陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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試練 ―――ノウ・アバウト・マイセルフ

推奨BGM:Kriegsschaden
*1推奨BGM:Sol lucet omnibus


 力とはなんだろう。

 それ自体に意味はない。それに意味をつけるのは人間だ。欲しがるのも人間だ。武装する事で、鍛える事で、買う事で、与えられることで―――そうやって力を得る事は出来る。方法もその活用法も、存在する意味も人によって違う。

 だったら、

 俺が力を欲する理由はなんだ……?

「ォ―――」

 よく意味が解らない。正直戒と螢の言っている話は複雑すぎるというか、抽象的過ぎてあまり上手く伝わってこない。もう少し落ち着いて会話はできないのだろうか。いや、だが、戦って勝たないと進めないし、話もできない。

「ォオ―――」

 だったらどうする。力を求めるか。更に心意を滾らせるか。サイアスの様に、戒の様に、心を、理想を、渇望で現実を侵食するか。それが正しい事だと信じ込んで現実を否定するか。それが、それこそが力を得て先へと進む明確なイメージだ。だからそれが何よりも必要なようで―――

「ォオオ―――」


 でも、それでも、戒と螢の言葉はしみこむように頭の中で響く。無視してはいけない。このまま本当に剣を振っていいのか。そんな疑問が生まれつつある。そもそも俺の剣はSAOを、アインクラッドを終わらせるために振るい続けて来た剣で、仲間を、友を斬る為の剣じゃない。

 だけど今戒は、螢は俺の前に敵として立ちふさがっている。よく意味の解らない理論を振りかざして邪魔してくる。ならこの二人は敵なのか? いや、違う。違うはずなんだ。だから刃を向けちゃいけない、だけど剣を振るわなきゃ前に進めない。だからと言って二人を本気で切りたいわけでもない。いや、だったらなぜ俺は心意を使えた。そこには明確に”殺す”意志があったからだろう? ヒースクリフと戦った時の様に。

「ォオオオオッ―――」

 解らない。血が流れすぎて頭がぐるぐるとまわりだす。視界が定まらない。考えが、声が、記憶が、するべきことが一気に頭を駆け巡る。それが煩わしくて、

 とりあえず、

「ォオオオリィヤアアア―――!!」

 額を地面に突き刺した剣の柄に叩きつけた。


                           ◆


 瞬間全ての動きが停止し、

「痛っ……!」

 額が割れんばかりの痛みと衝撃を受けて一気に仰け反り、額を押さえながら後ろへ倒れる。額を抑える手は血で濡れている……つまり俺もこんな非現実的な現象を起こせるようになっているのだ。だが今は、まず、

 草原に背中を向けて倒れる。

「痛ぇ……」

 誰もが黙ってこの状況を見る中で、額を押さえながら思う。痛い。そう、痛いんだ。斬られれば痛いし、斬ったら相手が痛い。そして衝撃を頭にぶち込んでちょっと頭が冷えた。そして思考する。これでいいんだと。

 と、

「ぱ」

 ユイの声が聞こえる。

「パパ元々どっかおかしかったですけどついに頭が壊れました!」

 どうやら意外とウチの娘は余裕らしい。こんな状況でも冗談を言える胆力はどこから来たんだ? いや、確実にアスナ似だな……。

「ふざけているのかい?」

 状況は変わらない。目の前には圧倒的力を持った戒がいて、得物を持っている。それは既に振り上げられていて、いつでもこっちを殺せるように構えている。何故か真っ先に殺す事しか思いつかなかったが今、こうやって”ガス”を抜いて、やっと冷静に考えられるようになって―――おかしなことばかりだ、と気づかされる。

 だから両手を広げて仰向けになる。

「やーめた!」

 大地に身を投げ出した状態から動くつもりはない。戒も武器を振り上げたままの姿勢で動く気配がない。そのまま冷たい視線を向けて、

「もう一度言うけど……君はふざけているのかい?」

「いいや、ガチだぜ? 俺ガチで戦うのやめた」

 だってさ、

「カインと……戒と戦う必要ないじゃん」


                           ◆


 戒と戦う必要はない。それが結論だった。よく考え、そして判断した結果―――とは言えない。こんな短い時間で覚悟を決めるとか完全に正しいと判断するとか、そんなの不可能に決まっている。だから今ある判断材料で状況を吟味し、自分が”信じる”に値する選択肢を取る。そういう話だ。だから俺は戦うのを止める。だって、そう。俺にはこの二人と戦う理由はないんだ。こうやってボコボコにされて血を流して頭が結構くらくらするけど、今の一撃でいい感じに考えられるようになってきた。もしかしてヤバイ状態なのかもしれないけど、

「確かに俺戒と一回か二回ぐらいしか会ってないだろうけどさ。一緒にアインクラッドから脱出しようとした仲間じゃん。そりゃあさ、立場ってもんはあるよ。黒円卓がどんな組織かは俺知らないし、何か大変で多分俺と戦えって言われてるんだけど―――でもそれって俺が戦う理由にはならないっていうか……」

 ここら辺は言葉にするのは難しい。感覚的な問題で、言葉では表現のしにくい部分だ。そう、なんというか今の戦いは―――

「―――なんか、俺らしくない」

 あえて例えるのならそれが正しい言葉だと思う。

 俺らしい、俺のスタイル。俺のやり方。俺の流儀。俺の矜持。

 そんな風に”自分”を表現する方法じゃないと思う。戦いは。それなのに何時から俺はあんなバーサーカー思考になった。リアルに戻ってからは直葉の剣道の相手をした一回以外は武器を握らないかった。というよりも再びVRゲームをするつもりも、武器を握るつもりもなかった。

 なのに、何故か、

 異常に好戦的な自分がいた。

 初めてALOへ来てリーファを見つけた時もそうだ。話し合うよりも早く挑発した。シグルドの時も無駄に挑発して襲ってくる様に仕向けた。確かに俺には挑発的な部分はあるけど―――そこまで好戦的になった覚えはない。

 だから、

「やめた。戦わない。野蛮すぎる。もう少し文明的に話し合おうぜ」

 全身から血を流しながら倒れた状態で、武器を振り上げていつでもトドメを刺せる戒を見る。その目から感情や考えを読み取ることはできない。まるでヒースクリフの様だと思う。

「君はつまり―――」

 戒が口を開き、

「―――このまま殺されても文句がないと言うんだね」

 いや、それはめちゃくちゃ困る。

 だけどリーファとユイの手前、絶対に醜態をさらす事は出来ない。

「応!」

「ならそのまま死ぬといい」

 そして黒円卓の聖槍が振り下ろされた。


                           ◆


 高速で振り下ろされる黒円卓の聖槍だが、まるでスローモーションで迫ってくるように見える。それに込められた力から戒には一切の躊躇も止める気もないのも分かる。このまま回避や防御をしなければ激突コースだ。頭の中で何かが殺せ、戦え、迎撃しろとつぶやいているような気がする。

 だけど、

 戒が敵ではないと、

 ”根拠のない自信”を持って信用する。戒なら絶対俺を殺さない。そんな確信を持って振り下ろされた刃から目をそらさず見続け―――消える。

 体を両断しようと皮膚に触れる直前で刃が喪失する。現れた時と同じように唐突に存在が、質量が、そして圧倒的威圧感の全てが消え去る。もうそこに殺意を漲らせる刃はなかった。代わりに、

「君は本当に馬鹿だね」

「開口一番がそれかよ……」

 手にポーションを乗せて、此方に差し出す戒の姿があった。その様子は呆れの表情が強い。草原に倒れたままポーションを受け取り、それを飲み干す。一瞬で体中の傷が消え去り、体が楽になるのを感じる。服に付着していた血も戦闘が終わり消え始める。システムには設定されていない、面白い現象だと思う。だがとりあえずは、

「合格?」

「ギリギリ及第点って所ね」

 武器を消した螢が近づいてくる。手を差し出してくるのでそれを握り、立ち上がる。体についた埃を叩き落としながら見る二人の姿に戦意はない。とりあえずはギリギリ及第点を取れたことにほっとする。これで間違いだったら死ぬ羽目になっていた。とりあえず最初は

「久しぶり戒」

「うん。久しぶりだねキリト君」

 先ほどの戦いが嘘だったかのように穏やかな笑みで話しかけてくる戒はそのあと苦笑し、軽く頬を掻く。

「ごめん―――とは言わないよ。僕たちもただ仕事だからやっているわけじゃなくて、それなりに考えがあってやっているわけだからね」

「それは何となく解ってた」

 本当に職務を遂行するためだけだったらあそこまで訴えかけるような言葉は必要なかっただろう。この二人は何かを伝えるべくして目の前に立ちはだかった。そう判断するのが正しいのだろう。

「パパぁー!」

「お? わぷっ」

 声のした方向へ振り向いた瞬間、顔にユイが張り付いてくる。涙目になりながらも頬に顔を摺り寄せてくる姿に謝りつつ背中を撫でる。さっきは余裕そうだったが、そうでもなかったらしい。あの状況で強がれるとは流石俺達の娘……という思考は若干親ばかすぎるのだろうか。

「あ、あははは……ごめん。腰が抜けちゃった……」

 リーファはそんな事を言いながら尻もちをついていた。確かに腰が抜けても仕方のない状況だったが、さて、

「戒」

 戒の方を見る。トバルカインではなくリアルネームの戒を態々名乗った男と、その妹。

「もちろん文明的な人間らしく話し合えるんだよな?」

「あぁ、もちろん」

 戒は頷き、

「そのために僕と螢はここにいるんだからね」


                           ◆


「まず最初に言っておくことがある」*1

 戒が少しためらうようにし、

「明広君は―――もう二日も持たない」

「……はぁ?」

 明広、明広と言えば最上明広しか知らない。彼の状態がどんなものかは聞いている。あまりいい状況だとは言えないが、数日でどうこうなるような状態だとも聞いていない。

「おい、それって―――」

「いいかい」

 戒が言葉を遮り口を開く。

「よく聞くんだよ? 今、明広君が黒円卓の副首領の代行として―――ALOにおける作戦の指揮権を持っている。日本にいる団員は全員彼の指揮下にある。そして彼は命令したんだ。……―――”キリトを全力で迎撃せよ”と、ね」

「……え?」

 キリトを全力で迎撃せよ? いや、今の話はツッコミどころ満載だ。ちょっと待て。サイアスが―――明広が副首領? 代行? 俺の来訪を予想していた? いや、それよりも何で意識を持ってALOにいるんだ。無気力状態で誰にも何にも反応しない状態じゃないのか? 問いたい事はたくさんあるが、

「先ほどの戦闘の問答、アレは全部言ってくれと頼まれた事なんだよ」

「……」

「―――理解できない事は罪と言わない。だけど無知で通す事は立派な罪だと思う。話を聞いても”七割方”しか理解できなかったけど、憶測を交えれば彼の伝えたかった事は大体解る」

「戒、言っている意味が」

「解らないだろうね」

 戒は困ったように苦笑する。だけど言葉の意味を教えてくれる様子はなさそうだ。色々と腑に落ちない点はあるが、今は黙って戒の言葉に耳を傾ける。これを逃す事は出来ない。しっかりと聞かなくてはいけない。

「僕たちは基本的に命令には忠実だからこの先、他の団員にも襲われる筈だよ。君が知ってる名前で言えばベイ中尉とかマキナ卿とかね」

 その名前を聞いてげんなりする。戒クラスの化け物をまだまだ相手にする必要があるって……しかし、

「んじゃあさ」

 と言葉に割って入って、

「何で戒は手伝ってくれるんだよ? 命令で俺を倒さなきゃいけないんだろ?」

 全力で迎撃せよとはもちろんその言葉の通りだろう。全力にて俺を打ち倒せ、そういうことだ。なのに戒も螢も力の全てを発揮している様には見えなかったし、本気にしては急所を外しすぎている。どうも全力とは思えない。

「あぁ―――それが僕達兄妹が決めた友情の示し方だからね」

「友情?」

「そう、友情だ」

 明広に対する友情、なのだろうか。

「正直今回の件に関しては色々と思う事があってね―――馬鹿正直に従うだけが全てじゃない。軍人としては確実に失格でザミエル卿辺りに烈火の如く怒られるんだろうけど、まぁ、命令違反の一つや二つで友達の命が救えるのなら僕はそれでいいと思っているよ」

 そう言った後戒は螢に視線を向け、彼女が言葉を引き継ぐ。

「彼を死なせたくないのよ。失いたくないの。でもそれが、私たちでは誰もできない……だからあなたの持つ可能性に賭けるのよ」

 俺の可能性?

「そう、可能性よ。彼はね、貴方を全力で迎撃しろって言ってるけど―――確実に自分の元まで貴方が到着することを確信しているわよ。そのためのこの人選と配置なんでしょうけど」

 多分、こうやって手を抜いていることも見透かされているんだろうね、と戒は困った様に言う。ただ、と言葉を付け加え、

「最後に君が勝った場合の伝言を受け取ってるけど聞く?」

「もちろん」

 そろそろ泣き止んできたユイを持ち上げて肩の上に乗せる。依然顔に抱きついているが、少しは安心できたようだ。

「―――”世界樹まで来い。お前にアスナと会う方法を教えてやる”って言ってたよ。なんだか急に偉そうにしてね」

 悉く行動を予想、いや、先回りされている。戒と話し合っても謎は解決するどころか深まるばかりだ。死期の近い明広、不明瞭な命令、襲撃する黒円卓、読まれる行動、囚われのアスナ。そのすべてがどこかで繋がっているようで、その一点が見えない。まだ情報が足りない。

「彼の置き土産は極力抜かない方がいいわよ」

 螢が忠告してくる。

「聖遺物は所持しているだけでその特性が持ち主を侵食するわ。その大太刀は彼の怒りや闘争心、殺意が大きく込められているわ―――まぁ、持っているだけなら性格が少々荒っぽくなる程度かしら」

「あー、なるほどね……」

 だから何となく好戦的だったのか。本当に厄介なものを残してくれた。この件に関しては元凶様を一発殴らないと気が済みそうにない。

「ま、僕が出せるアドバイスはこんな所だよ。あとはそうだね。こんな風に裏切って友情を示すのは僕たちぐらいだよ。正直他の団員はこんなことをしないから、本気で勝つことを考えないと殺されるよ?」

 殺す殺されない等とかなり不穏な話をしているが、それが嘘ではないと既に経験済みなのでなにも言えない。大きく溜息を吐き出し、これはまた面倒な話になっているな、と心の中で嘆息する。どうしてこんな複雑な事になったのだろうか。

 俺はただアスナに会いたいだけなのに。

「さ、もう行くといいよ。時間は有限で、彼の命のリミットも待ってくれないからね」

「あぁ、悪い……リーファ、立てるか?」

 尻もちをついたリーファがコクン、と頷きながらなんとか立ち上がり、体を軽く動かす。どうやら大丈夫そうだ。

「世話になった、って言うのもなんだか少しおかしいかもしれないけど、助かった。とりあえず色々と考えさせてもらうよ」

「うん。それがいいと思うよ。とりあえずこの先は更に過酷になっているはずだから頑張って」

「それじゃあ私たちはここまでだけど、後は頼んだわよ」

「……何を言っているんだい螢?」

「え?」

 去ろうと思った直後、戒の言葉に全員が停止し、

「もちろん螢も一緒に行くんだよ?」

「ちょっと待って兄さん!」

「いや、明広君の事が好きならここは―――」

「兄さん!」

 あ、リーファが怯えてる。

 軽く始まりつつある兄妹喧嘩を眺めつつ、これはまた一筋縄ではいきそうにないな、とどこか否定したい気持ちと共に思う。




久しぶりにやっちゃった感。若干こじつけじゃないかなぁ、と心配な部分が
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| 断頭の剣鬼 | 09:22 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

小説や漫画にこじつけなんてよくある事だってエロイ人が言ってた!

そして出会って早々特に出番のないリーファェ・・・

| おk | 2012/09/05 11:09 | URL |

屑兄さん、あんたナニやってるんだ……GJ!(≧∀≦)b
阿ホタルの苦悩が目に浮かぶようだ(笑)

まあ、仮に加入したとしてもマキナとか大隊長クラスは苦戦必須だけど(苦笑
それでも出目が僅かにでも上がるなら

てか、弟君何時まで待てばいいんだろうか(笑)
再会一番のセリフが楽しみです

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/09/05 12:28 | URL | ≫ EDIT















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