陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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殉教 ―――アルベド

推奨BGM:Einherjar Nigredo
*1推奨BGM:Einherjar Albedo
*2推奨BGM:Nacht der langen Messer


 終焉が迫る。避けられはしない。防御もできない。それは絶対不可避の即死を意味する必殺の拳。それを回避する方法も防御する方法も、この世界にも現実世界にも存在しない。故にこの拳は真の意味で必殺だ。触れれば絶対に死ぬ。しかもその能力には一切の制限が存在しない。致死性で言えば今まで見て来たもので最強を誇り―――この一撃が”あの”戦いに存在していれば、たった一撃で全てに決着がついていたに違いない。

 こんな事態を引き起こさずに。

 だがそれも今更な話であり、同時に現実逃避でしかない。しっかりと現実を認識し、この状況を打破する能力が必要だが―――

 ―――見えない……!

 勝利する方法はなく、既知感すらない。解らない。完全に足が止まり、体も硬直している。いや、光よりも早くミハエルが攻撃しているだけだ。相手が加速したのであればそれよりも早く動き、攻撃を叩き込めばいい。そんなシンプルで幼稚な発想をミハエルは迷うことなく、そして苦も無く実行していた。戦士としての理想形が目の前にいる。その存在に純粋な憧れを抱き、同じくらい恐怖する。

 それが完全な終焉だと、どうしようもなく理解できてしまうから。

 故に―――

 ―――何時の間にか自分と拳の間に剣が挟まっていた。

 ……は?


 その剣は見た事がある。というよりもほんの刹那前まで地面に突き刺さっていたものだ。白い宝石の様な、透き通る刀身に剣―――ダークリパルサー。確かにそこにはなかったのに、それが何故か今、この瞬間には目の前、ミハエルの拳と自分の間に存在していた。リズベットに打ってもらい、今までの戦いで自分を支えてきた愛剣が、

 終焉に触れて、”死んだ”。

「……ッ!」

 どうしようもない喪失感に囚われる。まるで自分の半身を失ったかのような喪失感だ。今すぐ声を上げて泣きたいような、そんな激情に駆られるが―――

「―――ぶった切れぇええ―――!」

 感情を冷静に押し殺し、動く。ダークリパルサーが拳に触れた事で、コンマ一秒以下の時間が生まれる。今までなら知覚する事すら不可能だった瞬間。刹那。だがダークリパルサーが何らかの理由で身代わりになった時間を、無駄にはしない。

 ミハエルの拳を―――機神・鋼化英雄を羅刹の刃に映す。

 瞬間、ミハエルの右腕が肩から切れ跳ぶ。奇跡にも等しい所業だった。いや、奇跡そのものだった。ダークリパルサーの犠牲、今までの戦闘による経験蓄積、此処来てまた発生している急成長、その全てが組み合わさってやっと成功した奇跡の逆転だった。ミハエルの得物を、その武器である右腕の聖遺物を見事に―――

「―――それぐらいやってのけると確信していた」

「……ぇ……?」

 今度こそ本当の意味で放心した。ミハエルの左腕に渦巻く死は、右腕に宿り此方を殺そうと振るったものと同じだ。ほぼ反射的に刃にミハエルの姿を映そうとして、

「無駄だ」

 刃に映るよりも早く拳が振るわれる。

 今度こそ、本当に終わりだった。体を小指ほど動かす事が出来る状況ですらない。いや、ミハエルの速度に反応できていない。それなのに相手はあの終焉を連発できる―――化け物だ。化け物でしかありえない。こんなものを人間だと認められるか。いや、こんな、

「こんな……!」

「―――言葉を吐くだけなら誰にだってできる。英雄譚とは死によって完結する。だからこそ英雄キリトよ―――ここで物語を終わらせろ」

 絶死の拳は振るわれ―――

「さらばヴァルハラ 光輝に満ちた世界」 *1
Fahr' hin,Waihalls lenchtende Welt


  声が響いたその一瞬で自分とミハエルの間の距離に違和感を感じ始める。何かがおかしい。

 何かが、いや、誰かが俺に触れている―――。

「聳え立つその城も 微塵となって砕けるがいい
Zarfall' in Staub deine stolze Burg

さらば 栄華を誇る神々の栄光
Leb' wohl, prangende Gotterpracht

神々の一族も 歓びのうちに滅ぶがいい」
End' in Wonne, du ewig Geschlecht


 届かない。ミハエルは俺の何倍もの、いや、桁の違う速さで拳を、終焉の幕引きを打ち込んでいるのにだ。残った左腕の一撃はとうの昔に届いていなければおかしいのだ。なのに、それはどんな高速な動きで叩き込もうと絶対に届かない。届く事が出来ないのだ。距離が永遠に伸び続け、触れる事が出来ないのだ。

「なるほど―――」

 その現実にミハエルは言葉を漏らす。

「創造―――」
Briah――――


「―――そういう運命か」

 ミハエルとの間の距離が離され、自分が誰かに体を運ばれているのが解る。それが誰で、どうやって、何故かは、判断できないし理解もできない。なぜならその行動は全て俺が何かをできる前に、ありとあらゆる行動の前に割り込んで発生しているからだ。思考も、動く事も許さずにただ誰かに運ばれ―――

「死世界・凶獣変生」
Niflheimr Fenriswolf


 行動が終わった後だからこそ見える。

 俺を死地から救い出したのは、

「聖槍十三騎士団黒円卓第十二位―――」

 長い白髪、ドレス姿の少女だった。

「―――”悪名高き狼”、アンナ・シュライバーです。……友達を助ける為に、助太刀します」


                           ◆


 現れたのは白の少女だった。いや、少女といっても幼い少女ではなく、おそらく自分よりも一つか二つぐらい歳が上の少女だ。髪は長く、アルビノを思わせる様な白さを髪と肌に持っている。一瞬ベイ同様のアルビノかと思うが瞳の色からして違う。そしてこの少女は自分が黒円卓の所属だと言いながら白のドレス、そして大きな帽子をかぶっている。体から溢れる戦意とはやけにギャップがある存在だが、

 見れば一瞬でわかる。

 これも、また別次元の存在だ。なによりもミハエルの拳からこうもあっさりと逃れる時点で、人間という範囲を超えて魔人の業に染まり切っている。自分とそう変わらない年齢、そのはずなのに、別世界の住人のように見える。

 と、

「あ、す、すいません」

 少しおどおどした様子を見せながら、俺を解放してくれる。なんだか少し怯えている様にも見えるが、

「わ、私は―――」

「―――アンナ・シュライバー、ドイツの若き女優ねー」

 今まで戦闘に参加していなかったエリーが、後ろから状況を眺めて声を投げてくる。エリーは女優と言った。その言葉にアンナはコクリ、と頷き、

「と、友達に、た、たす、けてほしいって言われたので、ドイツから全速力で……来ました」

 此方に向かって優しく微笑んでいた少女だが、ミハエルへと向き直った瞬間相手の命すら脅かす戦意が再び出現する。そのか細い体のどこにそれだけの闘志を、そして殺意を隠しているのか。それを考えると非常に恐ろしいものがある。長い髪が邪魔して彼女の片目しか見る事が出来ないが、そこには比喩でもなんでもなく、視線だけで人を殺せる殺意が宿っていた。

 だがミハエルはその視線にさらされながらも、

「―――ゾーネンキントか。なるほど、確かに侮れん」

 ミハエルは一人で納得した様子でいた。この男は此方には理解できていない何かを理解し、そしてそれを肯定していた。正直その感覚が気持ち悪い。その何かを知るべきであっても、知りたくないという気持ちがある。

「で、なんだ」

 司狼が拳を握り、構える。

「相変わらずクソつまんねぇ吐き気のする戦いだけど続けんのかよ?」

 シャドーボクシングで挑発する司狼を、ミハエルは幕引きの一撃を構えたまま数秒見つめる。

「……た、戦うのであれば私が……いえ、”僕”がた、戦う、事になりますよ」

 その言葉にミハエルは数秒何もせず構えたままで……しばらくして構えを解く。幕引きの拳も消え去り、片腕を亡くした状態でこちらに背を向ける。戦闘中にはありえない行動をとったことから、もはやミハエルに戦意がない事が見て取れた。それを見てシュライバーも戦闘態勢、警戒を解く。

*2

「いいだろう。これも運命だ。シュライバーを引く事がお前達が役割を成就する方法だったのだろう。進むがいい。この先に進めば世界樹の木の根がある。それを上ればアルンへと侵入する隠し通路が存在する。そこに入れば次の相手が貴様らを待っている」

「おい待てこの」

 ミハエルが会話を一方的に終わらそうとしていたので、司狼が割り込む。

「テメェ、俺達を”癌細胞”って表現しやがったな。そりゃあどういう事だ」

「いずれ解る」

 ミハエルが背中を向けたまま答える。それは明確な拒絶の意志で、これ以上話す事はないという事を表していた。これ以上睨んでいても仕方がないとばかりに、司狼は息を短く吐き、

「おい、エリー、後輩共は生き返ったか?」

「そりゃあもうバッチリ」

 エリーの横では蘇生魔法を使われた正樹とリーファが激しく落ち込んでいた。そしてその上を飛ぶユイが二人をあの手この手で元気付けようとしていた。

「どうもー……」

「全く役に立たなかったわ……。というか早すぎて見えない……」

「だ、大丈夫ですよ! 私何て解析できなくてストレスゲージがマッハで上がってますから! 管理AIだったのに今ではピクシーですから!」

 ユイが何か今、口を滑らせてヤバイ事を言っていたような気がするが、疲労からそんな事を考える余裕はない。ミハエルとの戦いは予想以上に精神を削っていた。

「ふふ」

 ユイの様子を見ていたシュライバーが軽く笑った。あぁ、忘れていた。

「あ、ありがとうシュライバーさん」

 その事にシュライバーがいいの、と首を横に振る。

「私は、その、友達を助けに来ただけだから……ミハエル大尉を見てなきゃ、い、いけないから、応援しかできないけど、頑張って……ね?」

 首をかしげる動作が可愛い。うーむ、これで女優か。これが終わったら主演映画を少し探してみようか……。

「パパの鼻の下が伸びてます」

「アレ、嫁に言いつけようぜ」

「録画完了したよ」

「やめて!!」

 ユイの件だけでも家族会議確実なのに。

「さて」

 何時までもここで遊んでいるわけにはいかないのだ。螢とベアトリスには悪いが―――あの二人があの魔弾の悪魔に勝てるとは思えない。それは今、ミハエルと戦って改めて実感した事だ。司狼も薄ら笑い浮かべているが、その目だけは本気だ。

「そろそろ行くか」

「そうね。あんまり時間はないしね」

 ミハエルに指示された世界樹の方向へ歩き出そうとした瞬間、戦闘が終わったこの場所に一体の邪神モンスターがやってくる。それはAIにしてはやけに強くミハエルを睨んでいるが、俺達に対しては戦意を見せていない。一体何事かと思ったところで、

「そ、その子に乗るといいですよ」

 強くは見えない、おどおどした様子のシュライバーが、ゾウとクラゲを合体した様な邪神モンスターに手を向けて言う。

「よ、ヨツンヘイムには、元々邪神モンスターを、味方につける方法が、あ、あるん、です」

「つまりそれを何時の間にか満たしていたって事か……」

 すぐ近くでゾウクラゲの邪神が体をおろし、乗りやすいように高さを調整してくれている。移動距離は長いように見える。これを逃す手はない。ありがとう、と再びシュライバーに言いながら邪神の背中に飛び乗る。他の皆も揃って乗り、邪神が世界樹の根元へと向けて歩き出す。意外と快適な背中に少しだけ驚く。

「―――自滅因子」

 段々と離れて行く中で、ミハエルがこっちを見ずに言葉を送ってくる。

「己を知ってから選択しろ。今の貴様らはそれ以前の問題だ」

「それはどういう意味だよ―――」

 だが答えを聞き出す前に邪神は会話が届く距離から離れ、ミハエルの姿は水晶の塊の裏に隠れてしまう。邪神は俺達を乗せ、水晶と荒野しかないこの不毛の大地を、目的地へと向けて歩く。


                           ◆


 キリト達が去ってから、ミハエルが虚空へと向かって声を放つ。

「そろそろ出てきたらどうだ」

「ッチ」

 舌打ちと共に姿を現したのは白髪の吸血鬼―――ベイだ。魚龍に食われ、そのままヨツンヘイムへと運ばれためしばらく放浪していたが、かなり前にミハエルを見つけ、ずっと隠れていたのだ。

 そう、キリト達の戦闘もずっと見ていた。

 ベイの姿を見て、シュライバーが頭をぺこりと下げる。

「あ、あ、あの! ヴィルヘルムさん! こ、こんにちわ!」

「あぁ。それよりもマキナテメェ……」

 それよりも、で片づけられたシュライバーが若干落ち込む姿を見せた。だがヴィルヘルムはそれを一切気にすることなくミハエルへと言葉を放つ。

「―――手ェ、抜きやがったな?」

 ミハエルは明らかに本気ではなかった。その気になれば開幕と同時に全てを終わらすことも可能だっただろう。命令は全力で迎撃する事、しかし、

「それを言うのなら貴様も手を出せばよかっただろう」

 ヴィルヘルムは終始見ているだけだった。ミハエルの事を言うのであればヴィルヘルムもまた人の事を言えない。が、ヴィルヘルムがケ、と言ってソッポを向く。

「そう睨まれてちゃあ何もできねぇよ。特にシュライバーなんぞずっとこっちの気配探ってたじゃねぇかよ」

「あ、ぁぅ……」

 シュライバーが顔を赤くしてそっぽを向く。が、ヴィルヘルムはやはり気にしない。そのままミハエルへ、

「次は―――」

「―――クリストフとマレウスだな」

「一番エゲつねェ」

 三人の視線が、自滅因子とその仲間達の去った方角へと向く。そっちを見ながらヴィルヘルムが呟く。

「そこで潰れなきゃいいけどな。―――あの二人は俺達以上に残酷だからなァ……」

 故に、

 殉教者の試練に終わりはまだ来ない。




断頭名物

チワワイバー(チワワ+シュライバー)
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| 断頭の剣鬼 | 08:49 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

え?シュライバー?誰だよお前(笑)

| 御神楽 湊 | 2012/09/18 09:42 | URL |

おや……シュライバーが?
わかった。分裂してもう一人いるんだな、きっと。
そしてマッキーおとこまえ

| 羽屯十一 | 2012/09/18 12:01 | URL |

チワワイバーに萌えたw

そして、リーファと正樹、ドンマイ☆

| Naoshiki | 2012/09/18 12:24 | URL | ≫ EDIT

チワワイバーwwwww
確かに断頭のシュライバーはチワワだったなぁ………。

| 断章の接合者 | 2012/09/18 12:25 | URL |

チワワイバーさん平和だなぁ・・・

そして次は精神攻撃のターン

| ほろ | 2012/09/18 16:51 | URL |

が、ガオガイガー…

| しっぽ | 2012/09/24 17:53 | URL |















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