陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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殉教 ―――エインヘリアル・ルベド

推奨BGM:Thrud Walkure
*1推奨BGM:Einherjar Rubedo


「無事か……?」

「俺とエリーに問題はねぇ」

「私も……」

「先輩にクッションされて今にも死にそうです……」

 唯一正樹だけが瀕死だった。リーファは落ちる途中で確保したのが功を奏した。タンクプレイヤーとしてのライフの高さが幸いしたな、と正樹に関しては判断する。上を見上げれば十数キロ先の天井に開いた穴が見える。羅刹を使った切断と、そして螢の炎を使って一気にこじ開けて出来たこの穴―――リーファと正樹が咄嗟にヨツンヘイムの存在を思いだし、提案しなければ確実に防御に入ろうと思った。そして防御したところで耐えられるとは思えない。

 あのエレオノーレと名乗った女は別格だ。ベイすら生易しく感じる。

「螢……!」

 彼女が残ってしまった。確実な足止めが必要だとはいえ、あの強敵の前に置いてきてしまった。

「無事でいてくれよ……」

 今は祈るしかできない。


                           ◆


 草原が燃える。

 降り注ぐ弾丸と弾頭によって大地は爆ぜ、そして抉れながら破壊を撒き散らす。その威力は凄まじい。一瞬で酸素を奪い、燃やしながらその勢力を拡大させる破壊の炎は、触れた存在全てを一瞬で蒸発させるだけの破壊力を持っている。人間が触れれば―――いや、触れなくても体は蒸発する。それが覇道型だ。求道とは違いその力は外側へと働きかけるのだ。故に螢の様に触れなくては影響を与えられない存在とは違う。エレオノーレの撃ち出し、発生する破壊は触れなくてもある程度近づけば熱気を感じられ、そしてその熱に触れるのは死の毒を飲み干すのに等しい行為だ。

 故に、

 死の戦場を超えられるのは、同じく人道から踏み外した戦乙女たちに他ならない。

 ベアトリスが長剣を、聖遺物である戦雷の聖剣を構え、螢が緋々色金を構える。共に武装形態は、エレオノーレと同じく武装具現型。バランスに優れ、使い手の実力が戦闘を左右するファクターとなる使いやすいタイプ。融合型の様な爆発的なシンクロ率を見せない限りまともな力を発揮できないタイプとは違い、常に安定した力を発揮できる、優秀な形態だ。

 だがそれは同時に弱点でもある。

 安定した実力を発揮という事はつまりそれ以上の実力を発揮しづらく、格上との戦いでも実力以上を出す事が出来ないという事だ。そしてエレオノーレとベアトリス、そして螢の間には天と地ほどの差がある。

 故に戦場はザミエルによる蹂躙を受ける。

「―――Yetzirah!」


 エレオノーレの聖遺物とは列車砲に他ならない。が、エレオノーレはその使いづらい聖遺物を鍛錬によって、それに格納された、付随された兵器をも操作する方法を覚えた。同時に旧式な物だけでは満足することなく、自国の最新式の装備も使えるようにと―――鍛錬を怠らない魔弾の悪魔の一撃は戦場に赤の花を咲かす。

 砲塔のみを現した巨大な聖遺物の一撃は本来は鈍足だが、それはエレオノーレにとってはありえない事だ。鍛錬に鍛錬を重ね、絶対的忠義を、騎士としての忠義の全てを黄金へと捧げている彼女は常に唯一無二の騎士であり続けたいと渇望する―――故にそこに敗北などあってはならない。

 故に、

 その砲弾は容易く光速を捉える。

 だが、

「私が犯した罪は」
War es so schmählich,――


 それが光に達する速度で動くのなら、同じ速度で―――いや、それ以上早く動けばいいのだ。

「心からの信頼において あなたの命に反したこと
ihm innig vertraut-trotzt’ ich deinem Gebot.

私は愚かで あなたのお役に立てなかった
Wohl taugte dir nicht die tör' ge Maid,

だからあなたの炎で包んでほしい」
Auf dein Gebot entbrenne ein Feuer;


 全身を覆っていた雷がベアトリスの肌や服と同化し、ベアトリスそのものが雷へと変化してゆく。閃光となって戦場を照らす乙女は渇望の強さだけ強化され、弾丸の速度を超越して行く。

「我が槍を恐れるならば この炎を越すこと許さぬ
Wer meines Speeres Spitze furchtet, durchschreite das feuer nie!

創造―――
Briah―――

―――雷速剣舞・戦姫変生」
―――Donner Totentanz――Walküre


 閃光となって炎を抜け、一気にエレオノーレへとベアトリスが接近する。そこにはその速度に食らいつき、一撃を入れようとする螢もいる。超速度の動きの中エレオノーレは確実に二人を目視し、腕を組んだまま後ろへと流れるように飛ぶ。速度は雷速剣舞・戦姫変生を発動したベアトリスよりもわずかに劣る程度。そう、僅かに。それは螢の出せる限界の速度と比べて遥かに高い。

 それが、純粋な力量の差なのだ。

「パンツァー―――」

 追いすがる二人を見ながらも、エレオノーレが口を開いた瞬間、背後に数十丁のパンツァーファウストが現れる。そのすべてが弾幕を張る様に射出と再装填を繰り返し、無限に爆発を繰り出す。地面に命中し大地にクレーターを穿ち溶かすのもあれば、空中で炸裂し爆風と炎でベアトリスと螢を攻撃するのもある。ただ変わらないのがそのすべてが必殺であり、一撃でも喰らえば即死すること間違いないという事実だ。

「―――おお、道神よ。憤怒して魔性を撃破せよ。あなかしこ
―――オン・ケンバヤ・ケンバヤ・ウン・ハッタ―――」


 螢が刃を振るうのと同時に特大の火柱がエレオノーレを巻き込むように発生する。それは少し前まで全ての面でエレオノーレ、いや、ベアトリスに劣ると言われていた螢とは思えないほどの威力を有していた。速度であればベアトリスが圧倒的優位性を持っているだろう―――だがこの瞬間、火力だけはベアトリスを、螢は超えていた。

 それは全て―――胸に秘めた情熱を失いたくという渇望から来ている。

「負けられないのよぉ―――!!」

 それは魂の咆哮とも呼べる叫び声だった。

 だが、

「驚いたな―――」

 火柱を内側からエレオノーレが打ち破る。全く無駄だというわけでもない。螢の攻撃の結果、エレオノーレの体には多少なりとも攻撃された痕が存在する。螢からの攻撃では一切ダメージを受ける事はないと予想しいていたエレオノーレからすれば驚愕的な結果である。

「螢も、何時までも小娘じゃないってわけですよ、少佐。いい加減に素直になりましょうよ」

 火柱から現れた瞬間のエレオノーレにベアトリスが超速の斬撃を繰り出す。速度では優位に立てるベアトリスが追いつけないのは、エレオノーレがベアトリス”以上”の剣の使い手であり、接近戦の心得を持っている事。その上射撃武装による攻撃をつづけベアトリスを近づけなかったからだ。だがそれが螢の攻撃によって崩れたこの瞬間、

 ベアトリスの攻撃は届く。

 問答無用でベアトリスの攻撃がエレオノーレの首へと向かう。一撃必殺。一撃でエレオノーレを倒さない限り勝機は存在しない。最速を持って放った一撃は、

「私から見れば貴様らなど、まだまだ小娘で十分だ」

 エレオノーレの手にはモーゼルが握られていた。彼女に握られているのは一丁だが、その周囲は十数丁浮かんでいる。エレオノーレが引き金を引くのと同時に全てのモーゼルから弾丸が放たれる。エアトリスが完全に雷化し、弾丸の全てをやり過ごし―――

「―――シュマイザー」

 エレオノーレの手に機関銃が浮かび、容赦なく雷になった体を吹き飛ばす。攻撃が透過されるのであれば透過する体そのものを吹き飛ばせばいい。それはエレオノーレ程の高い攻撃力がなければ実現できない方法だが、

「っく!」

 ベアトリス相手に有効的な手段となっている。

「はぁぁ―――」

 瞬間、ベアトリスと戦闘を繰り広げているエレオノーレを背後から奇襲する影が現れる。限界まで自身の炎の密度を薄め、戦場の炎に紛れるように隠れながら接近した螢だ。刀の形へと変化した緋々色金を最短の動きで振りぬく―――

 それが握られているモーゼルによって防がれる。

「いいだろう。遊びたいのであれば遊んでやろう。もとより我が忠誠を愚弄した小娘共だ。しっかり躾けてやろう。遠慮なく受け止めろ」

「少佐! 私少佐の事を恋愛処女だと思っても口に出してません!」

「―――この世で狩に勝る楽しみなどない」
Was gleicht wohl auf Erden dem Jägervergnügen


 詠唱が始まった瞬間、エレオノーレを包む”熱”が急激にその温度を上げた。瞬間的にベアトリスと螢が回避を選択し、一気に距離を取る。

「狩人にこそ、生命の杯はあわだちあふれん
Wenn Wälder und Felsen uns hallend umfangen,

角笛の響きを聞いて緑に身を横たえ、藪を抜け、池をこえ、鹿を追う
Diana ist kundig, die Nacht zu erhellen,

王者の喜び」
Wie labend am Tage ihr Dunkel uns kühlt.


 詠唱が終わりに近づく瞬間、ベアトリスと螢が反転し、武器を構える。

「いいですか、少佐のアレは回避は出来ません」

「えぇ」

「だから―――全力で抜けてください」

「了解よ」

 瞬間、渇望を全開に再び魔弾の悪魔へと戦乙女たちが向き合い―――駆ける。エレオノーレの背後に存在する魔法陣から出現したのは巨大な列車砲だった。砲塔だけではなく、その全長の全てが出現していた。草原に突如として現れたその鋼鉄の塊はどこまでもその世界にはミスマッチだが、同時にこれからの破壊を物語っていた。

「若人のあこがれ!」
Die Bewunderung der Jugend


 列車砲が砲弾を打ち出し、その爆発が広がる。それは炎だ。炎の津波と言っても過言ではない。それは敵対するものが逃げ続けるのであれば無限に爆心地を広げ続け、飲み込むまで相手を追い続ける破壊の創造だ。そしてその炎はエレオノーレの渇望を受け超威力を誇っている。回避する方法はなく、防御は死を意味する。故に方法は同じ威力をぶつけるか―――異常な防御力で攻撃を乗り切るしか存在しない。

 だからこそベアトリスも、螢も、渇望を胸で燃やし、閃光となって―――情熱の炎となって―――駆ける。一瞬も迷うことなく自分の渇望こそ至高だと、自分は間違っていない。その渇望の力を信じ、炎へと自ら飛び込む。逃げ続ける限り広がる炎は標的が自ら入り込んだことにより広がるのを終え、炎の爆散を始める。

「―――ふむ」

 その光景を見ながら口に葉巻をくわえ、エレオノーレが言葉を漏らす。

「なるほど」

 次の瞬間炎を突き抜け、雷を纏った刃がエレオノーレに突き刺さり、一瞬遅れて炎を纏った刃がエレオノーレに突き刺さる。全身ぼろぼろで、ところどころ体が焦げてはいるが、それでもベアトリスも螢も炎を透過によって乗り切った。あの炎に黄金への忠誠が籠っている事を考えるのであれば、この二人がアレを耐えきったことは大健闘と言っても申し分ない。必殺を突破され、刃を体に突き立てられながらもエレオノーレは腕を組んだまま、目を閉じ、納得したような表情を浮かべる。

 ぱらり、とエレオノーレの髪がほどける。今の一撃の余波が、エレオノーレの髪をポニーテールにまとめていた紐を切っていた。

「そうか―――いいだろう」*1

 そう告げた瞬間エレオノーレから圧倒的熱波が、炎が発せられる。エレオノーレの身を焼く壮絶な炎、それが銃器の使用なしでベアトリスと螢に襲い掛かる。

「っく!」

「なっ!」

 一瞬でエレオノーレから弾き飛ばされながらも、一瞬で戦乙女たちは構え直す。対してエレオノーレは咥えていた葉巻を手に取り、それを投げ捨てる。同時にエレオノーレを取り巻く炎がその苛烈さを増し―――

「―――今の一撃で貴様らに英雄の資格ありと認めよう。あぁ、そうだな。私が侮っていたよ。貴様らなどただの小娘だと思っていたが、どうやらそうでもなかったらしいな」

「ッ……」

 今、ようやく、

 エレオノーレが本気になった。

「―――いいだろう。認めよう」

 ほどけた髪が熱風に煽られ揺れ動きながらも、エレオノーレはしっかり戦乙女を見つめ―――

「彼ほど真実に誓いを守った者はなく
Echter als er schwür keiner Eide;

彼ほど誠実に契約を守った者もなく
treuer als er hielt keiner Verträge;

彼ほど純粋に人を愛した者はいない」
lautrer als er liebte kein andrer:


 一瞬で世界が塗り替わる。それは不可避だった。回避の事を考える事すらおこがましい。回避という概念はその場に存在していなかった。考えるのは無駄だ。

 そこは逃げ場のない世界だ。

「だが彼ほど総べての誓いと総べての契約総べての愛を裏切った者もまたいない
und doch, alle Eide, alle Verträge, die treueste Liebe trog keiner er

汝ら それが理解できるか
Wißt inr, wie das ward?

我を焦がすこの炎が 総べての穢れと総べての不浄を祓い清める
Das Feuer, das mich verbrennt, rein'ge vom Fluche den Ring!

祓いを及ぼし穢れを流し熔かし解放して尊きものへ」
Ihr in der Flut löset auf, und lauter bewahrt das lichte Gold,


 それに対応するように再び螢とベアトリスは構える。全力で斬り込む。それがこの世界を、焦熱の世界を抜ける唯一の手段にして最後の手段。初めて見る真の奥の手は言葉では表せない絶望として二人の戦乙女に降りかかる。それは絶対不可避の世界、エレオノーレの身を焦がし続ける炎の世界。必中という概念の究極系―――つまり、逃げ場など最初から存在しない。

「至高の黄金として輝かせよう
das euch zum Unheil geraubt.

すでに神々の黄昏は始まったゆえに
Denn der Götter Ende dämmert nun auf.

我はこの荘厳なるヴァルハラを燃やし尽くす者となる」
So - werf' ich den Brand in Walhalls prangende Burg.


「螢……付き合わせてしまいましたね」

「気にしないで、私も好きでやっている事だから」

 螢とベアトリスが微笑みあう。絶望の前でも諦める事だけはしない。常に勝利を信じ続けている。無様な敗北だけは誇りと信念に誓って許さない。自分が自分を許さないのだ。だから全力。必ず勝つ。この状態からでも絶対に勝つ。その覚悟を持って、立ち向かう。そうして、

 完成した。

「創造―――」
Briah―――


 そして、

「焦熱世界・激痛の剣」
Muspellzheimr Lævateinn


 終わった。
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| 断頭の剣鬼 | 10:18 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

公開ラブレターキタ━(゚∀゚)━!
しかし、蛍&ベアトリス VS ザミエル卿は胸熱ですなあ。
原作では実現しなかったしね。

| はびろん〜 | 2012/09/15 10:27 | URL | ≫ EDIT

>>「少佐! 私少佐の事を恋愛しょじょだと思っても口に出してません!」
ワロタww

| ろくぞー | 2012/09/15 13:39 | URL |

ベアトリスェ……「―――口に出してません!」
言うとる言うとる(笑)
つか、フツーにスルーする姉さんの低温っぷりがコワい(爆)

キリキリは次には進んだものの、残り二色が控えてるし、絶望しか待ってないだろw
マッキーなんか流出位階に上がらないと練炭でもきつかったんだし

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/09/15 15:24 | URL | ≫ EDIT















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