陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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Life Goes On

推奨BGM:Kirschwasser


 ……なんだか懐かしい夢を見ていた気がする。

 ベンチの上で目を覚ます。空高く輝く太陽が中々に眩しく、素早く腕で顔を覆う。そのまま長袖の下に隠れている腕時計を引っ張り出し、そこに出ている時間を確認する。いまどき珍しいアナログ式時計の針が示すのは午後三時過ぎ。寝始めたのが一時ごろだと考えると三十分だけの休憩のはずがずいぶん長い熟睡となってしまった。反省しなくてはならない事だが、

「……」

 不思議と落ち着いていられるのはやっぱり昔の記憶を夢として見たからだろうか。いけないと解っていてもまた目を閉じる誘惑があるのは確実に夢のせいだと思う。幸せな、自分の起源ともいえる日々。あの頃に戻ることはできないから、幻想にならないためにも、

「頑張るか」


 ベンチに倒していた体を持ち上げ、ベンチから立ち上がる。軽く体を捻り、硬いベンチの上で固まってしまった体をほぐす。軽く顔に触れ、そこに後がついてないかを確かめてから来ているスーツを確認する。上着は脱いでベンチの端に引っ掛けてある。ズボンは……問題ないな。上着を着直し、少し歪んでいるネクタイを調整し、身だしなみを整える。これでいい。

 これで再び仕事を続ける準備は整った。少々熱いからこのまま上着を着続けるかどうかを一瞬悩むが、仕事上スーツを着ないのは不味いだろう。魔法を使うわけにもいかず、大人しく上着を着続ける事とする。今まで安眠を約束してくれたベンチには悪いがさよならだ。俺はこれからサボってしまった分の仕事までしなくてはならない。

 と、そこで、ポケットの中の携帯電話が鳴る。

 ポケットに手を伸ばし、去年購入したばかりの携帯電話を取り出してそのスクリーンに映っている名前は高畑と出ている。通話ボタンを押して携帯電話を耳に当てる。

「はい、もしもし」

『あ、やっと繋がった。藤井君大丈夫かい? 今まで繋がらなかったんだけど』

 今の一言で高畑に昼寝をしていたことがバレていることが解った。いや、待て。言葉からして心配している様子だ。つまり完全には疑っていない。これならまだ言い訳すれば何とかなるかもしれない。だったらよし、

「オマエノドウリョウハアズカッタ。カエシテホシクバ―――」

『さてはいい天気だから昼寝してたね?』

 完璧な策だったのが一瞬で感化されてしまった。流石デスメガネの高畑・T・タカミチ。いくつもの学生による暴動を拳ひとつで鎮圧してきた実績の持ち主だ。この程度の嘘は見破るか。ならここはひとつもう少し気合を入れた嘘をつくべきなのではないのだろうか。

『藤井君、別に僕は咎めたりしないから』

「あ、そう? いやぁ、いい天気何で超寝ちゃった。悪いねー」

『まぁ、そのリアクションは大体見えてたね』

 携帯電話の向こう側から苦笑が聞こえ、伝わってくる。足を公園の外へと向けて歩き出す。夏の麻帆良は日差しが強くてなかなか手ごわく感じる。夏休みに入ると全寮制の麻帆良は規制する学生が増えて静かになる―――ようでそうでもない。大体麻帆良学園に通う学生は家族が学園都市麻帆良に住んでいる人間か、麻帆良へと引っ越してきて通っている。わざわざ外部から通っている人間などほぼ皆無に近い。だから麻帆良の夏休みは旅行へと出かける学生を抜いて、大体ほとんどの学生が残る。ついでに夏休みだからテンションが上がっている。そして日差しが熱い。つまり夏の麻帆良は普段の数倍学生がヒャッハーしててウザい。

 そしてその馬鹿の頭に水をぶっかけるのが我ら学園広域指導員の仕事である。

『ともかく、君が寝ている間に君の分まで指導しておいたから』

「あぁ、うん。悪い。ちょっとだけ寝るつもりだったんだけどな」

『ま、いい天気だし影の中にいれば涼しいだろうね。そういう日もあるさ。だけど……』

「あぁ、解ってるよ。今夜は俺が出すよ」

 もちろん今夜屋台で食べる時の支払いの話だ。料理は出来るし腕前もそこそこ自信がある。しかし大人の付き合いというものは複雑で自炊で食ってればいいというわけではない。横のつながりも上下のつながりも大事で、こうやって同僚と一緒に酒を飲んだりしないと縁を切られてしまう、そんな世知辛い大人の世界。

『また何か失礼な事を考えていないかい?』

「滅相もない! ただ高畑先生は素晴らしく人格のできている方で少しぐらい酷い事言われても気にせずスルーするようなお方だと思っていただけですよ!」

『基本的に挑発的だよね、君は』

 その方が人生は楽しいと教わっているから仕方がない。消え去ってしまっても残されたものは残る。そうやって大事に、今も教訓として、ここに残っている。まぁ、こんな所で感動的な事を考えたりしても全く無駄なのだが。

「で、要件は?」

『あぁ、大学の方でリアル系ロボット研究会とスーパー系ロボット研究会がまた暴れ始めてるらしいからね』

「またかぁ……」

 そろそろあの研究会はどちらかを潰すべきだと考えている。もしくは統合するべきか。いい加減スーパーとリアルのどちらが至高かで争うのはやめてほしい。基本的に割を食うのこっちなのだ。あぁ、めんどくさい。

「きっとまた最新作のロボットを用意してるんだろうなぁ……」

『そして僕たちと戦ったデータを元に強化しているんだろうね。毎年姿を変えつつパワーアップするのは地味人凄いと思うけど、出来たらそれをもう少し違う形で見せてほしいよね』

「いまどき戦闘ロボ作っても需要はないのに」

 いや、一部の軍事国家は欲しがりそうだ。だが正直もっと実用的なのは作れないのか。災害救助用とかメイドロボとか。もうちょっと人類の夢に挑戦してもそこは罰が当たらないと思う。

「高畑先生―――」

『僕はいかないよ? もうそろそろ休憩時間はいるし』

「見捨て―――」

『戦ってみた感想を期待しているよ』

「電話をきりやがったあのメガネ……」

 高畑も高畑で中々人のことを言えるような性格をしているとは思えない。というか、基本的に麻帆良にいる人間は自分の発言をもう一度よく考えろ。いい空気吸いすぎだぞ―――とは完全にブーメラン発言になりそうなので止めておく。溜息を吐き出しながら歩くペースを上げて、麻帆良の大学部へと向かう。仕事は仕事だ。金をは必要なので給料分の働きはしなくてはならない。

 あぁ、何故あの褐色スナイパーみたいに傭兵扱いにしてもらわなかったんだ。アレ、中学生の癖に金を貰いすぎだろ。羨ましいぞ。

「……ふぅ」

 見上げる未知の先には今日も青々と葉が茂る巨大な木―――世界樹が見える。相変わらずムカつくほどにデカイなぁ、等と感想を抱きつつ、大学部へと向かう。麻帆良での日常は……悪くない。
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| 短編 | 21:11 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

父親が練炭で母親がマリィ。そして孤児院に居たのが天魔メンバーかな。
とりあえずマリィ可愛い。

| 空 | 2012/09/01 21:54 | URL |















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