陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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殉教 ―――クエシチョニング

推奨BGM:Schutz Staffe
*1推奨BGM:”Lohengrin”


 完全に仲間が人質にとられているこの状況で、俺は―――トリファを見ていた。

 こんなことをする人物じゃなかったはずだ。

 気の弱い神父。それが自分の知っているトリファだった。最後に教会で話した時もそうだった。いつも通り、気弱だけど優しい神父がいたのだ。だから螢にトリファがグルだと言われても最初は信じられなかったが―――こうなってしまっては、もう信じるしかない。

「トリファ、さん……」

「はい、私です正樹君」

 トリファの笑みも表情も姿も現実で見るそれと変わらない。そう、何も変わらないのだ。状況と居場所が変わっているのに、それ以外の全てが変わっていない。トリファの接し方もいつもと同じで、”普段の正樹”に対するものだ。。だからこそそこに敵意はない。そこまでは理解できた。

 だが、やはり―――

「トリファさん、何故貴方が―――」

「―――何故貴方が明広君を見捨てるようなことをするか、と言いたいのでしょうね。えぇ、私には貴方がそう言う気持ちが痛い程にわかります。えぇ、これでもかと思う程に解ってしまいます。ですから、少々お話をしましょう」

「そこらへんはよろしく頼んだわクリストフ。私説明とか面倒だし」


 めんどくさげに少女がそう言うと、彼女の足元の影がうごめき、椅子の形を取る。その椅子に座る彼女の姿を確認しつつ、トリファが何時もの笑みを浮かべ、両手を組む。少し緊張している時や、誰かに何かを説明するとき……そんな時に見せるトリファの仕草だ。この神父はどんな状況にいても変わらない―――

「では、全てを語る事が出来ない身ですが、真実の断片を解放しましょうか」

 トリファが俺だけではなくキリト、そして司狼、リーファにも視線を向ける。そして、

「―――アインクラッドとは一種の実験場でした」


                           ◆


「アインクラッドの発売前にVR技術は既に高いレベルでの実用化が済んでおり、軍隊における利用はもう十年以上前に始まっています。ドイツは訓練におけるVR技術の導入にいち早く手を出した国でした。弾薬を消費せずに、電気のみであらゆる状況、あらゆる装備を使わせ、訓練させることのできるVRワールドへのフルダイブ、それは筋力の低下さえ気を付けていれば理想的な環境でした。これはシュピーネから聞いた話ですが、銃のメンテナンスや訓練に使う弾薬の費用というのは馬鹿にならない話しだそうで、高価なVRマシンと弾薬を購入し続けるのとでは、前者が圧倒的にコストパフォーマンスにおいて優れているのですよ」

「クリストフ」

 アンナがトリファに声を投げる。

「話逸れすぎ」

「あぁ、すいません。私、どうも若者と喋るのが好きなようでして」

「それって私の事を年増だって言ってない?」

「いえいえ、とてもそんな事は……コホン」

 少し焦った様子ながらトリファが咳払いをし、場の主導権を握り直す。

「さて、先ほどアインクラッドを、ソードアート・オンラインを私たちは実験場だと言いましたが、その理由は単純に言いますと―――このデスゲームという状況が発生する事を把握していたからです」

「ちょっと待ってよ!」

「トリファさん、それは―――」

「―――冗談ではありませんよ」

 短く、優しい言葉のはずなのに。何故か、今、確実にトリファの言葉に引き込まれている。この男の言葉に耳を傾けなくてはいけない。そんな気がする。

「ここまで来たのなら解っているでしょうが、私達には未来をほぼ確定した形で予知……いいえ、操作する人物を知っています。その方はこの黒円卓に所属する人間の大半から嫌われているわけですが、その能力においては全員を合わせても爪の先にすら届かないものでして、唯一対等に立てるのはハイドリヒ卿ただ一人でしょう」

 そこで一旦トリファは区切り、細めていた目を開く。

「―――聖槍十三騎士団所属第十三位副首領”水銀の王”……カール・クラフト。彼はそう名乗りました。そしてハイドリヒ卿と共に我々を集め、この魔人の集団を生み出した張本人でもあります……さて」

 トリファは今、自分がこの場にいる者の視線を集めている事を確認し、そしてわざと言葉を区切った。考える時間を与える為に、情報に潰されないために、理解するために。だから素早く思考する。キリト、そして不本意ながら自分が知っている限りで、一番賢い人間が捕まっている以上ここは俺とリーファでどうにかしなくてはならない。

 まず一に、アインクラッドの事を事前に把握していた。

 二、それはカール・クラフトという男が生み出した状況だった。

 三、この男は黒円卓を生み出した張本人でもある。

 この話を聞くだけなら全ての根幹にカール・クラフトが関わっているように聞こえる。しかし、

 ラインハルト・ハイドリヒ、カール・クラフト、そしてミハエル・ヴィットマン。どれもこれも第二次世界大戦時のドイツの人間の名前だ。偶然にしてはあまりに笑えないし、物騒すぎる。

「では……何故我らがアインクラッドの状況を状況を知っていながら止めなかったか、という話になりますが……すいません、それに関しては私の口から語る事は出来ません」

「それはないでしょ!? アンタ達が黙っていなければ死ななくて済んだ人がいっぱいいたのよ!?」

 たまらずリーファが怒鳴っていた。その気持ちは解る。だがそれは”無意味”なんだ、リーファ。この男、ヴァレリア・トリファという男は恐ろしく話術に長けている。過去の付き合いがそれを教えてくれている。だから―――

「―――すみません、リーファさん。いえ、直葉さんと言うべきでしょうか」

「……ぇ」

 トリファが口から零した名前にリーファが固まる。それは紛れもない、リーファが今まで晒す事のなかったリアルでの名前だ。確かに黒円卓の能力を用いればそれ位容易いだろうが、それにどれだけの意味―――

「―――桐ヶ谷直葉さん」

「ッ! トリファさん!!」

 今の言葉の意味は理解できた。いや、理解せざるを得ない。何かしなくてはいけない。だがその前に、

「……スグ……?」

 キリトがそんな声を漏らし、

「う、嘘……キリトって……まさか……―――」

 リーファがそこまで口を開き、

              「―――さぁ、それじゃあ本番始めるわよ」

 底の見えぬ沼の様に濃く圧し掛かってくる影が、俺達を飲み込み視界の全てを遮った。


                           ◆*1


 衝撃に備えて目を閉じていた。臆病かもしれないが、ミハエルの戦闘でも全く役に立たなかったし、此処でもそこまで役に立つとは思えなかった。だから衝撃と終わりに備えて目を瞑った。それでも来るべき衝撃波なく、何かがおかしいと思って目を開いた。

 見えたのは闇だった。完全な闇だった。全てが黒一色に染められた世界。

 そこに赤い光が生まれる。

 否、光じゃない―――目だ。野犬の様な、猛獣の様な、言葉にし辛い姿をした、存在しない生物の赤い瞳。それが闇の中で光源となってこの場で僅かな視界を確保させていた。それでも見える限り闇が続いていて、、此処があの女の影の中だという事を認識させられる。

「さて、正樹君……私は一つ、貴方に聞かなくてはならない質問があります」

 トリファの声がする。だがその姿は見えない。この状況はヤバイ。何よりキリトと司狼ではなく、リーファの姿が見えない。さっきのキリトとリーファの様子を見ている限り、いや、見なくても分かる。キリトの本名は桐ヶ谷和人、つまり桐ヶ谷直葉とは、血縁者。

 ……余計な事をしてくれるよな、ホント!

「出てきてくださいトリファさん! トリファさんに聞きたい事があるんです! 今度は貴方のターンではなくこっちのターンのはずですよ!」

 闇の中に向かって叫ぶ。トリファの姿は見えないが、それでも分断されたことは認識できるし、トリファもこの闇の中のどこかにいると解る。

「正樹君、貴方は―――」

「答えてくださいトリファさん!」

「……何故そこにいるのですか?」

「……え?」

 トリファの予想外の質問に動きが止まる。何故そこにいるか。そんなもの決まっているじゃないか。

「兄弟だから―――」

「―――正樹君、貴方は自分が司狼君や和人君以上に珍しい存在であることを認識していますか?」

 会話のペースを握られてはいけない。その事は解っているのに、どう足掻いてもトリファの話には耳を傾けてしまう。それはどうしても手を出したくなってしまうような果実な様なもので、

「解らないのですか? ―――貴方の周りの人間には皆、役割が与えられているのですよ。明広君は言わずもがな、司狼君と本城さんは癌細胞として、テレジアはゾーネンキントとして、そして綾瀬さんもまた―――」

 そこでトリファが言葉を区切る。

 しかし、待て、それでは最初から全て―――

「―――”それでは最初から全て仕組まれていたようだ”」

 言いたかった言葉をそのままトリファに言われてしまった。心の内を当てられたことに恐怖を感じる。しかし、これは、兄達を中心に計画されている? いや、組み込まれている? だとしたら、いや、まさか、

「その考えであっています」

「そんな、馬鹿な!」

 思わず声に出して叫んでしまう。そんな事はありえない。考えてもいけない。それは、兄達が生まれてきたことすら否定してしまう事実だ。本来なら冗談だと一蹴してしまうような妄想じみた考えだが、今だけは否定できない。ここ来るまで、散々非現実的な事を味わってきたのだ。

「貴方は賢い子ですね、正樹君……本当に」

 闇の中からトリファが現れる。いつもの笑み、何時もの恰好、何時ものポーズ。姿は変わらないのに、

 なんで、

 なんでこんなにもトリファを見る事が怖いんだ。あの気弱で優しそうな神父が、今はミハエルやエレオノーレよりも怖い。何もかもを見透かされ、心の底にしまっている秘密が隠せず暴かれている様な気がする。少し憐れむ様な表情のトリファの表情を、直視したくないのに目を離す事が出来ない。

「そんな馬鹿な事ありえるか!」

 否定したくて大声で、叫ぶ。

「―――生まれる前から全部決まってたなんて信じられない!!」

 ふざけたような考えだ。全てが精密な計算と誘導で出来上がっていたとしたら、これほどまでに恐ろしい事実はない。恐怖を抱くほかにない。

「では再度質問させていただきます」

 トリファの視線がこっちを射抜く。

「―――役割を与えられていない貴方は、いったいなんなのですか?」

「お、俺は……」

 直ぐに答えが出せるわけがない。ここで何と答えればいいのだろうか。選べる選択肢は少ないように思えて意外と多い。一つは最上家の次男、そして兄の弟。二つ目は最上正樹と、そして三つ目はトリファの友人と―――そんな風に考えれば選択肢は多い。だが違う。何かが違う。そんな安易な事が答えじゃない気がする。それに色んな情報が叩き込まれ、頭が混乱して今にも熱を出しそうな気がする。

「さあ、答えてください。癌細胞にも染まらない。役者としての役割を見出されない。主役の影とも言える貴方は―――一体”誰”なのですか?」

 言葉に詰まり、何も言えなくなる。

 何かを言おうとして口を開き……言葉が出なく、口を閉じてしまう。

 何かを考えようとすれば別の事が頭の中に浮かび、それがまた別の考えで塗りつぶされ、思考を長く一つの事に留められない。

 ―――答えが、出ない。




本当はもっと移動のシーンとか挟みたいんだよね。そういうのって地味でだれも見向きしないけど格上では重要な事だし、情報整理とかには便利。作品の話をするときは絶対に話題に出てこないけど、それでも場をつなぐ意味で重要だと思うの。つまりアレだ。場つなぎにもっと愛の手を。

まぁ、黒円卓問答前半戦終了かな?
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| 断頭の剣鬼 | 08:17 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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| | 2012/09/21 00:47 | |















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