陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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妖精郷 ―――バッド・ポイズン

推奨BGM:Unus Mundus
*1推奨BGM:Thrud Walkure


 しばし、司狼と共に無言の時間を過ごす。何も口にすることができない。今、この瞬間に言った言葉は何よりも陳腐に感じられそうで、明広に関して語る事を止めていた。ただ、此処には偉大な男が一人いたのだと、胸に、魂にそう刻む以外にはないと、無言のまま同じ意見を持つ。ただそれも長くは続かない。十数秒無言で黙祷したところで、司狼が立ち上がる。

「やる事できたわ。ま、頑張れや」

 そう伝えて司狼はこの世界から去った。あっさりと、何の未練も残すことなくALOから去った。

 この広く、寂しくなってしまった街に残ったのは俺一人だけだった。街の姿を残さないアルンを一度だけ眺める。その様子をユイも眺め、

「寂しい光景ですね」

「……そうだな」

 だが、この状況に明広を追い込んだのは―――俺かもしれない。

 俺が感染さえしていなければ―――。

「パパ?」

「ううん、いや。それは違うよな」

 誰もが全力で動き、生み出したこの結果を俺のせいだと喚いてしまうのは間違っている。すくなくとも明広の頑張りを”その程度”の事にしてしまう。それだけは許せない。誰も、アイツの命を賭けた行動を否定なんかさせやしない。この件に関して無駄だったとか、成功だったとか、それを語っていいのはアイツだけだ。だから、

「悪いユイ。ママを助けに行こうか?」

「ハイ!」


 懐にいる娘の存在を今は他の祖もしく思いながら前へと進む。前に進んでいる事を確かめながら、明広が立っていた位置を通り過ぎ、そして彼が守っていた石扉の前に立つ。装飾を施された巨大な門は見る者を圧倒し、侵入者を拒んでいる。目の前に本当に進入するかどうかを確認してくるホロウィンドウが出現する。今更これがゲームだと思い出しながら迷うことなく肯定し、門が開く。音を立てながら俺を中に通すために左右に開いた門を抜け、その中に踏み出し―――

「―――ようこそ」

 そこには先客がいた。


                           ◆


「ようこそ、エル・キホーテよ。ここは素直に初めまして、等と陳腐な言葉を使うべきか。君から見れば私と会うのは初めてかもしれないが、私にとってはもう既に幾度となく経験した事なのだよ。いわゆる”一方的に相手を知る”といった状況だろうか。だがそれでも君にとっては初の邂逅だろう。故に、私は言葉を選び、初めまして、と言おう」

 それは影だ。影の様にゆらゆらと揺らめく男の存在だった。まるで何も感じさせない。何も存在しない。そんな男だった。ぼろぼろのマントに長い青髪。その顔は整っているが、その姿を見ているだけで嫌悪感と吐き気を催していた。何故だか解らないが、直感がこの男を警戒しろと告げてくる。もはや既知感の存在しない、普通の勘となったが、それでもそれは全力で目の前の存在に対する警戒を告げていた。素直にそれに従うこととし、剣を握ることを視野に入れておく。

「初めまして……で、アンタは誰なんだ?」

 質問したところで、小さく笑みを男が浮かべる。

「あぁ、済まない。そうであった。そう、この出会いは君にとっては初の出会いであったな。私にとって数ある回帰のうちの一つにしかすぎぬが、出会いには名乗りが必要であったね。では名乗らせてもらおう。聖槍十三騎士団黒円卓」

 そうだろう。その所属以外にこの妙な気配も雰囲気もあり得ない。ALOでまたみていない席で残っているのはあと三席。ラインハルト、シュピーネ、そして明広が代行していて、本来の十三位の人間。つまり、この男は―――

「第十三位”水銀の王”―――カール・クラフト」

 昔、第二次世界大戦中のドイツにおいて処刑されたという男の名前だ。なぜこうもこのグループはあの時代の名前が出てくるのだろうか。しかし、こいつを見て納得した。

 ―――こいつとは絶対に相容れない。

 主義主張とかの問題ではなく、こいつとは生物として相容れることは絶対にできない。それは生まれる前から決まっているような感覚で、何度人生を繰り返そうがこいつとだけは絶対に同じ意見を持つにいたる事は出来ない。それは確固たる意見として抱く事が出来た。

「パパ……この人……怖いです」

 静かにユイの頭を撫で、ポケットの中で隠れている事を促す。こいつは対峙しているだけでも心臓に悪い。会話しているだけで見えない鎖に縛られている様にさえ感じる。

「で、何の用だよ。メルクリウスさんよ」

「なに」

 変わらぬ微笑を浮かべるメルクリウスは言葉を紡ぐ。

「―――感謝したかったのだよ」

 その言葉に嫌な感覚を覚え、

「―――素晴らしい茶番劇であった。実に見ごたえのある幕だった。その事に感謝したい。良くぞ我が息子の舞台に付き合ってくれた」

 男の言葉に凍る。まて、今この男はなんて言った。茶番劇……その言葉は許しがたい事だが、それ以上に、

「息子……? お前が……」

 父親か、と問おうとした時それは違うと判断する。家族構成は政府に状態を聞いたときに、ついでに聞いたはずだ。父親はこんな男では断じてない。ごく一般的なサラリーマンのはずだ。だからこいつが言っている事は嘘だ。しかし、

「然り。”アレ”を作ったのは私だ。とは言え、別に女と交わって生み出したというわけではない。”こうなって”以来私には性欲と呼べる物は存在しなくてね。そういったものに一切縁はないのだよ。しかし、だからこそ」

 水銀は今、酷く恐ろしい事実を今告げているような気がする。これは毒だ。聞けば逃れる事が出来なくなり、そして一生背負わなくてはならなくなる毒だ。

「アレの魂は私が用意した。未だフラクトライトの宿らぬ胎児に用意した物を入れるのはそう難しい事ではない。私の血(魂)を濃く残す、正真正銘、我が子だよ」

 耐え切れなかった。

「ふざけるなぁ―――!!」

 一瞬で背中の二刀を抜き、光速の剣舞を水銀の体へと打ち込む。創造の最高域に存在する者さえ傷を得る事となる連撃は全て影の体に投下され、一切の傷を生み出す事が出来ない。

「アレは実に良い道化だったよ。私が思い描く通りに踊ってくれた。そしてこれからもそう踊ってくれるだろう」

「ふざけるな!! 黙れ! 黙れ! 黙れぇ―――!!」

 これ以上こいつを喋らせてはいけない。毒は毒でも、こいつの言葉は猛毒だ。欠片だろうと飲み込んでしまえば、一生戻れなくなる毒薬だ。これ以上聞いてはいけない。当たるはずもない剣を何度も何度も水銀の体に打ち込む。しかしそれは一切の傷を生み出すことなく、ただ虚しく空ぶる斬撃の音と、それによって斬撃を刻まれる大型ホールの音しか存在しない。それを見て水銀は笑う。

「なにをそう怒る? アレもそれを理解して君の前に立ったんだ。私は勝利者に与えられる当然の賛辞を施しているだけだ。知りたいのであろう? ―――真実が」

「明広を、アレって呼ぶな―――!」

「あぁ、それが気に障ったのかね? ならば謝っておこう。済まない、と。しかし君とシャヘルで繰り広げてくれた茶番劇は実に見ごたえのある一幕だった。それに関しては久々に良いものが見れたと感じられたよ。既知感に紛れ澱の底で沈む日々だが、久々に友情というものに関して見直す事が出来た。そして確信できた」

 ―――これが最後だ、と。

 そう告げるのと同時に水銀の姿は薄れ、消えて行く。

「また! 消えるな! 答えろメルクリウス!!」

 消えて行くメルクリウスの姿に向かって吠える。

「答えろ! お前は、お前はいったい何をさせたいんだ!!」

 茶番劇。見ごたえのある一幕。その言葉から察するにこの影法師は常に背後からこのすべてを観察し、そして事態の誘導を行ってきた。つまり、こいつが全ての元凶であり主犯だ。それは確信を通り越して真理とも言える事だ。だが、その目的が全く持って見えない。これほどの怪物がこの程度で満足するはずがない。これがもう何十年も前から計画されて、明広が生まれる前から仕組まれている事だったら、此処がゴールであるはずがない。

 だが答えない。

 カール・クラフト、メルクリウスはその問いに答えず姿を消す。現れた時の様に、静かにただ消えるのみだった。胸の中に罪悪感と毒の塊を植え付け、水銀は消えた。あぁ、こいつが何で誰からも好かれないか理解できる。こんな別次元の生物、誰が好きになれるだろうか。ミハエルもエレオノーレも明広も、超越していたのは戦闘力で、しかしまだ人間と呼べる存在だ。

 だが今のアレは、根本と呼べる部分から違う位置に立っている。

 人間の始まりをゼロだとすれば、あの男は生まれた時点で百に立っていた。それだけの違いがある。

「……クソ」

 胸糞が悪い。本当に、精神をかき乱すだけかき乱して消えた。迷惑な事をしてくれた。

「パパ、あの人が言っている事をあまり気にしちゃいけない気がします」

「うん……そうだね」

 刃を再び背中の鞘に納めながら、ユイの頭を撫でる。

「ユイ、ママは……」

「上ですパパ」

 上を見上げれば縦に長いホールの天井に門が見える。固く閉ざされているそれは、感覚的に捉えれば外の障壁と同じだと理解できる。つまりシステム外の攻撃をしたとしても壊す事の出来ない、あの圧倒的強度を有している。システムからその存在は逸脱しているが、

「あの扉はママがくれたアクセスキーを使えば開きそうですよ」

「うん。たぶん―――」

 あぁ、多分こうやってこの鍵が俺の手にやってくる所までもが、全てがあの男に計算されている。理解せざるを得ない。

 抜け出せない。

 あの水銀の手の平からは生半可な行動では抜け出せない。

「……」

「パパ……」

「解っている、解っているんだユイ。気持ちを切り替えなきゃいけないのは。でもさ、大事なダチだったんだ。アイツ、根暗で、首フェチで、おっぱい星人で……平気で人を殺すようなやつだったけどさ、何時も寂しそうにしてたんだ。ダチの為だったから平気で人を殺せたんだ」

 それはとても愚かで―――とても尊い事だ。

 だから明広の生き方を尊敬するのと同時に、認めるわけには行かないのだ。人を殺して、自分の犠牲にするようなやり方を認めるわけには行かない。だけどアイツが純粋に仲間の為に率先して露を祓った事実は忘れてはならないのだ。

「仲が良かったんですね」

「あぁ。親友だと思ったし……兄がいたらあんな感じだったのかなぁ……」

 クラインと合わせて、あの二人はどちらかと言うと兄っぽい感じだ。本気で心配してくれて、そして何か間違えれば正してくれようとしてくれた。その事実には感謝してもしきれない。だから、

 いい加減そろそろ終わらせる。

*1

「ユイ」

「ハイ! 頑張ってくださいねパパ! ご褒美にチューを用意してますよ!」

「そりゃあ頑張らなきゃいけないよなあ……!」

 軽く体をほぐし、加速の準備に入る。もう翅を使う必要はない。そんなものがない方が早く動けてしまう。それだけ常識から外れた体になってしまったが、それもこの先、絶対に必要となるのだろう。救い出すために、先に進むために。そう、俺が望むのは完全無欠のハッピーエンドだ。明広が死んだことは仕方がないで済ませる事は出来ないけど、

「お前の女は俺が絶対に助け出すから!」

 最期を看取った人間としての、責務を絶対に果たす。

 覚悟をし、

 地を蹴る。

 一瞬で加速を得た体はシステムが起こすソニックブーム現象を超越し、一瞬で体を天井の門へと到着させる。到着した後で侵入者を探知し、壁から巨大な騎士型守護者が大量出現する。一斉に襲い掛かってくる姿に門を足場にしながら、

「邪魔を、するな!」

 刃を抜き放った衝撃で現れた守護者を全て滅ぼす。その程度なら造作もないだけの実力を得てしまった。

「アクセスキー起動! ここと世界樹内部を繋げます!」

足元で門が内側へと向かって開き始める。両手に剣を握ったまま、迷うことなく扉の中へと入りこむ。

「待っていろアスナ―――!」

 今から、

 お前を抱きしめに行くから……!

 アルヴヘイムへと来た時の様に、はじまりの二人で最後の場へと望む。




実力もそうですが、キリト君の一番の成長的要素は、精神的な部分です。
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| 断頭の剣鬼 | 09:55 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ニートてめぇぇぇぇえ!!!!!!!

安定のウザさでした。

| 暇人 | 2012/09/26 13:45 | URL | ≫ EDIT

ニートうぜええええええええええ!!

そしてユイちゃんかわいい

| ほろ | 2012/09/26 14:40 | URL |

ニートは本当何処へ行ってもうざいなぁwww

| 裸エプロン閣下 | 2012/09/26 17:08 | URL |

魂とか言われたのに、否定できない不具合ィイ
メルクリウス、まじウゼェェ!!ww

| 読者 | 2012/09/26 17:58 | URL |

ニートuzeeeeeeeeeeee!

| とろつき | 2012/09/26 19:21 | URL |

いや本当に……
ニートうぜえええええええええええっ!

| 臣 | 2012/09/26 21:22 | URL |















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