陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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I'm Just A Runner

 人間の肉体とは摩訶不思議なものだ。

 続けて使えれば段々と最適化を始めるし、放置していれば放置したでその環境に最適化する。つまり鍛えれば鍛えるほど人間の体は成長し、それを怠れば退化は必須なのだ。ただ闇雲にやればいいというわけではないが、人間の肉体はしっかり面倒を見ればちゃんと信頼に応えてくれる。それを教えてくれた張本人たちはそれを常識と言いながら虐待まがいの訓練をしてくれた。

 いや、既に虐待の領域に入っていただろうアレは。

 生まれた時から人間を止めていた存在達と同じような訓練を受けさせられてきた結果、体がだいぶそれに順応した子供時代。今更ながら思い出すと背筋を怖気が走る。海に行ったと思ったら海の上を跳ねるように殴り飛ばされたあの少年時代、色んな意味で忘れられない。

 ともあれ、少年時代の過酷な経験はもはや忘れられない習慣として体に根付いてしまった。昔ほど過酷な運動はしなくなっても、それでも毎朝軽いジョギングから一日を始める事は忘れない。それは二十一になっても依然代わりのない事実だ。面倒だ面倒だ、と思いつつもずっとやっているのはやっぱりこれが今の仕事、そして将来にやりたい事をしっかりと理解しているからだろう。


 さすがに夜勤明けの時はやらないが、

 それ以外の日は毎日やっている。もちろん休日であっても。

 そう、今日みたいに。

「……」

 麻帆良という学園都市はとにかく広大な敷地を持っていて、長距離ランナー用のジョギングコースもできている。魔法使いが使う気や魔力を使えば疲労せずにいけるコースだが、それなしでの話であるのならば中々ハードなコースだと言える。麻帆良の学生もよく利用しているコースだが―――麻帆良の学生にはたまに気とか魔力とか無意識に覚醒しているのがいて困る。意識しないで使うのだからもっと困る。

「ねえ、どう思う? 高畑先生の好みは―――」

 女子中学生のバイタリティは中々凄まじいと思う。

 毎朝走るジョギングコースが新聞の配達コースの道と被っているせいで交流を持ってしまう娘がいる。恋に恋する年頃というべきかこの少女、神楽坂明日菜、アスナと呼んでほしいと言った少女はあの高畑・T・タカミチにゾッコンだそうで、同僚でありそれなりに仲がいいとなると結構話しかけてくるわで、

「バイタリティぱねぇ……」

「え?」

「いやあー、なんでもないぞ?」

 高畑がこの少女を溺愛してるのは麻帆良にそれなりに長くいる魔法先生だったら知っている話だ。ただその愛が異性に対する愛ではなく親の慕情というところが非常に残念だ。これで異性愛だったら確実にロリコンとして臭いメシを食う生活になるか本国でオコジョになっているかどちらかだっただろう。正直あのダンディな中年がオコジョになる姿は一度でいいから見てみたい姿ではあるが、そこはまた歳の差を無視した友情が我らにはあるのだから我慢しよう。

「それよりも! さっきの話どうなのよ?」

 何がって……、うん。

「話しを聞いてなかった」

「ちょっと!」

「いい加減高畑先生は諦めろよ……」

「なんでよ!」

「はぁ……」

 それが見えてない辺り盲目というべきか。まぁ、思春期に年上の先生に恋をする、何て事は多々ある。そのうち苦い経験を経て大きくなるのもまた青春。もう適当に聞き流してもいいんじゃないかな、と思ったところで、

「んじゃ俺は今日こっちのコースだから」

「あ! 逃げるなー!」

 早めにコースを外れるようにログハウスと森のあるエリアへと向かう。若干荒っぽいところと高畑にゾッコンの部分を抜けばそれなりにいい娘なのだが、うーん、やっぱり年下は苦手だ。自分の横に立つ人物を未だに想像できないのは独り身の悲しさだ。

 しかし父と母の円満な夫婦生活を見ていると仮定を持って安定した収入を持って落ち着いた生活するというのも中々憧れる。が、今のところそんな相手が見つからないのが悲しい。父達の出会いは正直論外なので参考の対象としては除外する。誰がすき好んで世界のピンチと引き換えに女子との出会いを求めるか。頭がおかしいだろう。

 ログハウスエリアに入るのと同時に足場が、道路がセメントから土の整備されたものへと変わる。少しだけ走るペースを落とす。このままの速度で走るのもいいが、靴はセメントの上を走ることを考慮しているものだ。っこでは間違えて滑る可能性もある。いや、魔法を使えばまったく問題のない話なのだろうが。だが気分だけは一般人でいたい。

「おい」

 と、ログハウスの住宅街を抜けようとした時、その一つの前で止められる。ログハウスの前には小さい、十歳前後お少女がネグリジェ姿でベランダから見下ろしていた。

「こっちを通るとは珍しいな黄昏の」

「名前で呼べ名前で」

 名前を呼ばずに黄昏と呼んでくるこの人物は齢六百ほどの吸血鬼であり自称最強の魔法使い―――エヴァンジェリン。六百年前の、父親たちがヒャッハーした時代に生まれた人物らしく、父達の事をそれなりに知っているらしい。おかげで昔の事を語れる数少ない知り合いの一人なのだが、何時まで経っても名前で呼んでくれない。

「おい、茶々丸」

 エヴァンジェリンがログハウスの中に声を放つと、中からメイド服の女が現れる。その手の中に握られている物をエヴァンジェリンがとると、それを投げ渡してくる。

「ほれ、スポドリだ」

「さんくー。エヴァちゃんったらツンデレなのね」

「貴様の股間についてるものを捻じり切るぞ」

「ひぃっ」

 今のはタマがヒュンとした。言ったらやるってタイプの人間……いや、化外なので確実にやりそうだ。少しだけ内またになりながらスポーツドリンクをありがたく飲む事とする。

「おい、それよりもあの話は本当なんだな?」

 走り出そうとしたのをエヴァンジェリンに止められ顔を上げる。

「あ?」

「目玉を抉りぬくぞ―――ってそうじゃない。アレだ。アレ。ナギの息子が来るって話だ。嘘じゃないだろうな?」

「お前、人を捕まえるたびにそれを聞いてくるな……答えはハイ。イエス。ヤー。ダー、オーケイ?」

「ふん、今日だけはその無礼を許してやる……が、そうかそうか……くくくく、ついに私の時代が来たな……」

 お前の旬は五百八十年前におわったがな。

 などとは口が裂けても言えない。オチは見えている。だから優しく微笑み、走り去って朝のルーチンを終わらせることとする。

 これが後に俺の悲劇の始まりだとは、まだ知らない。
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| 短編 | 17:59 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

旬が過ぎ去ったのと、旬が永遠に来ないの。
どっちがより不幸なのだろうか・・・

| ブローネ | 2012/09/09 21:44 | URL |















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