陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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第一話 小国



「兄貴! 朝だよ! 早く起きて!」

「あぁ……分かってる……分かってるから顔をたたくのは止めてくれ……」

 赤毛の少年がベッドで半分だけ意識を覚醒させた青年の顔を叩いたり体をゆすったりしたりし、なんとか兄と呼ぶ青年を起こそうとする。それを鬱陶しく思いながらも、蝿を退けるように手を動かしながら体を起き上がらせる。上半身だけ起き上がると既にオーバーオール姿に着替えてある赤毛の少年が青年へと笑顔を向ける。

「おはよう兄貴!」

「あぁ、おはようレイ……」

「早く起きてよ! もう義姉さんが朝ごはんを作ってるよ! 早く来ないと作り立てで食べられないよ」

「あぁ、分かった分かった。起きてる。俺は起きてるって」

 赤毛の青年が促されるように完全に覚醒し、足をベッドから下ろすと赤毛の少年、
レイと呼ばれた少年が満足そうに頷き部屋の入り口へと向かい、ドアを開けて半分出たところで振り返る。

「二度寝はダメだぜ?」

「かっこつけなくても分かってるよ……」

 ふわぁと、軽い欠伸を上げながらのそりとベッドから起き上がると、部屋から出てゆく弟を見ながらも、ベッドの横のクローゼットをあけて、ハンガーにかけてある自分の今日一日の服を取り出し、それを手に持ちながら窓から見える町の光景を見る。日はまだ昇ったばかりで町を霧が包むが、どこか近くから鶏の鳴き声や、店を開けようとする店主や店員の声、他には夜更かししていた冒険者の声も聞こえてくる。雲があまりかかってないことを見ると今日一日もどうやら晴れになりそうだ。

「兄貴朝ごはんできたぞー!」

 下、1階から兄を急かす弟の声がする。着替えすぐさま下へと向かう前にもう一度窓の外の景色を見る。

「今日も一日、世界が平和でありすように」

 そう呟くとまた怒鳴られないうちに動き出す


                     ●


 2階から1階へと降りてくるとそこには多くのテーブルや椅子が置かれている空間があった。その一角にカウンターが設置されており、奥に厨房が見える。既にカウンターの上には3人前の食事が用意されており、レイと呼ばれたおさげの少年と緑色の髪をした女がカウンターを挟むように座っていた。

「遅いわよ」

「悪い悪い」

「それじゃ3人揃ったしもういいでしょ?」

「ダメだろこら。ほら、早く手を合わせろ」

「はぁーい」

「っはぁ……」

 ため息を吐きつつも三人揃って両手を合わせ、俯き、祈る体制をとる。そこから小さな声で、赤毛の青年が声を出す。

「セーナル様、今日もこうやって我々が食事につけるのは貴方のおかげです。今日も我らの食卓と懐に少しばかりにお恵みをお分け下さい……」

 日々の神への感謝は忘れない。忘れてはならないのだ。こうやって毎日商売していられるのは神の恵みであり、自分達の力に銜えて神の加護がある。自分達の生活は神に支えられていることを忘れず感謝し……祈りを終える。

「よし、食っていいぞ」

「よっしゃぁあ!!」

 苦笑を漏らしつつも自分も皿の横に置かれているフォークとナイフを手に取り、皿の上の料理へと手を進める。朝ごはんにいたってはシンプルにソーセージとザワークラフト、パンとサラダという、この地方では割と普通の朝ごはんだ。ナイフでソーセージを切るとザワークラフトを乗せて口へと運ぶ。何時も食べる朝ごはんではあるが、一種の習慣のようなもので飽きるということはない。今度はサラダをフォークで刺しながら野菜を食べる。横目で弟の様子を確認すれば嫌そうな顔をしながらサラダを食べている

 残そうとしないだけ感心だな、と思いつつさっと食べ物を口へと運ぶ。

「兄貴兄貴」

「お前……口の中の物を飲み込んでからしゃべろよ」

「んぐっ……ごくん……兄貴! 今日はどうするの?!」

「どうするって……何時も通り店を開いて料理して、酒を出して、そしてちゃんと商売をする……ってぐらいか? な、リシア」

「えぇ、そうね」

 リシアと呼ばれた女性は笑顔を青年へと向け、それを受けた青年は恥じらいを隠すように朝食を食べる。それをからかおうとレイが何かを口に出そうとするが、その前に青年の拳骨が頭へと落ち、レイの口を閉ざす。痛そうに頭を擦るが、その顔に恨みなどの負の感情は一切存在してなかった。三人は家族として、平和な朝食を楽しんでいる。都会の何処でもあふれかえる一風景。レイはまだ話したりないのか、食べ物を素早く飲み込みつつまた新たな言葉を放つ。

「兄貴兄貴!」

「お前さ、もう少し落ち着いて食えよ……」

「いやだってさ。食ってるのだけってつまらないじゃん」

「おま……食べられることに感謝しろよ? ここは他のところと違って戦争なんてしてないし王様のおかげで豊かなんだからな。他のところは撤兵とか兵役とか結構酷いとこもあるらしいぞ?」

「んー。なんかよく分からなーい」

「はぁ……まぁ、そうだよなぁ。っと、サラダおかわり」

「はいはい。よく食べるわねぇ」

「朝食は大事だからな」

 皿を渡し 、サラダの代わりが来るまで最近の情勢について考え直す。この十と数年で世界は大きく変わった。今までは姿を殆ど現さなかった魔神がその姿を現すと、まるで欲望の赴くままに行動を始め 、多くの国が滅んだ。幸い、自分がいる国『グルーノ』の王は賢かった。他の国みたく検討もせず、即座に兵力の増強、教会の介入を恐れずに教会の人員を緩し、そして近隣諸国との繋がりを強化することに乗り出した。魔物は凶悪化し、世界は大いに乱れている。だがそれでも人は力強く生きている。それを証明するかのように冒険者も兵士も、力が上昇している。今までは到達不可能といわれるレベルにまで到達するような人間も風の噂では現れているらしい。

「はい、おかわり」

「ありがとう」

 皿いっぱいに盛られたサラダを受け取るとそれにフォークを刺し、口に運び始める。ドレッシングが変わったのか、先ほどとは少し違うサラダの味を楽しみつつ本日の業務に関して頭を向ける。たった三人で切り盛りしている小さな酒場だが、それなりに常連も来ていて生活に困らない程度には繁盛している。今日も、やることはいっぱいある。ここ数年で活発化した冒険者のおかげで酒場や武具を売る店は繁盛している。まず朝ごはんを食べ終わったら仕込を始め、レイには掃除をさせて、リシアにも手伝ってもらって……。

「兄貴兄貴!」

「もう頼むから静かに食わせてくれよ……」

「兄貴! いや……むしろロイ!」

「何がいやむしろだ! 兄を呼び捨てにしてるんじゃない!」

「痛っ! 頭を叩くなよぉ~」

「これから親愛と尊敬を込めてロイ兄か、ロイ様か、もしくはお兄様と呼べ」

「おにぃさまぁ~ん」

「よし、拳骨10発で済ませてやる」

「潰れる! 俺の頭が潰れるよ兄貴! やめて!」

「朝から仲がいいわね」

 朝から軽い笑いを笑顔を起こしながらも朝食を食べる。先月は先週と変わらず、先週は昨日とは変わらない。平和な、平和な日だった。だから、今日も機能と変わらない平和な日である。そうなって欲しくて、笑顔でいて欲しくてそう祈る。

「ご馳走様」

「お粗末さまでした。やっぱりロイ君には敵わないなぁ」

「まぁ、本職だからね。簡単に追い越されるようになったらそれこそ商売上がったりだよ。そうならないためにも日々料理の腕を磨くことに勤しんでるからな」

 そういいながら立ち上がり、自分の皿をカウンターの裏の厨房へと持って行く。バケツの中に溜めてある水を使って皿とナイフにフォークを洗うと、乾かすためにそれをラックに乗せる。店に出すための食器と家族で食事するための食器は別に使い保存してあるためにこれが店に出る心配はない。濡れた手を布で拭くと厨房から出て、店の入り口の方へと歩く。レイもリシアも食べ終わったのか食器を厨房へと運び始めた。

「そんじゃレイは中の掃除を始めてくれ。リシアは制服に着替えてきて厨房の方をよろしく」

「はい」

「おーす」

「お前その変な返事の仕方誰から習った……」

「スタリアのおっさん!」

「…………今度ウチの弟に変な言葉を教えないように言っておくか」

 城の門番をしている気さくな兵士の事を思い出しいい人ではあるが、少々困った存在でもあることを思い出すとため息を吐き、店の扉を開ける。未だに朝として時間が早いが、それでも町は徐々に賑わいを見せている。視界を遮る様な霧も朝日に照らされ大分薄くなってきた。入り口近くにおいてある箒を手に取ると、開店前に入り口周りを掃除しようと前へと踏み出したところで……

 ぐにぃ

 ……何かを踏んづけた。硬くない何かを。足にちょっとだけ力を込めて踏む。

 ぐにぃん

 間違いない。足元に何かがいる。だが見えない。いや、見たくない。感触からしてアレだ。絶対に人型のアレだ。間違いない。見なかったことにしよう。それがベストだ。うん。自分を無理矢理納得させ、踏んでいた足をどけ、その横へ足を下ろすが……

 ぐにぃい

「むぎゅっ」

 また何かを踏んづけた。流石に今回ばかりは見てないフリはできなかった。意を決し足を退け、下を見る。さっきまで足を乗せていた2箇所、そこには二つの生物がいた。すみれ色の髪の人間と、金色の髪の少女。少女にいたっては何故か血文字に見えるもので『犯人はヤス』と書いている。意味が分からない。自分の名前はヤスじゃない。

 だが、それよりも特徴的なものが目に入る。

 すみれ色の髪の人間の頭には四つの角が、金髪の少女には蝙蝠のような羽根が。明らかに、普通の人間には存在しない部位である。それを証明することは一つ。この二人は―――

 ―――魔人だ。


                     ●


 魔力を持つ人間の事を魔人と呼ぶ。普通の魔人とは人間とさして変わらぬ姿をしているが一部力の強い魔人などはその魔力が肉体に作用し、その肉体が変質、特徴的なものが生まれる。角や翼などはそれの最たる例であり、睡魔族(サキュバス)と言った人型の魔物は、その先祖が元々は魔人だったという話であり魔人からそういう種族へと『変化』する事が多々ある。こういう魔人を色んな意味を込めて『闇夜の眷属』と呼ぶものが多い。

 だから、目の前の彼女達もそうなのだろう。

 角や羽と言うのは変化した魔人としては割りとメジャーな部類だ。だがただ待っていれば変化するわけではなく、魔人とてそれなりに長い時間をかけて魔力を練り、そしてその魔力が突然変異を起こして肉体的な変貌を起こすのだ。魔人を外見から年齢を特定することが難しい。幼い子供のような姿をしていて1000年以上生きたと言うのもいるが、どうやらそれはこの金髪の子供には当てはまらないようだ。

「がつがつがつごくん……んぐっ?! ごくごくごくごく!!」

「あらあら、もう少し落ち着いて食べても逃げないわよ」

「おかわりー!」

「はいはい。ふふ」

 食べ物を急いで食べ、それを喉に詰まらす姿は何処からどう見ても姿相応の年齢だ。おそらくだが、この羽の生えた子は魔人ではなく、睡魔族に生まれた少女なのだろう。ならば、と視線を金髪の少女の横で黙々とひたすら食べ続ける角の生えた女性へと向ける。此方は睡魔族の少女と違い成人女性ほどの体の大きさに身を包む冒険者用のマントから見て、それなりに冒険をして生きていることが分かる。たぶんだが姿以上の年齢をしているだろう。これは一種の予感に近いものだ。働いて色んな人を見ているうちに磨いたスキルのようなものだ。

 だが、

「がつがつがつがつ」

「がぶがぶがぶごくごくごくがつがつがつ」

「がりがりがりがりがり」

「おかわりー!」

「店主すまないけど私もおかわりを頼む」

「あらあら、私は店主じゃないわよ」

 精神年齢はどう見ても睡魔族の少女と変わらない。と言うか食べる速度は少女よりも早いし多い。あのほっそりとした体系の何処に食べ物が入ってゆくのか心底疑問に思える。

「ロイ君、追加でおねがいね」

「おう」

 10人前は余裕で作ったはずだがまだまだ満足してないらしい。魔人の胃袋は化け物か。そんなくだらないことを思いつつも、冷蔵庫から肉を取り出し、フライパンを火にかけ調理を始める。調理自体は既に体に染み付いているために、一々プロセスを考えずとも勝手に進めるため、料理を始める前に早朝からの客の二人を改めてみる。

 金髪の少女の方は見た目大体10前後で青いロングスカートのワンピースのような服装を着ている。よく見れば短いツインテールの少し前に、髪の中に隠れるように猫の形をした耳が存在している。ネコミミに蝙蝠の羽、それは間違いなく睡魔族の証。さらに観察してみればスカートの下で何かもぞもぞと動いている。おそらく尻尾でも隠しているのだろう。その主、もしくは保護者のすみれ色の髪の女を見る。こっちの方は角以外には魔人を示すような特徴はなく、見えるのはくたびれた茶色のマントから覗く白い腕だ。二の腕まで出ている腕だが一切の布地が見えないあたりおそらくだがノースリーブの服装なのだろう。その手自体は冒険者にはさして珍しくなくオープンフィンガーのグローブを着用している。睡魔族の少女に勝る速度と量を、それでも不快感を与えぬように食べる姿をもうどこか感嘆を受けざるをえない姿である。

 うん……食い意地はそっくりだな。

「ロイ君、まだ? もうなくなっちゃったわよ?」

「今出来た。ちょい待っててくれ」

 フライパンの上で焼けていた分厚い肉を皿の上へと載せて、近くに用意されていたすでに斬られた野菜を盛り、そして作り置きしてあるドレッシングとソースをかけて完成。それを厨房からカウンター席にいる欠食主従に渡すと、二人が手を揃えていただきますと、といった後に再びかぶりつく。

「いただきます?」

 食べる前にも聞いたが、聞いた事のない使い方だ。ニュアンスは分かる。疑問に思ったことを答えたのは金髪の欠食少女だった。フォークを肉に刺したまま顔を持ち上げると疑問に答えを出す。

「あのね、それはね、食べ物と、それを作った人、関わった人に対する感謝の言葉なの」

「作った人達や関わった人たちへの感謝……」

 その考え方は結構珍しい、とロイは思う。何せ今の時代、神への感謝が一番大事なものとされ、神の加護と慈悲による恵みによって我々は今の生活を続けていられるから、と言う考えだ。だからその恵みを分け与える神へ感謝せず料理人や作物を育てた人、そちらへと感謝を向ける考えは新しかった。だがまぁ、良く考えれば目の前の二人は魔人と魔族、神を信仰しない者が多いからそういう考えもあるか、と考える。そこでふと、本当にそうかと思い、

「お嬢ちゃんは神を信仰してないのかい?」

「お嬢ちゃんじゃないよ! リリィだよ! んー。何かめんどくさいし……いい!」

 ……うん。何も聞こえなかった。そうしておこう。

 たぶんマーズテリアの神官戦士辺りが聞けば呆然とするか、もしくは憤慨するであろう話を、とりあえずは精神に悪いので聞かなかったことにする。うん。それがいい。話が終わってリリィと自らを呼ぶ睡魔族の少女が肉を食べようと視線をさらに戻すと、そこは既に何もなかった。除けへと視線を移すと、角付きの女が口をもしゃもしゃと動かしていた。

「あー!!!」

「よそ見するからだ。戯け」

「ずるーい!おかわりー!」

「あ、私もおかわりだ」

 どうやら、食事はまだ続きそうだと、そう思いながら再び厨房へと戻ってゆく。


                     ●


「はぁー、食った食った」

「ふぎゅぅー。おなかいっぱいー」

 カウンターには山盛りになった皿の前に満足そうにおなかを擦る姿が二つあった。見るからして30人前ほどの量が平らげられたこともあり、営業時間になって人が増えた店内では、地味に二つの存在を賞賛する声が出ていた。食事が終わって、今すみれ色の髪の女の前にはコーヒーが、そしてリリィの前にはパフェが置かれていた。まだ食べるのかと呆れそうになるも、口いっぱいにほおばっておいしそうに食べる姿は見てて気持ちがいい。

「在庫を荒らすように食べて悪かったな店主」

「いや、払ってくれるのならまったく問題ないよ。これで食い逃げだったら色んな意味で頭が上がらないよ」

「そこらへんは安心して欲しい」

 すみれ色の髪の女がマントの内側から白い布袋を取り出す。それをコーヒーの横、カウンターの上に乗せるとそれを店主の方へ押す。

「必要な分だけ取ってくれ」

 完結的な言葉で指示されたロイがその袋を持ち上げ、中を開けると驚いた。

「き、金貨ばかりじゃないか、これ……」

 一般的に硬貨は三種類に分けられる。銅貨、銀貨、そして金貨である。その中でも地方によって様々な種類が生まれ、その硬貨の純度により価値が大きく変わるのだが、その中でも中々の純度を誇る金貨と、少量の銀貨が袋の中には大量に詰まっていた。銀貨一枚でも十分におつりが出るほどの価値があり、そこで少し焦る。

 ま、まさか……どっかの貴族?!

 これだけの金額を持ち歩ける人間なんて数が知れている。貴族か王族、もしくは凄腕の傭兵や商人ぐらいしか思いつかないが、身なりからして王族や商人はなくて、傭兵だとしてもこんな小さな少女を連れ歩くとは思えない。それなりに少女の身なりもいいし、貴族の少女とそれを護衛する魔人……とも見えなくはない。だがロイのその焦りを感じたのか、

「あ、いや。気にすることはないよ。別にそういう怪しいものではないし。おつりもいらないから適当に……んー……そうだな、シウ銀貨一枚もあれば十分か?」

 シウとは山岳の神で、ドワーフを中心に信仰されている神だ。シウを信仰するドワーフが作成する純度の高い銀貨のためシウ銀貨と呼ばれている、その銀貨を一枚袋から取り出し、袋を女に返す。

「やったね兄貴! これもセーナル様の導きだな!」

 会話を盗み聞きしてたのか、モップで床を掃除していたレイが親指を立てながらロイに声を出す。その声が聞こえて自分がはっとなると同時に、店の中から他の脚からの笑い声が上がる。幸い、店の中にいる脚の殆どが顔見知りで常連ばかりで。少しばかりレイが怒鳴ったり暴れたりしても問題はない。

「仕事中だ馬鹿やろう! お小遣い削るぞ!」

「兄貴の鬼! 悪魔!」

「酷いぜロイ!」

「もっと弟には優しくしろよ!」

「ショタっ子ハァハァ」

「お前ら……! あと最後のやつだけは今すぐ消えろ。ウチの悪ガキの情操教育に悪影響だ」

 暖かい雰囲気の中、新たな笑い声が生まれる。カウンター前に座っているすみれ色の髪の女だ。コーヒーを下に置いて軽く笑うと、またコーヒーを一口含み、

「いや、悪いな。まるでコントを見てるようでな」

「コントって……」

「いい兄弟じゃないか。君の事を心配して声をかけたのだから」

「……まだまだ子供ですよ」

 弟を認めてもらえたようで、少しだけ心が暖かくなる。

「おっと、自己紹介を忘れてたな。私の名前はネロ・ライバー。こっちの」

 未だにパフェに夢中なリリィの頭に手を乗せる。

「小さいのが睡魔族のリリィだ。私の使い魔だ」

 使い魔、それはつまり魔術的つながりによって双方への利益を基にした契約。魔術と『何か』のつながりによって形成される絆のようなもの。この魔人は使い魔を持てる程度には高位の術者、と言うことなのだろう。

 リリィが頭に乗った手の感触が何なのかと視線を持ち上げると、ネロはただ笑顔と共に頭を優しく撫でるだけだった。

「美味しいよ!」

「あぁ、知ってる。少し食った」

「何時の間に?!」

「ふふふ……分からない? 分からないか? でも教えない。何時食べたか分からず悶々としてるが良い……!」

「うぅぅぅぅ!! ご、ごしゅじんさまやるぅ……!」

 リリィが頭を考えに酷使してるのか両手で頭を押さえ、目を瞑りながら必死に考えるが、その隙に手から離れたパフェを強奪しそのパフェを食べ始める。

「まだまだだな……」

「そこまでして食いたいのか……」

「分かってないなぁ……奪って食べるから美味しいのだぞ?」

「あぁ! 私のパフェ!」

「ほれ」

「半分になってる?!」

「修行がたりん」

「つ、次は負けない……!」

 既に次回があることに驚きだが、慣れた様子を見るとこれももう何度か繰り返しているのだろうと、そう思いながらも目の前の存在を再度確認する。魔人とその使い魔。それでいてそれなりに身なりがよく、加えてお金も余裕があるのに何故か今朝行き倒れていた。

 うん。まったく分からん。

 だがその詮索するような視線に気がついたのか、ネロがおや、と言葉を漏らす。

「―――私に惚れたか」

「いいえ違います」

 即答。からネロが体の動きを停止し、やっぱりか……と声を漏らす。やっぱりと言うのならば何故聞いたと聞きたくなるが、相手はまだ初見の客、また来る機会があったら―――

「傭兵だよ」

「え?」

「私は傭兵だよ。仕事を探しにこの国へ来たんだよ」

 ロイの疑問はネロの言葉によって答えられた。傭兵、それはつまり王国や軍団、戦闘をすることの出来る組織に属して報酬の代わりに戦う職業。あの袋の中身が全て報酬で手に入れたものだとしたらそれなりの実力者だと言うことが伺える。もしくは、かなりいい仕事を最近貰ったのだろう。だが、

「今ここへ来ても仕事は殆どないと思うぞ」

 グルーノの周りは小国が多くあるが、横のつながりを強化することで凶悪化する魔物に対処してきた。軍隊の練度も高く、近辺の魔物も粗方掃討されているために傭兵としては仕事がないはずだ。特に隣国の『ユークリッド』は別国勇者の血縁者が来てたりと戦力的には高い。もし仕事を探しにこの国へ来たとしたら、ガセネタをつかまされたとしか言いようがない。それを短くまとめて説明すると、

「うーん、そう言われてもねぇ……匂うんだよ」

「匂う?」

「あぁ、戦の匂いをかすかに、空気に感じるよ。まだ始まる前の、まだまだ生まれる前の……これは惨劇の匂いだ」

「……不吉なことを言うなよ。宰相が変わってこの国は豊かに、安定してきているんだから」

 ほんの数年前だが、この国は宰相が変わった。前の宰相もそれなりに凄かったが、この宰相はさらに凄かった。魔物に対する脅威に対して適切な指示、外交に対する腕前、政務に関してはもはやグルーノでは必須といわれるほどに人物となっている。そんな政務の鬼とも呼ばれる人物がいるのに、戦争が起きるのはおかしい。

「ふーん……政務の鬼ねぇ。こう見えてこういう予感とかは外した自信がないのだが。……まぁ、そこまで民の心を集めたって宰相の名前聞いたことがないのだがそれで、どんな名前なのだ?」

 そこでロイは言った、この国、グルーノの新しい宰相の名前を。

「マニホルド=エスティ」

 ネロの瞳が、妖しく輝いた。


名前:ネロ・ライバー
レベル:???
称号:腹ペコ魔人
主武器:???
予備1:???
予備2:なし
防具:旅人の衣
装備:???
戦闘スキル:
???・???

状態:満腹
HP:2800/2800
MP:360/360
TP:410/410
FS:100/200
攻撃力:639
攻撃回数:50
防御力:319
防御回数:50
魔法攻撃:331
魔法防御:327
肉体速度:37
精神速度:37
攻撃属性:???
防御属性:???

発動スキル:
連携Ⅲ―――味方の攻撃に続けて攻撃すると、ダメージが増加する。さらに続けば、増加効果は累積する。
見切りⅡ―――攻撃を受ける際に、確率で発動。敵の攻撃を完全回避する。
先手Ⅱ―――戦闘開始時に確率で発動。開始時の硬直フレームを0にする。
主従の絆―――パーティ内に『主従の絆』を所持しているユニットが複数いる場合、所持者の攻撃力と防御力が10%上昇



名前:リリィ
レベル:???
称号:腹ペコ使い魔
主武器:みけねこぐろーぶ
予備1:???
予備2:なし
防具:青いドレス
装備:???
戦闘スキル:
???・???

状態:満腹
HP:961/961
MP:226/226
TP:152/152
FS:100/200
攻撃力:269
攻撃回数:25
防御力:129
防御回数:25
魔法攻撃:201
魔法防御:189
肉体速度:23
精神速度:23
攻撃属性:???
防御属性:???

発動スキル:
即死Ⅱ―――攻撃時に確率で発動。敵を即死させる。 ボスには無効 。習得レベルで発動確率が高くなる。
努力家Ⅱ―――迷宮時は1歩毎に経験値獲得。戦闘時は獲得経験値が I:1.2~V:2.0倍。
飛行能力―――戦闘時に常に飛行状態になり、一部の攻撃に対する耐性が変化。
魅了無効―――自身に対する効果パラメータ『魅了』を無効化。
主従の絆―――パーティ内に『主従の絆』を所持しているユニットが複数いる場合、所持者の攻撃力と防御力が10%上昇
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| 神殺しで戦女神な物語 | 13:44 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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| | 2012/07/16 14:56 | |















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