陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

妖精郷 ―――ラスト・スタンド

推奨BGM:Thrud Walkure


 ヒースクリフと共にオベイロンを挟み込むように立ち、

「リリース―――」

「―――リコレクション」

 同時に心意の光を解放する。俺が解放するのは羅刹の記憶ではなく、自分自身に眠る記憶。情報。蓄積された思い、秘めた記録。解放されたものは体を改変し、最も親しみのある姿へと変わる。逆立っていた髪は落ち着き、背も少々高くなり、顔も子供らしかったのが少し落ち着いた様子に―――スプリガンのキリトから黒の剣士キリトへと姿が回帰する。全身に心意の光を纏いながら、更に想いを解放してゆく。全身を覆うその光に指向性を、概念を付与し、

 ヒースクリフと同時に攻撃を叩き込む。完全に音を置き去りにし攻撃が音そのものを砕きながら進むため、オベイロンに直撃するその瞬間まで全くの無音で強襲した。今までよりも力が込められた一撃はオベイロンに命中し、激しい火花を散らす。顔に広がっている罅に一撃を入れられたオベイロンは―――全くの無傷だった。

「くくく……」


 その光景があまりにも面白いという風にオベイロンは笑う。いや、実際彼には面白すぎて、また不愉快すぎる状況なのだろう。オベイロンにとって人類は羽虫でしかない。それを潰す事に価値を見出し、快楽を感じる。そしてその羽虫の中でも今、この場にそろっている三人の男女は何よりも真っ先に殺したい対象であり、オベイロンの神経を逆なでしている存在だ。

 世界を自由にさせない男。

 自分に逆らう少年。

 そして欲しかった女。

 この三つがどうしても神経に触る。何故だか理解できないが、他のと比べてこの三人だけは絶対に壊さないといけない。塵は塵。糞は糞。その事実はオベイロンにとって代わりはない。しかし自分の不愉快にさせてきた存在が今、必死に戦って傷一つ付けられない。その事実はオベイロンの顔を愉悦で曲げていた。

「く、はははははは! 愉快! 実に愉快!」

 オベイロンの顔の罅が増え、オベイロンの圧力がまた増える。アスナとユイを守るリーファの剣と、その心意による障壁に亀裂が走る。今、自分を不愉快にさせてきた存在が自分を相手に必死に生きようとしている。あぁ、それを踏みつけ消す事が出来たら何て快感だろうか―――そんな思いにオベイロンは包まれていた。

 だがオベイロンは知らず、変質していた。

 元々須郷伸之は人間の屑であっても、手段を選ばない外道ではなかった。アインクラッドからの未帰還者を生み出し、その脳を実験に使用するも、ちゃんとメンタル的なケアを見るだけの良識は存在している。屑ではあるが、完全な外道には落ち切っていない。須郷伸之を表現するなら中途半端な外道という表現が最も似合う。

 が、この男は自分に対する信頼―――自己愛が誰よりも強力だった。

 この技術は絶対に成功する。自分は王になれる。世界を支配できる。人類は私に跪く事となる。最初はその程度だった思いも感染によって大いに歪み―――今の外道が出来上がる。オベイロンという男も一種の被害者なのかもしれない。だからと言って、それを憐れむ者はもはや存在しない。

「あぁ、実に愉快!」

 もはやその汚染はひどく、オベイロンという存在を、フラクトライト(たましい)を根本的な部分から汚染しきっていた。もはや取り除く事は不可能で、元に戻る事はない。その事実から考える。

 須郷伸之という男は完全に死んでいた。

 ここにいるのはオベイロンという■■の残滓でしかない。

 それすら気づかずオベイロンは顔を歪め、喜びと愉悦に浸る。

「あぁ、実に愉快だ。我を傷つけることはできない。貴様らが何度何をしようがそれは絶対我には届かない。あぁ、何て無情。あぁ、何たる甘美! 無駄な事を続け足掻くその姿はまさに無情なこの世の縮図! 理解せよ、貴様ら程度の糞が我に刃向うという発想自体が誤りだという事を!」

 キリトの二刀流を形だけ真似したオベイロンの二刀流は、実戦で使えるようなものではない雑な斬撃だった。洗練された、芸術の域にあるキリトのそれと比べる事すらおこがましい斬撃だが、それには力がある。この場の誰にも超える事の出来ない圧倒的強度と力、それが込められている。故に受ける事は不可能であり、回避こそが至上の選択肢。しかし、

 ―――火花が散る。

「―――フン」

 ヒースクリフが盾でオベイロンの攻撃を受け止める。本来ならあり得ない現象だ。強度として劣る存在がより上位の一撃を受け止めるのはありえない。だが―――ヒースクリフの場合は事情が異なる。こいつほど心意という存在に対して理解があり、使いこなせる存在はいない。純粋にその顔には見せない感情、溢れ出さんばかりの心の強さを心意として表現しているに過ぎない。そう、ヒースクリフが通った手段は純粋な強化。

 特殊な能力か何かを使ったのではなく、純粋に強度を限界まで上昇させて盾の防御力を上げたに過ぎない。

 それでも、盾には罅が入り悲鳴を上げる。

「今までの攻略と変わりはしない―――そうだろう?」

 なんだこいつ、意外と、

「冗談も言えるんだなお前!」

 オベイロンとヒースクリフの強度は桁単位で違う。だからと言って一瞬で潰されるわけでもない。オベイロンとヒースクリフの接触から、数秒だけは持つ。それだけの技術と能力をヒースクリフは持っている。だからこそ完全に黒の剣士へと回帰した俺は、

「ジ・イクリプス……!」

 やる事はヒースクリフと変わらない。限界まで自己と得物の強度を上げ、それを必殺にして叩き込む。もはや常時発動している羅刹の特殊能力はオベイロンを切り裂き続けようとし、全てが失敗している。だから放てる斬撃を全て束ね、

 千℃を超える熱量と共にオベイロンの背後から、一本の刀で二刀流の奥義を繰り出す。高速で振るわれる刃の残像が一瞬だけ陽炎の様な実体となり、何本もの刃を生み出しながら二十七連撃をオベイロンの背中へと叩き込む。叩き込んだ箇所を中心に世界樹が炎上し融解し始める。

「フンッ―――!」

 同時にヒースクリフが後ろへと滑るような動きでオベイロンの二刀流から逃れつつ、十字剣を振るう。それには極光が纏わりついており、触れている空間が光に変換されるように分解されるのが見える。それを迷うことなくオベイロンの正面から叩き込み、

 極光と炎が正面からぶつかり合い、オベイロンを中心に爆発を引き起こす。軋み、世界樹が悲鳴を上げ始める。爆発の中心点が煙に包まれるのを見て、刃をアスナとユイの方向へ―――鳥かごへと向ける。

 斬撃が走り、鳥かごを切断する。アスナへと向けて首を動かし、声を出す。

「アスナ、ユイ! 先に逃げろ! この先そっちに攻撃がいかない様にするのは難しい!」

「キリト君!」

 帰ってきたのは悲痛な叫びだった。

「前!」

「ッ!!」

 瞬間、煙の中から無傷のオベイロンが現れる。破壊力としては確実にトップクラスだった一撃を二発食らいながらも、オベイロンは傷を負わない。やはり攻撃だけではどうにかなるような相手ではない。であるならば、此処は確実に勝利するために攻撃以外の方法を模索し勝利するしかない。アスナの声のおかげでギリギリ間に合った反応、反射的に羅刹を振い、流す様にオベイロンの剣を捌く。

「温いわぁ―――!!」

 そして受け流しに羅刹を使用してしまった為にオベイロンの二刀目が回避できない。叩き潰すように放たれた刃を、しかし、

「―――!」

 回避する。単純に、物理攻撃が利かない様に体を一瞬だけ光に変えただけだった。おかげで致死の斬撃を回避し、距離を生むことができた。だが、このままでは千日手であることが既に見えている。攻撃の通じないオベイロンと、攻撃を回避する俺達。どっちも必殺の一撃が決まらないために戦闘時間は悪戯に伸びて、周囲の被害が増えるばかりだ。

「滅―――尽―――滅―――相―――!」

 オベイロンが頬を釣り上げながら放った言葉に全身で悪寒を感じる。同時に二刀の黄金の剣が光に包まれる。今まで繰り出された攻撃の比ではない。これは今までの様な線や点での攻撃ではなく、面での攻撃だ。

 そして、これは確実にアスナやユイを巻き込む。

「くっそぉ―――!!」

 素早くアスナとユイの元へ移動する。

「ヒースクリフ! マリィを……!」

「承知した」

 ヒースクリフも高速の動きでマリィの前へと移動し、盾を構える。今まで”奇跡的”に一度も巻き込まれなかったマリィだが、そんな奇跡はこの攻撃には意味がない。刃を盾にするように構えオベイロンの一撃に備える。アスナ、ユイ、マリィという非戦闘員が存在する俺達に避けるという選択肢は存在せず、防御以外にこれを乗り越える方法はない。故に渇望を、心を限界まで燃やす。それをあざ笑うかのように黄金の剣が邪悪に光る。

「消し潰せ―――エクスキャリバー」

 アーサー王の握った聖剣の名を冠する得物はオベイロンの手に握られ、邪悪な黄金のの光を放つ。ゲーム内で最強であると設定された剣はエクストラアタックと、特殊能力を持っている。光を溜めて放つという攻撃は魔法に匹敵、いや、それをも超える破壊力を持った砲台となる。それはオベイロンの汚染を受けて神すら滅する破壊力を持ち、それが生半可な存在であれば飲み込む前の余波で十分滅ぼせるだけの破壊力を得ていた。

 滅尽の意志の前に抗い、聖剣の光に抗う。一瞬で全てを飲み込む光が世界樹の上部を消し飛ばし、ヒースクリフと俺を光は飲み込もうとする。が、武器を前にだしその光に抗う。背後に立つ存在を守るためにも折れるわけにはいかない。全身を消し去らんとする邪光は体を抉り、消滅させながら痛みを刻む。それでも心意を最大にし―――

「パパー! 負けないでください!」

「キリト君! 私、今は何も出来ないけど……!」

「あぁ―――そこにいてくれるから」

 頑張れるんだ。

「おおおおおぉ―――!!」

 吠えて、全神経を耐える事にだけ注ぐ。これを超えればまた攻撃の機会は生まれる。オベイロンに直接ダメージを与える事は出来ないが、それでも戦いようはある。このままオベイロンに全力を出し続けさせればいずれは―――

「潰れろ」

「ぬっぐっ!?」

「かぁっ……!」

 オベイロンの一言で奴の顔の罅は増え、過剰ともいえるだけの力がエクスキャリバーに与えられる。エクスキャリバー自体も大きくその存在を崩壊させながら、全てを消し潰す破壊の光は俺とヒースクリフを潰しにかかる。かかるは負荷は先ほどの二倍を超え、一気に体を蝕む。

「駄目―――」

 飲まれる……!

 そう思った瞬間、

                  推奨BGM:Gregorio LxT Mix

 一筋の黄金が走る。

 横から出現した黄金の一閃はエクスキャリバーの光を纏めて薙ぎ払い、それだけでは飽き足らず、

 世界樹を半分吹き飛ばしていた。

 圧倒的理不尽。圧倒的暴力。圧倒的実力。才能と経験、そして何よりも信念に裏打ちされた隙のない力。それは万人が憧れる存在であり誰もが夢見る頂点。何かから与えられたわけでもなく、生まれた時には既に至っていた。才能は人間の限界を超えて、既に神としての領域に立っている―――故に、この男の魂は既に人間という範疇からは逸脱している。未だに本気を出してはいない。その男が一度でも本気を出せば、それは世界全てを飲み込んでしまう。いや、この世界だけじゃない。無限に広がる宇宙でさえ飲み込める―――そんな確信を持たせる獣だ。

 そう、獣。

 黄金の獣―――

「―――あぁ、賛美せよ! 世は儚く脆い! されど美しく輝いている。故に賛美せよ。私が触れてしまえば全ては砕け散ってしまう。あぁ、何たる無情。あぁ、何たる悪意。何故だ、何故世界とはこんなにも無情に過ぎる! だからこそ今、この出会いに感謝と賛美の声を送ろう―――良くぞ我が一撃に耐えた!」

 黄金の一閃で薙ぎ払われた先にはオベイロンの姿があった。だが無傷ではない。エクスキャリバーの光を撃ち貫いた攻撃の余波を受けていたのか、僅かにだが体に傷ができている。その攻撃の主を射殺さんばかりにオベイロンは睨んでいる。

「貴様ァ……!」

「聖槍十三騎士団黒円卓第一位―――ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ。あぁ、黒円卓の首領をやらせてもらっている」

 黄金の獣、ラインハルト・ハイドリヒがそこに降臨した。オベイロンの強度を超える存在。既に魂が神の領域に立つ男。存在だけでオベイロンに傷をつけられる男。それが降臨していた。

 そして―――世界が黄金と真紅に染められる。

 アルヴヘイムという世界の中心が、この一帯が覇道に飲まれている。創造という域の限界、流出という位階に寸前で上がらない極限の創造は局地的にだがこの世界を染め上げる。黄金は死者の修羅道。死者の宇宙。黄金に染め上げられた世界は詠唱を発動させる前から墓場の王の存在を称えていた。

 そして真紅の影が世界を包む。ありとあらゆる存在を、愛しいものを包む、その輝きを守る。穢す者は何であれ絶対に許さない。消えろ失せろ。それは「排除の様で、防衛の様でもあり―――邪神の理。世界を侵食する真紅の影は間違いなくアルヴヘイムの”空間”を消滅させ、世界自体を縮小させていた。

 その心は、その願いは、ある存在を想起させる。

「―――喝采せよ! 散華せよ! 明星とは天に輝く神である」


 聞き覚えのある声に全身は痛みを忘れ、そして驚愕の色と―――安堵の色に俺の心を染め上げる。

 なんだ、遅かったじゃないか。もう少し早く来いよ。

 だが、俺がそんな事を口にするよりも早く。

「―――良くも俺の女をボコってくれたな、ぶっ殺すぞテメェ!」

 その声に女神が目覚める。

「アキ―――!!」

 アルヴヘイム最後の戦場に―――真に終焉をもたらす存在が降臨した。








若干復帰早いかとも思ったけどいい加減長くなってきたので、ここらで進めるべきかと思いまして。
アルヴヘイム編で既に30話以上書いてます
スポンサーサイト

| 断頭の剣鬼 | 10:44 | comments:12 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

祝・妖怪復活!

| ジント | 2012/09/30 10:56 | URL |

あれー、いきなり復帰したー!?
ナニコレ、どうなってんの!?
そして相変わずの殺意の高さw

| | 2012/09/30 11:06 | URL |

ヒャッハー! 妖怪の復活だー!

| 空 | 2012/09/30 12:17 | URL |

ヒャッハー! 妖怪様のご降臨だァ―――!!!!
オベイロン(笑)終わったな、と思ったのは私だけでないはず。
アキアキかっこいい!

| ろくぞー | 2012/09/30 12:29 | URL |

首狩りの時間だー

| シュタム | 2012/09/30 13:35 | URL | ≫ EDIT

妖怪復活! 獣殿参戦!
これで勝つる!!

| 御前 | 2012/09/30 14:04 | URL | ≫ EDIT

妖怪復活キタコレ!
思う存分首狩ってくださいw

| 通行人D | 2012/09/30 15:35 | URL |

糞オベロン包囲網完成
あいては死ぬ!
獣様でもオワッタなのに、妖怪首おいてけ加わったら
死ぬしかないじゃない!

| モグラ | 2012/09/30 17:09 | URL | ≫ EDIT

き、キタアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!

| アッガイ | 2012/10/01 00:02 | URL |

妖怪の復活と獣殿の降臨。
オベイロンの終わりは目の前だ!

| 断章の接合者 | 2012/10/01 00:31 | URL | ≫ EDIT

妖怪首おいてけが殺意とテンション高めなのは復活した際に先輩にすがり付かれて泣かれた照れ隠しもあるに違いない!

| | 2012/10/01 06:53 | URL | ≫ EDIT

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

| | 2013/11/18 17:01 | |















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://tenzodogeza.blog.fc2.com/tb.php/197-497e0090

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。