陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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殉教 ―――ニア・ジ・エンド

推奨BGM:Nacht der langen Messer
*1推奨BGM:Cathedrale


「よっと」

 軽い助走をつけてからジャンプする。十数メートルの距離を一息に跳躍し、着地する。不安定な足場は着地するだけで軽く軋み、そして揺れる。

「ちょ、ちょっと!」

「大丈夫、大丈夫」

「パパ! 次はもっと遠くへ跳びましょう!」

「ユイちゃんやめて!」

 首に手を回して背中に張り付くリーファは必死だ。それとは対照的にユイはこの状況を楽しんでいる。ユイはどうやらセンスや感覚的には俺に似て育っているようだ。それは―――実に将来が心配だ。さて、そろそろアスナを救出した後での家族会議を覚悟しなければならないようだ。

「よっ」

「ほい」


 気の抜ける声と共に司狼、そしてエリーも此方へと跳んでくる。司狼の腕の中にはお姫様抱っこをされて死んだ目をしている正樹がいる。もはやその恰好に関しては諦めているようだ。そのうちその死んだ目がレイプ目になりそうで怖いが、まあ自分に被害が来ることはなさそうなので無視しておく。

「ここからなら歩いていけそうだな」

 軽くしゃがみながらリーファに降りる事を促す。足場をちょんちょん、と慎重に確かめてからリーファは降りる。

「安心しろ正樹……俺はお前を運んでやるぜ」

「意図的にホモホモしい絵を狙うのはやめてください。喜んでるのエリー先輩だけですから」

「スクショ保存して香純ちゃんや先輩に送る予定よ」

「最悪だこの二人……」

 見ていてあの三人は飽きないな、等と思っていると正樹も足場の上に着地する。そこで軽く足場が揺れるが、それでもそれは長く続かない。今はまだ一列に並ばなければ歩けないような足場だが、先へと進むにつれて段々と太くなっているのが見える。マシな足場になるのはもう少し先の話だろう。

「だけどまさか……」

 リーファが先を見上げるように見る。見えるのは木の根と暗い闇の天井だけだ。

「世界樹の根の上を歩く日が来るとはね……」

 央都アルンへの近道らしい、世界樹の根の上を歩く。


                           ◆


 ヨツンヘイムはアルヴヘイム同様、央都アルンを中央に広がる超高難易度マップであり、そのエリアにはダンジョンが存在し、そして邪神級モンスターが徘徊している。邪神を虐殺していたミハエルと戦ったおかげか、邪神の背中に乗っている間は一切襲われる事がなく、色々と助かったのは良かった。

 問題はその後だ。

 ミハエルが言ったアルンへの抜け道は見つけられた。

 だがそれは地面から約数十キロ、もしかすればそれ以上高くに存在する天上部分についているのだ。飛行能力が使用不能になっているこの洞窟の中では、何らかの方法でそこまで上らなくてはならない。エリーのハッキングもアルン付近に入った途端使用不能になったため、今もっているもので踏破しなくてはならない。

 結果、登った。

 ヨツンヘイムの中央には、地上に根を張る世界樹の木の根が伸びており、それが地下にまで届いている。正樹やリーファのアバターのステータスでは絶対に無理と言えるだけの距離だが、司狼とエリーの改造されたパラメーター、そして異常な能力を見せる俺であればまだ行ける。そう判断して―――実行された。

 結論を言うのであれば無謀ではなく、可能な範囲だった。

 今、足止めのために残った螢を抜いた全員でここを上れているのは奇跡に近い。

「奇跡に近いんだよなぁ……」

「何が?」

 独り言のつもりだったが、どうやらリーファに聞かれていたらしい。素早く今の状況が、と答えると司狼が笑いながら言葉を投げてくる。

「これのどれが奇跡だよ。どっからどー見ても誘導されてんだろ。お前、デジャヴってんならそれ位気づけよ」

「俺は司狼みたいなデタラメ超級者じゃないんだよ……」

「いや、キリトはそんな事絶対に言えないからね? むしろ存在自体がファンタジー」

 このシルフ、中々言ってくれるものだ。だがそう、誘導。この状況に誘導されていた。そう言われると―――。

「都合がいいもんな」

 そう、あまりにも都合がよすぎる。戒と螢が最初に来たことで螢が仲間になったこと、ベイとの戦いで弱点を露見させ、それに対して有効な攻撃手段や戦法を思いつく援軍が来た事、圧倒的暴力を持って蹂躙できる存在に対して足止めのできる存在がいた事、そしてタイミング良く一番相性のいい戦闘力を持った存在が助太刀に入ったこと。どれもこれも死線を踊って超える様な状況の連続だったのに、不思議と死ぬことも敗北する事もなかった。アレだけの実力者を前に一度も敗北がない状況は言われて考えてみればおかしすぎる。

 そう言えば戒と螢が言っていた。

「これだけは覚えておけ」

 司狼が言う。

「全部がテメェの手柄だと思うな」

「……?」

 リーファがその言葉に首をかしげる。そして正樹が軽く苦笑する。

「兄さんと先輩っていつもそんな感じだよね。何か成功しても嬉しくなさそうで、成功したらアレのせいだー! って感じで」

 そういえば司狼と明広はずっと前からのこのデジャヴと戦い続けたのだったか。現実でデジャヴ相手に奮闘していた司狼もそうだが、アインクラッドで”サイアス”が見せていた不死性も―――もしかしてあの既知感が原因の一つだったかもしれない。今のとなれば納得できる事ばかりだ。だがアインクラッドという異世界、いや、新世界に来てもまだあの既知感に襲われていたとなると、本格的に恐ろしくなる。

 この光景は見た事がある。

 何故知っている。

 何故覚えてる。

 何故、思い出してしまうのだ。

 それらを紐解く鍵は―――

「―――自滅因子だろうな」

「なんだろうなぁ」

「結局意味の解らない話だったなあ」

「まあ、基本的に俺とリーファちゃんは蚊帳の外っぽいからね」

 正樹がこれは仕方がないと言わんばかりに笑っている。この青年の諦めっぷりを見るに、こうやって振り回された挙句、意味の解らない状況に突入する事態にはどうやらそれなりに慣れがあるみたいだ。慣れるまで連れまわした司狼、エリー、そして明広の存在には少しばかり恐怖を抱く。こいつら、SAO事件前はいったい何をやっていたんだ。

「お、その顔は私たちが気になる顔だと見た。よっと」

 木の根が垂直になるところまで上ってきたため、緩やかに上り続けられる横の木の根に跳び移る。根は結構太く、基本的な車道の太さぐらいある根は多少跳ねたぐらいではびくともしない。

「いいねぇ、俺達の武勇伝を聞きたいってか」

「あ、経験者からすると頭の痛くなる話だから止めた方がいいよ? って形だけ言っておくね」

 正樹も一緒に何度か戦ったためか、硬かった口調がだいぶ崩れてきている。多分、このノリが素の正樹なんだろう。敬語で話しかけてきたときよりは好感が持てる。

「どんなことをしてたんですか?」

 ユイが禁断の扉を開けてくれた。

「そうだな……軽いジャブでヤクザ相手に喧嘩とか」

「ジャブじゃねぇ」

 最初からぶっ飛んでいた。もう大体オチが見えた。

「もういい。大体それで他のも酷いって解ったから……」

「遠慮する必要はねぇぜ? 人生刺激的にいかなきゃ死んでるのと変わらねえからな」

「基本的に楽しそうな事にはなんにでも手を出しているからね。そんじゃそこらの遊び好きとは全く違うレベルの娯楽を味わっていると、自信を持って言えるよ」

「それ、娯楽じゃない。確実に火遊び」

 それも火薬庫の中で火のついたライターでジャグリングするようなレベルの。

「あ、俺は基本的に逃げ回ってただけだからね?」

 正樹が手を振ってまるで他人の様なジェスチャーをするが、安心しろ、お前も同罪だ。

「ギルティーです」

「その子愉快な性格してるよね。んー、可愛い」

 ユイは最近、本当にAIなのか疑問に思う勢いで精神的変化を見せている。アインクラッドで暮らしていた頃も十分に人間的だったが、それでもこっちへ来てからの精神的な動きは、まるで本当の人間の様だ。いや、人間の精神をモニタリングしていたユイは元々精神的な機微や表情に対しては敏感だったのだが……それでも、少しだけ、人間臭すぎる。考えられるのはSAOからALOへと移った際に何らかの改変があったことだが―――まぁ、心配しても今の自分ではできる事もない。

「気にするだけ無駄か」

「?」

「何でもないよ……早くママに逢いたいなよな?」

「はい! また、あの時の様に、三人でひっそりと森の中で……」

 ポケットの中が定位置と化して来ているユイの頭をなでながら、進む道を見上げる。視線の先にはヨツンヘイムの天井……そしてアルンへの抜け道が見えてきた。木の根が階段となっており、そこから先が通路となっている。ミハエルの言葉を信じるのであれば、この先がアルンへと続く道になっているはずだ。

「……兄さん」

 しかしつくづく、正樹の精神的な強さには脅威を覚える。ここまで叩き潰され、そして無力だという事を証明され、それでいて常識では考えられない状況に直面しておきながら、未だに兄を追いかけている。リーファのモチベーションは俺達と一緒というところが大きいが、正樹は違う。しかも正樹の希望は正直に言えば絶望的な状況だ。

 やはり流石、明広の弟という事だけはある、という事なのだろうか。

「なぁ、アレク」

「ん?」

 歩くペースを落として正樹の横を歩く。木の根の上ながらそれだけのスペースはある。

「……サイアス見つけたら……どうするんだ?」

 ちょっと、気になったことであった。

 今の状況を明広が作り上げたとして、ここまでの全てを誘導しているのであれば、この先の展開もまた明広の思うとおりに進んでいくと考えていいはずだ。いや、おそらくそうなる。明広の確定した未来を覆せるだけの材料が此方にはない。だから明広に逢ったところで―――

「何も変わらない?」

「……口に出てた?」

「いや、考えている事が一緒だなぁ、って」

 正樹が苦笑する。結局考えられるのは今の事だ。その先に何が起きるかは不確定で、決まっていない。そして―――見えない。ここまで状況が見えないのも初めてだ。普段なら経験からある程度の予想が付けられるのだが、今回ばかりは荒唐無稽すぎて予想も糞もない。混沌としすぎた状況だ。全く先が見えない。

「まぁ……とりあえずは話すためにここまで来てるし」

 拳を作って此方へと見せてくる。

「まずは一発殴りたい」

「同感」

 アスナを助けに来たのにこんな状況に追い込んだ馬鹿は、どうしても一発殴らなきゃいけない。ついでにあの馬鹿を殴って正気に戻す。皆連れ戻してハッピーエンド。ご都合主義でもいいから、俺は大団円を選びたい。

 そこで軽く笑いあいながら、ようやくアルンへの抜け道へと到着する。暗い廊下の様な空間を光るキノコやコケが照らし、道を示す。アルンが近づいているという事実に僅かに緊張しながらも、全員で階段を駆け上がる。もうアルンのすぐ傍までは来ている。長い階段を一気に駆け上がり、出口から飛び出し―――

「―――拷問城の食人影」
Csejte Ungarn Nachatzehrer


*1

 出口から飛び出し、アルンへと到着したとたん、暗闇の街の中で待ち構えていたのは―――

「遅かったですね」

「はい、ゲーット!」

 軍服姿の少女と、神父服の男だ。飛び出した瞬間に体が時を止められたかのように動かない。ギリギリ動かせる目だけを使って視線を動かすと、他の皆も同じく動きを止められているのが解る。

「あぁ、ごめんごめん。大人しくしてくれると助かるわ。うんうん」

 何か喋ろうと口を開こうとするが、口も開かない。完全に、動きを止められている。相手の罠に引っかかったと考えるのが妥当だが、

 不思議と目の前の二人からは一切の殺気も戦意も圧力も感じない、不思議な二人組だったが―――

「……トリファさん……?」

「はい、昨日ぶりですね正樹君」

 正樹が口を開いた。俺が口を開けないのに喋れるという事は、

「あぁ、そうそう。そこの君と、君だけは話せるようにしてあるから喋ってもいいわよ」

 女が指さしたのは正樹、そしてリーファだ。戦闘能力のない二人を指さし、選んだ理由とは、一体―――

「聖槍十三騎士団黒円卓第八位”魔女の鉄槌”アンナ・シュヴェーゲリン。シュライバーちゃんと名前被っちゃってるけどよろしく」

 ウィンクと共に挨拶をしてくる女からは一切の殺意を感じない。そして、

「―――聖槍十三騎士団黒円卓第三位」

 そこで一旦区切り、正樹に目を、気弱そうな神父が向ける。

「”神を運ぶ者”ヴァレリア・トリファです。まぁ、神を運ぶ者と呼ばれつつも私のその役目は終了していまして、えぇ、凄く今更な名前なのですが……では―――」

「そうね」

 神父が正樹を見るように、アンナがリーファを見る。

「な、なによ……」

「いえ」

「難しい話じゃないわよ」

 可愛らしく、どこか少し演技めいたポーズをとり、

「お喋りしましょ? 私達と、貴方達のこの先―――そして今の運命を決めるお話を」

 正樹、リーファ……!

 戦闘力等意味のない戦いが、俺達を抜きにして始まる。
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| 断頭の剣鬼 | 09:52 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

うおーーー、まれうすーー!
あんまり出番無いからここでSって頑張って!

| 羽屯十一 | 2012/09/19 10:18 | URL |

なるほど、ここで問答ですか・・・。
マジ、えげつねぇ・・・。

| 断章の接合者 | 2012/09/19 11:33 | URL | ≫ EDIT















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