陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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試練 ―――ナスティー・クリーチャー

推奨BGM:Dumme Marionette


「アレク……!」

 何やらアレクが援軍を連れて登場した。この絶望的な状況に一石を投じられるかもしれない。しかし、彼我の戦力差は圧倒的で、すくなくとも一般プレイヤーが数人増えただけではどうしようもない。最低でも自分レベルの強さか、もしくは普通から”外れている”存在でなければベイに攻撃を中てる事さえ不可能だ。いや、戦場がベイの独壇場と化している時点で勝機も糞もあったもんじゃない。

「逃げ―――」

 そのまま逃げろと言おうとしたところで、

「はぁ? なにお前、俺に逃げろつってんのか? おいおい、水臭い事言うんじゃねェよ―――」

 返答したのはオレンジ髪の男だった。髪の色からして種族はおそらくサラマンダーだが、そのステータスは解らない。だが例えこのゲームのプレイヤーとしてハイエンドな性能をしていたとしても勝つことは―――

「―――俺達は死なねぇ。なぁ、そうだろうよ―――この会話にも飽きたよなあ?」

「っぐ……!?」


 瞬間頭の中を激しい砂嵐が吹き荒ぶ。いや、頭の中だけじゃない。視界が、見えるものすべてが砂嵐によって色を失って見える。今、何らかの真実に触れている気がする。同時にそれは理解してはいけない、ものすごい邪悪の様な気もする。あぁ、なんだろうこれは。凄い吐き気がするのに、それすら感じた事があるぞ。今、この瞬間、必死に生きている事が凄い嘘くさく感じる。だって俺は最初からこうなるって事を分かっていたから。いや。こうなる事を既に経験していたから。

「な、な、んなん、だよ……これ」

「BINGO」

 オレンジ色の髪の青年がニタリ、と嫌な笑みを浮かべる。その両手で赤いボールを掴んでいる。

「あぁ、そうだ。お前もそうだろ? デジャヴるんだよ。うるせぇんだよ。解っただろ兄弟? 俺達は死なない。いや、死なねぇんだよ。すくなくともこの無敵モードの最中はそうなんだよ。ははははは、こりゃあ最高だぜエリー! 訳も解らず頼ってたやつがいるぜこりゃあ!」

 エリーと呼ばれた女も手の中に赤いボールを持ち出す。おそらくだが攻撃系のアイテムだ。見た事がないから効果は―――いや、この光景も見た事がある。次は確か―――

「いいじゃない別に。ご同類ゲットって感じで少し楽しくなるんじゃない?」

 投げた。

「あ、先輩達! いる! 人がいる!」

 アレクが慌てる中、男と女が両手に握っていた球を投げる。勢いをもって放たれたそれは投げた先、ベイの周りの足場に触れると炸裂し、大量の炎を撒き散らし橋の上を炎で覆う。同時に出てくる非破壊物設定がこの橋が落ちないことを保障している。が、それでも炎は圧倒的な速度で広がりを見せる。

「遊佐司狼ってんだ。覚えなくていいぜ」

「いいぜェ、来いよ。しっかりと吸い殺してやる。あんまりペラ回すのもアレだ」

 燃え上がる橋の上で司狼とベイが対峙する。ベイの視線は完全に司狼へと集中していた。体中から杭を生やし、腕を振り上げ、

「逝けやヴァルハラァ―――!」

 再び腕の杭で、バルカン砲と見間違うほどの速度と量で弾幕を形成する。圧倒的弾幕量はこの場にいる誰にも真似のできない行為だ。常道を取るのであれば大きく横へ回避するのが常であるが、司狼がとった行動は狂気のそれだった。

「ッハ―――」

 前に進んだ。その速度は遅く、普通のプレイヤーのそれと全く変わりがない。なのに圧倒的弾幕の間の僅かな隙間に身を滑り込ませ、次の攻撃を確実に”感じ”、回避している。驚異的という言葉ですら生温い。ありえない。ありえないのだ。アレ程の密度を持った攻撃を回避する事は簡単ではなく、ほぼ不可能なのだ。それこそベイと同レベルかそれ以上の実力者でなくては。そしてそれだけ強い者はここにはいない。戒なら可能かもしれないが、螢でさえ無理な事を―――所々掠りつつも、司狼はこなしていた。

 ありえない。

 その行為の難しさは戦ったからこそ理解できる。

 だが、

「うっ、っく」

「キリト……?」

 倒れたリーファに近づき、ユイの勧めで余ったポイントで習得したヒールを使う。視界を覆う砂嵐は消えず、酷い……そう、デジャヴ。それが消えない。こうやってリーファを助けることも、ヒールを唱える事も、この後の展開も何故か見える。予想できる。それが勘なんて生温いものではないのはもはや理解できた。

 いや、理解させられた。

「よぉヴィルヘルム中尉! ウチの馬鹿が世話になってる礼だ、受け取ってくれや!」

 杭の雨を司狼は抜けきり、両手に握っているアイテム、炎を生み出す爆弾のそれを投げつける。何故そんなものを持っているかがそもそもの疑問だが―――とりあえずはありがたいのでよしとする。ほぼゼロ距離で爆弾を司狼は炸裂させる。爆発と同時に発生する炎はベイと司狼に襲い掛かる。

「今更下がるかよォ―――!」

 接近した司狼とその攻撃に対してベイは下がらず、腕による一撃を撃ち込む。今まで冷静に戦闘を進めてきたベイにはありえない行動だ。だからこそ、

「オン・ケンバヤ・ケンバヤ・ウン・ハッタ―――当たっても恨まないでね」

 螢が詠唱し、準備を整えた。

 詠唱の終了と同時に放たれた特大の炎、それは火球だった。ベイの司狼への一撃は司狼の回避によって終わるが、

「おおお―――!」

 橋から大量の杭が壁の様に出現し、火球からベイを守る。しかし火球は杭に当たったところで弾け、

 巨大な火柱として付近を飲み込む。

 だが―――ベイが現れるのを知っている。

 そう、この戦いは見た事がある。予想通りに進んでいる。理想的な展開に―――。

 なら、ここは、

「休んでろ、いいな? 自分にヒールをかけ続けるんだ」

「う、うん……」

 苦しそうにするリーファを少し離れた位置に置き、再び羅刹とダークリパルサーを構える。未だに吸精月光は衰えないし体力も奪われたままだが、

 不思議と今だけは何をしても絶対に死なない”確信”がある。

 あぁ、吐き気がする。

 だが、死なないだけでは勝利とは言えない。ここから、

「勝ちに行かせてもらうぞ!」

「おぉ、嬢ちゃんがヒントくれたしな、盛大に暴れようぜ兄弟」

「ハハハ、誰に誰が勝つだァ?」

 ベイの素早さがまた一段階上昇する。もはや視認すら難しい領域ともいえる段階にベイの速度は入る。だが、それでも

 俺と司狼は接近し、螢は火球を飛ばし、ベイを追い込む。

 肉弾戦を仕掛けられる人員が増えたために螢は無理に前に出る必要がなく、弱点のみを責める事が出来るようになり、そして俺と司狼のデジャヴは終わらない。忌々しいノイズは頭を駆け巡る。しかしそれのおかげでダメージを食らっても致命傷にはならない。

「リリース・リコレクション!」

 再び羅刹を解放し、刃にベイの姿を映す。が、瞬間ベイの姿が闇となって溶けて背後の出現する。背後から襲いかかってくる杭を事前に背中に回していたダークリパルサーで受け止めながら、司狼が爆弾を投擲する。それはベイと比べればあまりにゆるすぎる動きだ。故に、

「弾けろォ―――!」

 投げた爆弾に爆弾を投げつけ、空中で連鎖爆発を誘発させる。近い空間で連鎖的爆発が派生し熱を感じる。それは此方にはデータとしてしか反映されないが、システムを超えた理によって吸血鬼としての弱点を背負ったベイには致命の刃となる。

「ヒャーハハハハハァ―――!」

 炎を受けベイの肌が焦げる。そこに肉を焼く匂いが混じる。が、それも周りから命を吸い取っている事から回復を始める。螢程の火力を持った一撃でなければベイを倒すほどの傷とはならない。しかしベイは此方の相手をしながらも確実に螢の攻撃を回避している。理解できる。俺達の攻撃は受けても回復できる。だから受けても問題はない。そう判断されたのだ。避けきれないのなら受けるものと受けないものの選別をすればいい、と。

 なら、

「ジ・イクリプス―――!」

 記憶にある二刀流ソードスキルの中でももっとも攻撃回数が多く、そして威力が高いものを思い出し、発動させる。心意によってソードスキルは再現され、同時にエフェクトはそれをを表す現象へと変化する。

 鮮やかなコロナの爆発の様なエフェクトは、

 炎へと変化する。

「ッセァ―――!」

 炎を纏った二刀をベイへと向けて叩きつける。斬撃を上回る速度でベイが動き、一瞬で連撃の射程範囲外へと移動する。瞬間羅刹の刀身にベイを映し、その存在を切断にかかる。が、それすら闇と同化し、別の場所で出現する事で回避される。が、

「気に入らねぇな」

 そこには司狼がいた。手に爆弾を握りしめ、出現した瞬間のベイの顔面を殴りつけ、自分の腕ごと吹き飛ばす。その衝撃で司狼の腕がダメージを受けて砕ける。が、すかさずヒールが入ってそれを修復する。

「あぁ、気に入らねぇな」

「なんだ、何がだって聞いてほしそうな顔だなぁ!?」

 未だに続くデジャヴの中、足元から生えてくる杭を紙一重で回避しながら一気に接近する。斬撃による攻撃をベイは回避し、切断による攻撃も姿を隠す事でベイは避ける。それでいて最低限のダメージ以外、全て回避しているベイに消耗はほぼない。

 駄目だ、負けないが勝てない。

 それでも、

「俺は俺の思い通りに進んでいる事が気に入らねえ―――」

「っは、なんだそりゃあ?」

「余所見厳禁よッ!」

 複数の火柱がベイを襲う。それを足の裏から杭を生やし、一気に体を跳ばす事でベイはあっさりと効果範囲内から逃げ出す。が、空中では身動きを取れない。

「ぶっ散れ!」

 刀身にベイの姿を映す。が、

「当たってやれるかよ」

 空を蹴った。何もない、何も存在しない空間をベイは蹴った。音速を超えるベイが空気を蹴った瞬間、大気が破裂するような音が発生し、あっさりとベイの動きは全く別方向へと向かって加速し、刃に映る範囲から離脱する。駄目だ負けない姿は見えても勝てる姿が見えない。

「どうすれば、勝てるんだ……!」

 思わず口から洩れた呟きに、

「あー……」

 反応したのは司狼で、

「なんで、そこまでは見えてねぇのか」

 少しだけ残念そうな顔を浮かべる。司狼は違うもの―――いや、見えているレベルが違う? この吐き気を―――

「準備オッケー!」

「行けます先輩!」

 ルグルー側の方から声がする。そちらに視線を向ければエリー、そしてアレクが何かを完了した事を司狼へと伝えていた。だが、

「馬鹿かテメェそんな大声で言えば解る事だろうがァ―――!」

 エリーとアレクへと向けてベイが杭を放つ。エリーとアレクは司狼の様な異常性を持っていない。そんなものは感じられない。故にこの杭が通れば企みは潰えて―――

「馬ぁー鹿、ワザとに決まってんだろ」

「ちょちょいのちょい」

 エリーの前にホロウィンドウが出現し、それに素早い指の動きでエリーが入力する。瞬間、エリーとアレクに杭が突き刺さ―――らない。一瞬でエリーとアレクの前に現れたのは壁だった。それも金属の壁。金属の壁を生成するスキルなど聞いたことがないが、

「橋をぶった斬っちまえよ!」

 司狼の叫び声を聞いて反射的に体が動く。これが勝利に必要な事だとデジャヴりながらも理解する。素早く刃を振り上げ、それを橋に叩きつける。破壊不可能な橋の理を心意が侵食し、強制的に破壊を促す。

「っち、テメェ―――」

 ベイが焦った様に動き出すが、

「あら、なにを焦ってるのかしら?」

 司狼やアレク、新たに現れた存在に気を回した結果、螢への警戒が和らいだ。その隙を狙い、跳んで逃げようとしたベイを螢が叩き落とす。橋の中央に、

 俺の一撃によって破砕された橋の下へと。

「テ、メェ……!」

「吸血鬼は流水も苦手だもんなぁ」

 落下するベイは螢の攻撃を受けてすぐさま復帰することが叶わない。故に弱点である地底湖―――何らかの手段によって渦巻いているそこに落とされる事は必然となっている。が、それは解決にならない。ベイの吸血の夜は消えていないし終わりもしない。この夜が存在する限りベイは無敵だ。叩き落とされてもまた這い上がってくればそれで終わってしまう。

「いいや、終わりだぜ中尉。おい、エリー」

「はいはい、これで終わり、っと」

 金属の壁が消滅する中で、エリーがホロウィンドウで何や操作する。

 ベイが落ちる地底湖から瞬間、巨大な影が現れる。その姿にリーファが声を漏らす。

「地底湖の、ヌシ……!」

 地底湖を縄張りとする巨大な魚龍は渦の発生する地底湖から勢いよく飛び出し、地底湖へと落ちるベイに向けて口を開ける。

「そんじゃあ湖底ツアーを楽しんで来いよ」

「はい、ボッシュート」

「テメェエエエエエエエエエ―――!!!」

 そして、ベイが地底湖の主に食われる。それを見てもエリーはホロウィンドウを操作する手を止めずに、

「ついでに体力自動回復不死設定、あとはなるべく遠くに行ってもらいましょうか」

 誰もが呆然と司狼とエリーの凶行を見る中で、

 ベイを飲み込んだ地底湖の主はそのまま地底湖の奥へと去り、

 そして夜の主が消えた事で夜が解除される。

「おいおい」

 そこで皆の視線を集め、司狼が両手を広げる。

「馬鹿正直に相手しなくてもいいんだぜ!?」

 そりゃそうだ。




綺麗なベイなんだ。不幸になれ。
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| 断頭の剣鬼 | 11:28 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

べ、べーイ!! ベイは犠牲になったのだ……。
ていうかさすが司狼さん。そうですよねー、相手にする必要性ないんですよねー。先に進めればいいわけだし。

| ろくぞー | 2012/09/09 11:46 | URL |

ちょ、後書きがひっでぇwww

| | 2012/09/09 13:35 | URL |

ハイッ(・∀・∩)!!
ヴァルハラ一つ頂きましたぁぁあ―――!!!(笑)

中尉ぇ、今後胃痛に苛まれる日々が約束されてるというのにこの仕打ちw
現実で妹さんに癒されて下さい(笑)
シロウさんここぞとばかりに出番奪ってったなぁ(棒

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/09/09 14:48 | URL | ≫ EDIT

ひでぇw

そして当然のようにチートを使う司狼達チートやん!チーターやん!

| おk | 2012/09/09 17:28 | URL |

ベイ中尉ーーーッ!?

まさかのボッシュートに笑ったwww

さて、次は誰が敵として出てくるのか?

| 尚識 | 2012/09/09 19:50 | URL | ≫ EDIT















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