陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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Night Without Sleep

 麻帆良という土地は様々な意味を持っている。一つはそれが世界でも稀に見る学園都市である事。日本中、世界各国から色んな人間が揃い、大学まで揃ったこの麻帆良で生活している。それが麻帆良が持つ第一の側面だ。第二に、これもまた世界有数だが、霊地としての役割を麻帆良は持っている。正確に言えば麻帆良ではなく、麻帆良中央にある世界樹が、だ。麻帆良の創設には霊地を、世界樹を守護するための意味も存在する。そして最後に、

 日本における西洋魔術教会の総本山としての役割を持っている。

 そしてこれが問題だったりする。

 大昔に関西呪術協会の土地だったらしいここをぶんどる形で西洋魔術協会は麻帆良を獲得した。もちろん血は流れたし恨みもある。それが何十年も前だと侮るなかれ。人間、特に神秘にかかわる存在とはかなり恨み深く、嫉妬深い。表向きは穏便に見える関西呪術協会も水面下では派閥争いや呪連打フィーバー状態。


 麻帆良は定期的に恨みを忘れられない呪術師に襲撃を受けている。そのため麻帆良は常に夜間警備の魔法先生をローテーションで回していて、大体の場合は無駄で終わったりするのだが、基本的に運勢は幼少の頃に使い果たしてしまっているのか自分の当番の日に限って結構襲撃が多い気がする。

 だから今夜も、

 頭の横を呪術による呪弾が通り過ぎる。触れたら死にはしないが、悪霊に異常に好かれるようになる、非常に厄介な攻撃だ。その場で死ぬ方がまだマシと言える具合の能力だ。厄介な事この上ないが、

「ごめんそっち行った!」

「当たってないから大丈夫ー」

「君たちは! 僕が! 大変なのに! 余裕そうだね!」

 俺の前には二人の男がいる。一人は年の若い教師、年齢が近い事もあって割と意気投合している瀬流彦先生、そして前線で鬼を十数体相手にナイフと銃で戦っている褐色の男がガンドルフィーニ。瀬流彦が警護向けの防壁系の術を得意とすれば、ガンドルフィーニは近接系の能力を得意としている。そして俺は―――

「よし、まとめたぞ!」

 ガンドルフィーニがまた攻撃を回避し、敵を一点に集め終わる。それがガンドルフィーニの役割りだ。十数体を一か所に郵送したところで無詠唱で風の矢を瀬流彦が放つ。一体を強固に抑えるものではなく、広い範囲に短い間でもいいから足止めする、そんな攻撃だ。だがそれで前座は完了した。

 左手に握った炎の剣を振りかざし、

「無間焦熱地獄―――そぉい」

 剣を軽く振るう。

 それだけで夜空に炎の柱が立った。最低でも百メートルほどの高さにまで伸びた火柱に飲み込まれた鬼たちは思考する暇のなく蒸発しただろう。空高く伸びた火柱を見上げながら、

「この火力はどうにかならないのか?」

「それはこっちのセリフだ!」

 荒い息を吐き出しながらガンドルフィーニと、そして瀬流彦が近づいてくる。

「アレ、もう少しで飲み込まれるところだったぞ!」

「あぁ―――触らない限りは熱が伝わらない仕様なんでセーフだな」

「もう少し火力を押さえろ火力を!!!」

 グイ、っと顔を寄せられるが同性愛者でもないのでガンドルフィーニの顔を抑え、それを押し掃う。その光景を瀬流彦が軽く笑いながら見ている。

「何時もの事だけど派手だね、藤井君」

「一応最低出力で使ってるんだけどねぇ……」

 子供の頃は深く考えず受け取ったものだが、今更ながら我が孤児院の経営者集団はキチガイ集団だと気づかされる。どこの世界にガキに街一つ片手で滅ぼす様な術を継承させるんだ。正直な話、焦熱地獄以外はどれもこれも見境がなさ過ぎて使えるどころじゃない。触ったら死ぬとか見たら腐るとか使えないよ。一生使えないよ。遊び心で使ったらどうするつもりだったんだよ……。

 一番安全なので絶対回避とか何かがもうおかしい気がする。

「君は改めて普通の魔法を使うべきだよ……」

「まぁ、生活する分には普通の魔法使えるんだけどなぁ、こっちに慣れすぎて……魔法の射手使っても”うお、なんだこれ? 超みみっちぃ”的な印象になってきてなぁ……」

「君は今中級魔法を使えない魔法使いに喧嘩を売ったよ?」

 そりゃあ仕方がない。こんな性格になったのも基本的教育がいけない。そう、だから、俺はあの人たちにまた会いに行かなきゃいけないんだ。やはり今の自分を成すこの根幹だけは何時までも揺るがない事を再認識すると、

「あ……」

「あー」

「結局徹夜か……」

 空がやや明るくなってきたのが解る。夜明けが近い。結局戦闘にかかる時間はそうでもなかったし、鬼を送り込んできた術者も全く不明。結局いつも通り適当な襲撃を適当に撃退しただけで麻帆良の夜は終わってしまった。あぁ、何て事だろう……

「この後何時間眠れるかと思うと軽く憂鬱だな……」

「うわぁ、考えたくなかった事を……」

「娘の送り迎えがあるし、今朝も大変だなぁ……」

 勝利とは結構空しい。特に勝利しても特別手当が出るわけでもなく、休みが貰えるわけでもない。そんな”献身的”な労働者にとっては本当に空しい。

「もうそろそろこの撃退時はボーナス貰うか次の日は休みでいいんじゃね俺ら?」

「いやいや、魔法使いとして―――」

「―――だけどそれって俺たちの健康をがりがり削ってますよね?」

「ぐぅ」

「実際問題、夜勤明けってきついよなぁ……」

「疲れだけは魔法じゃ取れないからねぇ……」

 勝利の後に残るもの―――それは疲労と現実だけだ。
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| 短編 | 23:53 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

 んー……司狼の力は受け取ってないのかな……? あれ使えば式紙なんて一瞬……いや、あんなもん知られるのはマズいか……それ以前に他のと反発しそうか。

| サツキ | 2012/09/07 09:11 | URL |

いったいどこからどこまで継承してるのだろう(苦笑

基本的にヌッコロす事に特化した術ばかりだから、式神はともかく、対人戦は相手にご愁傷様としか言えない(笑)
あ、足引きばb―――もとい、合法ろr――でもない。無限黒縄なら殺傷能力低いのか? 比較的?

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/09/07 15:21 | URL | ≫ EDIT

無間焦熱地獄が最小火力って・・・。
ルサルカのは駄目なのか・・・?
物理存在相手じゃないと使えないなら仕方ないが。

| 断章の接合者 | 2012/09/07 17:54 | URL | ≫ EDIT















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