陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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試練 ―――ジャーニー

推奨BGM:Kirschwasser


 アレクに、最上正樹には謝らなくちゃいけないなぁ……。

 あの後リーファに連れられスイルベーンへと到着したキリトだが、リーファの強引な押しもあって世界樹まで案内するという彼女の言葉を受け入れてしまった。アレクはアルンとスイルベーンの間にある洞窟の中央部に存在する街の中で待っているらしく、移動に課金アイテムまで使ったらしい。これはマジで全部終わった後に謝罪するべきだと思う。

 リーファと出会ってから一日が経過した。

 リーファはスイルベーンで基本的なALOに関する知識を分けてくれ、お酒を一杯奢ってくれ、次の日まで待ってくれれば世界樹まで案内してくれると言った。個人的には今日にでもと思ったが、どうやらリーファは学生らしく、ログインできる時間が決まっているらしい。。

 だからこうやって一日が経過した。

 もうあの頃の様なデスゲームじゃないからもちろんログアウトし、アレクにメールを送り、ご飯を食べ、風呂に入り、ベッドで寝る、という何とも文化的な生活を送る。睡眠PKの事を考えずに眠る事の出来る環境とは何と素晴らしい事か。ユイと一緒に眠ることができないのが残念だが、ログアウトするときはユイを抱きしめ、そのまま寝てログアウト―――寝落ちという形でログアウトしている。ユイが少しでも寂しさを感じなければいいと思う。


 ともかく。

 昨日の冒険は微妙な形で終わってしまった。

 今日こそは、アスナへと辿り着きたい。そうでなくとも、最低でもアレクと合流できるぐらいには進みたい。

 再び、電子の世界へと落ちる。


                           ◆


「……ユイ」

 宿屋で覚醒し、まず最初にすることはユイの確認だ。体を起き上がらせ、胸元を見ると、そこには抱きつくようにユイの姿がある。眠そうに眼をこすりながら軽く欠伸を漏らし、いかにも寝起きだという事をアピールしている。

「ふわぁ……おはようですパパ」

「もう三時だよ」

 結構寝坊助なユイの姿に苦笑し、ユイを服のポケットの中に優しく入れながら立ち上がり、宿の部屋から出る。廊下を出た時に歩いてたシルフがこっちを見て少しおびえたような表情を見せるのはやはりこっちがスプリガンだろうからか。今朝、種族間の感情があまりよくなさそうなため少しネットで探ったが、案の定どれかの種族の領地に別の種族がいるのはかなり珍しい事らしい。

 普段から種族間でPKしたりされていたりすれば、こうもなるか、と思う。徐々に覚醒し始め、ポケットの中でもぞもぞと動き出すユイの姿を微笑ましく覗き込みながら、

「まずはアイテムを揃えようか?」

「ふぁーい……」

 可愛らしい返事に苦笑し、スイルベーン内の道具屋へと向かう。


                           ◆


 アルヴヘイムの一日は十六時間と設定されている。そのため、現在の時間は現実とリンクされておらず、朝焼けが見える時となっていた。冒険を始めるにはふさわしいと思うが、SAOの様に時間を合わせてくれた方が体内時計を合わせやすいと思う。

 使っていた宿、鈴蘭亭の前で買い物を終わらせ待っていると、片手を持ち上げて振りながら近寄ってくるリーファの姿が見える。走って近づいてくるリーファの姿に此方からも振りかえす事で応える。

「やあ、リーファ」

「早いわね」

「まあ、装備とか道具を見てたからな」

 結局武器はダークリパルサーで満足しているし、防具も妙なステータス上昇の事を考えるとそこまで必要性を感じない。だから投擲用のアイテム、携帯食料、そして冒険の必需品をいくつかそろえる程度にアイテムを購入した。それをリーファに伝えるとそっか、と意外と準備のいい此方に対して驚いていたが、すぐに立て直し言葉を送ってくる。

「風の塔へ行こうか!」

「風の塔?」

 シルフ領、スイルベーンの中央には風の塔と呼べそうな高い塔が立っているのが見える。そこを目指そうとリーファは言うのだが、

「あ、キリトは知らないんだっけ。アレは風の塔って言って、高度を稼ぐのための塔なのよ」

「ああ、なるほど」

 合点がいった。確かALOの飛行には時間制限があったはずだ。その事を考えると先に高いところから飛行した方が飛行距離を稼げて移動が楽なのだろう。そう考えると高い塔の意味が理解できる。別にただのモニュメントというわけではなかったのだ。

「それじゃあ、世界樹までよろしくね!」

「此方こそよろしくな」

 改めてリーファと握手を交わし、これから世話になる事を伝え、並んで風の塔へと向かう。近づけば近づくほどに見えてくる翡翠色の塔はアルヴヘイムを照らす太陽の光を受けて輝いて見える。中々に美しい光景だ―――特に現在使用しているVRギア、ナーヴギアはアミュスフィアよりも描写力では上だ。リーファが見ているよりも美しい光景が映し出されているだろう。

 並んで風の塔の前につくと、扉が開く。

「ここがエレベーターになってて一気に上に行けるのよ」

「近代的だなぁ……っと」

 エレベーターに乗ろうとした俺とリーファを遮る様に複数の影が邪魔してくる。ぶつかりそうなリーファが動きを止めるのと同時に此方も動きを止める。

 ……。

 あまりいい”気配”がしない。ヒースクリフと戦った時以来、こういう人の悪意などにより敏感となったが、この男からはそういう類の悪意が少なからず感じられる。だからあまりいい状況だとは思えない。

 シルフにしては高い背丈、粗削りだが整った容姿、肩の下まで届く緑色の髪を見れば、このALOでは中々運のいいプレイヤーだと解る。基本的にALOのアバターは作った時にランダム生成されて固定だ―――あとは大量の金を使って課金アイテムで変えるしかない。

「こんにちわシグルド」

 少なくともこの男はリーファの知り合いだったらしい。いきなりの登場に対して挨拶から始めるリーファは中々寛容だと思う。

「パーティーを抜けるのかリーファ」

 少し悪い事をしたか?

 パーティーを抜ける―――つまりリーファはこの男のパーティーに所属し、活動していたという事だ。おそらくここで俺に出会い、世界樹迄連れて行くと約束し、それを実行しようとしているからそうみられているのだろう。リーファの返答は素早く、

「まあね。今まで結構急いでやってきた感じだし、貯金もだいぶできたから。しばらくのんびりしようと思ってね」

「勝手だな。残りのメンバーが迷惑するとは思わないのか」

「ちょ、勝手って……!」

「あー」

 いるいる。こんなやつ。これはつまりあれか。ALOはゲームなんかじゃないんだ! とかいうアレか。

 実際昔のMMORPGでも廃人達は色々と酷かったという話を聞く。トイレはオムツやボトルで済ませたり、攻略の為だけに仕事を止めさせたり。戦力がゲームを止めようとすると掲示板に曝したりアカウントを要求して来たり。前にいるこのシグルドなる男もそう言う類の廃人……とまではいかないが、ALOに対して異常な入れ込みを持っている事は解る。リーファも中々厄介な存在掴まったものだと思う。

「お前は我がパーティーの一員として既に名が通っている。理由もなく抜けて俺達の顔に泥を塗る気か?」

「……」

「……」

 シグルドの言葉には苦笑いしか出てこない。つまりこいつはパーティーの戦力が下がる事ではなく、自分のパーティーから勝手にぬけられるのが嫌だと言っているだけだ。何て自分本位で自分勝手。他人の都合を考える事すらしない。正直に言って、呆れる。

「俺の為に戻れリーファ。ここがお前の正しい居場所だ」

 リーファの顔に失望の色が浮かぶ。おそらくシグルドがこんな人物だという事を知らなかったのだろう、もうこの男に付き合う気は毛頭ないようだ。だから、

「おいおい、女に守ってもらわなきゃ剣を振れない腰抜けなのか? とんだ剣士様だな。数を揃えて囲んで話しかけなきゃ勧誘の一つもできないって、情けないったりゃありゃしない。男ならもう少し”男の矜持”を見せてみろよ。それともなんだ、お前タマなし?」

 俺の放った言葉にしばし誰もが無言となる。横にいたリーファでさえ絶句するが、

「キャー! パパかっこいいですよー!」

 ユイが味方なのでオールオッケーとする。

 数瞬して、やっと意味を飲み込んだシグルドが激怒し、背中のバスターブレイドを抜く。

「貴様ッ……!」

「あからさまな挑発に引っかかるとか本当にド三流だよな」

「よく言ったな屑漁りのスプリガンが! ここはシルフ領地、一方的に死ね!」

「シグルド!」

 リーファが制止の声を叫びだすがシグルドは止まらず大剣を振るい、此方を叩き潰しに来る。が、その刃はSAOで戦ってきたライバル達と比べれば―――あまりにも遅い。

「止まって見えるぜ」

 サラマンダーの戦士にやったように、人差し指と中指だけでバスターブレイドを完全に抑え込む。再び絶句するしかない集団の前で、掴んだ指を弾き上げ、バスターブレイドをシグルドの方へ押し飛ばす。大きくよろめきながらシグルドがバスターブレイドを構え直し、

「今はヤバイっすよシグルドさん、人目があるところでキルしたら……」

「俺が負けること前提か? 酷いなぁ」

 たとえ相手が領地の圏内保護を得て、俺が違う種族の為にその保護を得られず、一方的に攻撃を受ける状態だとしても、シグルド程度の存在であれば絶対に負けはしない。第一、あのバスターブレイド、触った感覚からして―――簡単に折れる。騒ぎを聞きつけて集まってきた観客の前であの傲慢な態度を折るのは中々愉快だろうな、等と感想を抱いていると、

「っく……精々逃げ隠れる事だな屑漁り、―――リーファ」

 捨て台詞吐いて去って行くシグルドの姿が愉快で仕方がない。基本的にはなあなあでやれればいい―――と、思っていたのが昔で、クラディールの件以来ある人物を見習う事にした。つまり気に入らない事に対しては基本的に挑発、襲い掛かってきたら叩き潰す。ストレスの溜まらないいい考えだと思う。

「ごめんね、妙な事に巻き込んじゃった……」

「いや、あの程度なら俺とリーファで何とかなるだろ……な?」

「私はその自信がどこから来るのか知りたいわよ……」

「ははは、人生楽しくやらなきゃ損だぜ?」

 そう、本当に損だ。ただでさえ命は短く、儚い。何時死ぬかはだれにも分からないのだ。今日死ぬかもしれないし明日死ぬかもしれない。一分一秒先が不明瞭な世界の中では今、この瞬間を全力で生きることが何よりも大事で、全力で生きるのなら楽しい方がいいに決まっている。だから、我慢して耐えて平気なふりをするのは面倒だ。もうやらない。それだけの話だ。

 あきれるリーファと共に風の塔の根元のガラスのエレベーターに乗る。ガラス越しにエレベーターの外の光景を見る事が出来、朝焼けに染まるシルフ領の森を見る事ができる。それを眺めつつ数秒エレベーターで上昇を続けると扉が開き、風の塔の頂上に出る。

 そこらからは地平線の彼方まで広がる森が見える。

「うぉ……」

 見る方向を変えれば草原が、そしてまた別の方角を見れば海岸が見える。アルヴヘイムは高所を移動する事の多いゲームだ。高所から覗く事の出来る景色には気合が入っていると思う。

「凄い景色でしょ? こうやって空から眺めたりすると色々と小っちゃく見えてくるよね」

 リーファの言葉に黙って頷き、翅を広げる。

「行こうぜリーファ、せっかく翅があるんだ、縛られずに進もうぜ」

「そうね―――」

「待ってよリーファちゃーん!」

 かっこよく決めて空を飛ぼうとした瞬間、声がして飛び立とうとしたリーファが軽くコケる。上へと来るためのエレベーターから一人のシルフが現れる。昨日、少しだけ喋ったリーファの友人、レコンだ。

「リーファちゃんパーティー抜けたんだって?」

「勢い半分だけどね。あんたはどうするの?」

「もちろん僕の剣はリーファちゃんに―――」

「あ、そういうのいらないから」

「せめて最後までいわせてよぉ……」

 レコンがコミカルに膝を床につく。少々生真面目なリーファの相棒には丁度いいかもしれない。

「僕も当然ついていく、と言いたいところだけど、―――ちょっと調べたい事があるから僕はまだパーティーに残るよ。キリトさん、リーファの事をよろしくお願いします」

 大仰に頭を下げるレコンに任せろと言ってレコンと解れる。

 翅を広げ、羽ばたかせ、助走をつけて、風の塔から飛び上がる。朝の冷たい空気が飛行の加速を持って沁みるように絡み付いてくる。が、それもこの時間を過ぎてしまえばなくなってしまうものだ。この瞬間を楽しみながら横で飛行するリーファと共に、

「行こう」

「そうね」

「世界樹へ!」

 ユイとリーファと共に世界樹へと向けて飛行速度を上げる。
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| 断頭の剣鬼 | 10:24 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

キリトさんパネェっす。
というか汚染されてるような……w

| 羽屯十一 | 2012/09/03 11:25 | URL |

キリトサン、なんか司狼っぽい・・・・・・

| 裸エプロン閣下 | 2012/09/03 11:33 | URL |

キリトさんなんか思想がサイアスよりになってるよ・・
妖怪首おいてけに近付いてるよ・・・

| モグラ | 2012/09/03 15:27 | URL | ≫ EDIT

キリキリ 祝☆脱人間

| nao | 2012/09/04 07:22 | URL | ≫ EDIT















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