陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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DAY1

 ―――あぁ、またか。

 気が付けばまたここから始まっている。

 胎児が最も安心できるここが―――母の胎内。全ての記憶はここから始まる。いや、終わったらここから始まるのだ。ここにきて、自らを思い出し……違う。この言い方も正しくない。思い出してなどいない。気づけば知っていた。そう知っていた。まただ。またこの感覚だ。何度味わったかはわからない。そればかりは覚えていない。だが明確に覚えているのは二回目だ。日本人の、最上明広として生まれた記憶が確かな既知感としてではなく記憶として残っている。胎内の中、羊水に包まれながら思考する事は一つ。

 あぁ、またか。


 そう、まただ。また経験したことがある。消えたい。死にたい。いや、忘れたい。無垢な子供の精神としてこの生を楽しみたい。この既知感を、この記憶を全力で脳から消し去りたい。無理だ。そんな簡単なものではない。脳に刻まれただけなら簡単な話、自殺すればそれで消える筈なのだ。だがそれでもこの記憶は消えない。

 あぁ、またか。

 また、この魂に刻まれていると結論付けた。その選択肢しかない。魂を浄化し輪廻の先へ導く優しい法なんて存在しない。目を覚めたらベッドで寝ていて、横に彼女がいるなんてことはありえない。現実は現実であり、幻想はどこまでもいっても幻想だ。俺は死んで、そして彼女も死んだ。それは命の終焉であり俺に与えられた唯一無二の終焉。故に、

 あぁ、またか。

 最上明広は死んで、此処にいるのはだれでもない”俺”だ。そこに名はない。魂に既知を刻まれた哀れな存在だ。そう、それだけだ。名前なんてない。それはこれから得るものであり、それがこの魂の新たな記号となるのだ。故に思う事は、

 あぁ、またか。

 出来上がった体が母から栄養を受け続けているのも解るが。それももう終わりだろう。知っているし覚えている。この中にいる時間は限られており、これが終わった後に待つ羞恥の時を。だがそれもやっぱり経験したことで覚えている事で魂に刻まれた既知感。本来なら羞恥を覚える筈の事も何も感じない。魂が擦り切れているとさえ言っていい、いつ始まったのか、それすらわからない。だが結局は道化の人生だったのだろう。だけど、そこで思い出すのは、

 ―――次は幸せになろう。

 約束した。忘れられずにいられた、唯一心の救いを思い出す。あぁ、そうだ。こうやって既知感におぼれる自分がいる。吐き気がする。忘れたい。消し去りたりこの不快感。どんなに拭っても拭っても消えないこの世界の中で彼女との約束が全てだ。彼女が転生できているとは限らないし、出来たとしても俺を覚えている事は怪しい。あぁ、そうだ。だからと言ってあきらめない。

 幸せになる事をあきらめない。

 アレは”俺”の人生でもあったが、”最上明広”の人生だったのだ。それはこれからの”俺”には全く関わり合いのない話―――と言えば嘘だろう。が、それでも、これからは迎えるのは全く新たな生だ。新しい肉体に新しい家族、そして新たな環境―――それに伴い俺の全てが変化するかもしれないが、

 この幸せになるという約束だけは忘れたくない。

 体が動く。解る、今自分は誕生の瞬間を迎えようとしている。故にそれに身構え、死なぬことを祈り―――生まれた。

「―――!!」

「―――。―――! ―――?」

 声が聞こえる。おそらく医者か、自分の親となる人物の声だ。誰かに優しく抱かれているのが解る。同時に目が開かないのも解る。そう、何も見えない。言葉も解らない。目は使った事がないし、日本に生まれるとは必ずしも決まったわけではない。だから言葉が通じない事はありえなくないし、目が見えないのも普通だ。

「―――? ……―――!?」

「―――!!!」

 声がする。不安そうな、泣きそうな声だ。この場に何かが足りない―――そう理解して口を開いて、まずは、

 この世界に生まれた事を証明するために産声を上げる。


                           ◆


「と、思ってた時が俺にもありましたとさ……っとっと、っと」

 誰にもいない部屋の中で、壁に寄りかかりお手玉でジャグリングしながら時間を潰す。服装は江戸時代などで見るような和装、着物を着ている。既に生まれてから三年が経過している。生まれてから三年。裕福でもないが、貧乏でもない、良くある家庭。時代が十六世紀ぐらいなのもまぁ、驚いた。

 だが一番驚いたのは、

「ただいま」

「お帰り」

「ただいまぁ、待たせちゃったかしら?」

「そんなに待ってないから大丈夫」

 入り口の戸を横にひいて開けて入ってくるのは今生の両親だ。そっちに視線を向けたためにバランスが崩れてから当て玉が落ちる。そのまま下に落ちそうだったお手玉を、

「っほ」

 膝の上に乗せていた尻尾の上に着地させる。

 そう、尻尾だ。既知も糞もあったものじゃない。視線を向けた先にいる両親もそれは立派な狐耳と狐尻尾を持っている。属性的に言えば猫耳よりも狐耳派なのでヴィジュアル的には何ら問題ない。しかし生まれ直した世界は江戸っぽい東洋街、少し場所を移せば中世ヨーロッパ風の場所となっている。というか世界自体が中世ヨーロッパベースっぽい。

 いや、そこが問題ではない。

 問題なのはこの世界の住人、誰もがケモ属性持ちであるという事だ。

 ケモナー大勝利。

 いや、落ち着くんだ俺よ……。

 もう三年も暮らしているんだ。もうそろそろ慣れるべき頃だろ。

「んー、サイアスは器用だねぇ」

「そうですね、少し精神的に早熟なのが心配ですけれど……」

「僕と君の子供だし、心配する事はないよ」

 サイアス。

 なんというか、その名でまた呼ばれる事があるとは思わなかった。人生何があるか解らない。

 流石の既知感もケモナー大勝利な世界ではまだ一度も発動したことがない。それもそうだ。江戸風の街並みをケモ属性の人類が歩いている既知なんてあってたまるか。フロニャルド等という気が抜けそうな名前のこの世界を待っていたのは未知、未知、圧倒的未知。サイアス等とまた同じ名で呼ばれたり、記憶も残っているが、それでもこんな未知は正直ないだろう。

 マジでマリィどこかにいてくれ……。

 三年では体の事もあってほとんど家の中やその狭い範囲での周辺でしか動き回れないからかなり不便だが、このフロニャルドという世界、かなり凄まじいものがある。

 まず、基本的な身体能力が高い。獣的なところから来るのだろうか……総じてこの世界における人類は身体能力が高い。三歳児でも簡単にお手玉でジャグリングができる程度には筋力、いや、身体能力が高い。それはこの世界に満ちるフロニャ力という全く意味の解らないミステリーな力による物らしく、正直これ以上は常識が狂気に侵されそうなので考えるのはやめた。この世界は不思議パワーで満ちており、それによって人々は加護を得ている。それ以上は興味がないし知るつもりもない。故に気にすることもない。

 しかし、アインクラッドの続きというか―――中々カラフルな色をした人種だとは思う。

 父親が緑髪、母親が黄色、そして自分は濃青色。一体この色彩の現れ方に法則性はあるのかどうか悩むが、これもまた狂いそうな事だ。フロニャルドでは常識が通じないと考えるのがベストだから今では気にしていない。色は気にせず、初めて得た尻尾と狐耳は丁寧にブラッシングする事を欠かさない。

 生まれて一年ぐらいは尻尾の違和感やたまについた耳の違和感に大いに困ったりもしたのが懐かしい。言葉も日本語を知っているから中々詰め込むのが大変だった。

「でも僕としてはもうちょっと外で走り回って遊んでもらった方が嬉しいんだけどね……」

 あの悪魔の様に元気な少年少女たちと? 冗談はよしてくれよと言いたくなる。お手玉を尻尾のうえで弾きながら遊ぶ。

「母さん、今日のご飯は?」

「今日のお夕飯は魚ですよ。今日は市場で新鮮な魚が入りましたので」

 そうやって母が見せてくる魚は日本じゃ見る事の出来ない、というか地球で見る事の出来る差かなかどうか怪しい魚だ。味自体はアジの様で美味しい事を知っている。ぽんぽん、と尻尾でお手玉を弾き、それ以外の弾いていないお手玉を床に置いて両親の姿を見る。

 ……いい親だよなぁ……。

 家族には恵まれている―――この世界がそもそもあまり険悪的な雰囲気が存在しないらしい。基本的に住民間や家族間の喧嘩はないらしい、穏やかな性格の人物が多い。それもこの世界の特徴といえば特徴なのか。

「おぉ、っと。もうこんな時間なのか」

 何故かこの世界は発達している技術と発達していない技術での差が激しい。例題に挙げるとすればこの建築様式は確実に江戸時代なのだが―――今、父が触っているのはテレビだ。そう、テレビなのだ。計算機もエアコンも車もないのに何故かテレビは存在する。

 技術の発達が偏っているってレベルじゃない。

 尻尾を動かす練習にもなるので、尻尾でお手玉を弾きながらテレビを見る。座布団を取り出し、横にそれを強いて父も並んでテレビを見る。母はそのまま台所へ夕飯の準備に入る。

『さぁ、始まりましたガレット獅子団領とドラジェ領国との戦争! 解説にはドラジェ、ガレットの国王に―――』

「お、国王様が出るぞサイアス。私達ガレット獅子団領の国王様だ、しっかり応援しろよ?」

「あ、うん」

 テレビのスクリーンには国王が解説席で自らの国を自慢し、この戦争で両国にどんな利益をもたらすかを示している。国王も、そして戦争で戦っている兵士たちも楽しそうに武器を振っている、

 戦争がスポーツ化している国とは中々斬新な世界だと思う。

 だけど、必死に、命を賭けて戦っていた”俺”からすれば―――なんだか過去が冒涜されている様な気がした。

 ……マリィに逢いたい。




 この場合、肉体的には完全にリセット、そして精神的にも”生まれ直した”って事である程度リセットあsれてるのかなぁ。
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| 短編 | 18:38 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

うん、まぁなんていうか……ケモナー大勝利?
続きが気になりますね。どうアスアスがヒャッハーするのか楽しみです。

| ろくぞー | 2012/09/14 18:49 | URL |

DOG DAYSか
アニメ見てねえから、内容わからねえけど
これを機に見てみるかね
にしてもサイアスさんがケモナーヒャッハーとかにならなければいいが・・・

| モグラ | 2012/09/14 19:19 | URL | ≫ EDIT

マリィが居たとして、嫁に獣属性が付いて喜ぶだけじゃないか・・・

| 読者 | 2012/09/14 22:13 | URL |

フロニャルドでサイアスがヒャッハー……出来るのか?
あの世界って余程の事が無いと重症とか無いし。というか、首狩れない。

| reficul | 2012/09/15 04:41 | URL |

ケモナーがヒャッハー!な世界ですね

ところでマリィは動物でいうと犬なのだろうか

| おk | 2012/09/15 11:11 | URL |

この回帰を経て次のサイアスがケモナーに目覚めませんよーに。
いや、ケモナーになったら確実にALOで選ぶのケットシー一択になってしまうなーと。
・・・猫耳女神、カワイすぎて噴死確実。

| 断章の接合者 | 2012/09/15 13:26 | URL | ≫ EDIT















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