陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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DAY2

 フロニャルド・ガレット獅子団領東洋街へと転生を果たしてから早五年。

 これ、既知感脱却した? と少し疑いつつ深く考えている昨今。幼年学校への入学が決まってくるこの年頃だが、流石にフロニャルドの言葉を全く読めない事に危機感を覚え、父と母に文字の読み書きを教えてもらう今日この頃。五歳ともなるとそろそろ家の外に出しても安全な年齢であり、親も外へ出るように結構プッシュしてくるようになる。

 が、冗談ではない。

 大人しくしようものならよってたかって暴れまくるリトル獣達は、手が付けられないほどにヤンチャでどうにもならない。その事に既知感を感じると言えば感じる、が、それでもやるべきことは別にあって、そのためにも読み書きは必要だ。

 五歳になって、街を自由に歩けるようになった俺は―――マリィを探した。欠片だけでもいいからと東洋街の中を隅から隅まで歩き回り、気配を見つけ出そうと躍起になった。結果としてはそれは無駄で、マリィがこの世界の別の場所に転生しているのだと判断する。決して、転生してないなどとは考えたくない。

 読み書きは生きる上では必須の技能だ。既に新聞は存在するようで、本も見かけている。テレビを見ればわかるが、情報伝達の手段がこの世界は発達している。基本的に知識を収集できるための手段は多く欲しい。それが彼女を見つけるための方法になるかもしれない。しれないのだが、


「うーん……」

「ははは、やっぱり苦手かい?」

「あはは……」

「どれ、父さんにちょっと見せてみなさい」

 紙の上で練習している文章の内容を父親にみられる。問題を作ってくれたのも父親だが、予想外にこの世界の言語に適応できていない自分が少し恥ずかしい。これが日本語、ドイツ語、英語、フランス語……それらのどれかの言語と共通点が存在すればそこまで困るものでもなかったが、フロニャルドの言語はそのどれとも似つかない言語体系を持っている。そこまで勤勉であったつもりはないが、問題なく会話できる程度の語学力は持っていたつもりだ。それでもフロニャルドの言語を覚えられないとなると、

「うーん……覚えている言語体系に引きずられすぎたか……?」

「サイアス?」

「あ、いや、なんでもない」

「そうかい? ところでこっちは『わたしはおはなやへはなをかいにいきます』のはずが、『わたしはおはなやではなをかいます』になっているよ。ここを……」

 どうやって直せばいいのか、それを見せてくれる今生の父に感謝しつつやり方を覚える。仕方がないとはいえ、誰かに頼るというのは何時まで経っても恥ずかしいものがある。だからできる事であれば、何でも自分一人でこなしたいものである。が、こんな年齢でそれを言うのもまだまだおかしい話だ。幼少期とは平等に与えられたモラトリアムだ。今だけは親のすねをかじって生きるべきなのかもしれない。

 が、こんな考えをしているのは絶対話せないよなぁ……。

「ふむ、他の所はあまり問題ないな……サイアスは本当に優秀な子だな」

 わしわしと頭を撫でられ、少し恥ずかしくなる。

「将来は学者にでもなるのか?」

「将来……」

「うん? 学校に入る前から読み書きを習いたがるから、てっきり何かなりたい職業があるのかと思ってたぞ?」

 そういえばマリィを探す事しか考えていなかった。将来の事など何一つ考えていない。少し、視野が狭かったかもしれない。だが自分に限って学者というのはありえない。そうだ、むしろ、

「学者よりは、騎士かなぁ……」

「騎士? また大きな夢を持ったものだね」

「うん、まあ……」

 基本勉強したり研究したりするよりも、剣を振っている方が似合う性分なのだ。最初の方はあの”戦争ごっこ”を見てて気分が悪くなることもあったが、五年も本格的に剣を振ってないと刃を握りたい衝動を、本当に偶にだが、感じる。フロニャ人(?)としてかなり危ない思考かもしれないが、全神経全精神を処刑に注ぎ込んでいた人物からすれば今の生活は少しだけ窮屈だ。

 ガキ相手に本気で暴れるわけにもいかない。

 フラストレーションはたまる一方だ。

「おーい!」

 と、そこでいきなり家の入り口の戸が開く。そこで姿を現すのは近所に住む子供たちだ。子供たち、といっても今の俺もその近所の子供の一人なのだが、

「サイアスー! あそぼー!」

「だが断る」

「ええー!」

 ハモるとは中々難易度の高い”ええー”だが、それに揺らぐ俺ではない。読み書きは大事なことであり、最優先事項なのだ。

「このサイアスは希望を持って誘いに来るやつにNO! そう答える事を生きがいに―――」

「捕まえて連れて行けー!」

「おいこらまて」

 家主の許可もなく子供の群れが家の中に押しかけてくる。父が律儀にも勉強の道具やちゃぶ台を持ち上げそれを横に置き、荒らされない場所へと移動させた。

 というか子供を見捨てたな父よ。

「ほら、お友達が呼んでいるよサイアス」

「いえ、それよりこれから実子を売った父について家族かいギャアアア―――!! 俺の尻尾ひっぱったの誰だァ!!」

「サイアスの尻尾っていつもきれいだよな……」

「だからって引っ張んなよこんちくぐふっ」

 子供にのしかかられる。重い。永劫破壊も聖遺物も存在しないこの体はフロニャルドの少年程度の強さしか持っていないのだ。故に二、三人も子供に乗っかられると果てしなく重いってかヤバイ。これ以上はヤバイ。なにがヤバイというと、

「来るな、なりたくなぁーい! なりたくなぁーい! けものだまにはなりたくなぁーい!!」

「ようぎしゃサイアスをつかまえろー!」

「おー!」

「や、やめ、っやめろ―――ア、アッ―――!!」


                           ◆


 けものだまになって連行されて行く姿を見ながら、動かしたちゃぶ台を元の位置に戻して行く。精神的に早熟な子で、所々心配な部分はあるが……そこは自分と妻の子供だ。自信を持って胸を張り、問題はないと言い切れる。信じる事もまた父の務めだ、しかし、

「なぁ、こんな所で将来を腐らせたくないよなぁ」

「そうですね」

 台所で料理している妻の声がする。此方に顔を出さないが、自分と同じ意見を持っているのは解る。

「小さい頃から手のかからない子で、頭のいい子です。ですけど……このまま田舎の片隅で終わらせてしまうのには勿体ない子ですね」

「僕達には出来すぎた子だね」

「はい」

 我が子ももう今年で五歳となった。もうそろそろ幼年学校へ入れる歳だ。この東洋街にも学校が、寺子屋がある。ここで生まれ育った子であるのならばそこへ入れるのが普通なのだが、

 このままでいいのだろうか。

 いや、そんなわけないだろう。あの才能を、こんな所で潰してしまうのはあまりにも勿体ない。それにさっき、

「騎士になりたいと言っていたね」

「素敵な夢ですね」

 だとしたらその夢を後押しするのが、親としての責務なのだろう。まだ少し時間はかかるかもしれないが、

「―――頑張ってサイアスを王都の幼年学校へ入れられないか掛け合ってみるよ」

「あら。大丈夫ですか?」

「少し苦労するかもしれないけど」

 自慢の子なら、必ず合格できるだろうと信じる。それが出来なければ、何が父だ。




こんな ちちおや が ほしかった

どげ ざ うま
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| 短編 | 19:47 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

今おもったんだ。
ガチムチのケモノミミってサイアスの天敵ではなかろうか

| 羽屯十一 | 2012/09/15 20:17 | URL |

なんつーかあれだな
マリィ居ない方が普通だな・・サイアスの奴

| モグラ | 2012/09/15 20:27 | URL | ≫ EDIT

サイアスけものだま化wwww

良い親ですな

| 雑食性 | 2012/09/16 12:45 | URL |















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