陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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試練 ―――クーリング・ダウン

推奨BGM:Botomless Pit


「っく、はぁ、はぁ、はぁ……」

「ふぅ、ふぅ、ふぅ……」

「はははは! ざまぁねぇなぁ! ははははは!」

「なんであんなに元気なんだ……?」

 ベイが地底湖の主に食われ、アルヴヘイムのどことも知れない地下水脈を連れまわされている間に俺達は橋を渡り、渡ったところで洞窟の大地に倒れた。そこにはもちろん同様に倒れるリーファの姿、そして疲れた顔をしているアレクやエリーもいる。螢はまだ余裕を見せ、司狼はハイなテンションを見せていた。正直あれだけの激戦を繰り広げておきながらまだまだ元気を見せる司狼の姿は驚愕でしかなかった。

 ヒールの魔法を発動させ自分を気休め程度に回復させながら、インベントリに隠していたユイを再び実体化させる。現れるのと同時に胸に抱きついてくる。心配そうに抱きついてくるユイを撫でて、落ち着かせるとする。


 と、そこで、

「来るのが遅い」

「あははは……」

 頭の横にアレクが立っている。呆れた様子でそう言ってくるということは、少なくとも怒っているわけではないという事だ。流石にこれ以上誰かの怒りを買うのは勘弁願いたいところだから助かる。

「悪い、いろいろ予想外の事態があってな。通り魔に襲われたりとか」

 そこで螢の方に視線を送ると、螢が肩を揺らす。

「何、斬られたいの?」

 ニヤリと笑みを浮かべ、手に握る刃をキラリと見せつけてくる螢の姿は、先ほどの戦闘する姿もあって中々に怖い。正直もう二度と戦いたいとは思わない。炎になって攻撃を透過するとかなんだアレ。これで何度目になるか解らないが、勝てる気がしない。

「元々君一人だけの予定だったのに、何かいっぱい増えちゃったね……」

「そうだな……」

 ここでやっとアレクを落ち着いてみる余裕ができた。茶髪の少しツンツンとしたショートに、リアルのアレクに近い造形の顔、全体的に自分に似たアバターができたらしく、体もそこまで筋肉質には見えない。赤のシャツの上から青のハーフジャケット、そして下は茶色のロングパンツとなっている。服装を見ただけではどの程度の実力者か解らない。が、

「あぁ、そういえばこっちでの自己紹介はまだだっけ。俺はアレク、種族はノーム。基本的に耐久重視のアタッカービルドにしてあるよ。武器は斧か棒、あとはトンファーと格闘が得意なんだけど……まぁ、今の所は披露する機会もなさそうだなぁ……」

 もう一回螢に視線が行く。確かにアレやベイ級の存在がゴロゴロしているのが黒円卓だったら、正直戦闘どころか武器を抜けるかどうかすら怪しい。実際リーファは武器を抜けないまま戦闘終了まで倒れていたわけだし。と、忘れるところだった、

「えーっと」

 リーファの方に手を向ける。

「こっちはシルフのリーファ。俺がアルンへ行くのを手伝ってくれるって言ってくれて、スイルベーンからここまで一緒に来てくれた人」

「私が本当に必要だったのか疑問だけどねー……」

「あぁ、リーファさんか」

「アレ? 私を知ってるの?」

「そりゃあVRMMORPG―――特にALOみたいな性別変更不可のタイプで初期容姿ってのはランダム要素が高くて、かっこいいPC、可愛いPCってのはレアなんだよ? それでいてある程度の実力があればアルンに出ていなくてもある程度話にはなるよ。特にリーファさんは領地大会で何度か優勝しているし」

「そんなアレクは」

「無名のプレイヤーです」

「ははは」

 少し、笑うだけの元気が戻ってきた。できる事ならもう二度とベイの相手はしたくない。後半、吸精月光に当てられる人数が増えてからベイの強化、そして回復スピードは異常な速度を見せていた。あのまま戦うという発想を捨てられなかったら確実に負けていた。司狼のあんな発想中々生まれるものでもないが、助太刀が無ければ間違いなく吸い殺されていた。

「はぁ……死ぬかと思ったぁ……」

「うん……」

「俺は先輩が迷うことなく橋を燃やしたのが怖かったよ……」

 今度は司狼に視線が集まる。

「おぉ、俺を崇めろ崇めろ。テメェらの救世主だぜ、俺はよ」

 調子に乗ったような口調で話す司狼の姿は軽く見えるが、実際に言っている言葉に間違いはない。感謝の一つや二つするべきなのかもしれないが、それよりも今は、

 ―――来ない。

 あのデジャヴる感覚が来ない。来ないときは来ないで全く何も感じられない。だが発動した瞬間感じる世界の滑稽さ、吐き気、あの感覚はまるで油の様に張り付いて落ちない。剥がそうとすれば滑って、転んで、そのまま奈落の底まで落ちそうな感覚で―――

「気にするな」

 自分に向けられた言葉だと理解するまでには数瞬必要で、

「俺もエリーもあの馬鹿も、これはどうにもならねぇって判断してるから気にするな。考えれば考えるだけ無駄だ。深く考えずに便利なモンだと思っとけ」

「あ、あぁ……ありがとう」

「気にすんな後輩」

 それはこのデジャヴ経験の後輩だと言う意味なのだろうか。司狼がそこで笑みを浮かべ、

「そんじゃ顔合わせと行こうか。俺の名前は遊佐司狼ってんだ。現在二十二歳独身。夢は退屈のない刺激的な人生を送る事」

 最後の部分は凄い皮肉なのだろうか。デジャヴが存在する限り新鮮味はない。だからそれの脱却を望んでいるという事だろうか。

「んじゃあ私の番かな」

 司狼の横でホロウィンドウを操作していた女が口を開く。

「私はエリー。とりあえずこのチンピラの相方してるからよろしく」

 と、片手で挨拶してくるエリーの姿で気になったのは、

「えーと、さっきから何をしているんですか?」

 ユイが何やら睨むような視線でエリーを見る。

「クラッキング」

「えええ!?」

「やっぱりですか……」

 クラッキング、つまりハッキングしての情報奪取と情報改変、完全な違法行為だ。それを平然とやってのける胆力、そしてカーディナルがAIを務めているこの世界でクラッキングを成してしまうだけの実力を持つエリーとは……。

「あぁ、気にしないでね。カーディナル本体のあるゲームだからって二年前の旧式だし、世界樹へ近づけば近づくほどプロテクトが馬鹿みたいに強く多くなって私でも無理だから。さっきみたいに湖底ツアーへ連れて行くのができるのはここら辺で限界だから」

「いや、そういう問題じゃないでしょ! 規約違反よ!」

「そうです! 完全な違法行為ですよ!? アカウントが停止される前に―――」

 あまりにも堂々としたエリーの態度に戸惑うリーファとユイだったが、すぐさま復帰して規約違反を責めようとしたが、

「―――今更規約違反だとかどうとか笑わせるわね」

 エリーの援護に入ったのは螢だった。胸の下で腕を組み、冷静な目で状況を見ている。

「使えるものは全部使わなくちゃこの先死ぬわよ。規約違反だとかそんなものに、今更こだわっていられる状況ではない事を理解している? 第一に―――本当に運営が熱心な良運営だったら、今頃私達に警告が来てるわよ」

「……」

 言われてみればそれはそうだ。茅場晶彦……ヒースクリフはどこか知っていてワザと放置していたらしき部分がある。自らの害にならない限りは不干渉。そんな姿勢を明広達に対して見せていた。だけどここは違う。ALOは通常の運営のゲームで、SAOみたいに藪をつついて蛇を呼び出し、ゲーム終了の危険性を考慮する必要はない。データをスキャンし、黒円卓という異分子を排除すればいい。それに既に二度にわたってデータの大幅改竄やシステム外の運動が発生している。もうすでに運営が削除の為に奔走していてもおかしくない事態だ。それでもまだ運営が動いていない事を考えると、

「……あえて見逃されている?」

「それともそれだけの余裕がねぇのかもな?」

 どこからかタバコを取り出した司狼がそれを加え、ライターで火をつける。

「うげぇ、味がねぇ」

「そりゃあ未成年が遊べるゲームに、中毒になる可能性のあるものを普通に置くわけないでしょ。酒はまだセーフでも、タバコはギリアウトで味なしよ」

「お前それ先に言えよ」

 文句を言いつつも司狼はタバコを口にくわえたまま、捨てる様子を見せない。そこでさて、と言葉を口にし、

「そんじゃ、軽く情報を纏めるか。おい、委員長、よろしく」

 司狼の視線は螢へと向いている。

「誰が委員長よ!」

「小さい事は気にするんじゃねぇよ。気が短い女はアイツのタイプじゃないぞ」

「……」

 螢から怒りのオーラが漏れているのが見える。螢を挑発するとは中々の勇者だと判断できるがそれ以上はこっちの胃がガリガリ削れそうなので切実にやめてほしいと思う。それを絶対に口に出す事はしないが。

「まぁ、いいわ」

 溜息をついて折れたのは螢だった。短い時間だが司狼がどんな人物なのかを理解し、基本的に怒りを見せる事も無駄だと悟ったのだろう。自分も、それだけは何となく解る。酷い道化のように見えるが、それはやはり―――

「それじゃあ情報を纏めるわよ。私達聖槍十三騎士団黒円卓は―――」

「はい」

 と、そこでアレクが片手をあげてストップを入れる。

「まず第一にその聖槍十三騎士団ってなんですか? まず聞いたことがないんですけど」

 そうね、と螢が言葉を置き、

「あんまり話しちゃいけないから詳しくは言わないけど、私達所属としてはドイツ軍の軍人よ。今は日本でとあるプロジェクトの為に活動中、って所かしら。プロジェクトの内容も何で日本でやるのかも機密だから聞かない様に。私たちが人知を超えた力を発揮しているのは、基本的にそのプロジェクトの恩恵よ」

「把握しました。話の腰を折ってすみません」

「いいわ。ともかく、私達黒円卓は今日本にそのほとんどの団員が集結しているわけだけど、”いろいろ”あってSAOに参加したりもして、その結果最上君を団員として迎え入れたわ。十三位、その代行として」

 はい、と今度は俺が手を上げる。

「何かしら」

「SAOに参加してた理由とか聞きたいけど、どうせ答えてくれないんだろ? ……だから他の事聞くけど、そこで何でアイツが出てくるんだ? SAOの時は、確か十三位代行なんてしてなかったよな? と言う事はその後引き受けたって事だけど、俺が知っている限り病院から教会へと運ばれているし、接触するのは難しいと思うんだが。それに接触できたとしても、今のあいつはそんなやり取りができる状態じゃないだろ?」

「答えは簡単よ―――その教会の人間が黒円卓の人間なのよ」

「はあ!?」

「え!?」

「ヒューッ」

「先輩もあんな顔をして中々やるね」

「え? え?」

「どういう事ですか?」

 驚愕するのは知り合いばかりで、明広の事情関係に関しては蚊帳の外であるリーファとユイは困惑するばかりだ。だがそこら辺を説明しだすと色々と面倒がある為、黙って螢が話し出すのを待つ。

「貴方達が昔から親交のある教会―――トリファもリザもテレジアも黒円卓の正規団員よ。まぁ、あの三人は戦闘力で言えば皆無で、どちらかというとサポート面の人間なのだけれど……別に貴方達を騙していたわけじゃないから、そこらへんは安心しなさい。……あぁ、あと」

 螢が付け加える。

「ログアウトしたら会いに行くなんてことを考えるのはやめなさい。事件が解決するまでは多分会っても何も話せないだろうし、知り合いとあえて空気を悪くする必要もないわよ」

「うーん……兄さん……」

「へぇ、先輩も何を何も考えてなさそうな顔をして意外とやってんだな」

「香純ちゃんこれは怒りそうだねぇー」

「ちげぇねぇや」

 香純とはいうのは自分が知らぬ第三者の事なのだろう。次から次へと新たな名前や情報が増えて少し混乱気味になっているが、まだ脳は大丈夫そうだ。

「だから私たちが彼に会うのは問題なかったわ。元々SAOが終了したら教会で保護し、接触しろって命令を受けていたし」

「ストップ、ちょっと待て。今のおかしくないか?」

 今の言い方ではまるで、

「あらかじめ兄が”ああ”なるのを予想できていた?」

「いえ」

 違うわ、と言って、

「私たちがこうやって裏切ったり共闘する所まで予知されているわ」

「……マジかよ」

「へぇ」

 色々とリアクションが分かれるが、これはつまり恐ろしい程の先読みに長けた存在がいるという事になる。思い返せばベイの発言もおかしいところがいくつかあった。その一つが、まるで司狼の到着を予想していたかのような発言だ。螢もあらかじめ来ると解っていなければ待ち伏せなどできないだろう。もしここまでカオスな展開を予想できた存在がいるとすれば、

 とことんふざけているだろ。

「十三位は黒円卓の副首領の地位。そこに就任しているのはメルクリウスという誰からも嫌われている陰険な男でね、その男はアインクラッドの一連の事件から今までの状況を全て予知していたわ。それで最上君が副首領の代行をしている件だけど、首領―――第一位であるハイドリヒ卿からの命令があったの。彼を、最上君を十三位の代行にして指揮権を譲渡、現地における作戦の実行と指揮は完全に任せる。そして出来上がったのが」

「この状況ってわけか。はぁ、あの馬鹿にしちゃあ結構考えてるのか」

「ナチュラルに貶すわよねー」

「ま、アイツが俺に成績で勝てた事は一度もないからな」

 なん……だと……?

 このチンピラ風の男が実はインテリ系だという事実が衝撃として襲ってくる。運動神経が良くて性格が悪くて頭がいいとか最悪じゃないか。神はなぜこんな人を生んだのだろうか。

 まぁ、正直な話、今のところは役に立っているので文句はないのだが。

「ま、大体こんな所かしら? 私と兄さんが英雄君を通して、そこの不良チームと合流してベイを撃破した。私の知る限りあとはザミエル、マキナ、マレウス、あとベアトリスが戦闘員としては残っているわ。正直な話ザミエルとマキナに関してはお手上げね。ベイを一撃で消し飛ばすだけの実力を持ってるわ」

「なにそれムリゲー」

「クソゲーとも言うな」

「まあ、マレウスはまだ私でも倒せるし、ベアトリスに関しては私が説得するわ。兄さんを盾にすれば何とかなるでしょう」

「おい」

 意外と手段を択ばないというか、この女もこの女で中々に外道だった。

「私、嫌な女だから手段は択ばないのよ」

「おー、おー、恋する乙女は怖いねぇ」

「そう思うのなら黙ってた方が賢明よ。邪魔なら足を焼いてから盾にするわよ」

 基本的に司狼と螢はキャラ的にあまり相性が良くないようだ。これ以上会話させない方が俺達の胃の為にもなる。だが、とりあえずは、

「世界樹か」

「えぇ、そこに私達の本部があるし、彼も待っているわ。何やらどれだけ邪魔を入れても絶対到着する事を確信しているみたいだし―――期待に応えるのもいいんじゃないかしら?」

「そうだな、馬鹿の顔を拝んで一発殴らなきゃな」

「うん。一発殴らないと駄目だね」

「俺たち三人で合計三発か」

「なんで男子ってこんなに物騒なの?」

「解ります! これが男の友情ってやつですね! 最後は夕日をバックにマウントを取ってフルボッコにするんです!」

「ユイ、君はいったいどこでそういう知識を増やしているんだ……?」

 娘の将来が心配になってきた。

 ともあれ、

「目指すは―――」

「―――世界樹」

 パーティーは賑やかになりつつも、その行く先を変えない。
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| 断頭の剣鬼 | 10:54 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

最初いただきぃーー!!!

最上さん、出てこなさすぎてツラい。むしろしばらく出番の無かった弟がグイグイ来そうな予感…w


次もwktkしながら待ってますんで!

| アミノ酸 | 2012/09/10 17:33 | URL |















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