陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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試練 ―――クリーク

推奨BGM:Holocaust


 高速で最初に踏み出すのは―――俺だ。

 早く。相手よりも早く踏み出し攻撃を打ち込まなくてはならない。

 先手必勝。

 一撃必殺。

 その意思の元攻撃を繰り出し終わらせなければ倒れるのは俺だ。あの時のサイアス、そしてヒースクリフとの戦いを経験したからこそ理解できる。この女、櫻井螢はあの時のサイアスに若干劣る程度の実力で、カイン―――櫻井戒に関しては、純粋な剣術であればサイアスよりも遥かな高みに存在している。もしこの世に才能に愛された存在がいるとすれば、この男をそういうのだろうと思う。だから一瞬の慢心も隙も見せず余力も残せない。一番最初の一撃で戒を落とせなくては、この先に勝機は存在しない。

 だから、

「ォオオオオ―――!!!」

 羅刹、そしてダークリパルサーにエフェクトの光を灯す。その名を証明するような闇を祓う白い閃光がダークリパルサーを包み、血を想像させ恐怖を感じさせる色の光が羅刹の刀身を包み込む。ここはアルヴヘイム・オンライン―――妖精郷なのかもしれない。だが、同時にここは剣の世界、ソードアート・オンラインでもある。レクト・プログレスがこの世界をソードアート・オンラインのコピーサーバーで作ったのなら、


                           ◆


『―――書き換え(オーバーライド)。心で強く渇望する事を現実として、書き換える、それだけだ』


                           ◆


 できる。この世界は茅場晶彦が描いた理想郷の続き―――できないはずがない。あの日、あの場所で感じたものを、さらに先へ進むように力を振り絞り、勝利のイメージだけを増幅して力に変え、全身全霊の一撃をカイン、いや、名乗ったのだ。ならば相手は”戒”だ。文字通り全霊の剣を戒へと放つ。

「落ちろォォオオオ―――!!」

 最短で最速を行う。それこそが最大限の効率を弾き出す為に必要なコツ。動きはコンパクト、しかし鋼鉄すら粉砕する斬撃の一段目は―――

「温い」

 感情の篭らない声にあっさり弾かれた。異常な大きさを誇る大剣、黒円卓の聖槍。そう呼ばれた大剣はダークリパルサーを上回る速度で動き剣を弾いた。しかし、二段目がほぼ同時に迫る。タイムラグは刹那。しかしそれだけズラせば攻撃の対処には難しい。ギリギリ一撃で同時にはじけず、硬直で再び動かすのには難しい刹那。それを、

「誰が彼に剣を教えたと思ってるんだい」

 硬直などと言う概念を軽く振り払い刃を返す。重量等最初から存在しないと言わんばかりの速度で剣を振るい羅刹とも打ち合う。弾かれたダークリパルサーと羅刹を伝って手に軽い痺れを感じる。たった二合、たった二合切り結んだだけで手は痺れを感じていた。それだけで目の前の男がどれだけ異常な身体能力を持っているかが分かる。だがここで攻撃をやめるわけにはいかない。

 硬直を無理やり筋力だけで無視し、刃を再び超高速で振るう。その全てを戒へと向けて、反撃する隙間もなく、面を制圧するように斬撃を繰り出す。もはや正規のシステムエフェクトは完全に置き去りにされ、攻撃を繰り出した一秒後に発生するほどの高速の切り合い。だが、

 戒は片手で刃を握りいなしていた。

 衝撃的な光景だ。思わず自分の心が折れそうになるが、

 ……負けない……!

 心が折れてしまえばその時点で心意は消えてしまう。羅刹、ダークリパルサー共に凶悪な得物だ。それでも、心意の力なしで戒と渡り合える気はしない。だから心の全てを込めて、

「負けない……!」

「立派な言葉だね―――」

 心意の輝きをさらに強化し、それを振るう。黒円卓の聖槍に傷は付かないしその動きに揺るぎは出ない。力の差が圧倒的過ぎる。川の魚が津波に逆らえないように、圧倒的激流の前では力がなければ絶対的に無力だ。ここで、圧倒的な技量差―――ではなく、地力の差が露出していた。

「―――力がなければそんな物、意味がないのよ」

「がっ」

 タイムリミット。

 戦闘の早期決着、いや、戦闘に勝利する可能性が螢の介入によって一気に消え去った。一対一なら相手が慢心か油断してくれればまだ生き残る可能性はあったかもしれない。だが駄目だ。

 螢も戒も、どっちも殺す気で戦いを仕掛けている。

 どう足掻いても未来は死で確定している。

 それでも、

「負けられないんだよ!!」

 そうだ。負けられない理由があるんだ。どうあっても負けられない。理屈だとか確立だとか実力だとか……そういうのは正直どうでもいい。そんな事を最初から考えているのだったら戦いから逃げている。戦わなくては道が開けないのだったら戦う。勝つ。絶対に勝つのだ。

「勝つんだよ……!」

 螢の蹴りを喰らって戒から一旦剥がされながらも背中の翅を広げ、飛行モードに入った瞬間に解除する事で体を一瞬で減速させる。その瞬間には螢が左側へと回りこんでいて両刃の剣を構え、それを振るう。

 羅刹とぶつかり合い、一瞬だけ拮抗する。

 ―――地力は……!

 同じぐらいか、いや、心意の影響によってやっと互角。そう理解した直後、黒い線としか見えない戒が接近し、黒円卓の聖槍を振るう。真正面から、叩き伏せるように振るう刃はまるで隙だらけに見え、その実、一切の隙が存在しない。回避の選択肢は螢が完全に封じてしまっている。

 避けられない―――。

 判断した直後にダークリパルサーを防御に差し込む。が、

 ダークリパルサーを超えて衝撃が体を貫通する。

「かはぁっ」

「パパ!」

 ユイの声が聞こえる。だがその声に答えるよりも早く、喉から血を吐き出す。懐かしい。こんな痛みを感じた。本当に懐かしい。おかげで、

 あの頃の屈辱が思い出せた。

「っる、っ、ぁ、あっ!」

 羅刹とダークリパルサーを大きく振るい、密着した戒と螢の姿を振りほどこうとする。その目論見は螢を振りほどく事で成功し、戒に密着されたままで失敗する。ダークリパルサーを振りぬいた懐に侵入され、

「キリト君」

「がぁ、っく!」

 戒の膝が鳩尾に突き刺さる。想像を絶する激痛が体を駆け巡る。浮かび上がる体を戒が吹き飛ぶ前に開いている左手で掴み―――鷲掴みした頭を地面へと叩きつける。その衝撃で大地が砕け、砕けた岩があたりへ吹き飛ぶ。

「あ、ありえない……」

 リーファの恐怖と絶望の声が聞こえてくる。その気持ちは良く解るが、まだだ。まだ俺の心は折れてはいない。だから、

「君は”本当”の挫折を味わった事がないだろう」

 地面に得物を叩き付け、自分の戒の周りだけさらに地面を陥没させる。その結果、頭と地面の間に隙間が生まれる。作った瞬間に体を束縛から逃し、即座に二刀を振るう。が、一瞬で加速し、接近した螢の刃に攻撃の始動を潰される。その動きは動きの始点となる場所を潰す事で物理的に動く事を許さない連続の突き―――見た事のある動きだ。

「君は一度でも敗北した事はあるかい?」

「あ―――」

 反射的に答えようとして、

「君が思う敗北は本当に敗北かい? 本当に負けた? 寸前で誰かに助けられなかった? 最後の最後で何故か逆転しなかったか? 不思議と力が沸いて来なかったか? 偶然出来たチャンスに活路を見出す事が多くなかったかい?」

 戒の言葉に黙らされ、螢に動きを止められ、

 そして戒の拳に殴り飛ばされる。

 顎に喰らった衝撃で体が軽く浮かび上がり、そのまま高速で吹き飛び洞窟の入り口の岩に衝突する。全身を打ち付けられた痛みの中、染み入るように戒の言葉が入り込んでくる。

「君は感じたことがないか、―――いける。なんとなくこうすれば回避できる。これはもしかして、そう、こうすればいい。根拠のない自信がいったいどこから溢れでているのか疑問に思った事はないのかい? 僕は根拠のない自信以上に怖い物はないよ。ねぇ、君はどうなんだいキリト君。君が負けないって自信はどこから来るんだい?」

 何か、恐ろしいものに戒が触れようとしている事を本能的に理解する。駄目だ。これだけは絶対に理解してはいけない。少なくとも”ここで”知ってはいけない。それを知ってしまっては今までの戦いが、いや、

 今までの人生、そしてこれからの全てが冒涜されてしまう。

「おおおおおおおおおおおお―――!!」

 咆哮で戒の声を掻き消し、洞窟の入り口を砕きながら体を動かす。全身から流れ出す血はどうにもただのエフェクトとは思えない―――今、この瞬間に、リアルの俺が血が流していても違和感はない。それだけリアルな痛みを感じる。だが、そんなもので折れるわけがない。

 心意の光をさらに引き出し、

「スターバーストストリーム!」

 限界を超えた速度の十六連撃を繰り出す。その一瞬で大地を砕き、空を断ち、そして星の光を斬撃として戒と螢に刃を届かせる。心意の力を得て星の光そのものとなった刃は理論的に人類が到達不可能な速度に―――光速に到達する。人類が未だ到達できない速度を―――

「―――千早振る 神の御末の吾なれば 祈りしことの叶わぬは無し」

 その言葉は何故か光が届くよりも早くつむがれた。ゆっくり、謳うように放たれたはずの言葉なのに、まるで空間が歪むように、完遂された。その直後に届いた光は全て、

 一瞬で腐り散る。

 刃を振りぬいた状態で立つ戒は視線を俺の目に合わせ、

「君は―――そんな状態に甘んじるのかい?」

 今の言葉は”何故か”理解できないが酷く苛々する。違うと叫びたいが、何故か出来ない。その代わり叫び声をあげて、武器を構え、前に出る。脳が焼ききれる勢いで加速する。自分の限界がもはや認識できない。それでも構わず前に出る。心意の光を滾らせるが、これだけでは足りない。今はただイメージの延長上だけの話だ。

 もっと具体的な、何かを想像する必要がある。

 そう、それこそサイアスや―――先ほどの戒の様に、確固たる自分の狂信を心意として表現する必要がある。今のままではいけない。もっと早く、もっと強く―――

「どうするんだい? また受け入れるのかい?」

 完成しつつあったイメージが刹那、砕けたような気がする。

 螢が加速から剣を振るう。二刀を交差させて防御に入ることで螢の剣を押さえる。が、最初に戦っていた時と違い、螢の武器は炎を纏っており、此方を潰そうとする剣の勢いは重い。前よりも強く力が引き出されている。踏みしめる大地が足元で音を鳴らし、崩壊の危機を知らせる。

「泣いて与えられるような奇跡に価値はないのよ。ねぇ、貴方は自分の口で言える? 私は全て自分の力だけで戦えてます、って」

「ッ、もちろ―――」

 言えるのか?

「考えている暇はないわよ」

 一瞬で防御が崩され体を蹴り上げられる。打ち上げられた体に素早く緋々色金の柄による打撃を叩き込まれ、落ちる体に斬撃が食らわされる。大きな斬撃を喰らった箇所から勢いよく血が噴出し、螢の体を濡らす。

「ッオォ!」

 諦めない。

 一瞬だけ体に力を込め、体から流す血の量を増やす。それが螢の目にかかる。それで螢の目を潰し、最速の斬撃を叩き込む。

「妥協点にはまだ遠いわよ」

 それを紙一重で螢が回避し、カウンターの斬撃を食らわせられる。深く体に食い込んだ斬撃の感覚で吐き気を催す。が、それでもまだ体は両断されていない。手足は動く。ライフは把握できないが―――まだ生きている。

「何かに頼ろうとする姿は別に問題じゃないのよ。人間誰しも一人で生きていけるわけじゃないから、誰かを心の支えにするのよ。友情、恋慕、憎しみ……形は色々あるわ。でも唯一頼ってはいけないものがあるの。解るかしら」

「解、るかよ……!」

 あぁ、解るかよ。というか知ったこっちゃない。そんな話正直どうだっていいんだよ。いいか? 俺には助けなきゃいけない女がいるんだ。アスナがあの世界樹で待っているんだ。そしてついでに溜まったツケを払わなきゃいけないんだ。ずっとずっと溜めに溜まったツケを、

「ついでに助けて清算するんだよ!」

「―――今の貴方、彼の足元にも及ばない。かっこ悪いわよ」

 ぶち込むはずだった剣はあっさりと螢に回避され、逆に裏回し蹴りを喰らって吹き飛び、何度も何度も地面に叩き付けられながら草原を転がる。即座に立ち上がろうとして、足がすべる。立ち上がろうとする足に上手く力が入らない。仕方がないから剣を大地に刺し、それを支えに体を持ち上げる。

 勝てない。

 解っていた事だが、どんな手を尽くしても勝てない。絶対に。最初から解りきっていて、それでいて抗おうとしたわけだが―――悔しい。負けたくない。いや、負けられない。ありえない。ここで負けて死ぬわけにはいかない。

「はぁーふぅー、はぁー、ふぅー、かはぁっ……」

 口からさらに血を吐き出す。そろそろ流している血の量がヤバイのじゃないかと思う。が、それでも体は動かない。心意を引き出し、イメージを増幅する―――

「キリト君」

 目の前に戒がいる。力を込めて、心意を生み出す。この際何でもいい、勝つためであったら何でも―――

「―――君は誇りを持ってその刃を振るえるかい? それとも―――ご都合主義を是とするのかい?」

 ―――俺は―――。
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| 断頭の剣鬼 | 07:38 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

主人公補正を否定したら主人公に何が残るんだと小一時間(ry
まあ、水銀補正もあるからそれを言ってるんだろうけど

| おk | 2012/09/04 14:55 | URL |

キリトさんに主人公補正なくしたら
女顔の廃人しか残らないじゃないですか!
・・・いや、もっと良いところあるか

| モグラ | 2012/09/04 22:11 | URL | ≫ EDIT















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