陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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覚悟 ―――フレンド・シップ

推奨BGM:Omnia Vanitas
*1推奨BGM:Disce libens


「司狼ォ―――!!」

「明広ォ―――!!」

 そんな叫び声が無人の、灰塵と化した街に響く。もはや栄華を誇っていたアルンの姿はない。存在するのは焼け野原、そして無傷の世界樹のみ。その元の姿を知っているものがあれば来る場所を間違えたのではないかと疑う程にその変貌は凄まじい。その事態を引き起こした本人は痛々しい体を引きずる様に前へ踏み出し、拳を突き出していた。それは先ほど戦っていた時と比べ確実に威力が落ちている。今まで別次元に到達していた強さはもはや薄れていくのみだった。だがそれでもその拳は人間一人砕くには十分すぎる力を持っている。黒円卓の戦士、ベイ並の破壊力を持った拳を、

 司狼は顔面で受け切り、明広の着る軍服の胸倉をつかみながら殴り返していた。本来なら砕け散るだけの威力を持った拳は司狼には通じるが、司狼を絶命させることは叶わない。司狼は自滅因子。明広に残された絶対不変の自滅因子。こればかりは絶対に切り離せない最後の絆。故に明広が司狼と同等の強さまで落ち、司狼は明広と同等の強さまで強化を受ける。この二人はどこまで行っても対等で、対等でしかないからこそ互いに滅ぼし合う。そこに優劣が生まれる事はなく、二人は対等のままに殺し合って、滅ぼし合う。それが自滅因子に許された運命であり、その最後だ。

 だから司狼と、そして明広の殴り合いは一方的な展開にはならない。


「かははははは!」

「こうやって殴りあうのは何時振りだろうなぁ!」

「んなもんあの時以来だろうがぁ!!」

 互いに左手で掴み合い、そして右拳を叩き込む。自滅因子から解放された瞬間全身に力が入らなくなった。体はおそらく運命から解放されるのと同時にパワーレベリングの運命と、争い続ける運命から解放された故の疲労だろう。戦い続ける必要があるのは司狼のみ―――故に司狼の体力は尽きない。

「テメェ昔からやり方が回りくどいんだよ!」

「お前も昔からぶっ飛びすぎなんだよ! 俺はもう少しあの微温湯を味わいたかったんだ!」

「馬鹿かテメェ、進まなきゃぬけだせねぇだろうがぁ!」

「馬鹿はテメェだ! 微温湯の何が悪い! あの日常はあの時しか得られないんだぞ!」

「次があるんだよばぁーか!」

「だとしてもその瞬間を味わうことの何が悪い!」

 殴りあう司狼も明広もどちらも本気だ。その拳に躊躇は存在せず、迷いのない拳が体に突き刺さる。その速度も、破壊力も、あらゆる面において先ほどの戦いに比べて弱体化している。なのに、その苛烈さ、衝撃的な印象強さは先ほどを超えていた。この光景が網膜に焼き付いて離れないような感覚に陥る。解る。そう、これは魂の語り合いなのだ。己の魂を拳に乗せ、殴りあっているのだ。だからこそこんなに苛烈で、悲しく、嬉しそうで、


                           ◆


「―――そして美しい」

 ―――この人はいったい何を言ってるんだろう。

「見えるかねマルグリットよ? そして見ておられるか、獣殿よ。これだ。これこそが私たちが求めてきた友情という存在のあり方だ。我々の友情をこの者たちと比べると、私は自分が恥ずかしくなるよ。あぁ、そうだ。羨ましい。何とも羨ましい。破滅を知って自滅を知りながら託すものと託されるものがある事がここまで妬ましいとは」

「―――あぁ、見ているともカール。見ているだけで心が躍る。我々には到底真似のできない友情の表し方だ。卿の言う通り嫉妬すら私は覚える気がするよ。可能であれば私もまた、卿に愛を示したい。だがまだその時ではないのだろう、カールよ」

「然り。まだ時は満ちていない。誰も太極へと至っていない。まだ時期尚早だ。故に我らが彼らの様に友情を確かめあえる日もまた遠い。あのように先に進むことを放棄して全てを刹那に投げ出す事は愚かである。しかし時には愚かしい事もまた必要であり、故にこの争いも必然」

 どんなに否定したくても声は聞こえてくる。肉体はがんじがらめに拘束されていて、精神だけが黄昏の浜辺にたどり着いていても、それでもこの声だけは聞こえてくる。アキを通してどうしても理解してしまう。この二人は私と一緒で違うんだって。本来なら喜ぶべきなのかもしれないけど、

 怖い。

 怖いよ。

 何でこの人たちは笑っていられるの―――?

 やめて。やめさせて。お願いカリオストロ。二人を戦わせるのを止めて!

「これはまた妙なことをおっしゃる。貴女は自分を救いに来る英雄を望んだはずだ。どんな逆境も跳ね除け、貴女だけを見て、そして貴女を何よりも愛してくれる首輪が欲しい、と。貴女の願いは叶い、今全てを賭けてその願いを叶えようとしている」

 そんなのありえない。

 痛い、痛い痛い痛い痛い。

 心が、抉られるように痛いよ。

 アキが喜んでいるなんて―――嘘だ。私には解る。こうやって、どんなに離れていても、心で繋がっているから解る―――アキは楽しんでなんかいない。泣いている。嘆いている。親友と戦わなきゃいけない事に心の中で泣いている。ここに来るまでに何回も傷つけてしまった事に泣いている。本当は優しい人なのに、何でこんなことをしなきゃいけないの?

「あぁ、それも全て、貴女の為。貴女がそう願ったからだ、我が女神よ」

「卿は卿の男と共に居られる未来を望んだ。故にカールはそれに相応しい舞台を用意しただけに過ぎない。安心するがいい。カールはこう見えて役者としては二流だが、舞台監督としては一流だ。卿が望み、思い描く事は果たされる。故に」

「今はこの素晴らしき茶番劇を楽しもう。見たまえ」

 嫌でも二人が殴り合っているのが見えてしまう。見たくない。こんなもの見たくない。

「くくくく……」

「ふふふ……」

 こんな酷いものを見たくない。痛いだけのこの全てを見ていたくない。あの傷ついて今にも倒れそうな体を抱きしめたい。私の手で癒してあげたい。なのにここからは一歩も動く事が出来ない。何で。

 何で私はこんなに無力なの。ただ助けられるだけの女じゃ嫌なのに。私はずっと背負われて生きる様な女にはなりたくないの。隣で一緒に歩けるようになりたい、胸を張って一緒に歩きたいのに。

「ククク―――ハハハハハハハハハハ!」

「フフフ―――フハハハハハハハハハ!」

 黄金と水銀の二人が何よりも恐ろしく見える。自分と同じようで、この二人は根本的な思想が違う。昔、黄金に対して感じた恐怖の感情は今ここで蘇り―――そして、初めて水銀を怖いと思えた。別次元の生物、絶対分かり合えない生き物の様に感じて、怖い。今、どうしようもなくアキを抱きしめて、抱きしめられたい。

 アキ―――。

 直ぐに抱きしめてあげたいけど、動けない。怖くて、今この瞬間にも抱きしめられたいのに、アキは―――。


                           ◆


「オオオォ―――!!」

「ラァア―――!!」

 拳が明広の顔に命中し、その顔に罅が走り、僅かに割れる。いや、顔だけじゃない。その体は司狼以上に脆く、そして砕けそうになっている。その動きも姿ももはやあの荒々しさの欠片もない。もはや死を寸前に控える病人の様な、そんな姿があった。赤かった髪は少しずつ本来の青色を取り戻し、そして皮膚の色も肌色へと戻る。ここに、完全に変化の抜けた明広の姿があった。本来の、明広の姿だ。それは政府の人間から聞いたような、今にも砕けてしまいそうな男の姿だった。

「大体テメェあんな下手な演技で騙せると思ってるのかよ!」

「うるせえ! 俺はお前の様に頭は良くないんだよ!」

 それでも鮮烈に、この刹那に全力で輝く男はどうしようもなく、美しく映る。

「馬鹿なんだよ! お前の様なインテリと違ってここ数年剣握ってばっかだし、首落としてばっかだし、そこまで頭良くねぇんだよ! だけどなぁ、やらなきゃいけねェことがあんだよ! 魂賭けて、命はって、絶対に成し遂げなきゃいけねぇもんがあるんだよ! あぁ、偽悪的だったさ! ―――惚れた女を助ける為にお前らを利用して何が悪い!」

「がはぁ―――」

 ボディブローが司狼の鳩尾に突き刺さる。もはや戦いではなく、喧嘩と言えるレベルにまで争いは落ちていた。明広自身は瀕死で、そして戦う力など残っていない。その体から消えた残滓の気配が今までの超人的な力の正体だ。もはや明広に残されていたのは強い願いと感情だけで、直接残滓を取り込むことによって一時的に神にも等しい位置へと登りあがったのだ。

 そこに後はない。

 残滓に残された力が消えれば―――そこまでの命だ。

 明広自身の状態は、あの形成で生み出された刃を見ればわかる。形成でさえ限界だったのだ。それだけ明広の魂は弱っていて、戦闘できる状態じゃなかった。それでも願いを叶える為に―――

「ざんけんじゃねぇ!!」

 司狼の叫びと共に拳が顔に、腹に、胸に当たり、大きく明広がよろめく、両者ともに血反吐を吐きながら、それでも拳を構え、

「あんまふざけた事ぬかしてるとぶっとばすぞぉ―――!」

「あぁ……だがもう遅い」

 司狼が拳を振るった瞬間、それに合わせる様に明広も拳を振るい、両者の頬に拳が突き刺さる。それを受け数歩よろめき……大地に倒れる。肩で息をしながら大地に倒れる両者の姿は、この戦いの結末を物語っていた。

 相打ち。

 しかし、

「死んでいない……?」

 自滅因子がその役割を果たすのだったら、ここで明広と司狼が死んでいなくてはおかしい。明広は死にかけだが、司狼はどこからどう見ても瀕死とはいかない。疲れ切って、倒れているだけだ。

「……安心しろ、俺が死んでも司狼もエリーも死なない」

 再び立ち上がり、明広が司狼、そして俺を見る。

 その体は、崩壊していた。

*1

「テメッ……」

「自滅因子が相打ちで互いを滅ぼすのはそれが神に近いとき。……人に近い状態じゃ発動なんかしねぇよ。お前もエリーも死なねぇから心配すんな」

 穏やかな表情の明広があった。やるべきことは全てやった。そう言わんばかりの表情で、静かに佇んでいた。何故、何故こうなってしまったんだ。何故こんな結末しか残されていなかったんだ。こんな、こんな展開ありえない。おかしい。

「和人」

 名前を呼ばれる。反射的に俯いていた顔を持ち上げ、明広の顔を見る。

「あまり、ラインハルトを責めるな。アイツは俺の我が儘に付き合ってくれて……アイツも被害者だから。んで司狼」

「おう」

 司狼が倒れたまま視線を明広へと向ける。明広も司狼へと視線を向け、

「これ、俺の勝ちな」

「倒れたのはお前が先だから俺の勝ちだっつーの」

 そう言って、司狼も黙り込む。この状況、誰も何もできず、かける言葉も思い浮かべず、ただゆっくりと砕けて光に消えて行く明広の姿を目で追いかける。こんな状況でどんな言葉を掛ければいいのか、それが全く分からない。生きろ、死ぬな、そんな言葉は誰にだって言えるし、安い言葉だ。そんな、そんな言葉じゃ止められないし、止める事は出来ない。

 駄目だ。

 俺では無理だ。

 気が付けば涙が流れていた。本当に何時の間にか、涙を流していた。泣く事なんて本当に何時振りだろうか、前に涙を流したことを思い出せない。

「……泣くなよ、男なんだろ? 折角お膳立てしてやったんだから、負けるなよ主人公―――」

 その言葉を残して光となって、明広が消えた。

 VRギアは脳の状態を読み取ってその姿を仮想世界に映しているのだ。このゲームから消える方法はいくつかある。一つは寝る事、もう一つはログアウト機能を使う事、三つ目がVRギアを外す事であり、最後に―――心肺が停止した場合。

「……」

「……」

 何も言えず、もはや面影を世界樹以外にはなくしたアルンの街を見る。明広の意図は最後の最後で何となく察せられた。この体は今、力で満ちている。自滅因子として力を加速的に得て、明広の弱体化に合わせて弱体化する前に、因子としての役割を切り離された。おかげで残ったのは力だけだ。力だけだが、

「こんな……こんな力に意味はあるのかよ!」

 拳を大地に叩きつける。その衝撃で大地は砕ける。もはや人間と呼べる者の力ではない。

「パパ……」

「ユイ!」

 そうだ、ユイだ。すっかり存在を忘れていたが、ユイをポケットに入れっぱなしのままだった。ポケットの中のユイが大丈夫か確認する。その姿に傷は見えないが、

「大丈夫かユイ!?」

「はい。戦闘中、一撃もこっちへ来なかったので傷一つないですよ」

 あの激しい戦闘の中で一撃もユイには届かなかった? それはつまり―――

「今更フェミニスト面かよ。俺の事ボコボコに殴っておいてやるせねー」

 意図的にユイへの攻撃は避けたのだろう。そう考えると、正樹への攻撃もあの一撃を与えるまでは避けていたのかもしれない。だとしたら、どこまでも計算されていて―――馬鹿な事をやったとしか言えない。

「死んだら……意味ないじゃないか……」

「―――ホント、意味がないよね」

 新しい声に素早く振り返る。背後にはいつの間にか氷室玲愛の姿があった。巫女装束のまま、悲しそうな瞳を明広がいた場所へと向けている。その視線を司狼と俺へと移す。

「男って馬鹿ばっか」

「否定できねぇ」

「うん……」

「自分達だけで盛り上がって、勝手にはしゃいで、それで勝手に死んで……ホント、自分勝手だよね」

 そう言いながら玲愛が一つのアイテムを取り出す。それは戦う前に明広が回収したアスナからの贈り物だ。確か明広が持っていたはずだが―――

「はい」

「っと」

 投げてよこしてくるそれをキャッチする。ユイがそれを見つめ、

「これ、管理者用のアクセスコードです! これがあればこの世界のほとんどの場所に行けますよ!」

「うん。この先、世界樹の中にはそれを使わなきゃ通れない場所があるから、用意しておくといいよ」

 玲愛が背中を向ける。

「あ、あの……」

 何故彼女を止めようとしかわからないが、反射的に声が出てしまった。何て言おうかと迷っていると、先に玲愛が口を開いた。

「……この世界での彼は君たちに独占されっぱなしだから、短い間だけだけど、現実の彼は少し、独占させてもらうよ」

「おい、聴けよ。先輩ネクロフィリアっぽいぞ」

「遊佐君死ねばいいのに」

 そんな軽いやり取りを残して、玲愛が現実へと帰る。おそらくだが、葬儀まで残された短い時間を独占するためだろう。情が深く、愛も強い女だと思う。まったく、明広は罪な男だ。そんな女を放っておいて、最後の瞬間まで男同士の殴り合いで過ごしたのだから。まあ、だからこそ、

 ―――受け取ったからには進むしかない。

 見上げる世界樹からは未だに、様々な感情が感じられるが、

 その奥に一際ドス黒く、そして濁った汚泥の様な存在を感じる。

「こいつが―――」

 ―――敵か。












簡単な説明
・明広は本来瀕死
・超パワーは残滓を使った強化
・本来は形成でさえギリギリできるレベルに弱っている
・残滓使い切ったらそこで終わり
・自滅因子は神を殺す癌細胞だから弱っている人間には発動しない(たぶん)
・キリトはブーストを受けて強化されたときに切り離された為、強化状態

大体こんな感じ。
今回、前回の話は分かりにくかったのでざっとまとめた感じですね。
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| 断頭の剣鬼 | 09:28 | comments:7 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

アッキーが死んだ⁈
次は天狗か。キリキリヤバくね?

| 御神楽 湊 | 2012/09/25 09:42 | URL |

アレェ~っ!?

サイアスの奴ガチで死んだのかい!?

まさかの展開に驚愕。

| 断章の接合者 | 2012/09/25 10:31 | URL |

みんな、もちつけ。

御伽噺読めば、分かるでしょ
主人公(サイアス)は、ヒロイン(玲愛)の目覚めのキスで復活するんだよ!

| | 2012/09/25 11:45 | URL | ≫ EDIT

大丈夫だ、まだ慌てるような時間じゃない!
あれだよ、たぶんニートパワーで復活するよたぶん・・

| モグラ | 2012/09/25 17:21 | URL | ≫ EDIT

皆落ち着け。そうこれはいつもの、サイアス特有の「死ぬ死ぬ詐欺」に違いない←

| 空 | 2012/09/25 19:57 | URL |

サイアスはキシン流を覚えてたって事?

| 読者 | 2012/09/25 21:09 | URL |

先輩のヒロイン力に期待ww

| 装甲悪鬼 | 2012/09/25 23:19 | URL |















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