陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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殉教 ―――フェイク・ドリーム

推奨BGM:Burlesque
*1推奨BGM:Noli me Tangere
*2推奨BGM:Walhall


「―――」

 ……体を揺らされる。眠っていた意識が少しずつだが覚醒して行く。少しずつ覚醒するのと同時に今の自分の状況を理解し始める。

「―――」

 えーと、

 たしかアルンに皆で到着して、そしてそこで待ち構えていた敵と遭遇して、それで……どうしたんだっけ?

 ……いやいや、敵とか皆とか誰よ。あとアルンってなによ。

「ちょっと! 直葉!」

「……ふぁ?」

 視線を持ち上げるとそこには見知った友人の顔があった。気づけば机に突っ伏す様に倒れた自分と、少しだけ涎を垂らした跡のある机が見える。そこで考える。今がどんな状況かを。まあ、一つしか考えられることはない。

「また寝ちゃった……」

「直葉、剣道の大会が近いからってまた授業で寝ちゃ駄目でしょ……」

「ごめんごめん」


 そうだ、昨日も夜遅くまで学校に残って剣道の練習をしていたんだった。剣道の大会が近く、それに備えて最近は練習量を増やしている。家に帰っても竹刀に見せかけた棒で軽いトレーニングもしていて、最近は若干やりすぎだと解っていても気合が入ってしまう。剣道は昔はそこまで好きなものではなかったが、こうも続けていれば好きになってしまうものだ。

「はぁ……ほら、ノートとっておいたわよ」

「ありがとー! 持つべきものは友人だね!」

「都合のいい奴め……これで成績悪かったら容赦しないわよぉ~?」

 笑顔でノートを貸してくれる友人の存在に大きく感謝する。小学校以来の友人というのは中々貴重な存在だと思う。特に自分の活動に対して理解を持ってくれる人物はさらに希少だ。ありがたくノートを受けとり、それを机の横にぶら下げているカバンの中にしまう。ついでに制服の袖で机の上の涎の後を素早くごまかす。

「しかし年頃の乙女が涎流して寝てるとか……」

「い、言わないでよ!」

「ははは、ごめんごめん。こんな姿、愛しのお兄様には見せられないよねー?」

「ちょ、ちょっと!」

 軽く友人の額を小突く。兄との関係はそんなものじゃない。そんなものじゃない……と思う。だが友人は解ってる解ってると言い、ニヤニヤとした笑みを浮かべている。その姿を見て、少し恥ずかしくなる、両手を足ではさみ、縮こまる様なポーズを取って少し顔を赤くする。

「そ、そりゃあかっこいいし、頭もいいし……」

「うん? で? それでそれで?」

「優しいし……って私に何を言わせてんのよ!」

 立ち上がり、友人の額にデコピンを食らわす。煩悩退散。それが煩悩かというと微妙に違う気がするが、ともあれ”従兄”である和人の姿を脳内から追い出す。そう、従兄なのだ。法律的には全く問題がない。むしろ倍プッシュ。

 ……少し頭がおかしいのかもしれない。

「ふぅ、私も帰ろうかな」

「今日は剣道の練習しないの?」

「それが聞いてよ! 大会が近いのに今日は道場自体が閉まってるのよ! もう、本当に何を考えてるのか解らないよ! 大会が近いのに休むとか……」

「道場を使うのは一つの部活だけじゃないから仕方がないよ。そりゃあもう部活の宿命だから―――」

 そこでコンコン、とノックの音が教室に響く。夕日が差し込み二人しかいなくなった教室の中をのぞいてくるのは、線の細い青年だった。毎日家でも顔を合わせている、

「スグ、迎えに来たぞ」

「あ、お兄ちゃん」

 それは兄、桐ヶ谷和人の姿だった。教室の前にいる姿を見ると、先ほどの馬鹿な会話を思い出して少し恥ずかしくなる。が、すぐにそれを振り払って、カバンを取る。友人に対して手を振り、

「ノートありがと! 明日返すね!」

「はいはいー」

 友人に手を振られながらも教室の入り口で待ってた和人のもとへと行く。待ってた和人に対してごめん、と一言詫びを入れ、横に並んで歩き始める。

「待たせちゃった?」

「どうせ何時もの事だろ」

「うぐっ」

 最近剣道の練習が終わるまで待ってくれているのだこの兄は。だからいつもいつも待たせて申し訳ないと思っていても、練習に身が入ってしまいどうしても和人がそこにいる事を忘れてしまう。こればかりは性分の問題だから、頭で考えてもしょうがない話だ。だからと言って申し訳なさが消えるわけじゃない。

「まあ、そこまで気にしなくていいよ」

「え」

「そうやって剣道に打ち込むスグ、俺は好きだよ」

「わわっ!」

 和人の言葉に思わず階段から足を踏み外しそうになる。いきなり呟かれた言葉に顔を紅潮させるが、それを気合で何とか抑え込む。同時に無自覚に色々と恥ずかしい事を言う和人に怒りを燃やすが……もうこれは一種の病気だ。諦めるのは私の方だ、と判断する。

「はぁ……」

「どうしたんだよスグ?」

「な・ん・で・も・な・い!」

「お、おう」

 若干和人を威圧しながら階段を降り切って昇降口で靴を履き替え、校庭に出る。校庭を見ても生徒は一人もいない。日が落ちてきているのを見ると十分に時間が経っている。何であの時間に彼女がいたか若干疑問に思う所もあるが、それは彼女が図書室にでもいたと考えればあっさりと解決する疑問だ。

 和人と共に二人、並んで帰り道を歩く。

 こうやって今、二人が並んで歩けるのは一つの奇跡だ。

「ん?」

「スグ?」

「うーん?」

「おい、どうしたんだよ」

 今、確かに何かを奇跡だと考えたのに……どうしてそう思ったのかが解らない。何か霧がかかったかのようにもやもやしていて、はっきりと認識できない。若干気になるけど、今まで寝ていたことを考えると少しばかりボケていても仕方がないと考えて、思い出そうとするのを止める。

「そう言えばスグ、調子はどうだ?」

 唐突に和人がそんな事を聞いてくる。

「唐突になによー」

「ん? いや、ほらさ、大会近いじゃん」

「んー、悪くないと思うよ? 前よりも調子いいし。今は最終調整、って感じ」

「はあ、スグは凄いなあ……俺なんか剣道とか全然ダメ。全くできない。やっぱ止めて正解だったよ……」

 この男は何を軟弱な事を言っているのだ。

「何を言ってるのよ。お兄ちゃんの方がメッチャクチャ強いじゃない。二刀流であんなデタラメに戦える人初めて見たわよ」

「なにを言ってるんだスグ? ―――俺は剣道止めているぞ?」

「……あ、アレ?」

 何かわけのわからない事を言ってしまった。どうも調子がおかしい。そう、和人は数年前に剣道に関して祖父と大喧嘩をやらかし、それからはコンピューターにのめりこんで、自作マシンを作ったりするオタ体質な人間になっている。剣を握ったりチャンバラしたり、そんな類の人間じゃないはずだ。どうも調子がおかしい。

「スグ、疲れてるのか?」

 心配そうに見てくる和人に手を振って返答する。

「大丈夫よ……多分ちょっと寝ぼけてるだけ」

「そっか、なら安心だ。大事な妹が風邪ひいてたんじゃ心配だからな」

「風邪って事はないから安心して。体調管理も大事な事だからちゃんとやってるし」

「その割には夜遅くまで起きてるようだけどなー?」

「ぬぐっ」

 乙女らしからぬ声を出している事を自覚しているが、剣道系少女だからそこらへんは許されるはずだ。と、頭に和人の手が乗る。自分の手と比べて圧倒的に柔らかい手だと思う。頭を撫でる手は暖かく優しく、

「はあ、こんなことをしてまたユイちゃんに怒られても知らないわよ……」

「誰だよそれ……」

 和人が前に回り込み、両手で顔を押さえて覗き込んでくる。心配そうな表情をしている。心配してくれるのはいいが顔が近い。近すぎる。

「お兄ちゃん、顔が近いって」

「別にこれぐらい問題ないだろう?」

 大いにあります。だって、

「お兄ちゃんアスナさんと付き合って―――」

 ―――アスナ。その言葉で今、何らかの亀裂が走った気がする。何か、何か気づくべきことがあるような気がする。だが和人はその内心を知らずに、

「スグ? アスナって誰だ? 俺は別に誰とも付き合ってないぞ? おかしなやつだなぁ……」

 何を―――*1

「それよりも、ほら」

 和人が若干強引に手を握ろうとするが、

「イヤッ!」

「す、スグ……?」

 反射的に和人の手を突き放す。何だこれは。なんだろうこの感覚は。凄い違和感を感じる。和人がアスナを”知らない”と言った瞬間、それがあり得ないと直感的に思ってしまった。いや、そもそも、

 ―――何故私はこの状況に対して物凄い吐き気を覚えているのだろうか。

 考え出したらこの世界の全てが違和感だらけだ。足りない。何かが足りないんじゃない。全てが足りない。この世界は空虚すぎる。中身が詰まっていない。ハリボテの世界だ。そうだ、此処は偽物だ。何故、なぜ今まで気が付かなかったんだ。

「こんなこと……ありえない!」

 そう、ありえない。

「―――キリトがアスナを忘れるなんてありえない!」

 瞬間、和人の姿に亀裂が走り、砕け散る。そう、ありえないのだ。

「お兄ちゃんは一緒の学校には通えないし、私とだってこんな風に話をしない! 剣道の事をそこまで理解しないし、こんな風に私には接してこない! 嘘よ! こんなの全部嘘よ!」

 道路に、空に、壁に、家に、ありとあらゆるところに亀裂が走り、砕け散る。宝石の様に煌めきながらありとあらゆるものが砕け散る。こんな都合のよすぎる世界なんてありえない。ありえちゃいけないんだ。そう、これは空虚な虚像の世界。都合のいい事ばかり夢想して生み出された気持ちのいい夢。

 偽りが砕け散って、世界が黒に包まれる。

「―――いいのかしら」

 その闇の中に一人の少女が現れる。いや、少女の姿をしているだけでこの女は遥かに成熟している。ただ見た目がそうなだけで、中身は全く違う。あんな偽りの世界を生み出した張本人……黒円卓のアンナ・シュヴェーゲリン。彼女は問うてくる。

「アレは間違いなく貴女の心の願いから生まれた世界よ。兄が好き。独占したい。もっと理解されたい。もっと話し合いたい、―――愛されたい。貴女が心に抱き、秘めたる思いを私が読み取って映したものよ。感想はどう?」

 どう、ってそれはもちろん―――

「良かったわよ! 嬉しかったわよ! あんな風になりたかったわよ!」

*2

 あんな風になれればよかった。あんな風になりたかった。剣道を止めてしまってもまだ理解されたり、普通にもっと話したり、手伝いあったり、……恋が実るべきだとは言わないが、もう少し兄妹らしい関係は欲しかった。何度ソードアート・オンラインが消えてくれれば、そう願った事か。だが、

「あんな都合のいい夢、見れるわけないじゃない……!」

 唇をきつく噛みしめながら、そう呟く。

「それは、何故かしら?」

 腕を組み、微笑を浮かべる魔女は此方に視線を向けている。何故か彼女の瞳には敵意が映っていなくて、逆に情を感じる。母が子を見守るような、そんなものを感じられる。

 今なら、解る。あの人たちが戦ってでも言おうとした言葉の意味が理解できる。だけどそこから先、こればかりはキリトにも、司狼にも、そしてアレクにも無理だ。たぶん、これを経験した私にしか解る事の出来ない事で、これが―――私の役目だ。だって、

「都合のいい夢を見るのは子供にだってできるよ……でも、現実は夢じゃないんだ。あんな風に都合のいい事が起こるわけはないし、それを許して受け入れちゃいけないのよ」

 どんなに辛くて、苦しくて、受け入れたくなくても、それが現実であり、それでも進むのが人間という生き物なのだ。生きているうちは常に試練があって、それを超えることが出来るのも人間で、超えられないもまた人間だ。人間とはそんな生き物だから、……都合のいい夢に逃げてちゃ駄目なんだ。逃げていちゃ、真実にはたどり着けない。そう、今の様に。

 夢はこんなにも綻んでいる。

 夢は綺麗だけど―――透き通ったガラスのフィルターで、いつかは壊れるのだ。

 そう、解る。

 ご都合主義を許しちゃ、駄目なんだ。それは―――現実から逃げている事なんだから。

 ニヤリ、と魔女が笑みを浮かべる。

「ま、それだけ覚悟ができてれば大丈夫かしら。クリストフの方も終わったようだし―――」

 次の瞬間、全ての闇が消え去り、夜の闇に包まれたアルンの広場へと戻ってきていた。周りを見渡せばアレクと向き合う神父トリファの姿があり、影から解放された姿のキリト達がいる。再びこの普通の仮想世界へと戻ってきたことを実感する。

「スグ! アレク!」

 心配そうな表情で駆け寄るキリト……いや、兄、和人の姿がある。そう、逃げてちゃ駄目だ。一緒に今まで旅をしてきたのが和人であり―――私が恋をしたキリトは、和人だという事を受け入れなくてはいけない。私の恋が成就する事はないという事実から目を逸らして、逃げてはいけない。あの夢で少しだけ願いがかなったから、私はもう都合のいい夢はいらない。しっかり現実を見て行こう。

 だから、

「私は大丈夫だよ、”キリト”」

 兄を、笑顔で迎える。




少し詰め込みすぎたかなぁ、と反省するも、
いい加減ALO編が20超えているのでケリをつけようかと。
さあ、いよいよアイツが……
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| 断頭の剣鬼 | 10:18 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ついに次回はサイアスとご対面か・・?
今のあいつの強さってどうなってんだろ?

| | 2012/09/21 10:29 | URL | ≫ EDIT

閣下は何処へ……

水銀は何処へ……

ま、出て来たら出てきたでウザいんでしょうけど!w

| アミノ酸 | 2012/09/21 19:06 | URL |















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