陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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殉教 ―――ウィー・ディサイド

推奨BGM:Nacht der langen Messer
*1推奨BGM:Juggernaut


「スグ! アレク!」

 戒めが消えて四人が帰ってくる。帰ってきた瞬間に駆け出し近寄る。正樹とリーファ―――いや、直葉の体に傷はない。素早く駆け寄ったところで心配ではあるが、同時にかなり気まずい事に気づく。

 ……どんな顔をすればいいんだよ。

 今までリーファには自分の妹であり直葉だと知らずに接してきてしまった。これ、正直言ってかなりヤバイ状況じゃないのかとは思うが、予想とは変わって直葉は笑顔で迎えてくれた。

「私は大丈夫だよ”キリト”」

 予想外に大人びた直葉の笑顔に一瞬ドキリとする、直葉ってこんなに大人びた少女だったか、と一瞬考えてしまうが―――別段成長は珍しい事ではない。特に極限の状態に追い込まれた人間というのは予想外の成長を見せる。だから直葉が成長を得ていても別段珍しくないかもしれない。しかし、今まで冒険してきた相手が妹だと知れた瞬間、少しだけやりにくいものがある。逃げるように正樹へと視線を向ける。

「アレク、大丈夫か?」

 正樹の方は直葉と打って変わって顔を俯かせ、何やら深刻な表情を浮かべ、そして唇を強く噛んでいる。

「……正樹?」

「ん……」


 アバターネームではなく本名で呼ぶと反応してくれた。顔を持ち上げて、少し困った様子で弱い笑みを見せてくる。

「あ、うん。ただいま……心配させちゃってごめん」

「あ、いや、無事ならいいんだけど……」

「ま、心配する事はないって事か」

 強引に司狼がそう纏め上げる。正樹は弱く笑い、ですね、と言うが……正直力がなさすぎる。視線を向けた黒円卓の戦士二人からは依然敵意も殺意もなく、戦闘態勢すらとっていない。正樹と直葉に表れた変化の原因を聞きだすためにも二人をにらむ。が、やはり黒円卓の人間というべきか、その視線を全く意に介さないまま涼しい表情を浮かべている。と、

「……ありがとうございました」

 正樹がトリファに向かって頭を下げる。

「おかげで覚悟が固まりました」

 トリファが手を振る。

「いえいえ、私は情報を与えただけで、その選択は貴方自身が選んだものです。その決断を大事にしてください。そしてどうか真意を見極めてください。我々では彼の心に触れることはできませんでした。しかし貴方達であればまだ可能かもしれません。この壮大な馬鹿騒ぎにどうか、良き終焉を与えてやってください。みんなでまた、あの教会で笑えるような結末を切実に祈っています」

 真剣な表情と会話の内容に入り込むことはできない。正樹がはい、と答えたところでトリファとアンナが横に退く。アルンはまだ暗い。が、この世界の設定が一日十六時間である以上、この世界の夜明けもそう遠くない。

「さ、貴方達の目指す場所はすぐそこよ」

 家や様々な建造物に隠れて根元は見えないが、世界樹の巨大な姿はもう目前にまで迫っている。追い求めた場所、そして逢いたい女の直ぐそばまで来ている。

「道の邪魔する人間は後一人、最後の一人です。その一人を貴方達は誰よりも知っている事でしょう。私から言えることは、どうか心を強く持ってください。それだけです」

 アンナの足元から影が広がり、トリファとアンナの周りだけを包む。

「それじゃあ私達”巻き込まれる”前に逃げるから! じゃあね~」

「……え?」

 そう言ってトリファとアンナは素早く消える。巻き込まれるという言葉の意味はよく解らないが、おそらくロクでもない事だというのは解った。

「ついにここまで来たか」

 司狼がそんな事を呟いた瞬間、急にノイズを脳内を駆け巡り、そして視界を砂嵐が満たす。世界が瞬間的に色褪せ、つまらなさそうに呟く司狼の姿が見える。

「最悪だな。見た事あるわ、これ」

「うーん、駄目ねぇ」

 そんな事を言う司狼だが、その表情は楽しげだ。まるでこの先の展開を待ち望んでいる様にさえ思える。いや、実際に待ち望んでいるのだろう。だからこそこんな楽しそうな表情を浮かべる事が出来るのだ。

「皆ごめん」

 そこで唐突に直葉が口を開いて言う。

「私、ここでログアウトするわ」


                           ◆


 唐突に直葉がそんな事を言う。

「スグ」

 どうして、と聞こうとした瞬間、言葉を遮る様に直葉が喋りだす。

「まあ、キリトを世界樹へ送るって約束を果たしたのもそうなんだけど……私、これ以上役に立つことは出来なさそうだからね」

 そう言う直葉の表情に暗いものはない。ただ事実を事実として受け入れ、

「だから私ちょっとログアウトして、私にしかできない事をしようと思うの」

 直葉がまっすぐと、此方に視線を向けてくる。

「キリト……ううん、お兄ちゃんはあの人を助けに来たんだよね? 結城明日奈さんを」

 ここまで来たら隠し通せるはずもない。

「うん―――アスナがこの世界で囚われているんだ。ソードアート・オンラインの悪夢は終わっていない。だから終わらせヤツとしての責任と……惚れた女を助ける為に帰ってきたんだ」

 この仮想世界の大地へ。

「言うね色男」

 司狼のちゃかしが入るが、それは一切スルーする。それを聞いた直葉は微笑み、

「うん。知ってる」

 そう言って、リーファは腰に差していた剣を鞘ごと引き抜き、それを此方に渡してくる。これを終焉されたダークリパルサーの代わりに使うように言いながら、

「……だから私、現実の方で頑張る。ほら、結城さんって今病院で寝ているんでしょ? 起きた時大変そうだし……誰かいた方がいいよね? できれば同性が。 うん、だから私先に落ちているね。じゃあね!」

 最後の方は少し口早くだが、そう言い終わると直葉は振り返り、ログアウトしてしまう。だがログアウトする直前、直葉は―――

「泣いてたね」

「おんなをなかせるおとこってさいてー」

「先輩。言い方に熱が入ってないです」

「いいんだよ。俺の問題じゃないし」

「最低なのは先輩の方だ……!」

 後ろの方で何やらコントを繰り広げている気がするが、……直葉の涙には触れない方がいいのだろう。その意味は―――大体理解している。

 愚鈍、朴念仁、そんな風に言われ続けて来た。それはあくまでも好意に気づかないふりをして―――いや、これはよそう。

「そんじゃ私もそろそろ落ちるね」

 唐突にエリーがそんな事を言い出す。タバコを取り出し、口にくわえながら火をつけた司狼が味に顔をしかめながらも、

「おう、頼むわ」

「これで女子率ゼロのパーティーか……」

「女顔のキリト君にそこらへんは期待しましょっか」

「俺女子枠なの?」

「というかナチュラルに私を忘れていませんか……?」

 ポケットの中からユイが頭を出す。事実、怒涛の展開に若干忘れがちだった気がする。というか忘れていた。家族会議には反省会を追加する必要がありそうだ。あぁ、そうだ。この感じだ。無駄に重くしてもいい事はない。常に希望を持って、上を向いて歩きたい。

 そんじゃ、とエリーは言葉をつけて手を上げる。

「妹ちゃんの面倒は私に任せて野郎共は汗を流しなさい。帰ってきたらスポーツドリンクでも用意してるから。じゃあーねー」

 エリーは現れた時同様に、軽い様子でログアウトした。これであんなに賑わっていたパーティーも一気に人数が減り、ユイを含めた四人となった。それでもまだ、奇跡だ。誰一人死なないでここまで来れたのは奇跡に違いない。その事実に今は感謝するべきなのか、

 都合よく進んでいる事を疑うべきか。

 一度疑いだすときりがない。全てが偽物に見えて、デジャヴるデジャヴらない関係なく全てが既知に見えてくる。

「んじゃあ―――」

 行こうか。そう言おうとした瞬間ユイが空を、いや、世界樹の頂点を見上げて叫ぶ。

「ママ! ママです! ママがいます!」

 反射的に空に飛び上がる。

「キリト!」

「おぉ、青春してんなあ」

「馬鹿を言わないで……!」

*1

 二人を完全に置いて行きながら全速力で空に飛び上がる。一瞬でトップスピードに入って進むが、ある程度の高さで見えない壁に衝突する。全身を強打する様な衝撃を受けながらも、見えない壁に張り付く。やるべきことは簡単だ。

「砕け散れぇ―――!!」

 全霊を込めた拳を見えない壁に叩き込む。もちろん心意を宿らせた、システムという括りをを超越した破壊の拳。このシステムの薄っぺらい壁を破壊してアスナへと辿り着くの為の手段を迷うことなく実行する。だが、

「なっ―――!?」

 壁は砕けない。殴りつけた壁は罅どころか傷さえも見せない。それに驚愕する暇はない。素早く羅刹を引き抜き、

「切れろ!!」

 刀身に壁を映す、斬撃が壁を両断するように走り―――無傷のままの壁が存在する。その事実に驚愕する。あのミハエルさえ、別次元の存在とも思える終焉の塊、その腕を切り飛ばした斬首の刃が傷一つ付けられずにシステムに敗北した。異常な防御力だ。攻撃が一切通らない。

「クソォオオ―――!!」

 直ぐそこに、すぐそばにアスナがいて届かないなんて……!

「アスナァアアア―――!!!」

 声を出し、大声で叫ぶ。だがその壁は音さえも遮っているようで、反応は一切ない。

「個人回線に繋げます! 一方的ですが声が届くかもしれません! ママ! ママ―――! 聞こえていますか? ママー! パパと一緒に来ました! 迎えに来ましたよ―――!!」

 ユイもポケットから顔をだし、共に叫ぶ。必死なその声がアスナへと届く事を信じて。アルン上空数百メートルで叫ぶ姿はアルンに存在する衆目には奇異に映っただろうが、今更外面を気にする余裕などない。頼むからこの声が届いてほしい。そう願い、

 声は一つの結果を生む。

 それは光だった。

 キラキラと光りながらゆっくりと空から落ちてくる物体があった。それは世界樹の頂上から落とされ、直感的にアスナが送ってくれたものだと理解する。理屈抜きで、それがアスナのものだと理解し手を伸ばした瞬間。

「……耐えろユイッ!」

「パパッ?!」

 反射的に防御の体勢を取る。

 次の瞬間に来たのは衝撃だった。全身を貫くような衝撃に耐えようとするが体が急速に落下を始める。翅を使い何とか減速しながらも、アルンの道路へと衝突する。そこまでダメージはない。ユイも守れた。だがそれよりも、

 ―――アスナの送ったアイテム。

 それは変わらず同じ速度で落ちながら……世界樹の前、道の先に落ちて、見えなくなった。

 素早く立ち上がる。正樹と司狼が追いついた。少し体に痛みがあるが、それでも行動に支障は出ない程度の軽いダメージだ。立ち上がり、体についた埃を払う。

「大丈夫?」

「あぁ、問題ない……それよりも」

「あぁ、”いるぜ”」

 ひしひしと気配が伝わってくる。隠れる気など微塵も存在しない。最初から全力で挑発するように気配を垂れ流しにしている。今までにない程の敵意を感じる。それを自覚するだけで肌が焼けるような感じがする、強い敵意だ。これが殺意に転換された瞬間―――それはどれだけ恐ろしいものになるのだろうか。

「……行こう」

「おう」

 ユイにポケットの中にいるように厳命し、ゆっくりと世界樹へと続く坂道を歩く。一歩一歩前へと進むたびに、隠れて見えなかった先が少しずつだが見えてくる。同時に一歩踏み出す度人肌を焼く敵意は強くなる。今この瞬間逃げるべきだと、本能が進むことを拒否する。だが、それを無視して進む。

 ―――そして抜けた。

 坂道を登り切った先にあったのは広場だった。そんなに広くはない。五十人ほど余裕を持ってくつろげる程度の大きさの広場だ。入り口は此方が入ってきた一つしか存在せず、向こう側には巨大な門が存在している。もう少し時間があればその門に施された装飾を楽しむ時間もあっただろうが、それよりも目に映るのは、

 人だ。

 門の前に陣取る様に三つの姿がある。中央の男を挟むように存在するのは二人の女だ。一人は背が低い女で、もう一人はスタイルのいい女だ。片方が軍服を着ているのに対して、背の低い女は巫女服の様な服を着ている。そして、中央に立つのは男だ。背中を向けていてその表情を見る事が出来ないが、男だというのは背格好から解る。この男は裾の先が切れたりしてボロボロになっている軍服を着ている。

 それはまるで残された命を表現しているかの様な恰好だった。

 その、”血の様に赤い”髪をした男が振り返る。

 男の顔が見えない。それは一つの仮面によって隠されていた。デスマスクと呼ぶのだろうか、目を完全に隠している仮面だ。だが仮面をかぶっていないところからは素肌などが見える。それは赤銅色に染められていた。まるで錆びて、今にも朽ちてしまいそうな機械の様な、そんな印象を受ける。

 男の手にはアスナの送ったアイテムが握られていた。

 今の攻撃が、この男によるものだということが解った。しかしその異様な存在感に自分だけではなく、司狼さえも口を開く事は出来ない。いや、違う。その視線は圧倒されているのではなく、何故か憐れんでいる。そして正樹は、その瞳に覚悟の色を灯している。

 男の手からアイテムが消えるのと同時に、

「……聖槍十三騎士団黒円卓第九位”大淫婦”リザ・ブレンナー」

「聖槍十三騎士団黒円卓第六位”太陽の御子”氷室玲愛」

「……リザさん、玲愛先輩……」

 正樹のつぶやきが聞こえるが、何もできない。ただ静かに所属と名を告げる二人を前に、司狼は無言で待ち……しばらくしてから口を開く。

「で? お前は何なんだよ」

 司狼の問いかけに、男の口が開く。

「聖槍十三騎士団」

 懐かしい声だと思う。聞いていなかったのはたった数ヶ月ほどなのに、何故か酷く懐かしく感じる。少し、声がかすれたように、弱々しく聞こえる気がするのは錯覚か、それとも今、この男の命が尽きかけている事を知っているからだろうか。弱さを隠す事のない男の声は逆に恐ろしく感じる。何故だろうか、直感が、本能が、理性が、細胞の全てが意志に逆らおうとしている。今すぐこの場から逃げろと言っている。

 そして、

「黒円卓第十三位代行―――」

 声高らかにその存在を語り、

「”審判を下す者”最上明広」

 アインクラッドを共に駆け抜けた戦友の姿がそこにあった。

「さあ―――この馬鹿騒ぎを終わらせようか」

 そして事態の終焉を宣言した。
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| 断頭の剣鬼 | 11:19 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

 ヒャッハー! 更に盛・り・上・が・って・き・た・ぞー!

| サツキ | 2012/09/22 11:38 | URL |

”血の様に赤い”
気のせいであってほしいが、まさか・・?
前作よりラスボス臭が漂うな

| モグラ | 2012/09/22 12:05 | URL | ≫ EDIT

ヒャッハー! 妖怪キタァ――――!!
盛り上がってきたなぁ! なぁ!?
というか普通に戦ったらキリトさんが勝てる気がしない。

| ろくぞー | 2012/09/22 12:44 | URL |

ヒャッハー! 何というラスボス臭!
続きが気になるぅー!!

| 御前 | 2012/09/22 14:28 | URL | ≫ EDIT

ヒャッハー!妖怪キター!
このラスボス臭……やはり妖怪←

| 空 | 2012/09/22 15:36 | URL |















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