を振りながら鋏などの道具を消してゆく。

「友人の晴れ舞台です。私も微力ながらお手伝いができて嬉しいですよ。私の努力でまた一つ笑顔を生むことができるのであれば、それはとても喜ばしい事なのですよ」

「すげぇ、大人だ!」

「おい、シュピーネさんに謝れ」

 司狼の言葉にツッコミを入れながらシュピーネと軽く苦笑する。

「では私は先に会場の方に戻っていますね」

「はい、ありがとうございます」

 部屋から出て行くシュピーネに対して軽く頭を下げ、感謝を示す。シュピーネも笑顔で手を振り部屋から去って行く。仕事で忙しいと言うのに参加するためにわざわざドイツからやってきくれて、本当にいい人だと思う。それにしても髪のセッティングや芸ができたり書類仕事が上手かったりと、シュピーネは中々多才な人物だと思う。

「しかし」

 そう言うのは戒だった。十人中八人は振り向くような容姿の男は今日、更に気合が入って十人中十人が振り向くような美男子となっていた。スーツ姿も着慣れているためか妙に決まっている。

「まさか僕とベアトリスが先を越されるとはなあ」

 しみじみとそう言う戒の声には羨む色が見えていた。戒とベアトリスは交際を始めてからすでにかなり長い時間が経っている。そろそろ二人とも結婚しててもいい年ごろなのだが、中々その機会が訪れない。

「お前、そりゃあザミエルどうにかしねぇと無理だろ」

 声の主、ベイもスーツ姿だが、その容姿と合わせてもはやイタリアンマフィアにしか見えない。ここまでスーツがそういう意味で似合っている男も珍しい。今日ばかりはサングラスを外しているが、太陽の光を鬱陶しそうにしている事からそれがやせ我慢だという事は解っている。

「やっぱりヴィッテンブルグ少佐に邪魔されてるのかなぁ」

「あの金髪のワン子、アレ結構喜んで調教されてるんじゃねぇか」

「笑えない……」

 司狼の言葉に乾いた笑いしか出てこない戒の様子が面白くて、その場にいる全員で軽く笑う。

 そこで改めて自分の姿を見る。

 大鏡に映る自分の姿は何時もと違う。髪は整っているし、タキシードに着替えている。それだけで雰囲気が一変し、自分でも一瞬誰かと思うぐらいに穏やかな表情を浮かべている。ここまで穏やかにいられるのは本当に初めてかもしれない。生まれてから今まで、ずっと何かに追われたり追ったり、そんな事をずっと続けて―――やっと、ここまで来れた気がする。

「……俺、結婚するんだな」

「今更何言ってんだよテメェ」

「お似合いだよ」

「ありがとう」

 そう、結婚をするのだ。俺は。もちろん相手は一人しかいない。彼女の方には女性陣がついている。幼馴染や先輩に関しては不安がいっぱいだが、向こう側にはリザがいる。俺が知っている中で女子力最大で、シスターなのに無駄にエロイリザがいればなんとななるだろう。アレでも一応既婚者だし。

「しかし、結婚自体は和人の方が早いんだよなぁ……?」

 そこで視線が和人に集まる。和人は恥ずかしそうに手を振りながら、

「と言っても俺とアスナの場合はアインクラッドだったし、明広みたいに現実で入籍した訳じゃないから、本当の意味での結婚とは言えないよ」

「おいおい、そんな事言っていいのか? 嫁が泣くぞー?」

「テメェ、自分の女だけは泣かせるなよ」

「うーん、チンピラ二人は妙に女性の扱いに関しては優しいね」

 アレはただ単に和人で遊んで楽しんでいるのだと思う。そしてそれを聞いて正樹が苦笑する。

「俺、兄さんが結婚するのって絶対に香純さんか玲愛先輩だと思ってた」

「俺はバカスミだと思ってたんだがな。ああ見えてアイツ学園のミスコン優勝者だし。お前にべっとりだったし。お前らがくっつくんだったらそれもいいんじゃねェかと思ってたんだがよ」

「結果、思わぬニューフェイスに全部持っていかれたね」

「先輩も香純さんも憐れ……」

「螢も一目惚れした時点で恋が終わってるとか、笑うしかないよね」

「それでいいのかよ兄貴」

「カインの事は適当に放っとけ、こいつ友人に先を越された事に地味にショック受けてるからな」

 あぁ、なるほど。だから今日は微妙にイケメン度が低いのか、と変な納得をしつつ、指の動きでホロウィンドウを呼び出し、そこに表示される時間を見る。時間が一分近づくごとに妙にそわそわしている気がする。

「なんだ、心配でもしてるのか?」

「うん、まあな……このまま本当に幸せになっていいのか、どうしようもなく不安だよ」

 既に何十、何百と殺している。千以上殺したかもしれない。そしてこの先、更に人を殺す事があるのかもしれない。そんな人殺しが本当に彼女を彼女を抱きしめて、触れて、そしてともに幸せになっていいのか―――そんな不安にどうしようもなく駆られる時がある。

「―――胸を張れ」

「……ミハエル」

 今まで壁に背を預け、黙っていたミハエルが言葉をくれる。

「お前は誰よりも苦しみ、それでも抗い続けた。誰にも休息と救いは必要だ。―――その権利をお前は十分に得ているさ、カメラード」

 そしてこれまた珍しく、ミハエルが微笑を浮かべる。

「オイ見ろよ、天然モノのマッキースマイルだぜ。誰かカメラねぇのかよ。高く売れるぞ」

「マジで?」

「ガチな顔すんなよ」

「ははは」

 少しふざけたところでいい感じに空気が緩んだ。そう、無駄に緊張したところで意味はないのだ。これから味わえる刹那を何よりも、誰よりも全力で味わうって決めたのだ。俺には幸せになる権利が存在し、それは誰にも存在する。そして何よりも、食らった二つの魂に誓って俺は幸せにならなくてはならない。だから、

 ―――見守っててくれ、―――トウカ。

 忘れはしないよ。だけど、俺は前に進むから。

 そう誓ったところで、扉が開く。

「いるかアキヒロ」

 扉を開けて入ってきたのはスーツ姿のラインハルトだった。黄金律の美しさを体現しているラインハルトのスーツ姿は今回の主役である俺を完全に食う程に美しく、そして優美だった。これが同じ人類だというから世界の神秘は凄まじい。あぁ、しかし。

「友よ、卿の伴侶の準備ができた―――時間だ」

 あぁ―――時間か。

                        推奨BGM:Walhall

 椅子から立ち上がり、入り口の方へと向かう。金髪の美丈夫が入り口で立ち、此方に視線を送ってくる。手を前に出して、握手を求めてくる。

「卿の人生にはこれからも困難と試練が付きまとうであろう。だが何も人生とはそれだけではあるまい。このように救い、救われる出来事だってある。それらすべてを含めて、我々の人生だ。永遠の伴侶を得る事は確実に卿の人生に素晴らしき彩を与えよう。あぁ、私は祝福しよう。おめでとう、友よ。妻と子を持つのは悪くないぞ」

 笑みを浮かべ、ラインハルトの握手に応じる。こいつも、ただの破壊の獣ではない。愛の形が破壊ではあるが―――それだけが全てではない。この獣は破壊しないことの大切さ、そして自分が特殊であることを知っている。だからこうやって、普通に会話ができている。あぁ、この男もまた妻と言う存在に救われた者なのかもしれない。

「ありがとうラインハルト。俺は、行くよ」

「卿の道に幸あれ」

 扉を抜けて通路へと出る。結婚式場の通路を通り、式場の入り口となる扉の前に女性陣と共に彼女の姿はあった。どの女性もドレスなどで美しく着飾っている中で、彼女だけがひときわ強く輝いていた。その場にいるだれよりも美しく輝いていた。

「……マリィ」

「……アキ」

 歩き、彼女の横に立つ。白いウェディングドレスに身を包む彼女は美しかった。今まで見た誰よりも、今まで見た彼女の姿で、何よりも美しく見えた。普段は化粧もしない彼女だが、ほんのり赤くなっているリップなどが今日は化粧をしている事を示していた。

「綺麗だよ、マリィ」

「アキも一段とかっこいいよ」

「ねぇ、何あれ」

「ぬぐぐぐぐぐ」

「大丈夫。まだ寝取りのチャンスはある」

「先輩は諦めろよ。アレはどう見てもチャンスねぇだろ」

「遊佐君、諦めたらそこで試合終了なんだよ?」

「螢もあのアクティブさを見習ってみたらどうだい?」

「戒、少しテンションおかしくありませんか?」

「アンタ達いい空気吸ってるわねぇ……」

「ぷ、くくく……」

「ふふふ……」

 楽しく皆で笑えて、此処にマリィがいる。その事実が何よりも嬉しくて楽しくて幸せで、思わず笑みが零れてしまう。こっちは凄い緊張しているのに、なのにみんなはこうもマイペースで―――うん。これがいいのかもしれない。だから、

「愛しているよマリィ―――結婚しよう」

 その言葉に、俺の女神が笑みで答える。

「私を幸せにしてね、―――アキヒロ」

 幸せの笑みで答える。




これにてALO編は完結となります。
34話と長かったALO編におつきあいありがとうございました。
少し休憩をはさんでから次回からGGO編となります。
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| 断頭の剣鬼 | 08:55 | comments:9 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

マリィ、アスアスご結婚おめでとう!
さあ、いでよ被害者の会!君たちの活動を心待ちにしている!
あれ?アンナさんは?

| 御神楽 湊 | 2012/10/02 09:10 | URL |

二人とも結婚おめでとおおおおおおお!!
司狼も逮捕されなくてよかったw

そして最期までイケメンなシュピーネさんに惚れた

| ほろ | 2012/10/02 16:18 | URL |

アンナさんのヒロイン度が消失している件
被害者の会は発足されるんだろうか?

| sasa | 2012/10/02 16:29 | URL | ≫ EDIT

シュピーネさん! お茶の間の大御所のシュピーネさんじゃないですか!
ところで、トウカのヒロイン短編マダー?←
あと、我等がヒロインのルサルカは何処へ。

| 空 | 2012/10/02 17:29 | URL |

とりあえず司狼、シュピーネさんにあやまれ!

そして妖怪閣下、末永く爆発しろ!!

| 尚識 | 2012/10/02 17:43 | URL | ≫ EDIT

明広さま、マルグリットさま、ご結婚おめでとうございます。

| ろくぞー | 2012/10/02 20:04 | URL |

シュピーネさん!シュピーネさんじゃないか!!
獣殿は自重さえ覚えてくれれば本当、非の打ち所ないなぁ
・・・実はシュピーネさんの器用さは獣殿から流れ出してる可能性が微レ在?

| 読者 | 2012/10/03 01:40 | URL |

うん。
何事もなく、式場爆破なんてこともなく終わったみたいでよかった。
GGO編に進む前に、二人のハネムーンとか短編で見てみたいかも。


明広とマルグリットの二人とも結婚おめでとう。
二人のこれからに幸あれ。

| 断章の接合者 | 2012/10/03 06:49 | URL | ≫ EDIT

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| | 2013/11/18 17:23 | |















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