陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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We All Have Problems

「今日も一日」

「お疲れ様」

 ビールのジョッキを持ち上げて乾杯する。そのまま持ち上げたジョッキを下ろさずに口元まで運び、勢いよく苦い液体を飲む。この一杯のために一日を頑張っている、とは言うのは言い過ぎだろうが、酒の味は中々いい。五臓六腑に染み渡る。

「っく、はぁー!」

「こらこら、中年の様な飲み方をしないしない」

「高畑先生は中年なんだろ? もうちょっとオッサン臭くていいんじゃないのか?」

「悪いね、僕はダンディー路線で行くんだ」

「うわぁ、ダンディーとか口で言いやがった……」


 高校を卒業する前は結構堅物だと思っていた肩傍の存在もこうやって一緒に仕事し、酒を飲むようになってからは中々愛嬌のあるオッサンだということは分かった。やはり人間という生き物は生まれてから全てが見えているわけではない。成長と共に視野が広がり、そして得られる情報が増える。そうやって今まで思い込んでいたことはまた別の視点を得て、少しずつ変化してゆく。これもそのパターンだ。

 こうやって同じ職場で顔を突き合わすようになるとだいぶ印象は変わるものだな、とは思う。しかし高畑は結構忙しく麻帆良にいない時間も多い。

「最近調子どーよ」

 もちろん出張の事や麻帆良でのことを含めた意味での質問だ。

「んー、最近は少し忙しいかな」

 ジョッキをテーブル荷卸し、枝豆を口に含み、飲み込みながら高畑が答える

「君は来年の事を知っているかい?」

「いや、まあ、それは……」

 ネギ・スプリングフィールドが卒業し、その修行の地として麻帆良へとやってくる話はあまりに有名な話だ。あからさまにネギ少年を時代の英雄として育て上げる計画は見え透いたもので、麻帆良学園の魔法使いの多くが彼の到着と将来に興奮している。旧世界最高峰の魔法使いがいるこの麻帆良学園で修行すれば必ずや魔法使いとして大成するであろう、そんな考えが透けて見れる。

「まぁ、その準備とかで僕も色々と働かされているんだ。あっちで調整、こっちで鎮圧、こっちで話を通したり……僕は一応教師なんだけどなぁ……」

「あー、そのなんだ。お疲れ」

 未だにNGO団体に名前おいてるのが確実に原因なのだろうが、目の前のワーカホリックはそれを返上するつもりはないようだ。もう少し学園長には頑張ってもらいたいが―――アレもアレで色々と大変らしい。

「本国の意向だっけ」

「だね。僕と学園長で何とか数年だけ時間を稼ごうと思ったけど駄目だったよ。本国の方は”英雄ナギ・スプリングフィールドは同じ年で既に活躍していた”なんて屁理屈を持ち出すし……もっと若い年齢から活躍していた僕はそれを出されちゃうとね……」

「まぁ、何も言えないよなぁ……」

 話をしながら枝豆を食べているといつの間にか枝豆がなくなっている事に気づく。枝豆の皿をテーブルの端へ追いやり、

「へい、店員さーん、枝豆追加と湯葉豆腐二人前よろしくー」

「はいヨー! 少し待つアルネー!」

 中華風の少女元気の良い返事と共に厨房へと向かう。とてもだが学生が経営するクオリティの店じゃないと思う。これまでの腕前をいったいどこで習得してきたのだろうか。結構謎な事だが基本的に麻帆良では深く考え込むことが馬鹿馬鹿しい。魔法が絡んでいる時点で原理も糞もない。ファンタジーにも限度はあるが、大半がファンタジーで済ませられてしまうのも問題だ。

「まあ、まあ、高畑先生も色々と疲れてるだろうけど……」

「その、僕がまるでワーカホリックみたいな目で見るの止めないか? 僕好きで仕事している……」

 高畑がそこで言葉に困る。

「好きで仕事しているんだろ? なあ、なあ、おい? そうなんだろ?」

「うん……一概にそうとも言えない……かもしれない……」

 若干落ち込む高畑の肩を軽く叩いてざまぁと言ってやる。この程度ではまだ殴ってこないから良心的なやつだ。ともあれ、ネギ・スプリングフィールドの話は中々痛い話だ。少し前に魔法先生、というよりも魔法関係者に対して注意を促す意味でも教えられたことだが、ここに来るのは数えで十歳の話になる。そんな子供にクラスをひとつ預けるという話になっている。それはもう頭の痛くなることに違いない。

 ちなみに頭が痛くなるのはネギ少年ではなくクラスを預ける高畑になる。

 よくストレスでこの男ハゲないなとは思う。俺ならマッハで酒におぼれてる。

「ネギ君にはウェールズの方で会ってみたんだよね……ナギさんを目指す頭のいい子だったよ。やはり血なのかなぁ、天才的センスと知能を持っているんだけど、それでも、彼はまだ十歳なんだ。流石に子供に中学生を預けるのはナギさんの息子と言えども抵抗感が……うーん……」

「苦労してんなぁ……」

「いいよね、藤井君は。仕事は広域指導員だけでしょ?」

「まぁ、基本的にはな。その代り土日は孤児院でチビ共の相手してるけど」

 もちろん今でも孤児院には戻っている。父や母から教えられたことをここで終わらすつもりはない。時代へとつなげる大切さは教わっている。だから俺もそうされたように、空いた時間には孤児院へ行って、歳をとって辛くなった園長のおばあさんの代わりに色々と働いたり、子供たちに教えたりしている。と言っても俺以外にももちろんヘルパーはいる。一人や二人で回せるほど孤児院は甘くない。

 まあ、そんな身内事情は今のところ関係ないか。

「はい、追加の枝豆と湯葉ヨ」

「はいはー! こっちー!」

 追加の枝豆と湯葉を貰いながらそれを前に並べ、

「まあ、飲もうぜ高畑先生よ、な? ”たまには愚かでもあることも好ましい”、親父お言葉だけど、中々の金言だと思うぜ」

「うん……そうだね……本当にどうしよう……」

 結局、この日の飲み会は高畑が延々と愚痴り続ける事で閉店まで続いた。
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| 短編 | 17:40 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

その親父水銀じゃないですかーやだー

| junq | 2012/09/02 18:40 | URL |

三代下って、孫にまで伝わるとか。
水銀の血脈って絶えないんだなァ・・・。

| 断章の接合者 | 2012/09/06 19:09 | URL | ≫ EDIT















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