陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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覚悟 ―――クライ・ハイ

推奨BGM:Sol lucet omnibus
*1推奨BGM:Juggernaut


 ―――馬鹿騒ぎ。

 そうだ。これは馬鹿騒ぎだ。アインクラッドの終焉から引きずり続けている馬鹿騒ぎだ。アインクラッドの悪夢の続きだ。ここまで近づいてしまえば嫌でも理解できてしまう。

 あの世界樹には多くの人間が囚われている。

 快楽に魘されている人間、苦痛に喘いでいる人間、無慈悲に全てを奪われた人間、ありとあらゆる感情や感覚がドロドロと渦巻いている。そしてその中心で一際輝く、何にも染まらない輝きと―――求めていたものを感じる。あぁ、二つとも知っている。アスナ、そして―――

「明広君。それじゃあ私たちはこれで下がるわよ」

「ご苦労だったリザ、玲愛。下がっていろ」

 久方ぶりに聞く青年の声には、抑え込まれた怨嗟と怒気が凄まじいレベルで混ぜ込まれていた。それは目の前の男が―――明広がその一切を体から漏らさないからこそ周囲に影響がないのであり、自制をやめた瞬間、全てを飲み込む悪意となって意識を塗りつぶすに違いない。それは一切漏れていないのに、こんなにも強く感じられる憎悪は凄まじく、そして痛々しい。

 リザが明広の前に立ち、その顔に手を伸ばす。その顔を覆っていたマスクをゆっくり外すと、マスクが消える。

「頑張りなさい」

 それだけを告げ、リザは消える。そして、

「―――貴方の勝利を、心の底から祈っている」


 言葉を残して玲愛も消える。

 消えた。

 これで、このアルヴヘイムに残された黒円卓の魔人はこの男、最上明広ただ一人だけとなった。長い、非常に長い道のりだったが、それもようやく終わりが見えてきている。マスクを外され、赤銅色に染まった端整な顔が見える。童顔というよりは女顔で、やはり男らしくないと評価すればいいのだろうか―――しかし瞳に映る怒りがその全てを歪めている。

 手が前に出る。

 ゆっくりと、前に出された手の上には何もなかった。

「人とは……脆い」

 そんな事を言う。

「信念、決意、覚悟、願い、渇望……言葉を変えようが変わらない。そういう芯となるものが存在して初めて人間は人間として成立する。それを強く持った存在だけが、人間と呼べる。それ以下のやつらは死んではいないが、ただ生きているだけだ。現象として生きているだけだ。……よく、そう言われる」

 だが、

「―――ならその願い故に行き過ぎた者を、世間ではなんと呼ぶか知っているか?」

 明広が手を握り、拳を作る。正樹も司狼も、そして俺も何も言えない。口が開かない。この状況において何かを言おうとする前に、どうしてもこの言葉の全てを魂に刻み込まなくてはいけない。その使命感が先立ってどんな行動をも邪魔する。

「世間ではこういうのさ―――化け物と」

 明広の拳が開き、その手の中には先ほどまではなかった赤い光が存在していた。弱々しい、今にも消えてしまいそうな―――

「ッ!?」

 反射的に視線を光から放す。一瞬だけ、一瞬だけ今の光に魅入られた。なにかも解らない光だったが、アレは尊いものだと、そして”アレに触れてしまえば凍らされてしまう”と理解し、本能的な恐怖が見る事を否定していた。アレはただの光だが、それだけでも俺を百度殺しても余りある輝きを持っている。その本質の万分の一の欠片も理解できないのに、それは分かった。

「真実とは常に残酷で尊い。運命とは軽薄だ。努力した者を愛さず自分が愛した者に助力する。あぁ、最悪だな。最悪すぎて反吐が出る。この日常に俺達の生きる場所なんてない。戦場に生まれて戦場に死ぬ。消耗されるべき命だったんだ。俺達は」

 そう、

「―――俺達の様な化け物は生まれた事自体が間違いだった。生まれるべきではなかった」

「兄さん……!」

 正樹が言葉を漏らす。

「そんな、そんな悲しい事を言わないでくれよ……」

 弱い言葉で、今にも折れそうな正樹の姿がある。重圧に、明広の痛々しさに耐えられない様子だった。だがそれでも明広は止まることなく話を続ける。

「それでも、俺達は生まれてしまった。育ってしまった。生き抜いてしまった。そして―――願ってしまった」

 ゆらゆらと揺らめく過去の残滓はひたすら叫んでいる。

 ―――時よ止まれ。お前は美しい。

 遠い過去の残響が赤い光から聞こえてくる気がする。あの光は恐ろしいが、更に恐ろしいのはそれに触れている明広には一切の変化がない。つまり、あの光を制御、もしくは使役できる位置に明広はある。

「願ってしまったんだよ。消えたくない。輝き続けたい。邪魔されたくない。そう、この瞬間は……この刹那は美しい。誰にも邪魔されたくない。満たされたままでいたい。この刹那よ永遠であれ―――美しく尊い願いだが、傲慢で邪悪な願いだよ。俺もそう変わりはしない。この刹那が永遠であれとは願わないが、この刹那を邪魔されたくないとは願った。これが彼と俺との決定的な違いなのだろう。彼は進むことの大切さを知りながら心の底から停滞を祈った。永遠の刹那でありたいと渇望した。俺は進み新たな刹那を求めた。同じ宝石が見せる新たな輝きを邪魔されずに―――いや、宝石の輝きをも守りたかったんだ。最低だ。最悪だ。何て罪深い。何でこう生まれてしまった。何故、こう願ってしまった」

 再び拳は握られ、光が消える。いや、正しくは帰ったのだろう―――明広の中へと。解る。今の力の塊が内側へと取り込まれたことを。凄まじい親和性を見せ、明広の全身に活力を満たしている事を。死にかけていた明広に再び生命力を吹き込み、その存在を別次元へと引き上げている。

「で、なんだ、お前そんな事愚痴りたくて、長々と喋ってたわけじゃねぇよな?」

 司狼が軽い動作と笑みで明広を迎えている。それと変わって、正樹は悲痛な叫び声をあげる。

「止めて兄さん! このまま戦ったら終わっちゃう! 皆死んでしまう!!」

 凄まじい戦意が明広から発せられる。もはや暴風として感じられる戦意は強く体を打ち付け、一瞬でも気を抜けば体が吹き飛びそうになる。正樹の言葉は届いていなかった。いや、聞こえていないのだ。戦意の風に潰され、ありとあらゆる音が明広へ届かない。もはや戦う以外に選択肢は存在しない。悔しそうに正樹が唇を噛む。

「駄目だ……駄目なんだ。このまま戦い続けると共倒れしちゃうんだ……誰も生き残らないのに……」

「―――ッハ」

 正樹の言葉を司狼が笑い飛ばす。

「なんだ、この馬鹿相手に俺が死ぬ? おいおい、ふざけた事を抜かすんじゃねぇよ」

 戦闘態勢に入る。背中で交差させている二刀を抜く。羅刹、そしてリーファ……直葉が残してくれた彼女の剣、自然と心の底からわき上がる力が心意を発動させ刃を包み、体を包む。そして司狼も―――銃を取り出す。ALOではありえないアイテムの一つだろうが―――不思議とそれは酷く司狼に似合う武器に見えた。むしろそこにあるのが自然だった。

「魔女さんが帰る前に置いてったもんだし使えって事なんだろ。だが、まあ、よぉ、それはいいとして、おい。あんまぬかしてんじゃねぇぞテメェ―――」

 司狼が今までのふざけた様子を完全に切り離した。その表情は真剣そのもので、チンピラ風の男とは思えぬ怒気を孕んでいた。

「俺を殺せるのは明広だけだ。テメェの様なふざけたやつが俺を殺せるかよォ―――!!」

 真剣な表情なまま、司狼が叫ぶ。それは信頼だった。自分の相棒、魂を賭けて戦える相棒に対する信頼、信用、その全てを込めた叫び声だった。訳の分からない者へと”成り下がった”明広に対する、相棒に対する失意と怒りが込められている。だが、それは明広の怒りをも刺激する。

「ッハ、お前を殺せるのが明広だけ、か―――あぁ、なるほど、確かにそうだな! だが貴様ら俺を倒せると思ってるのか? 増長してくれるなよ自滅因子。貴様らにも俺にも未来は存在しない。その吐息の一つが、その踏み出す一歩が、自滅の一歩だと知れ」

 戦意が覇気へと変わり、それが空間の全てを押しつぶす。暴風だった戦意は物理的な破壊力を持たぬ、覇気へと変貌し、

「ッガァ……」

「っぐぅ……!?」

「カハァッ」

*1

 精神を破壊しに来る。それは神にさえ匹敵する圧倒的気配であり、心を強く持てばいいどころの話ではない。黒円卓の戦士達との戦い、特にエレオノーレとミハエルとの戦いで一度あの濃密すぎる殺意や気配を経験していなければ、一瞬で精神を砕かれてしまう程の覇気だった。そう、この男は自分の知っている最上明広という存在を明らかに超越していた。あの二人と比べても別次元の存在だ。

 そもそも、立っている位置が違う。生半可に”強い”だけの存在なら、前に立つ事さえ許されない。

 それでも、

「ォォオオ―――!!」

「ざけんじゃねぇぞぉ―――!」

 叫びをあげ気合で精神を壊す風を跳ね除ける。こんな所で蹲っている暇はない。そう、すぐそこにアスナがいるんだ。それに明広だって自分の女に逢いたいだろ? いい加減いいやつ一発ぶち込んで目を覚まさせてやる……!

「あぁ、来るか。俺に終わりを告げに来たか。それもまたいいだろう―――形成」

 その言葉を口にした瞬間、服を突き破って背中に異形の物体が現れる。それは死神の鎌にもよく似た、デスサイズ―――いや、ギロチンだった。背中から生えている八本の刃は無骨ながら、その全てが凄まじい死と熱を内包している。そして―――同時にそれに停止の理が編みこまれている。触れてしまえば動けなくなる。囚われてしまう。認められない存在は永久に動けなくなる。

 その在り方は明広自身の願いからかけ離れているのに、それは明広の力として働いていた。

「残滓に頼らなければ戦う力さえできない臆病者だが―――」

 背中のギロチンが顕現するのと同時に圧力は凄まじく膨れ上がり、広場の大地に地割れを生み出す。同時に近くにあった建造物も崩壊をはじめ、その圧倒的力の片鱗が余波として現れ始める。剣を交差させ、衝撃に耐える。本来なら耐える事など不可能な衝撃なのだろうが、この瞬間俺という存在は凄まじい勢いで成長と研鑽を見せている。それは戦い続けて来た結果であり、目の前に格別の存在がいるから発生する―――

「戦っちゃ駄目だ!! そんなもの成長じゃないんだ! 駄目だ、トリファさんの言った通りに―――」

 叫び声は聞こえない。今必要なのは、勝利して、この分からず屋を無理やり起こす事だ。

 正樹は戦えない。だから武器を持ち構えるのは三人だ。二人で明広を睨み―――

「―――オオオオオォォォ―――!!!」

 咆哮した。

 天に向かえって吠えた明広の行動はまるで無作為の様だが、直感的にそれが攻撃だと理解した。反射的に羅刹を前に突き出しながら、その力を解放させる。心意によって引き出された斬首の概念が音の壁を到達よりも早く切り裂く。自分と司狼、そして正樹の前だけ音の壁が割かれる。だが俺達の前でしか羅刹の刃は威力を発揮しない。

 その本来の主、そして力の大本が相手では相性は悪く、圧倒的に分が悪い。

 咆哮は通り過ぎるのと同時にその進路上にある建造物を破壊し、そしてアルンに存在するプレイヤーをも破壊しながら広がり―――停止する。驚異的としか呼べない。明広の体は停止の概念そのものが付与されている様な状況であった。建造造物が破砕され飛び散りながらも、空中で動きを凍らされる姿は幻想的の一言に尽きるが、それでもそれが自分に向けられたとなると話は別だ。非常に凶悪で、攻撃的な願いだ。

「―――時よ止まれ。お前は美しい。過去にそう願った邪神がいる」

 一歩前に踏み出し、明広の体が接近する。接近と同時に精神への重圧も増える。だがそれは今の一瞬で耐えられるようになった。踏み出す明広に対して此方も素早く、強く踏み出す。銃を持つ司狼は必然的に援援護に回るのだろう。しかしまだ理解できない部分がある。

 ―――黒円卓は俺達に何をさせたいんだ。

 だが戦闘以外の事に思考を割く時間も余裕もない。考えるよりも早く口からは叫び声が溢れ出し、二刀は接近しながら心意による超強化の斬撃を明広へと向かって繰り出す。今までの戦いにないほどの超高速、超高威力の連撃だと確信できる。

 それを明広は踏み出した一歩目以上は動かず、背中の刃根(はね)を持って迎撃する。あっさりしすぎた動きだ。斬撃に合わせて刃根が動き、全く同じ力、全く同じ速度で攻撃を叩き込んで相殺しているだけにすぎない。余裕を感じさせる軽い動作で、過去最高の攻撃を防がれた。

 同時に射撃音が聞こえる。

 一発ではなく十数発が連続で撃たれる音だ。司狼だ。弾丸の速度はあの魔女製の銃だからか常識を超えた速度となっている。彼女がそれを残した真意は計れないが、それが現在の戦力になっている事には素直に感謝するが、

 弾丸が全て刃根に切り裂かれる。

 斬首するかのように、ギロチンの動きを持って全ての弾丸が真っ二つに割断される。そして、空中で弾丸が動きを止められる。停止だ。停止させられている。そして、

「ック!!」

 最低限の接触で攻撃したつもりだが、既に両肩までもが凍り付いている。羅刹の刀身に映る自分の腕に対して斬撃を生み出し、停止の概念だけを切り落とそうとし―――奇跡に近いその所業を成功させる。その様子を見ながら、再びもう一歩明広は踏み出す。

「―――ここに、永遠の刹那……その残滓を借り、見せてやろう」

 憎悪が、怒気が、それがアルンの街を蹂躙して破壊する。

「永劫たる星の輝きを! 来い、俺の癌細胞! 貴様らという宿命を超えて俺は絶対の法を乗り越える! そして、見事あの天狗を打ち滅ぼして見せよう!」

 その宣言が、どこまでも悲しく感じられたのは勘違いだとしか思えないほんの一瞬であり、刹那以下の時間だった。




主……人公……?

多分もうわかってるけど、あの残滓はあのお方の……
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| 断頭の剣鬼 | 10:20 | comments:15 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

主……人公……?

なんか、サイアスがリメイク前の断頭の剣鬼が回帰したみたいなんですけど……

| 名状し難きナニカ | 2012/09/23 10:30 | URL |

あ、どっかの、本来の主人公より主人公してる人がいる。

| zane | 2012/09/23 10:42 | URL |

主人公?いいえ、ラスボスです。
てかやっぱり夜刀化しとるがな・・・
勝てる気しないんだけど、誰かパシリ呼んできてー!

| モグラ | 2012/09/23 10:47 | URL | ≫ EDIT

リメイク前から回帰したか、確かにそれっぽいな……。

| 空 | 2012/09/23 10:49 | URL |

おいアルン、ボコボコだがこれでまだ創造なんだぜ?

| ぜんら | 2012/09/23 10:57 | URL |

いつからこれが創造だと勘違いしていた?

これはまだ形成だ―――!


だってアスアスは形成としか言ってないですぜ?

|    | 2012/09/23 11:08 | URL | ≫ EDIT

さすがアスアスいいラスボスっぷり。
永遠の刹那の残滓とは……うむうむ、いい展開ですなぁ、燃える。

| ろくぞー | 2012/09/23 12:51 | URL |

永劫たる星の輝きって聞くと夜刀さんだなあ。
ここだけリメイク前じゃなくて夜刀さんの方な気がしたよ

| 羽屯十一 | 2012/09/23 13:08 | URL |

夜刀さんがいるw
結局、サイアスはなんなんだ?

| とっつき | 2012/09/23 13:43 | URL |

キリト君、それ成長ちゃう
たぶんそれ天狗のバックアップや

| | 2012/09/23 14:55 | URL |

リメ前が夜刀inサイアス的なものだったから回帰ともとれるし夜刀化ともとれる面白い展開になってきた!
そして、ラスボス臭が凄いw

| 御前 | 2012/09/23 16:00 | URL | ≫ EDIT

夜刀の残滓って、ここは座に誰がいるんだ………?

というか残滓使えるってことは………神座に繋がってるのか??

| 断章の接合者 | 2012/09/23 19:47 | URL |

主人公? いいえラスボスです。
っていうか夜刀様じゃんwww

しかもまだ形成というw創造使ったら終わっちゃんじゃないのか

| 裸エプロン閣下 | 2012/09/23 21:36 | URL |

旧作のアンダーワールド篇の感想返しでサイアスは、蓮と起源は同じだが辿った過程が違うから神格も違うし天魔かしても夜刀にはならず違うものになるって言ってたからここで言う残滓はKKKの夜刀さまかスーパーインド人対覇道神3柱で水銀によって回帰したさいの敗れた蓮の残滓じゃないかな?永遠の刹那って言ってるけどそもそも旧作サイアスは永遠の刹那じゃないし渇望も違うしね。

| 随神相 | 2012/09/24 02:59 | URL |

サイアスが劣化夜刀様みたいでパッとみたかんじカッコイイといえばカッコイイけど、はっきり言って何もしてない(あえて言うなら死にかけただけ)のにいきなりそんな悟ったような状態になられても正直意味がわからないです。なぜかマリィ放置のこちらよりにじファン版の方がずっと自然で違和感も無かった。

現状では天狗と戦ったわけでもないし、夜刀様みたいなすさまじい背景がないのに同じような上からの態度をとられてもなぁ・・・。

| (∴) | 2012/09/24 05:24 | URL | ≫ EDIT















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