陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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妖精郷 ―――リターン・オブ・ザ・キング

推奨BGM:Ewige Wiederkunft
*1推奨BGM:Götterdämmerung


背中を合わせ座っている。

 この虚無の闇の中に存在しているのは俺ともう一人、この男だけだ。

 いや、この男と表現するのはおかしいだろう。こいつも実際は”俺”なのだから。そう、ここは俺の中でここでは”俺”しか存在できない。だからやつは”俺で”であり俺以外であることはありえない。この認識はくだらない言葉遊びのようで、実に的を射ている。だからこいつは俺だ。

「タバコ、吸うか?」

 発掘したタバコの箱を振り返らず、闇に座り込んだまま後ろに向ける。だがやつは手を振る。

「いらね。んなクソマズイもん寄越すなよ」

「だよな」

 俺が嫌いなのにこいつが吸うわけがない。もうこのタバコは必要ない。投げ捨てる。闇の中へ落ちてゆくタバコの箱はどこかにぶつかる事もなく、永遠に闇の中へと落ち続けて行く。その行方に興味はわかない。その運命はいずれ俺が辿るべき運命で、それはそう遠くない先の出来事だ。

「で」

「で?」


 ヤツが口を開く。似たような声をした男だと思う。服のセンスも似ているから困る。ま、そのセンスが致命的ではないのが救いなのかもしれない。

「どうだったんだよ」

「……まぁ、良かったんじゃないのか」

「なんだよその返事」

「そう簡単に答えられるもんじゃないだろ」

 解っているくせにこんな質問をしてくるあたり、以外とこいつは捻くれた性格をしているようだ。

「お前、答えられないのなら後悔してるって事だろ」

 後悔? そりゃあさ、

「腐るほどしてるさ。でもよ、人生ってのは取得選択の連続だ。何を選んで何を切り捨てるかって話だろ? アレもコレも何もかも欲しがって抱きしめることなんて無理だし、ありえないだろ。だから切り離す者を選ばなきゃいけないじゃねぇか。そんなの後悔して当たり前だろ。むしろスッキリしてたら気持ちが悪いわ」

「だからお前は駄目なんだよ」

 背中合わせに座るヤツがあからさまに溜息を吐いている。そこまであからさまに溜息を吐かれると、少し自分の中でイラっとくる部分がある。それが”俺”だという事は理解していても、挑発されるというのは中々に苛々する話だ。

「お前にだけは言われたくない」

「まだまだガキだな、お前」

「おい、テメェにだけは言われる筋合いはないぞ」

「”俺”だから言えるんだよ」

 振り返るのと同時に向こうも振り返った。

 そこにあったのは俺と同じ顔だ。

 いや、顔は全然違う。輪郭も、目元も、鼻も、何もかもが違う。だが同じ顔だ。俺にはそうにしか見えない。別人のはずなのに全く同じ顔をしている。大いに矛盾する話だが、そう間違っている事でもない。

 ―――俺達が同じ魂を起源とする存在であるのなら。

「お前には圧倒的に我が儘さが足りてないよ。シャヘル」

「どうせ終焉するまで暇なんだ。付き合ってもらおうかツァラトゥストラ」

 輪廻を超えた邂逅が、俺の中ではありえる。

 この死の淵でしか、ありえない。

 時を止める邪神はここにいた。



                           ◆


*1

「ォオ―――」

 高速で走る。一撃でも受ければ凄まじいダメージを受けるのは解っている。それは須郷伸之という存在が強度においては神の領域に立っているという証拠に他ならない。その力を破るには同じ領域に立つ存在が必要であり、それに劣る俺が攻撃を繰り出したところで何の結果も生み出す事はできない。

 高速で動く体はソニックブームを生み出し、世界樹の中に作られているこの部屋を破壊、蹂躙しながら相手の攻撃をかく乱している。須郷伸之―――オベイロンは別次元の強度を有しておきながら、本来の戦闘技術と言えるものはあまりに稚拙すぎる。アインクラッドの中堅プレイヤー層の腕前にさえ届かない。達人や怪物、そういった言葉からこの男の戦闘技術は大きく外れていた。

「ほら、どうした黒の英雄。死にたがり(明広)がいなくては怖くて切りかかれないのかぁ? あぁ、すまんすまん、もうすでに死んでて大好きなお友達も呼べないんだったなぁ! ふふふ、はははははは―――ハハハハハハ!!」

「ッチ―――!」

 癪に障るが、こいつの言っている事は間違っていない。

 どこまでも、どこまでも冷静に状況を分析する。挑発に乗って簡単に切りかかってはならない。それこそこの男の思うつぼだ。そう、この男オベイロンの剣術というものは全く持って素人のそれ。剣で斬っているのではなく、剣を”振って”いるのだ。それは似たような現象で全く違う事だ。最終的に得られる速度、威力、そして抵抗力、これらすべての要素が剣の握りや振り方で変わってくる。その初期の部分からオベイロンは失敗している。故に今、オベイロンに速度で勝っている俺は、

 攻撃を叩き込める。

 目、口、耳、心臓、脇、顎、股間、脇腹、首―――思いつく限りの急所へと二刀の連撃をヒットアンドアウェイ式に叩き込む。俺が奴の攻撃を一撃でも喰らってしまえば、それだけで致命に近いダメージを受けてしまう。。

 それが強度というものだ。

 このオベイロンは、一人になりたいという願いだけで神の領域に足を踏み入れている。

 だが、

「背負ってんだよ!」

 そんな願いに負けるわけにはいかない。

 すれ違いざまに首に攻撃を叩き込む。オベイロンが握る黄金の剣は此方を葬り去るべく恐るべき速度で迫ってくる。だがそれは斬撃でもない、ただのスイングとも取れる案山子の攻撃。回避しながら首に斬撃を十数回叩き込む。成長を続けた体は極限までの連撃と威力の攻撃を可能とするが、それはベイロンには届かない。

 根本からして、オベイロンには届かない。

「糞……!」

 思わず悪態をついてしまう。悪態をつかざるを得ない。

「どうした? 先ほどからうっとうしく棒切れで叩いてきているが……なんだ蚊でもいたのか? あぁ、すまん。蚊は貴様か」

 言ってくれる……!

 此方が全神経を攻撃と回避に集中させ、たったの一度すらも攻撃に当らない様に神経をとがらせているのに対し、オベイロンの表情は余裕で溢れている。此方を挑発し、ペースを崩し、確実に殺せる位置まで俺を落とす意図がある。それに乗ってはいけない。挑発だと解っている。

「ああ。蚊と言えば小うるさい蠅もいたな……あぁ、なんだったか? あまりに小さすぎて名前を忘れてしまった、……いや、気にする必要もないか。もうすでにお前が殺したんだからな! はははは―――」

 その挑発にギリ、と歯を強く噛む。だが冷静さは失わない。昔なら怒りに吠えたであろう挑発だが、今の俺にはそれは許されない。冷静に、きわめて冷静に斬撃を首に叩きこむ。最大の急所であり、羅刹が最もその効力を発揮できる場所。そこへ何度も攻撃を叩き込む。そこには躊躇も戸惑いも、感情も込めない。

 ただ、

 こいつを殺す。

 ありったけの殺意を込めて斬撃を繰り出す。

「クタバレオベイロン―――お前は生まれてきたのが間違いだ」

 こうなってしまった以上、そんな風に言葉をかける以外何も言えない。この男の在り方には軽い憐みさえ覚える。こいつはどこまで行っても救われる事がない。こいつの願いはこの地球から全ての生物が死滅して初めて叶うのだ。そしてそれは、不可能だ。どう考えても須郷の願いがかなうことはありえない。だから、憐れだ。

「諦めろオベイロン―――お前に救いなんてない」

 さらに加速し、物理現象を置き去りしながら加速してもオベイロンはそれを認識し、オベイロン自身も加速する。

「救い? 救いだと言ったか? ふふふふふ―――」

 オベイロンの顔が歪み―――その顔に一筋の罅が入る。だがその罅が入った瞬間、オベイロンの濃密な邪気がその勢いを増す。飲まれそうになる精神を強く持ち、

「チィ―――!」

 リーファの剣に全力の心意を込めて、それをアスナ達の方向へと向けて投擲する。アスナ達の前で刃は木の枝に突き刺さり、全力の心意の壁がアスナ達を守る障壁として出現する。おそらくアスナにもユイにも知覚できやしない。もはや人間の知覚能力を超えた速度での攻防だ。だからアスナの脳神経が戦闘が更に加速していると認識できる前に、

「下劣畜生――邪見即正の道ォォ理―――」

「がぁっ―――! っく、かぁあ……!」

 その言葉でオベイロンが放つ邪気が空間を汚染するものとなった。美しかった世界樹はオベイロンの邪気に触れて、一気に腐り、砕け、散り始める。圧倒的に邪悪だ。そうとしか表現できない。何かの”影響”を受けて、それを持って圧倒的に押し上げられている。それが本人の容量を超えるモノでも、オベイロンは自身の力が増す事に恍惚とした笑みを浮かべ、それを受け入れている。そう、力だ。力こそすべて。それがオベイロンの力だ。

 弱肉強食。

 強いものは弱いものを食い、弱いものは強いものに食われる。

 それだけだ。

 ただ単純に強者が無敵で弱者は勝てないという単純明快な理はシンプルだからこそ隙がなく、相性などの概念を全て投げ捨てている。その戦いには思考する必要性がなく、強いものは一刀のもとに弱きを切り捨てればいいと断定している。

「そんなの―――」

 認めらるか。

 体を蝕む邪気を咆哮と共に吹き飛ばし、全身に活力と覇気を―――心意を漲らせる。そう、俺の心は折れたりしない。貴様の様な糞に絶対に負けはしない。ここに来るまで様々なものを見てきて、多くの物を背負っているのだ。貴様の様に得体の知れないものを受け入れて自壊しているクソ野郎なんかには、

「―――負けられるかよ……!」

 両手で羅刹の刃を握り、心意を全力で展開する。邪気の暴風に抗うように中段で刃を構え、心意で風を真正面から切り裂く。そして、

「ぶっ散れぇ―――」

 真正面から斬撃を叩き込む。最高の心意、最高の攻撃、最大の威力。今持てる全力を込めてオベイロンへと叩きつける。狙うのは顔にできた罅。自壊の証でもあるそこだけは強度が違うはずだと狙い、定めた一撃は―――

「なっ……!」

「かかったな阿呆が」

 動きが止められた。刃を振るため前へ進もうとし、体が動かない。何事か、と、視線を下に向ける。

 それは水だった。触手の様にうねり、絡み付く水が両足を掴み体の動きを止めていた。

「ここは私の世界だぞ? 魔法の一つや二つ問題がない。さて―――」

 判断は素早く、羅刹を水に突き刺す。一瞬で斬撃が発動し、刃に映る敵と水のすべてに斬撃が発動する。だがオベイロンには傷一つなく、水だけが散る結果となった。そのまま最高速で距離を生もうとし、

「どこへ行く?」

 回り込まれた。今までのオベイロンの比ではない。オベイロンは自壊と引き換えにさらなる力を願った。そしてそれは叶えられた。あまりにもあっさりと、身を超える力がオベイロンから溢れている。それこそご都合主義を超えてもはや必然であるかのように。

 そのオベイロンの速度は、いや、全てが俺を超越していた。あまりにも、あっさり過ぎて拍子抜けしてしまうぐらいに超越された。唯一劣っていない戦闘技術を、

「ほーれ」

「っぐううう!?」

 ゴリ押しで封じてくる。

 簡単に言えばレベル100とレベル1の勝負だ。

 相手はステータスがカンストしているが初期の技しか覚えていない。こっちは少しステータスが良くて、技は完全に最高ランクの物が揃っている。だが先手は相手のもので、相手の攻撃を防御し、耐える事しかできない。そんな状況だ。

 攻撃を叩きつけてくるオベイロンの攻撃を羅刹で流す様に捌く。凄まじい衝撃が体を走り、全身の筋肉が断裂を起こしたかのように感じる。何よりも早くこの男のそばから逃げて体勢を整える事が最優先だが、

「かっ―――」

「ほぉら、お得意の二刀流だぞ」

 オベイロンの手の中に黄金の剣がもう一本現れていた。こっちが羅刹一本になり、手が塞がれている今、

 容赦なくもう一本の刃が体に突き刺さる。

 それも、手加減されている。

 必殺の一撃のはずなのにそれは必殺ではない。痛みを与える為に中途半端に攻撃を叩き込んでいる。楽しんでいる。蹂躙を、いたぶる事、この男は確実に楽しんでいる。性根がその根本から腐っている。だがどうにかしたくとも、刀は防がれ、

 攻撃は―――突き刺さる。

「キリト君!!」

 負けられない。負けられない……!

「思いだけでどうにかなるのものか。力。そう、力こそすべて。心の思いなどとはくだらない。吐き気がする。願っていれば思いは通じるなど戯言だ。ガキの妄想、夢想だ」

 そして、体に刃が―――

                「―――ほう、私の発明に文句があるのか」

 聞いたことのある声だ。オベイロンが興味深そうな顔を浮かべ、俺を投げ捨てて声のする方向へ視線を向ける。二刀の黄金の剣を握ったまま、オベイロンが笑みを浮かべる。

「あぁ、見つけたぞ。そう、貴様だ。貴様が邪魔なんだよ。貴様がこの世界にこびりついているおかげでいつまでたっても完全に私の世界になってくれない。よくも邪魔してくれたなよくも生きているなよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも―――臭いぞ貴様」

 真紅。真紅のサーコート姿の男だ。少し、歳を取った様に見えるも、その姿はあの時と一切変わらない。十字剣に盾、そして真紅のサーコート。

「情けないな、キリト君。まさか私を破っておいてこの程度の塵に君は負ける気か」

 その辛辣な言葉も変わらない。ニュースでは死体として発見されたと言っていたが―――あぁ、そうだな。お前がそんな事で死ぬはずがないと思っていたさ。

 羅刹を杖代わりに、立ち上がる。

「まさか、俺はまだ戦えるさ―――ヒースクリフ」

「宜しい。君とはまだ話したい事がある。故に―――まずは汚物処理を済ませよう」

 オベイロンを挟み込むように立ち、共に視線をオベイロンへと向ける。

 アインクラッド、そしてアルヴヘイムの真の王の帰還だった。その姿にオベイロンは歓喜を表す。

「あぁ―――糞が勝手に集まってくれる……!」

 オベイロンの顔の罅が、広がる。
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| 断頭の剣鬼 | 10:39 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

夢の共演!
そしてまさかのアインクラットの英雄2トップ!

| 御神楽 湊 | 2012/09/28 10:52 | URL |

やっぱり出てくるかツァラトゥストラ。同じ魂が起源ってことは……

ヒスクリさんの頼もしさが異常。そしてさっさと這い上がってこいよシャヘル。

| 暇人 | 2012/09/28 12:49 | URL | ≫ EDIT

一瞬、甕星かと思ったぜ……。
まあ、夢の競演だな今回は。

| 空 | 2012/09/28 18:16 | URL |

ツァラトゥストラが出てきましたか。
てっきり、甕星かと思ってました。

そして、ヒースクリフさんお帰りっす。
メイン盾キタ!これで勝つル!

| 断章の接合者 | 2012/09/28 20:52 | URL | ≫ EDIT

おかしい・・・。
すさまじくいい空気になってるのに。こんなにも愛が溢れてるのに・・・。
なぜ、妖怪と獣閣下がいないんだッ!
だ、誰か。誰か直ちに閣下を!間に合わなくなってもしらんぞぉ!

| Falandia | 2012/09/29 01:21 | URL | ≫ EDIT















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