陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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覚悟 ―――キャンサー

推奨BGM:Juggernaut


 停滞を破るのと同時に刃根が生き物の様にうねり、此方の命を奪い取ろうと動く。その一枚一枚が触れた物すべてを停止させる力を持っている。それがまともに体に触れてしまえばその瞬間、体は永遠に停止してしまう。星の動きすら止めてしまう祈りはたとえその力と記憶の大部分が消え去ろうとも、それでもあるべき場所へと辿り着き、絶大な力を証明する。

 故にその一閃一閃は回避しなくてはならない必殺である。

 だが同時に、時間という存在はギロチンの前では常に停止している。触れている時間は停止し、自分のみが動いていられる。故にその刃は不可避の現実として襲いかかり、

「オォオオ―――アアアァ―――!!」

 斬撃を叩きつける以外に迎撃の方法が存在しなくなる。

 剣とギロチンがぶつかり合うのと同時に刃に体を映し、停滞を切り裂く。神業としか表現のできないそれは精密な精神コントロール、そしてかつてない心意の発現により発生している。状況は薄氷の上を踊りながら進んでいるようなもので、それがこの先あっさりと崩れるのは目に見えている。だがそれでも、この停滞を受けて戦えるものは俺しか存在せず、故に俺以外が前に立つ事は許されない。

「力を!」

「力を? 力を求めてどうする」

「お前を正気に戻すんだよ!」


 言葉を選ぶ余裕などない。斬撃の一つ一つが繰り出す度に加速し、超音速だった刃があっさりと光速の世界に踏み込むのを軽く自覚できた。こんなあっさりと、今まで苦労してきた事を成した事に驚きを得ると同時に、

「歯ァ、食いしばれェ―――!!」

 拳を振り上げながら司狼が肉薄する。ギロチンとギロチンの間、僅か一ミリも体に攻撃を掠らせる事もなく、斬撃の暴風を抜けて司狼の拳が明広へと突き出される。だが命中の瞬間に背中から新たな刃根が生え、司狼の拳を弾く。

 しまった。

 触れてしまえば停滞して―――

 その事実に気づいた瞬間、

「なめんじゃねぇよ」

 停滞の済んでいない腕の部分と明広を射線にとらえ、迷うことなく引き金を引く。超越者ですら知覚できるか怪しい攻防の間に挟み込まれた弾丸は停滞した司狼の腕を吹き飛ばしながら、血をぶちまけ、弾丸を明広の顔面へと打ち込む。目つぶしと目くらましと攻撃の三段重ねの攻撃。自らの腕が停滞する事を計算に入れての攻撃は勝利への執念、そして覚悟が見て取れる。

「お前もお前だ」

 瞬きすらしなかった。

 明広へと降りかかる攻撃の全ては一枚の刃根によって防がれていた。そして、

「お前は、迷いもなくそれを握ったな」

「ぐおおおおお―――!」

「司狼―――」

 同時に司狼が地面に叩き潰された。辛うじて見えたのは腕が動いた、という事実だけで、その間の動きは見えなかった。わずかな初動の気配から攻撃したと理解できた。

「どこを見ている」

「がああああああ―――!!」

 あっさりと斬撃の全てを防がれ、拳の一撃を食らい体が吹き飛ばされる。全身を貫く衝撃が体勢を整えることも許さず、成すがままに吹き飛ぶことを強要する。

「お前も何を寝ている」

「―――」

 何かを口に出す前に司狼が蹴られ、その体が弾丸の様に飛ばされる。その体は高速で吹き飛びつつ、殴り飛ばされた此方の体と空中でぶつかり地面に落下する。遠く、世界樹前の広場から離れてアルン市内の道路を砕きながら衝突する。

「強い……」

 ふざけたぐらいに強い。なんなんだあれは。

「余裕だな。生き残る事だけを考えなくていいのか」

 歩いて明広が近づいてくるのが見える。一歩、一歩近づく度に圧力は深まり、そして、

「―――震えろ」

 踏み出した一歩と同時に大地が裂けた。アルンを中央で二分割するように亀裂が走り地割れが発生する。家を飲み込むほどの大きな地割れは直ぐに俺と司狼を飲み込もうとする。しかしその時には既に司狼の姿はなく。

 俺も空を”蹴り”、風の壁を足場として一気に前へ、明広へと向かって加速する。

「おおおお―――!」

 素早くヴォーパル・ストライクを正面から打ち込む。それは防御に入った刃根を破壊する。

「ッ!」

「その程度で山を崩したつもりか」

 防御に入った刃根が砕け散るのと同時に別の刃根が重なる様に防御に入り、刃を受け止める。それと同時に明広を刃に映し斬撃を発生させるが、刃根に姿を隠したため斬撃は発生しない。刃根の万能性が高い。攻防同時に使える伸縮自在のギロチンは厄介で、此方の攻撃が全く通らない。それでも、

「そのキャラ似合ってねぇんだよ! 馬鹿じゃねぇのかお前! 今の自分の恰好見てみろよ!」

 弾丸が何十と炸裂し、明広へと向かう。その全てが切り落とされると理解しながらも司狼は引き金を引き、

「司狼、お前もお前だ。何故そんなものに頼った。何故戸惑わなかった。そんな都合よく用意されたものに違和感はなかったのか? お前は嫌いじゃなかったのか。用意されたシナリオを進めるのが」

「ああ、嫌いだね。無駄に反抗したくなるね。だから利用してやってんだよ―――!」

 司狼の銃撃に紛れるように斬撃をさらに加速させ、攻撃を叩き込む。その全てが刃根の防御網を乗り越えられない。まるで子供の相手をするかのような余裕を持った明広は気に食わない。何とかしてこの余裕を崩さなければならないが、その方法が一切見えない。

「俺が無駄に偽悪的だと? あぁ、そんなの解ってるさ。俺は”アイツ”程演技が上手いわけじゃないからな。だから、俺なりにやらせてもらうぞ」

 その言葉の意味はなんだったのか。いや、解る。本心から戦いたいというわけではないのだろう。そもそもこいつの性格を考えれば最初からそんなことぐらい―――

「凍れ―――」

 吹き飛ばされるのと同時に、体が凍り付き始める。凍結の波動が一気に体の自由を奪い、全ての物体の動きを止める。視線だけを司狼へと向ければ司狼も動きを止められ、逃れる事が出来なく、もがいている。その様子を眺めながら明広が口を開く。

「ああそうだ、俺にもお前にも未来はない。言葉を訂正しよう。天狗の打倒などこの程度で躓く俺には不可能だ。だからと言って今のお前らでも不可能だ。解るか? いや、解らないだろう。ここまで全て予想通りに踊ってくれている貴様ら程度では解らないだろうな。考えてみろ。その力はどこから来ている。貴様らはだれの癌細胞だ。癌細胞とはなんだ。永劫破壊とはなんだ。……俺とはなんだ。人間は誰しも疑問を持っているものだ。だから答えを出せ。そこで満足するべきではない。自分を知れ、俺の自滅因子。この友情が何なのかを理解しろ」

 友情。こんな状況で友情なんて言葉を持ってきた。だがその意味を考える時間は存在しない。もうすでに停滞は首まで上がってきている。羅刹の刀身に姿を映して心意を―――発動できない。

「な、ぜ……!」

「元々俺のものだ。お前よりも俺に従うものだそれは」

 黙っている司狼とは対照的に、俺は何かを口にしなくてはいけなかった。何か、何かを言わなければいけないという焦燥感に駆られている。だがそれも解らない。なんて言葉を口にすればいいかが解らない。口を開き、それを閉じるだけ。それの繰り返しだった。その様子に明広は失望の表情を浮かべる。

「……今回も駄目か」

 あきらめきった表情で、そんな不思議な事を口にした瞬間―――

 ―――パン、と乾いた音が街中に響く。

                 推奨BGM:Einsatz

「……!」

「……」

 今までその存在が戦闘の破壊に紛れ、今まで姿が見えなかった正樹だった。あろうことか拳で明広の顔面を殴りつけていた。明広の顔面に拳が命中し―――そしてその顔に罅が走る。正樹のステータス、いや、その能力はこの場にいるだれよりも低い。なのに、正樹の一撃はこの場で誰よりも致命的な一撃を穿っていた。攻撃を穿ったこともそうだが、生存している事も何よりの奇跡だった。

 そして同時に、

 俺と司狼の拘束が解け、

 体に痛みを覚える。

「―――自滅因子は癌細胞。寄生した相手を絶対に滅ぼす自殺の手段。何をしようが結果として絶対に宿主を殺す運命の相手」

 正樹が拳を振りぬいたまま明広へと顔を向けて、言い放ち、

「宿主が死ねば、癌細胞も共に滅ぶ」

 正樹がそれを口にした瞬間、ギロチンの刃が正樹の体に突き刺さる。突き刺さった所から砕け散る正樹のアバターは崩壊の寸前であっても、口を止めずに、

「運命なんかに負けな―――」

 そこまでを口にしてから正樹のアバターが砕け散り、強制的にログアウトさせられる。その構成ポリゴンがゆっくりと消えて行くのを見ながら、何故か、正樹の言葉が酷く、重くのしかかった。自滅因子。癌細胞。今まで何度も聞いた言葉だ。だが不思議とそれらの情報は自然としみこんだ。体になじむ気がする。

 デジャヴと吐き気と共に。

 これは見た事がある。

 確信と共に今までにない程の特大の既知感は全身を犯し、体が半ば勝手に動いている気がする。剣を二本とも構え、吐き気を堪えながら戦闘態勢に入る。いらない。こんな吐き気も既知感もいらない。あぁ、解ったぞ。つまりなんだ。

「俺達が自滅因子って訳か」

「アポトーシス―――魂に与えられる救済だ」

 刃根が広がり、まるで天使の翼の様な姿を見せる。だがその姿は天使としては少々邪悪に過ぎる様に見える。全身からは発せられる波動は停止の概念を含んでいる。が、それはもう通じない。自分のこの既知感が何の為か、今の正樹の言葉で理解できてしまった。バラバラだったピースがしかるべき場所にはまる様に、そんな感覚を持って完成されて行く。

 この既知感も、急成長も、

 つまりは全てこいつひとりを殺すためだけの現象。

 理解した瞬間に脳は情報で埋め尽くされる。

「おいおい、ふざけるなよ。ふざけんじゃねぇぞテメェ―――!」

 司狼が怒りの咆哮を上げる。その憤りは理解できるし、俺も今、この瞬間にそれを強く感じている。この戦い、どう足掻いてもこの三人の破滅しか待っていない。この既知感に満ちた世界は俺の確実な勝利と終焉を告げている。それが絶対的な運命。

 だが、

 それでも、

「俺は―――アスナに逢いに行くんだよ!」

 そうだ、こんな所で躓く暇なんてない。この先に進んで、俺の女を迎えに行かなきゃならないんだ。自滅因子結構。簡単な話だ。

「この刹那に―――運命を超えろって話だよなぁ……!」

「あぁ、簡単な話だよな。まってろ、テメェのスカしたツラ、今ぶっとばしてやっからよぉ」

 司狼が銃を構え、俺も二刀に途切れていた心意を纏わせる。その姿に―――明広が笑みを浮かべた。

「来るか、進みたいのなら―――俺を殺して見せろ!」

 踏み出すのと同時に斬撃を叩き込む。一撃目で刃根を破壊できた理由が今なら解る。急に凍結が利かなくなったのも、こうやって急成長を遂げているのも、全部明広の力だ。この癌細胞という運命が明広を通して俺に力を送っている。意志に関係なく、同じ領域に立ち、確実な相打ちを果たすために力を得ているのだ。

 故に、

 斬撃の一撃一撃で凶悪な処刑刃は破壊され、背中から新たな刃根が生える。驚異的な速度と再生力だ。だが、此方にいるのは俺一人だけじゃない。

「ぶっとびやがれぇ―――!」

 銃を鈍器に、銃身部分を握り振りかぶった司狼が俺の影から現れる様に銃を振り下ろす。ギロチンが防御に入り、カウンターの斬撃を司狼に浴びせてくる。だがそれを紙一重で回避しながらも刃根を砕き、

「っぐ」

「はは、こういう事かよ……!」

 明広の肩口に一撃が叩き込まれる。司狼の一撃が成功するのと同時に鈍痛を感じる。なんてことはない。自滅因子としての運命だ。相手の身が削れれば此方の身も削れる。それは破滅の理であり自滅の運命。だが、この程度止まるわけもない。

「舐、めるなぁ―――!」

 心意の輝きを最大に刃根の防御を突破し、斬撃を体に叩き込む。強引に攻撃を叩き込む結果として此方の体にも斬撃が刻まれる。

「くくく、いいぞ、その調子だ、ほら、どうした!」

 刃根が大地に突き刺さり、まるで棘の様に無限に大地から湧き出てくる。素早いバックステップで回避するのと同時に、空を足場に蹴り、素早く回避する。アルン全ての大地から生えるギロチンの森は下に足場がない事を証明し、空へと追い込まれたことをも証明している。

「The Killer og Giant―――」
 巨人殺しよ―――


 一言目からそれが攻撃の為の祝詞だと気づかされる。だが気付いた瞬間にはギロチンが大地を砕き、大小様々な岩塊が出来上がっている。停止の概念によって守られたその岩塊は決して砕ける事はない。故に最強の鈍器として、その存在は完成している。

「Killer of Goliath the Sling of David―――」
ゴリアテ殺し、ダビデの投石


 大地を埋め尽くした岩塊が一気に吹き上げられ、全てを打撃する岩塊の嵐として空に舞う。隙間なく埋め尽くされたその嵐に一撃でも触れてしまえば、後は他の岩に挟まれすりつぶされ血と肉になるしか道は残されていない。が、そもそもこの時点で、

「通じるかよ―――!」

 停滞は因子としての役割故か、通じなくなっている。全力で自滅の道を疾走しているとは解っていてもこればかりはどうしようもない。停止させられた岩を破壊し道を生み出す。そして、

「ははは……!」

 楽しい。

 何故か解らないが、何故かこの状況がどうしようもなく愉快だ。笑わずにはいられない。そう言えば明広と本気で刃を交えた事なんて一度もなかった気がする。こうやって、本気で、本音をぶつけ合って、魂を理解しようとぶつかり合ったのは一度もない。だから、

「おおお―――!!」

「はぁ―――!!」

 ぶつかり合うギロチンと剣を通して思いが伝わってくる気がする。

 消えたくない。死にたくない。こんな所では終われない。終わりたくない。だが進めない。ならば―――。

「何をさせたいんだよお前は!?」

 荒々しくなる口調を微笑みと共に明広が迎え入れる。

「なに、偉大なる先人の真似さ―――さあ、どうした! 大団円には程遠いぞ!」

「おうおうおう、だったらフラグ立ててやろうじゃねぇか」

 弾丸が乱舞する。岩で何度も跳弾し乱反射する弾丸は捉えようがなく、それを回避するのはもはや至難の技と言える。魔技とも言える領域の業をあっさりとやってのける司狼に遅れるわけにはいかない。

「でやぁあああ―――!」

 羅刹に特大の心意を乗せ、それを槍のように突き出す。射程範囲が壊れたともいえる様な斬撃が、十数メートルの距離を光速を超えた速度で明広を捉えようと突き進む。この状況において、俺も司狼もそのスペック的にはついに追いつき始めていた。だからこそ、

「舞え、死の風よ―――!」

 ギロチンが振るわれ、発生するのは死の颶風だった。何千という斬撃をギロチンが生み出し、空間そのものを埋め尽くす様に俺と司狼を切り裂く。心意と弾丸が明広の体を抉り、そして死の風が俺と司狼を切り裂き、進路上の全てを灰塵と化す。ダメージは全員凄まじいものがある、が、それでも、

「は、はは……」

「ふふ……」

「来い! 気に入らないのだろう? だったらその我が儘を刃で通してみろ―――!」

 明広が高速で動く。それは茅場がやっていたような自身の時間の加速現象だった。今、この状態の明広を速度で上回れる存在はあのアンナ・シュライバーぐらいだろう。だがその彼女もこの停滞の波動を受ければ確実に凍りつく。それでもその速度にギリギリ食らいつきながら、接近してきた明広の背の刃を刃で受け止める。

「く、ははは……何でだろう……何でか」

「楽しいか? あぁ、見事に自滅の道を疾走しているぞ、さあ、先を見せてみろよ、キリト……いや、桐ヶ谷和人! 司狼、お前もその程度じゃねぇだろ、テメェの魂を見せてみろ!」

 少しずつ、明広が被っている心の仮面が剥がれてきた。それは状況がここまでもつれ込んだ弊害とも、余裕がなくなってきたとも取れる。だが今更、そんな野暮な事を考える必要はない。今はただ、

「はぁ―――!」

「おぉ―――!」

「らぁ―――!」

 ぶつかり合いながらともに体に傷が刻まれる。どこからどう見ても三人全員の体が満身創痍となっており、痛々しい姿をしている。アインクラッドから始まる一連の悪夢はまだ終息を見せていないし、この先もまだ存在する。だが、ほんの少し、ほんの少しだけだがこのまま終わってしまってもいい。そう思ってしまう自分がここにいる。既知感が吐き気を呼ぶ最悪の世界だが、この瞬間、こうやって本気で刃を叩きつけて笑いあう俺達は今、通じ合っている。そんな気がするが、

「負けられるかぁ―――!!」

 そう、次だ。

 次が欲しいんだ。

 どんなに楽しくても、これには次がないんだ。戦っていて解った。明広も、そして明広が使っている人物の残滓が持つ望みも、それはとても尊い思いだ。だが何も生まない。そう、何も生まれてこないのだ。今が楽しいだけで未来の事をどんなに願っても次が生まれてこない。この状況と一緒で、次を生むことができないのだ。身をもって体験し、その事を理解でき、そして次を生み出す事の大切さを知る。この自滅の運命は最悪だ。だが理解し合うという意味では最高の手段ともいえるかもしれない。

 だけど、逢いたいんだ。

 アスナに。

 また逢って、抱き合って、口づけをして、あの平和な時を過ごしたいんだ。こんな所で自滅するために戦っているわけじゃないんだ。そう、明日が欲しいんだ俺は。だから、

「いい加減終わりにしようぜ―――」

「あぁ、そうしよう」

 明広の手の中に一本の処刑刃が現れる。それはあのアインクラッドの最終決戦で見せた斬首の処刑刃。明広の魂そのものだ。禍々しい波動を放つそれは精神をかき乱してくるが―――それすら乗り越える。良く見ればその刃は罅だらけだということが解る。その姿は現状の、明広の魂の状態を如実に表していた。だからと言って油断などできない。首に触れてしまえばそれで終わりで―――

 構えた瞬間脳を駆け巡るノイズが異常に強くなる。全身が逃げろと叫ぶ。本能が避けろと叫ぶ。直感が跳べと叫ぶ。そして、

                 『負けないで―――お兄ちゃん!』

 直葉から受け取った剣から、心意を通して直葉の声が聞こえた気がした。

 だから、

 既知感に全身全霊をもって逆らった。身が砕けそうになる激痛と、脳を焼ききるような感覚に逆らい、明広の攻撃を避けはしない。相手の踏み出す動きに合わせて踏み出し、

「行く、ぞぉ―――!」

「負けるかぁ―――!」

 明広の斬撃が体に突き刺さる。それは確実に此方の中の何かを抉り、削り、そして断ち切っていた。だがそれに躊躇することなく、返しの斬撃を叩き込む。ジ・イクリプス。心意によって再現された二刀流の奥義は太陽程の熱を持って明広の体に熱と斬撃を叩き込む。一撃一撃で大地が融解し、爆発が生じる。

 そして、三本の刃が降りぬかれた。

 明広の刃が振りぬかれるのと同時に既知感が消え去っていた。同時に感じていた繋がり、自壊の感覚が消え去る。そして俺の二刀が明広のギロチンの全て、そして手に握っていた処刑刃を砕く。この結果だが安易に自滅因子の運命を超越したとは思わない。いや、思えない。

「断ち切った!?」

 自滅因子が、断ち切られていた。明広の今の一撃は俺ではなく、俺の中に存在する自滅因子としての宿命を断ち切っていた。ボロボロになって、もはや立っている事さえ不思議な姿の明広は背筋を伸ばし、此方に声を投げる。

「次が欲しいんだろ? お前はアイツと比べてまだまだ浅いからできたが―――」

 明広の姿はかつてない程に弱っていた。もはや全力を出し切り、今の一閃に全てを込めていたような感覚があった。変わり行く状況の中で理解できたのは、このすべてが茶番であり、俺はこの既知の世界から解放されたという事実。

 まさか、と疑ってしまう。

 これまでの全てが俺の既知脱却の為じゃないかと。

 そう考えてしまうのは信頼しすぎだろうか。しかしまだ司狼が残っている。戦いは終わらない。急速に感じ始める疲労によって体が動かなくなるのを感じながら、目の前で向かい合う司狼と明広の姿を眺める。

「―――さあ、そろそろガキの頃からの宿命にケリをつけようかアホ司狼!」

「―――いいぜ、その挑戦受け取ったぜ」

 銃を投げ捨て、拳を振り上げた司狼と、同じく痛ましい姿で拳を握る明広の姿がある。互いに遠慮することなく踏み込み、拳を―――振りぬいた。




夜刀様だと思った?

ただのチンピラだよ!

そんなわけで自重やめようと思ったけどこの先さらに酷いのがいるので少し自重。
ツッコミどころ満載の回でしたけど、この一戦は全て※※※の為です。
ついでに前回のセリフと、明広の魔名修正しました。

こっそりやらかしたと思ってる。けどつなぎだし反省しない
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| 断頭の剣鬼 | 10:04 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

更新乙です。

あー、

言いたいことはいろいろあるけど、これより酷いってどういうことよ。


あと、獣殿マダー?

| 断章の接合者 | 2012/09/24 10:26 | URL |

ラスボス?いえ、チンピラです。
しかし、自滅因子を消すための茶番だったのか
けど自滅因子なしであいつと戦えるのか・・?

| モグラ | 2012/09/24 11:17 | URL | ≫ EDIT

ホントにただのチンピラだよ…。
ところで、獣殿の出番マダー?

| 御前 | 2012/09/24 14:04 | URL | ≫ EDIT

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

| | 2012/09/24 19:18 | |

魔名はわかったけど前回のセリフってどの部分なんだ?

| 白銀の獣 | 2012/09/25 00:48 | URL |















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