陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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殉教 ―――アポトーシス

水晶BGM:Einherjar Nigredo


「Out of the pan, in the fire」

 司狼が英語で、何やらかっこつけた事を言う。だから問う。

「その意味は?」

「一難去ってまた一難」

 なるほど―――この状況を説明するにはふさわしすぎる言葉だ。そう、去ったと思ってまた遭遇。本当に全て予測されている。いや、予知されていると言っても過言ではない。

「待っていたぞ」

 そこには、

 鋼鉄の死神がいた。


                           ◆


 エレオノーレから逃れ、ヨツンヘイムへと到着した。それは現状取る事の出来る最良の手段であり、そして生き残るための最終手段だった。それ以外にエレオノーレの魔弾から逃れる術はなく、こうやってここに来ることを強制されたともいえる。ヨツンヘイムは空を飛ぶことのできない超高難易度マップ。この地下世界には、上級プレイヤーがバランスよくフルパーティーを結成しなければ倒せない、邪神と呼ばれるボス級の”ザコ”モンスターがごろごろと存在している。。

 故に超高難易度で、めったにプレイヤーが訪れる事はない。そしてその知識があるからこそ、その風景は今まで見たものを凌駕した驚愕を呼び起こす。

 死滅していた。

 何十、何百という邪神がそのポリゴンの体を散らすことなく、ただ死んでいた。

 一匹一匹が象程の大きさを持っているのに、それがヨツンヘイムの大地で死に、無造作に死体が放置されていた。

 その様子はさながら虐殺後の戦場だった。

 アルヴヘイムからヨツンヘイムへと落ちてきた穴からそう遠くない位置、アルンへと向かおうとする道の上に、待ち構えるようにそいつは―――マキナは存在していた。大量の死体に囲まれながら、邪神達―――いや、ヨツンヘイムそのものを敵に回して無傷でいた。それだけではない。十数の邪神級モンスターに囲まれながらも繰り出すのは特別な技術などではなく、なんの変哲もないただの拳だ。拳撃だけでマキナは邪神モンスターを吹き飛ばし、一撃で大地を抉りながら葬り去っていた。

 死神。

 その言葉がマキナには相応しい。死神、死そのもの。凝縮された死の概念が人の形を取っている。それがマキナから受ける印象だった。アインクラッドで明広と一緒にいた時は無頼ながらも優しさを感じた。が、今目の前で対峙するマキナにそんなものは存在しなかった。あるのは鋼と、死と、意志と―――敵だ。

「酷い……」

 その凄惨な光景にリーファが声を零す。全く持って同意せざるを得ない。とてもだがユイに見せられるような光景じゃない。早めにポケットの中に押し込んでおいてよかった。いくらNPCやモンスターといえども、やっていい事と悪い事の区別はある。確かに彼らは人工的なプログラムだが、

「生きているんだぞ……?」

 ユイを”娘”として認めている以上、これだけは譲れなかった。だがマキナは短く息を吐き出し、

「それがどうした」

 マキナは言う。

「死だ。生きているものには全て死が存在する。俺も。お前も。このデータにも。この世界にも。そして戦友にもだ」

「戦友……もしかして兄さんの事か?」

 マキナの視線がアレクへと移る。

「貴様がヤツの弟か」

 マキナの鋭い視線にさらされ一瞬アレクが身を固くするが、それでも一歩だけ前に踏み出す。

「兄さんは……兄さんは何を―――」

「―――なるほど。まるで別人の様だな」

「……え?」

 正樹の言葉にマキナが割り込む。正樹と明広をまるで別人のようだと評しているが、

「おいおい、そりゃあ当たり前だろ。あの馬鹿が何人いても困るだろ」

 司狼が軽く嘲笑する様に言う。その目は既にマキナを敵として捉え、どう動くかを考えている。自分もそうだ。勝利するための方法を模索している。だが見えてこない。こいつもエレオノーレと同じだ。別次元の強さの持ち主で、

 自分の死しか想像できない。

「貴様とヤツの間には決定的な違いがある。だからこそ貴様ら兄弟は決して理解し合う事は出来ない。貴様が兄を完全な意味で理解する日は来ないだろう。帰れ」

 マキナが唐突に正樹に対して言葉を放ち、次いでリーファに視線を向ける。

「貴様も帰れ。ここは子供の来る場所ではない。戦場を遊び場だとでも勘違いしたか。意地程度を証明するために来られても迷惑だ」

「なによそれ……! ふざけないでよ! 意地なんかじゃない! 私は……!」

「それが邪魔だと言っている。女の理屈を戦場に持ち込むな。愛だとか、恋だとか、くだらん。そんなもので勝てるのなら今頃世界は愛で溢れている。貴様らに興味はない。ここで帰ることを約束するのなら俺も手はださん。無傷で元の生活に戻れることを保証しよう」

 まて、今の言い方はまるで―――

「元の生活ってどういうことよ!?」

「言葉通りの意味だ。これ以上俺達に付き合えばロクな死に方をせんぞ」

 マキナが威圧感を込めて放った言葉はリーファ、そして正樹を捉え、硬直させる。だがそこで待て、と言葉を放った存在がいる。

「つまり私たちは通ってもオーケイって事?」

 マキナがゆっくりと視界にエリーを捉える。

「その前に貴様らが真に対峙できるかどうか、ヤツの願いを叶えられるかどうかを試させてもらう。癌細胞を、その役割を俺は見届けなくてはならん」

 そこでマキナの声のトーンが少し変わる。

「あぁ、羨ましいぞ―――何故ヤツには生まれて俺には生まれん。俺もいい加減この生に幕を下ろしたい。だが現れない。生まれない、終われない。何時になれば俺は俺という人生の終焉を迎えられるのだ」

 強い、いや、狂信とも言うべきレベルでの自殺願望。死にたい。消え去りたい。終焉を迎えたい。この男の願いは異常だ。螢の話では黒円卓の使う術、永劫破壊―――エイヴィヒカイトは使用者の願いを、渇望を力として能力を生み出すらしい。そしてそれは現実を否定するほどの強い渇望でなければ発現しない。今までの皆の渇望を見ている分、この男の渇望はどこまでも異質に見えた。

 強く渇望し―――その現状に抗っている。

「お前は……」

 マキナの姿を見て思わず言葉を零した。

「なんで生きてるんだ……?」

 その言葉を聞いてマキナの視線が此方を捉える。マキナの目は此方を映している。いや、此方を映しているようで―――その奥にある”何か”を見ているような気がした。マキナはこの場での勝利や結果を求めているのではなく、もっとずっと先にある何かを―――

「ヤツは」

 マキナがゆっくりと口を開く。

「優しい男だ」

 言う。

「他人が傷つくのを嫌い、自分が傷つくことを良しとする。物語で見る典型的な主人公だ。だからこそ、やつは命を張り、俺もヤツの為に動ける。終われん。戦友が俺を呼んでいる―――終焉が与えられるその日まで俺は歩こう。カメラードの為に」

「司狼、アンタと同じおホモダチよ」

「やめろよ」

 司狼がエリーの茶化しを割とマジな顔で否定し、

「つまりなんだ。友情ってやつか。ッハ、アイツも中々友達の輪を広げるのが得意じゃねぇかよ」

 司狼が構える。その手には投擲用ナイフが数本握られており、戦闘態勢に入ることを示していた。だから俺も背中の二刀を抜き、構える。同時に―――

「ごめん、流石にここまで言われて黙ってる事は出来ない」

「私も……」

 リーファと正樹も構える。リーファは長剣を、そして正樹は一本のロッドを取り出し、それを構える。そして、

「んじゃあ頑張ってねー」

 エリーは後ろへ下がる。いや、まあ、解ってたんだけど……いやに気が抜ける。

 ポケットの中に隠していたユイを取り出し、

「ユイ、危ないからエリーの方にいてくれ」

「パパ、頑張ってくださいね!」

「応」

 ユイの言葉に頷き、ユイがエリーの肩に乗ったのを確認したところでマキナを見る。特に構えらしい構えを見せない。この男がここまで喋る事を初めて知った。いやに饒舌だったが、それは語るべきことがあったからだろうが。

「聖槍十三騎士団黒円卓第七位”鋼鉄の腕”ミハエル・ヴィットマン」

 ―――ミハエル・ヴィットマン。それは第二次世界大戦におけるドイツの英雄の名前だ。それがマキナの本名。いや、それを言えばラインハルトも―――。

「行くぞ」

 考える暇はない。戦闘は始まった。動き出そうとした次の瞬間、

「まずは邪魔ものから消えてもらおう」

 リーファと正樹のアバターが砕け散った。

「なっ!?」

 それは瞬きすらしなかったのに、一瞬。一瞬でリーファと正樹のアバターは粉々に砕かれ、蘇生待機状態へと追い込まれた。動きが見えなかった。なのに特殊な能力を使った気配もない。今のは純粋な技術だ。身体能力ではなく、意識と意識の間の空白を……!

「何を呆けている」

 マキナ―――ミハエルの拳が迫る。一瞬で、距離を詰められ、拳が眼前に迫る。拳を作る手は鋼鉄へと変貌していて、それはまるで黒いガントレットをしているようにも見える。これが、ミハエルの武器なのだろう。拳。ただ殴り、破壊する。実にミハエルらしさが現れた得物だ―――!

「ッッア!」

 ギリギリで拳を受ける。交差させ、防御に入った刃から衝撃を感じる。防御した手が痺れる。だが、

「リリース―――」

「ふんっ」

「があっ―――」

 武器の能力を解放しようとした瞬間、交差する刃を超えて衝撃が体を突きぬける。遠当ての一種なのか、拳を振りぬかず一瞬だけ力を込めたミハエルの拳は、俺の心臓を貫通した。

「かぁ、はぁ、はぁ……!」

 息ができない。

 心臓を止められたような感覚に陥り、武器を落として両手で首を掴む。息が吸い込めずに苦しい。心臓が、肺が破裂しそうな感覚は今まで感じた事のない新しい痛みだ。体の外側からではなく、内部からの新しい痛みに戸惑い、集中できない。

「おぉっと、俺を忘れて貰っちゃ困るぜ」

 十数本のナイフがミハエルへと殺到する。司狼の投擲したナイフはパラメータを弄られている事もあって、一撃一撃が絶大な威力を誇っている。が、マキナはそれを一瞥する事もなく片手で全て振り払い、

「立て」

「がああ!!」

 体を蹴り上げられる。息を求めて必死にもがく俺の頭を鷲掴みし、

「戦え」

「かっ―――」

 容赦なく大地に叩きつけられる。顔面を中心に体に激痛が走る。だが幸い、そのおかげで呼吸困難が治った。大きく息を吸い込みながら激痛を無視し、体を持ち上げる。既にミハエルは拳を司狼に叩き込んでいた。さらに浮かび上がった体にもう一撃叩き込み、その体を吹き飛ばす。司狼の体が面白いように何度も地面を跳ね、水晶の塊に激突する。

「おぉ、痛ぇ……」

「立て。戦え。拳を握れ」

 ミハエルが構える。全身から死の気配を振りまくその男は、どこまでも自身の死を願い―――そして戦友の願いを叶えるために今、生きている。そこに何を見出したかは目から読むことができず、

「戦え―――自滅因子」

 自滅……因子……?

 それは聞いたことのない言葉だが、どうしようもなく致命的な感じで、

 聞いた瞬間、頭がノイズにまみれたデジャヴの世界に追い込まれる。

「貴様ら癌細胞は死ねない。宿主を殺すまでは消えない。そういう運命だ。だから安心しろ。”俺にはどう足掻いても貴様らを殺す事は出来ない”貴様らの終焉は別にある―――」

 ミハエルが拳を構え、

「―――だから死ね」

 死神が拳を振るう。
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| 断頭の剣鬼 | 10:29 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

マッキー☆スマイル♪
を行った人物と同じに見えない。ハッ! さては別人か!?
我らがマッキーをどこにやったのだマキナぁ! オノレー。

| ろくぞー | 2012/09/16 10:38 | URL |

あれ?このマッキーさん全然芸人じゃないぞ!?

なんて言うかすごく…一撃必殺です

| ほろ | 2012/09/16 12:04 | URL |

あっさり流したけど、アスの自滅因子って司狼じゃないのー!?

あと、マッキー。マッキー☆スマイルはないのかー?
出てきたら一発はやってほしいぞー。

| 断章の接合者 | 2012/09/16 12:23 | URL | ≫ EDIT

アスアスの自滅因子は司狼だとしても、キリキリがわからんなぁ。


……はっまさか(獣殿に愛されました

| 暇人 | 2012/09/16 12:41 | URL | ≫ EDIT

つまり自滅因子の元は何回も回帰してるのか

あとアレクとリーファェ・・・。すごく・・・一撃必殺です・・・。

| おk | 2012/09/17 04:30 | URL |















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