陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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試練 ―――フィアー・ユア・フレンド

推奨BGM:Mein Kampf
*1推奨BGM:Letzte Bataillon



 シルフ領北には≪古森≫という森エリアが広がっている。シルフ領から離れれば離れるほど、というよりも中央へと近づけば近づくほどモンスターの強さが上昇するようにこのアルヴヘイム・オンラインは設定されている。つまりどの種族も領地をでて中央のアルンへと向かうにはそれなりの実力が必要となるのだ。レベルという概念が存在しないこのゲームではプレイヤースキル、そしてスキルに費やした経験値が重要だ。だから装備を整え、アイテムを用意し、アルンへと到着するにはそれなりに準備が必要なのだ。だからこの森は、ゲームを始めたばかりの初心者には到底ありえない難易度で、古参と呼ばれる程度にはALOを遊んで、そしてシルフの剣術大会で一位を何回か取っている自分からしてもソロは中々難しい。。

 ここで話は戻るがシルフ領北の古森は中々強いモンスターが存在する。出現するモンスターは初級ダンジョンのボスレベルの強さを持つモンスターさえ存在し、今、キリトが相手にしている≪イビルグランサー≫は中級者殺しともいえるモンスターだ。先ず第一にそのステータスは初級ダンジョンボスに匹敵する。それだけでもかなりの脅威だが、この羽の生えた単眼のトカゲはその目からカース系の魔法、ステータスを大きく下げる攻撃をしてくる。これを食らったら防御力はなくなったも同然で、その後に攻撃を食らえばあっさりと死ねる。同時に三体も現れた事を考えると戦闘は回避した方がいい。もう少し上等な装備を持つか、メイジキャラがいればパーティーを組んで戦うのも悪くはないが、


 キリトに対する援護は一切必要なかった。

 飛行時間が切れ、復活の時間までは森を歩く事で待っていたが、その間出現するモンスターをキリトは凄まじい速度で全て切り払っていた。古森には他にも厄介なモンスターは多い。麻痺やら毒やら石化、中級者の壁ともいえる場所がこの古森なのだが、現れた瞬間に反応し、白い剣の斬撃一撃で胴体を真っ二つに吹き飛ばすキリトを止められる存在はこの古森には存在しない。ブレス攻撃は飛び越えて回避し、イビルグランサーのカース魔法は攻撃されるよりも早く倒すなんて無茶な理論を迷うことなく行い、完遂している。

 ステータスも凄まじいが、それをあっさりと判断し、こなすキリトのプレイヤースキルも異常だった。

 自分は現実世界で剣道の経験がある。それがALOに踏み出した理由の一つでもある。ALOではステータスもそうだがプレイヤースキルの恩恵が高い。だから現実での剣道がこの世界でも繁栄され、そのおかげで自分は強く戦えているという認識がある。だからキリトが現実で何かを習いそれを持ち込んだ可能性はあるにしろ―――過剰な戦闘能力だと思う。

 まるで戦う事それ自体に慣れきっている気がする。

 それこそALOが稼働する前から。

 ―――SAOサヴァイバー……。

 そんな馬鹿馬鹿しい話を頭の中から追い出す。そんな事はありえない。SAOから現実へと帰還して多くの人間はVR恐怖症になっている。VRギア、アミュスフィアを被るどころか見る事さえ恐怖している人間がいるのだ。だからそんな馬鹿な考えは捨てる。どっか別のVRゲームでもあそんで覚えたのだろう。そう思う事にする。

「終わりだな」

 剣を左右に振り、汚れを落とす様な動作をしてからキリトが剣を鞘に戻す。見た事のない美しい片手剣だ。古代級、伝説級の武器と言われても頷ける。抜かれていないもう一本の剣もおそらく似たようなレベルの得物なのだろう。いったいそれをどうやって揃えたか気になりはするが、詮索するのもマナー違反だろう。

「私、いらないんじゃない……? ナビゲーションピクシーいるし」

「そ、そんな事はないぞ! な、なあ、ユイ!」

「そうですよー! パパと私だけでしたら多分無駄に寄り道してましたよー!」

「それ、自信を持って言っていいの……?」

 ある意味この主従のコンビはお互いを信頼しているらしい。パパと呼ばせたりと奇行が目立つキリトだが、悪い人物ではない事は解っている。背中の翅が軽くだが淡い光に包まれるのが解る。

「飛行時間復活したわね」

「お、やっとか。いい加減進みたかったんだよなぁ」

「私は一回も剣を抜けずに終わったけどね」

「悪かったって」

 キリトと共に翅を広げて一気に空へと飛びあがる。飛行速度は地上で歩く速度と比べれば格段に速い。だから移動はやはり飛行に任せるのが常識だ。空に飛び上がるのと同時に高度を一気にあげる。低い位置で飛び続けていると飛行可能なモンスターに襲われる可能性が高いからだ。

 といっても、かなり高く飛んでも高所専用のモンスターに稀にだが遭遇する可能性はある。

 心配しても仕方がないので空空高く飛びあがり、領地エリアと中央エリアを分ける山脈を視界に入れる。横に並んで飛ぶキリトに対して山脈を見るように指を伸ばして示しながら、

「アレの向こう側がアルンや世界樹のある中央エリアになるわ。ただ飛行高度限界が山脈の頂上付近に設定されているから飛んで超える事は出来ないの」

「何かそれはもったいないなぁ……」

 キリトならそう言ってくれると思った。同じ意見を持っている事に少しだけ嬉しくなる。

「だから私たちがこの先に進むためには山脈の下を抜ける洞窟を―――≪ルグルー回廊≫を抜けなきゃいけないの」

「アレクがいるのはそこか」

「アレクってたしかリアルの知り合いだっけ?」

「そそ、待ち合わせの約束していたんだけど―――一日放置してるんだよなぁ……」

 そのアレクなる人物と合流したら自分はもう用無しなのかもしれない。そう思うと少しだけ心に影が差しそうで―――

「まぁ、リーファには世話になってるし、世界樹までは四人で仲良く行こうぜ」

 見透かされたようなキリトの言葉に一瞬ドキっとする。

「き、決まってるじゃない!」

 顔を見せるのが恥ずかしくて飛行速度を上げて、洞窟を視界にとらえる。

「あ、あそこがルグルー回廊の入り口よ」

 飛行速度を落とし、洞窟が見えてきたところで少しずつ高度を下げる。会話をしているうちに古森は抜けきって、山脈、洞窟の前には草原が広がっている。キリトがついてきている事を確認しながら洞窟との間に少し距離を開けて着陸する。

「へぇ……なんだかロードオブザリングを思い出すな」

 横に着陸するキリトがそんな事を言ってくる。だが残念ながら、

「残念だけど馬鹿でかい蜘蛛はいないわよ」

「残念」

 肩をすくめるキリトは残念、というポーズを体で表している。なにをしても、どんな冗談を言っても、それが本気のように思えるから困る。これも一種の才能なのだろうか。そんな事を思いつつ洞窟へと向けて歩き出す。

「ま、悪魔はいないけど―――」

                   「―――番人ならいるよ」*1

「え?」

 洞窟の前にはいつの間にか二つの影が立っていた。ほんの数秒、いや、数瞬だけ洞窟を見ていなかっただけなのに、いつの間にか洞窟の前には誰かがいた。洞窟の中にいたとしてもありえない速度だ。足音も気配もなしに急に現れたのは軍服らしき服装に身を包む男女だった。アルヴヘイム・オンラインでは中々見る事の出来ない東洋人の顔だ。いや、リアルの顔そのままと言われても違和感のない日本人の顔だ。長身、柔和な顔立ちの男と、少し背の高い、長い黒髪が特徴的な鋭い雰囲気の女性。洞窟への入り口をふさぐように二人は立っていた。

 誰よ、そう言おうと思って、

「お前……カインか……?」

「久しぶりだね、キリト君。顔を合わせた回数が一回か二回しかないから忘れてると思ってたけど、こうやって覚えてもらっているのは嬉しいかな」

「忘れるかよ、あの時の仲間は、誰一人忘れるもんか……」

「ちょ、ちょっと」

 話しがよく掴めない。目の前の軍服の二人組の内男の方はどうやらキリトと知り合いらしい。それまでは解ったが、キリトの重い声色の理由と、カインと呼ばれた男との関係がよく見えてこない。仲間だというが、さっきは番人と言った。

「知り合いなのキリト?」

「……昔、別のVRゲームで少しだけパーティーを組んだことがあったんだ。ほんの少しだけな。俺なんかよりも強い人だよ……だけど」

 キリトがカインを睨む。

「番人って……どういう事なんだよ」

 カインが苦笑する。困ったような様子の笑いで、どう説明するかを一瞬だけ悩み―――

「初めまして―――番人とは言葉のそのままの意味よ。ここを通さないって事。兄さんも少し甘すぎるわ。私たちがここに立つ意味と理由を忘れないで」

 黒髪の女はカインを兄と呼んだ、つまりはこの二人は血縁関係なのだろう。

「解っているよ」

 溜息をカインが吐き出し―――一気にその雰囲気が変わる。空間を塗りつぶす様な圧倒的覇気。そして恐怖を刷り込む様な殺意が一気にカインからは放出されていた。思わずそれに怯え、後ろへ一歩だけ下がる。

 なに、これ……?

 こんな感情をゲームで感じるのは初めて。これではまるで本当に―――

「カイン―――」

 キリトが前に立ってくれる。庇うように、盾になる様に。ユイをポケットからだして、それを此方に預けてくる。渡されたナビゲーションピクシーは酷く怯えて、体を震わせていた。

「ぱ、パパ、駄目です、戦ってはダメです。その人おかしいです。ありえないんです! その人―――」

「ユイ……解ってる。カイン達の事は俺が一番よく解っているよ」

 たった一言でユイを静かにさせ、背中の剣をキリトが抜く。白い、美しい剣だ。まるで宝石の様な美しさを持った剣だ。とても戦闘用には思えないそれだが、既に幾度も力を発揮している。シグルドの前に立った時のキリトの姿にはあんなにも安心できたのに、何故か今は怖い。恐怖が消えない。

 どんなに思考を巡らせても、キリトが勝つ姿が見えない。

 そして、もう一本の剣を、キリトが初めて抜く。

 それは分類から言えば刀のカテゴリーに入る武器だった。大太刀、長く、重く、速度を犠牲にして威力を重視する武器だ。ただ刀身から柄までの全てが黒に染まった剣は不気味で、何故かその刃を見ているだけで命の危機を感じられる。

 おかしい、この状況の何かがおかしい。何かありえない事が発生している。それを理解するべきなのに、脳が理解することを拒否している。まるで知ってしまえばもう二度と日常には戻れない、そんな事を脳が言っている様な気がする。

「やっぱり持ってたんだね、それを」

「……預けられたからな。返すのは俺の手でやるって決めてるし」

「ならそれを奪いましょうか。それで貴方の心を砕く事としましょう」

「偉く好戦的だな?」

「仕方がないじゃない―――女には暴れたい時があるのよ」

 キリトは戦闘態勢へと移っている。両手に剣を握り、黒と白、真逆の色の剣をいつでも振るえる様に構えている。二刀流なんてスタイルはデタラメで、ALOでは誰もが一度は挑戦して挫折した型なのに、キリトのその姿は堂々としている。

「キリト君。君にはここで死んでもらう―――」

「―――悪いけど私たちの八つ当たりの相手になってもらうわよ」

 二人がそう告げ、声を合わせる。

「形成」

 二人の手に得物が現れる。新種のスペルなのだろうか、全く聞いたことのないワードだが、結果として二人の手には得物が現れた。男の方は黒の大剣だ。まるで闇の底の様な暗さを持った大剣。並大抵の筋力では持ち上げる事すら叶わないだろう。そして女の方も剣だが、ただの剣ではなく、古風な両刃の剣だ。

「―――黒円卓の聖槍(ヴェヴェスブルグ・ロンギヌス)」

「―――緋々色金(シャルラッハロート)」

 名前を呼んで召喚された武器は新たな圧力を空間に生み出す。今すぐ逃げ出したい。そんな恐怖が心を侵食してくる。が、目の前でキリトが壁となってこの圧力を受け止め、心が完全に決壊するのを防いでくれている。そしてそのキリトも戦意を漲らせている。戦闘の回避は不可能だと判断したのだろう。

「頼むカイン、退いてくれ。俺は……俺は世界樹に向かわなきゃいけないんだ」

「だったら僕たちを殺して進むんだ。そのための剣だろ?」

「どのみちここで負ける程度なら未来はないわ。この先で絶望するよりはマシよ」

「クソッ!」

 キリトがあからさまに毒づくタイプの人間だとは思わなかった。おそらくそれだけ目の前の人物とは戦いたくなかったのだろうか。だがそんなキリトを置いて、相手の戦意が高まるのを感じる。

「聖槍十三騎士団黒円卓所属第二位”死を食らうもの”櫻井戒」

「聖槍十三騎士団黒円卓所属準団員”獅子心剣”櫻井螢」

 リアルネームを語ってまで戦いを挑む理由は解らない。恐怖に心臓を掴まれ、上手く考える事が出来ない。

「……クソ、クソ、クソッ……!」

 ―――三人が同時に動き出す。
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| 断頭の剣鬼 | 12:42 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

無理ゲーここに極まれり。
これにベア入れたらkkkじゃないですかーやだー!

| 名無しさん | 2012/09/03 13:27 | URL |

いや、これどうやってクリアしろと(笑)
構図的には兄妹's対決だけど、パワーバランスが崩壊というのも甚だしい(爆)
そして更に待たされることが確定した弟君哀れ(笑)

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/09/03 15:13 | URL | ≫ EDIT

無理ゲーだな
一人でもやばいのに二人とか
どないせいと?

| モグラ | 2012/09/03 15:39 | URL | ≫ EDIT

ちょwww
いくらキリトに主人公補正があって、なおかつ汚染されていても、これは無理ゲーwww

| 空 | 2012/09/03 18:04 | URL |

ひゃっはーー!!
久々にまともな戦闘回だぜーキリトサン大活躍―――と思いきやコレなんて無理ゲーw
kriegが似合いそうで確かに主人公してるけど、補正云々じゃ覆らないからこその位階。キリトさんガンバ!

| 白蜘蛛 | 2012/09/04 00:24 | URL | ≫ EDIT

まさかここでカインたちがでてくるとは…

| nao | 2012/09/04 07:29 | URL | ≫ EDIT















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