陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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殉教 ―――コラプス

推奨BGM:Kreig
*1推奨BGM:Einherjar Rubedo


 全速力で駆け抜けるルグルー回廊。

 ユイに言わせればあと一時間以上は歩く必要のある距離を、約数分で抜ける。現実と違ってこの世界で体に疲労は現れない。存在するのは精神的な疲労だけで、その精神的な疲労も言ってしまえば根性論でどうにかなる。故に驚異的な精神力を持っていれば、それこそ一日中走り続けていても全く問題ない。

 パラメーターが一般プレイヤーとは違って上限突破している俺達は、

 その精神構造も常軌を逸脱している。

 故に、疲れは感じない。

 数分で洞窟を抜けきると再び、太陽の光が見える。そこで一旦動きを止め、リーファと正樹が下に降ろされる。手で目に当たる太陽の光を遮り眩しさを堪えながら、やっと浴びる事の出来た日の光に感謝する。よくよく考えれば昨日は暗くなったらボトムレスピットへ拉致され、一回も外に出る事もなく再びダイブしてるのでリアルでも日の光を浴びていない気がする。

「ここから会議場までは?」

「数キロ先です!」


 片目を閉じてユイが示した方角へと視線を向け目を凝らす。超人的ともいえる視力をより地平線の彼方にいるわずかな粒として、プレイヤーの姿が見える。流石にここからではその服装などを捉える事が出来ないが、それでも僅かにだが見えるその色からして―――おそらくサラマンダーではないと思う。が、首を曲げてみる方向を変えれば平原だからこそ、同じぐらい離れた距離にまたサラマンダーの軍隊が進んでいる事が見える。

 ギリギリ間に合った……のか? もう言葉が届く距離か、そうでないのか微妙なところだ。ゆっくりしすぎた。

「司狼達と螢はここで待ってて! リーファごめん!」

「ちょ、っちょ!」

 螢に降ろしてもらったばっかりのリーファを持ち上げて、背中の翅を広げる。再び飛び立つ前に一度だけ動きを止めて振り返る。

「来るなよ? 絶対来るなよ? 来たら絶対全面戦争とか始まるから来るなよ!?」

「おう、安心しろ、俺はテコでもうごかねぇぜ」

「早く済ませなさい。正直関わっている時間が惜しいのだから」

「一応見張っておくけど、本気になったら止まらないから早めに片付けてね」

「了解!」

 頑張れ正樹。本当に頑張れ正樹。お前の努力にALOの明日の平和はかかっている。確実に。それにそこの二人が衝突し始めても色々と終るので、胃をすり減らしながら頑張ってくれよ。

 正樹の健闘を祈りながら素早く飛び―――上がらず、翅を羽ばたかせる。地上での加速の動きに羽による加速を加えて、今まで以上に素早くダッシュを始める。一瞬でリーファの言葉が風の音に遮られ風の轟音で何も聞こえなくなる。


                           ◆


 キリトが走り出した。

 そう思った次の瞬間、猛スピードで走り、衝突寸前だったサラマンダーとシルフ、ケットシーの間に、スライディングで大きく土煙を撒き散らしながらキリトが割り込んだのを理解した。あまりの速さに普段の私なら何も理解できずに戸惑っていた事だろうが―――昨日にシステムを超えた存在の戦いを二度も見せられているため、ある程度目が慣れてしまった。人間と言う生き物はつくづく恐ろしいかもしれない。土煙が晴れる前にキリトの腕の中から飛び出し、すぐさまシルフとケットシー側に向かう。

 あ……。

 そういえば完全に何を言えばいいか解らない。これ、どうしたらいいのだろうか。そう思った瞬間、

「双方剣を引け!」

 鋭いキリトの声が響く。土煙を吹き飛ばし、その場にいた全てのプレイヤーを押さえつけるような迫力を持った声は間違いなくキリトのそれだ。ケットシーとシルフの領主はALO的基準で言えば確実に、かなりの美少女のグループに入る二人だ。和服姿の領主であるシルフのサクヤ、そして少し露出の多い恰好のアリシャ・ルー。二人とも公正な人物で、それなりの実力者だ。それでも、

 七十を超えるサラマンダーの軍団には勝てない。

「リーファ!? これは―――」

 サクヤがここまで取り乱すのは初めて見るな、等と思えるくらい気持ちに余裕があるのは、あの非常識な集団を見てしまったからだろうか。だからここはひとつ冷静に考えられる人として、

「簡単には説明できないけど……とりあえず私たちの運命はあの人次第、って事だわ」

 いや、ぶっちゃけ勝利したも同然なんだろうが。

 視線をキリトへと戻すと、一際背が高く、豪華な鎧に身を包んだプレイヤーと一対一で向き合っていた。知っている。サラマンダーの領主の弟、ユージーンだ。確かサラマンダー最強の戦士という称号をつけられていたはずだ。そしてサラマンダーとはこのALOにおける一番戦闘に特化した種族であり、その最強とはすなわち―――プレイヤー最強。

 でもアレを見ちゃうとなぁ……。

 吸血鬼を見た後だとどうしてもユージーンの強さが張りぼてのそれに見えてしまう。確かに剣技もステータスも、そして圧力も凄いのだろうが、あの人から完全に外れた空気を殺す様な感覚がこの男にはない。それを発せていない時点で、

 キリトに勝てるわけがない。

 自分から見ても今のキリトは、次元が違う。

「スプリガンがこんな所で何をしている―――」

「―――俺は」

 キリトが割り込む。

「スプリガンとウンディーネ同盟の大使だ。俺を襲うって事がサラマンダーにとってどんな意味を持つかってのは……解るよな?」

 うわぁ……。

 口から出まかせとはまさにこのことだ。どこからどう見てもキリトが大使なんかには見えない。だが言葉にはそれだけの”重み”が存在する。それはたとえ口から放った出鱈目な言葉だとしても事実”そう”であったとすれば、サラマンダーにとって取り返しのつかない事態になる。故にユージーンは一旦動きを止め、思案するような顔を作り、獰猛な笑みを作る。

「護衛の一人もいない貴様が大使だと言うのか! 笑わせるなスプリガンが!」

 ユージーンが背中の両手剣に手を伸ばし、キリトがわざとらしく両手を広げる。

「ああ、そうだ。シルフ・ケットシーの同盟に交易交渉に来たんだぜ? 戦力を連れて来たら信用されないだろ。だいたいサラマンダーもこんな所でリスクを負って追い込まれるのは避けたいんじゃないか?」

「面白い事を言う―――」

 ユージーンが剣を抜く。

「―――俺の攻撃に耐えるか俺を倒せば、貴様を大使として信じてやろう」

 キリトがニタリ、と笑うのが見えた。理解した。最初から言葉による説得を狙っていたのではない。最初からこの状況を狙っていたのだ。最速、そして最低限の労力で大きな部隊を潰すには、頭から潰すのが一番だ。指揮系統を破壊して、思考能力を壊す。特に絶対的にも思えるプレイヤーが倒された場合、精神的ダメージは大きい。ユージーンの両手剣は二匹の龍が絡み合うような装飾の施された美しい剣だ。それを抜き構えるユージーンだが、キリトは刀に、羅刹の柄に手をかけただけで抜きはせず、動きを待っている。

「まずいな……あの両手剣、レジェンダリーウェポンだぞ」

 レジェンダリーウェポン―――このゲーム、ALOで入手できる武器のランクとしては最高ランクの武器だ。だが、そんなもの、あの少年には意味をなさない。

 ユージーンが動き、刃を振るう。かなり早い動きだが―――キリトは相手よりも後に動き出したのにあっさりとユージーンの動きを超えて動き、危なげなく攻撃を回避してから羅刹を一瞬だけ抜刀し、その刃をユージーンの首に叩き込み鞘に戻す。刃が鞘から抜かれユージーンの首に叩き込まれるまでの時間は一秒にも満たない。刀身が他の皆には見えたのかすら怪しい、超高速の”居合”をキリトは放った。

 一拍遅れて反応するエフェクトと衝撃音。

 そして、吹き飛ぶユージーンの首。

 その顔からはありえない、そんな表情が見て取れた。誰もがあっさり過ぎるユージーンの敗北に驚愕していた。ALO最強のプレイヤーがいきなり現れた無名のスプリガンに倒されたのだ。それは驚愕するしかないだろう。

 吹き飛び、死に、リメインライトへと変換されたユージーンの姿を見届けたキリトは、その視線をサラマンダーの軍団へと向ける。

「護衛がいないんじゃない―――いらないんだよ」

 その言葉にサラマンダーの戦士たちが硬直し、冷や汗を流すのが見える。身近にいるからこそユージーンの実力を知っているのだ。だからこそそれを一撃で沈めたキリトの異常性を理解し、それを恐怖する。

 と、そこでキリトが表情を崩す。

「さ、そこのおっさんを蘇生してやってくれ。まだ話す事はあるし―――」

 これでやっと一難去ったかな?

 そう安堵した瞬間、

                 「なんだこの茶番は。反吐が出る」

 全てを塗りつぶす様な悪寒が一瞬で一帯を駆け巡る。

 来た。

 来たんだ。

 ”この”タイミングで来てしまった……!

 声の方へ顔を向けた瞬間、

 ―――此方へと向かって巨大な炎塊が降り注ぐのが見えた。シルフ・ケットシー側へ一つ、そしてサラマンダー側へと一つ。速度はそこまで早くなく、十分避けられそうに見える。だがそれは見ているだけで解る。これは絶対に命中する。避けるなんて事は絶対にできない。どんなことをしてもこの炎を私達は避けられない。そんな本能的絶望を叩き込まれるような炎だが、

 そんな感覚はすでに一度、いや、二度味わっている。

「キリト!」

「解っている―――リリース・リコレクション!」

 抜かれた大太刀がキリトの意志に応えて脈動し、炎を連続で切断してゆく。家ほどの大きさがあった炎も、一瞬で無数のサッカーボールサイズの炎へと姿を変えられる。

「防御なんて意味がないから避けて!」

 翅を羽ばたかせ一気に回避に動く。このレベルだったらまだ回避ができる。故に小さくなった炎を全力で回避する。が、突然の事態の急変故に、咄嗟にに回避できたプレイヤーは少ない瞬時に声に従ったサクヤとアリシャを抜き、シルフ・ケットシー同盟のメンバーは多くが炎を食らい、サラマンダーは炎耐性を持っている自信から避けすらもしなかった。

 普通ならば炎耐性の効果によって炎のダメージは一桁しか出ないのだろう。

 だが違う。

 これは違うのだ。

「ッチ!」

「なっ、何なんだこれは―――」

 炎に触れた瞬間、蒸発した。サラマンダーが、ケットシーが、シルフが、サッカーボール大の炎に触れて蒸発した。その炎の爆発によって生じた火の粉に触れるだけでも触れた個所が蒸発した。もはや火力がどうとかそう言うレベルではない。一種の兵器クラスの破壊力を持った炎だ。しかもそれを広範囲に放ったとなると頭のおかしくなる殺傷力だ。

「早く逃げろ!」

 ダークリパルサーをも引き抜き、キリトは何時でも戦えるような臨戦体勢を取っていた。サクヤとアリシャの手を引き、体を無理矢理引っ張る。

「逃げるよ!」

「ま、待てリーファ、これは一体―――」

 これは一体と言われても、答えは一つしかない。

「―――戦争よ!」

 そう、本当にばかげた戦争。みんなが自分の願いを叶える為に、世界樹を目指して何度も何度も戦うばかげた大戦争。


                           ◆


 全身から汗を流しながら構える。手にも汗をかきながらも、しっかりと目の前の存在を目にとらえる。現れたのは二人の女だ。片方は赤い髪の、ポニーテールの女。美しい顔をしているのかもしれないが、その壮絶なまでの「圧力によって暢気に見惚れる事などできはしない。全身から覇気ともいえるオーラを放ち、この場一体を息苦しい空間へと作り変えている。これを受け慣れていない存在がいれば一瞬で窒息して死にそうだが―――そこは率先して避難させたリーファに感謝すべきか。

「下らん茶番だな。役者も筋書きも二流だ」

「少佐、そんな事を言わないでくださいよ、誰だって最初は駄目な子なんですから」

 少佐、そう呼ばれた存在の横にいたのはベアトリスだった。彼女もアインクラッドで数回だけ見た事がある。会話したことは……あったかどうか記憶が怪しい。

「やっほキリト君、元気でしたか?」

「あ、え、はい」

 少佐と呼ばれた女と比べてあまりにも軽すぎるベアトリスの姿になんだか軽く気が抜けそうだが、少佐と呼ばれた女からの圧力は変わっていない。その中で平然としていられるベアトリスもやはり、黒円卓の女と言う事なのだろう。

「ふん、来たか」

 横に司狼と螢が並ぶ。おそらくだが炎が見えた瞬間走ってきたのだろう。アレクとエリーがいないのは自分たちが戦力外であることを認識してだろうか。悲しい話だが、人間の理から踏み外していなければ対峙する事すら許されない。

 三人が揃ったところで、相手が名乗りを上げる。

「聖槍十三騎士団黒円卓第九位”魔操砲兵”エレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグだ」

「聖槍十三騎士団黒円卓第五位”戦乙女”ベアトリス・ヴァルトルート・フォン・キルヒアイゼンです。でもぶっちゃけ名前がアホみたいに長いので覚えなくていいです。気軽にベアトリスって呼んでくれたら助かります」

「ベアトリスに……ザミエル卿……」

 軽い様子のベアトリスとは裏腹に、螢の言葉は重い。彼女が言った今来ているメンバーで最も注意すべき相手―――その片方がこのエレオノーレだ。圧倒的威力と広範囲の制圧力を併せ持った、全てを焼き尽くす炎。絶対に避けられない故に戦えば燃やし尽くされる炎。

 螢の話によれば、

 どう足掻いても勝利することはできない相手らしい。

 だが、その程度なら既に二度乗り越えた。この先に進むのなら奇跡の二度や三度起こす必要がある。いや、奇跡ではない。必然の結果として起こす必要がある。

「全く下らん。このような極東の島国までやって来て、やっている事は茶番に付き合う事だ。全く持って度し難い」

「そう言わないでくださいよ少佐ぁー。若い子に色々と教えるのは年長者としての務めですよ?」

「貴様は黙ってろ犬が」

「きゃいーん……」

「ベアトリス……」

 あの女、頭の中が軽すぎないか?

「―――まぁ、いい」

 エレオノーレがどこからともなく取り出した葉巻を口にくわえ、それに火を灯す。深く煙を吸い込み、吐き出す。

「この状況は気に食わん。ぽっと出の青二才に指揮されるのは命令だから良しとしよう。アレもアレで騎士としての心得が見て取れるから、そこは妥協してやろう。が―――このやり方は気に食わん。盛大な自殺に付き合う義理は私にはない。ハイドリヒ卿も指揮権の譲渡などと一体何を考えておられるのか、私には解らん」

 が、

「命令は命令だ。光栄に思うがいい。手を抜く必要は一切ないと言われているし、私も手を抜くつもりは毛頭ない。この茶番はここで終わらせてもらうぞ」

 そう言ったエレオノーレの背後に出現したのは銃だった。

 一挺ではない。百を超える銃が虚空から現れ、浮かんでいる。銃にはあまり詳しくないが、そのどれもが強力な銃に見える。

「ヒューッ、パンツァーファウストカールグスタフ、MG4機関銃、120mm迫撃砲、ワルサーまでもあるぜ。わお、ドイツ軍の正式採用されている銃が過去のから今のまで全部でてるぜ。すげぇな、ありゃあ。おい、一つ寄越せよ」

 司狼のテンションが上がっているし何か銃に詳しい。意外とコイツマニアだったのか。銃よりも剣の方が詳しいからよく解らないが、とりあえず凄いという事だけは把握できた。

「手を出すなよベアトリス。一瞬で終わらす」

 エレオノーレが攻撃を始めようとした瞬間、

「―――いえ、動かないのは貴女の方です」

 何時の間にか取り出された刃がエレオノーレの首に当てられていた。

「貴様―――」

「あ、私、説得されちゃったので寝返りますね」

 ベアトリスが、寝返った。

 黒円卓も決して一枚岩ではない。その意味を思い出す。
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| 断頭の剣鬼 | 09:10 | comments:7 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

やめて。結果的にそれ少佐が無双しそうw

| 羽屯十一 | 2012/09/13 12:12 | URL |

ベアトリス軽すぎワロタww

| 裸エプロン閣下 | 2012/09/13 13:33 | URL |

 説得されたという言葉に、サイアス関係の話ではなく、戒が「ベアトリスと二人きりになると邪魔が……」と以前はなしていたことを思い出し、そっち方面で説得されたイメージが浮かんだ俺は異端なのだろうか……

| サツキ | 2012/09/13 15:58 | URL |

ベアトリシまじ駄犬
ザミエル卿が飼い犬をNTRされて本気出しそうなんだが

| おk | 2012/09/13 16:00 | URL |

飼い犬に噛まれたザミエル卿が剣を抜きそうで恐い・・・

| reficul | 2012/09/13 16:43 | URL |

ベアトリスェ……
なる。手助けの筈が地雷原に放り込まれたようでならない(笑)
とりあえずサラマンダー含むその他大勢にはお悔やみ申し上げます。
えぇ、正直とばっちり以外の何物ですらない。更に言うなら羽虫を払うが如く一蹴する姉さんの振る舞いはいっそ清々しいまでにブレなかったとさ(笑)

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/09/13 18:44 | URL | ≫ EDIT

ベアトリスさんマジダメトリスwww
ザミエル卿がちょー怖い。

| | 2012/10/09 20:22 | URL |















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