陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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妖精郷 ―――フェアリテイル

推奨BGM:Ewige Wiederkunft
*1推奨BGM:Bottomless Pit
*2推奨BGM:Götterdämmerung


闇だ。

 無限に闇が広がっている。

 右も左も上も下も前も後ろも。

 闇が広がっている。

 ただただ無限に闇が広がっている。方向の感覚など存在しない。いや、そんなものは必要ない。ここにあるのは闇だけだから。ここに沈むという事は一つの意味しか持たず、そしてそれ以上の意味は必要としないから。孤独に闇の世界で立ち尽くし、周りを見る。そして呟く言葉は、

「まだか」

 まだ、俺は死んでいないのか。


 そんな事を思いながら闇に座り込む。不思議と自分の姿は見える。そして闇も見える。闇しか存在しないのにものが見えるという矛盾したこの世界は俺の心の中、生と死の淵。望んで終焉を得る為に無言で闇の中に座り込む。平衡感覚など存在しないこの空間では何かを考える必要などない。寂しい世界だが、そう考える必要もない。ここにあるのは終わりだけで生き物など存在しない。

「まだか」

 まだ消えないのか。

 キリトに全てを託した。不安は残るが、まだラインハルトがいるから何とかなるだろう。メルクリウスも自滅の運命から逃れる事は絶対にできない。ヤツの破綻は近い。だからここで俺が消えても、それで問題ない。だから早く消えないか。消えないのか。どうなんだ。とっとと消えろ。

 だが消えない。

 死を直前にした人間は走馬灯を見るという。そういう割には今まで何度も死にかけたが別に人生を振り返ったことはない気がする。今この瞬間も走馬灯が脳内を駆け巡る事もない。意外と馬鹿な話だったのかも知れないと思いながら、

 ポケットからタバコの箱を取り出す。

 都合がいい事にライターまで用意されている。

 ここは自分の精神の中だ。何を馬鹿な事を言っているのだろうか。

 数年ぶりにタバコを味わう。久しぶりに味わうタバコの味は吐き気がするほどに不味い。タバコを捨てる。司狼のやつ、よくこんな物をいつも吸っているな、と、変な感想を抱く。

 まだか。

 まだまだ俺が消え去るには時間がかかるらしい。無駄に生命力で溢れている阿呆が。司狼と殴りあった時、もう少し強く命を振り絞るべきだったかもしれない。そうすれば今この瞬間はなかったのかもしれない。あぁ、だが頑張りすぎて最後に話す時間がなかったらそれは少し嫌だな。どうなのだろうか。キリトは、戦えているのだろうか。正樹は怒っているのだろうか。

 もうどうでもいいか。

「早く、消えんかね」

 偽悪的なのは俺には無理だった。無理な事をやるんじゃなかったと思うが、やったこと自体に後悔はない。が、さて、

「まだか」

 まだか、俺の終焉よ。早く俺の生に幕を下ろしてくれ死神よ。

 死者は生きているべきではないんだ。

「おかしなことを言うんだな。お前」

 聞いたことがあるようで聞いたことのない声だった。半ば確信と共に振り返った先にいたのは―――。



                           ◆


 白だ。

*1

 白が広がっていた。

 平衡感覚を失いそうな城の廊下にいた。背後を振り返ればそこには壁しか存在しない。通路は右と左へと分かれ、緩い曲線を描いているように見える。刃の柄を握る手を強くする。

「おい……これは許されないぞ……」

 ゲームが作られていないというレベルの問題ではない。明らかにゲームの中の世界ではなく、

「ここ……管理者用のマスタールームですよ……プレイヤーが来れるように作られていません!」

「あぁ、それに……感じるだろ、ユイ?」

「はい……凄く、悲しい場所ですここ」

 メンタルヘルスケアのAIプログラムだったため、ユイは人の感情や精神状態に関しては人一倍敏感だ。そのユイが感じ取っている。俺でさえ感じられる。酷く色んな人間の感情が混ざっている。それこそぐちゃぐちゃに、個人を特定できないほどに多くの感情が。そして、それらすべてを押しのける様な強大な悪意を感じる。

 ここまでくれば嫌でもそれが誰のものか理解できてしまう。

「ユイ……俺はママに、アスナに逢いたいんだ」

「ハイ」

「俺はアスナを愛している」

「ハイ」

 そう、俺はアスナを愛している。アスナの為ならなんだってできる気がする。俺は、愛に狂っている。だがそれでいいのだろう。狂っていなきゃ誰かを本気で愛する事なんてできない。だから存分に愛に狂う。今は、人の皮を捨て、ここに黒の剣士として降臨する。それでのみアスナを助けられるのなら、是非もない。

「余計なモン色々しょっちまったけど!」

 二刀を構える。まっすぐ、アスナの気配を感じる方向へ向けて刃を構える。外はガチガチに固めて進入をを拒んでいたが、内部はこんなにもやわらかい。この壁だったら問題ない。

「パパ! あと少しです!」

「―――せあっ!」

 二刀を高速で振り抜く。壁を貫通し、通路を切断し、そして人が簡単に通れるような道を一直線に、アスナのもとへと切り開く。途中で短い悲鳴がいくつか聞こえた気もするが、慈悲を与えるつもりはない。外道が十や二十消えようと俺の知ったこっちゃない。前は一人も殺せないような潔癖症だったが、

 友が死んだ。

 その罪に対する意識が、今までの俺には不可能だった事を可能にした。

 そして歩く。

 一歩一歩。二刀で切り開いた道を、アスナへと近づいていくのを感じながら、一歩ずつ進んで行く。少し急な坂道を登っていると、夜を超え、姿を見せ始めた太陽の陽光が少しずつだが見えてくる。まだ世界は全体的に言って暗いが、夜明けは近い。

 そして、たどり着いたのは一つの部屋だった。

 少し広めの部屋で、部屋は世界樹からくりぬかれたように存在したいた。その部屋の横は世界樹の外縁となっており、そこから太い枝が二本伸びているのが見える。

 そのうち一本に、見た事のある鳥かごがあった。

 それを見た瞬間叫ぶ。

「アスナアアアアァァァァ―――!!!」

 瞬間、鳥かごの中で俯いていたアスナが顔を上げて、同じく叫び返す。

「キリト君―――!!!」

「ママー! ママ―――!!」

「ユイちゃん―――!!」

 やっと、やっとアスナに逢えた。その喜びだけで、彼女の声が聞こえたその喜びだけで今にも倒れてしまいそうな気がする。彼女の声が聴きたかった。動いている彼女が見たかった。どうしても、どうしてもまた彼女と触れ合いたいんだ。だが、囚われたもう一つの存在を目が捉える。

「……ッ……マリィ……!」

 明広の思い人がそこにいた。目を閉じて、鎖に吊るされるように縛られ、意識があるようには見えない。そしてその体には何本もの傷が刻まれている。剣で切られたような切り傷だ。いや、それがあるのはマリィだけではない。アスナにも新しい斬痕が見える。背後に現れた気配へと向かってありったけの怒気をぶつけながら振り返る。

「須郷、伸之……!」

「久しぶりだな、桐ヶ谷和人。私の世界へようこそ」

 この世界の支配者がそこにはいた。


                           ◆


 レクト・プログレスの社長、須郷伸之は手段を選ばない。

「ここでは妖精の王、そしてティターニアの夫、オベイロンと呼びたまえ」

 須郷の……オベイロンの視線は傷だらけのアスナへと向いている。

 美男子の姿を須郷は取っていた。現実の彼の姿とは全く似つかない、ファンタジー世界の王の姿をしている。その姿は美しいのに、須郷から感じられる気配は邪悪で、ひたすらに殺意と怒りを覚える。気持ちが悪い。こいつだけはこの世界に存在を許してはならない。直感的にこいつが俺の、そして世界全てにとっての敵だと理解する。

「はぁ……、ユイ聞いたか?」

「ハイ! 非常に頭の残念な人ですね」

「良し、いい子だ」

「えへへへへ……」

「まあ、その女ももう”いらない”がな」

 須郷が手を振るとその中に一本の剣が現れる。一本の美しい、黄金の剣。一目でそれがこのゲームにおける最高ランクの武器だと理解し、ユイをポケットから出す。

「パパはちょっくら間男をミンチにしなきゃいけないから、ユイはママの事をよろしくな?」

「パパ、負けないでくださいね」

「あぁ―――」

 黄金の剣を抜いたオベイロンの前に立ち、二刀を構える。

「―――こんなクソ野郎に俺が負けるかよ」

*1

 自分でも予想外に冷たい言葉が出た。あぁ、そうだ。俺は今キレているんだ。どうしようもなく怒っている。明広がやった茶番もそうだし、アスナが傷ついているのもそうだ、……だけど、一番の理由は、

 俺は俺自身を許せない。

 力が無くてこんな事態にさせてしまった自分の非力さが、

 こんな状況になるまで何もできなかった自分が、

 なによりも憎く、腹立たしい。

「くくくく―――」

 オベイロンは俺の怒気と殺意を受けて嗤う。嘲笑する。その姿が何よりも愉快そうで、そしてまるで汚物を見ているような視線を向けてくる。

「あぁ、ずっと君が邪魔だったんだよ和人君。君は社長に気に入られていてね。だから社長は私と明日奈の結婚に関してはあまり乗り気ではなかったんだ。ずっとずっと前から、SAOの中を見ていた時から君を見ていた酷いイラついた。君だけは殺したかった。今、アーガスだとかもうそんなことどうでもよくなった今でさえ、”我”はお前に執着している」

 段々とだがオベイロンから邪気が漏れ出ているのが解る。直接精神を犯す様に、直接悪意が流し込まれる。だが今更そんな精神攻撃が通じるわけがない。あの圧倒的覇気を纏った友の覚悟と比べれば、

「心地良いぐらいだな……!」

「吠えたな和人。貴様は殺す。あぁ、殺すともさ。いらん。貴様も明日奈も社長も部下もこの世界も。煩わしい。待っていろ。もうすぐフラクトライトへの干渉術は完成する。それを持って世界は死に絶える。あぁ、そうだ」

 オベイロンが笑みを浮かべる。

「―――我以外は誰もいらない」

 その言葉はとても切実な言葉であり、同時に吐き気を催す様な絶対的邪悪だった。その言葉にはどこまでも酷く強い、一人になりたいという願いが込められていた。一人になりたい。だが世界は人で溢れている。だったら殺そう。人類を滅ぼそう。その手段を生み出して、人類をすべて消し去ろう。それがオベイロンだ。

「腐食の体ぁ? 夜に無敵の不死鳥? 終焉を与える拳ぃ? 時を止め星天さえも停止させる願いぃ? なんだそれは。何故そうも小賢しい―――」

 その先は言わせない。絶対に言わせるものか。

 俺が戦ってきた敵を、友を、戦友を、それ侮辱するような言葉は絶対に許さない。

「オベイロォオオオン!!」

「来るがいい虚構の英雄。まずは貴様を殺して、我の世界を生み出す手向けとしてやろう」

 オベイロンの持てる速度の全てを超越して心臓に二刀を叩き込む。音を完全に超越した斬撃は寸分の狂いもなくオベイロンの心臓に刃を叩き込んだ。

 しかし、

 その刃はオベイロンの服に触れたところで完全に静止している。

「馬鹿……な……!」

「くくくく……!」

 ありえない。これが何らかの能力や創造の効果だったら理解できるが、これは純粋に硬いだけだ。純粋にオベイロンの存在としての強度が全てにおいて俺を超越しているだけだ。一瞬で悟る事が出来る。自分がこいつ以上に存在としての強度を高めない限り、俺は絶対に一太刀たりともこいつの体に攻撃を通す事が出来ない。

「ハァ―!!」

「ッ!」

 そしてオベイロンの攻撃を受ける。

 それは達人と呼ぶには程遠い斬撃だった。下手だと言ってもいい。だがその一撃の全てが必殺で、ミハエルの拳並みの脅威があった。そう、オベイロンは強いだけなのだ。圧倒的に、存在の次元として別格の位置に立っている。相性だとか、能力だとか、そんな事を無視して純粋に強い。

「どうした、先ほどまでの威勢がないぞ黒の英雄」

「それでも―――」

 ―――俺は止められない。

 ……セリフ、借りるぜ。

 刃を、羅刹をオベイロン”だった”存在へと向ける。

「知るか―――首を置いて行けオベイロン」

 お前の首を―――友への手向けとする。
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| 断頭の剣鬼 | 09:21 | comments:8 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

あぁ……キリキリが首おいてけ病に感染なさったぞ――――!

前から予兆はあったんだ……、クソッ……。

でもやっぱりかっこいい。

| オベリスク | 2012/09/27 10:28 | URL |

とうとうキリキリが首置いてけ病の被害に…

かっけー☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

| アンデス | 2012/09/27 11:14 | URL |

既知感は治療できても、首置いてけ病になったら意味がないでしょう?!

| 読者 | 2012/09/27 11:53 | URL |

今回で、「黒の英雄キリト」は終了です。
次回からは、「黒の妖怪キリト」をお楽しみ下さい。

| 空 | 2012/09/27 17:08 | URL |

うーむ。
なーんか今のキリト、天狗病患者に勝てなそうな?

| 羽屯十一 | 2012/09/27 21:15 | URL |

首置いてけ病感染者vs天狗病感染者とかww

| 神無月 | 2012/09/27 23:52 | URL | ≫ EDIT

とうとう、首おいてけ病が発症したか。
とりあえず、羅刹持っている間だけだと信じたい。

つか、ヒースクリフや獣殿マダー?
このままだとキリト勝てそうにみえないんだが。

| 断章の接合者 | 2012/09/28 06:56 | URL | ≫ EDIT

その首を置いて今すぐ消し飛べオベイロン、そしてその後ろにいるものよ。


我らの黄昏は絶対に奪わせない。

| | 2012/09/30 20:52 | URL | ≫ EDIT















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