陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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Beautiful Past

推奨BGM:Odi et Amo


 世間一般からすれば自分の生い立ちは不幸なものだと思う。

 まず、血の繋がった肉親がいない。俺は、捨て子だ。まだ意識もない程に小さなころ、俺は捨てられていたらしい。捨てられ死ぬしかなかった俺を育ての親が拾ってくれたおかげで俺は一命取り留めた。だから子供の頃から俺は育ての親に感謝し、彼らの存在を誇りに思っている。

 小さな孤児院だ。

 俺の他にも小さな兄弟たちは少ないが、いた。親から言わせればこれぐらいしか自分たちにできる事はないと、そう言っていた。ありえない。俺の両親は凄い人物だ。強く、優しく、そして誰よりも真直ぐで―――俺が心の底から自慢のできる両親達だ。たとえ孤児だと笑われようが気にする必要はない。なぜなら本当の両親以上に俺は自分の育ての親こそを本当の親だと思っている。

 だからそう、俺を育ててくれた皆に言った。

 だが毎回限って孤児院の園長が、父が言う。


『俺は守る事しかできない邪悪な存在だよ』

 母と一緒にいる父親は何時も幸せそうだ。今まで味わえなかった幸福を味わっているような、そんな感じがあった。だがこの話になると父は何故か酷く寂しそうな、どこか儚い雰囲気を纏っていた。何故か消えてしまいそうな、そんな雰囲気が酷く嫌で、孤児院一番の年上だから誰よりも見栄を張らなくてはならないから、それは違うと自分に言い聞かせて、そんな事はないと何時も否定した。父も、母も、そして孤児院の為に働く父の仲間も皆、皆が素晴らしい人たちで、父の言う邪悪じゃないと、子供ながら必死に否定した。

 その後にありがとうと言われて頭を撫でて貰った感触は今でも忘れない。

 母もそうだね、と優しく抱きしめてくれた。

 そんな日々がずっと続いてほしかった。

 父の親友はぼろい孤児院を経営し続ける為にいつもどこかぶらぶらしてきてはお金を持って帰ってきて、色々教えてくれた。お酒の飲み方とか喧嘩の仕方とかお金の稼ぎ方とか。父達は悪影響だと言ってよく怒っていたが、飄々とした態度で彼の恋人と一緒にバイクに乗せて引きずりまわされたのが印象的だった。

 父には少々面白い友人がいた。寡黙な男、元気な少女、そして厳しい女性の三人組だ。あまり孤児院にいなかったが、孤児院に来る時は必ずと言っていいほど花やお菓子を持ってきてくれる人たちだった。何をやっているかは全くわからなかったが、長男としては家族を守るべきだと、来るたびにいつも体を鍛えられた。辛かったけど、言葉に間違いはなかった。だから頑張った。

 父には母がいながらも結構モテてた。愛人を名乗る三人の女性がいたけど父が困った顔を浮かべながら逃げるのをよく覚えている。孤児院の世話は大体この三人が率先してやってくれた。この二人は年が離れていても、姉の様な存在だった。この人たちからはこの世界の神秘、魔法についてよく教わった。知らなきゃ対処できない、だからしっかりと覚えて平和に暮らそう、と教えられた。

 父には教会の神父とシスターにも友人がいた。夫婦らしく、何時も仲がいいのを思い出す。シスターの方が強いのか、いつも神父が困った様子で尻に敷かれている光景を思い出す。二人は信仰の大切さ、そしてその危なさを教えられた。強い思いは人を支える。だけど強すぎる思いは世界を否定して染め上げると。だから胸に抱く思いには気をつけろと教わった。

 孤児院の運営には父の他にも一組の夫婦が関わっていた。父と母にも劣らない美男美女のカップル、年がら年中幸せそうにしていた。ただ奥さんの方は良く厳しい女の人に叱られていた。横に対等な誰かがいる事、それに心を支えられる事、そういう事を夫婦は教えてくれた。

 楽しい日々だった。毎日笑顔で過ごして、楽しく過ごす日々だ。魔法を教わったり、一緒に家事をしたり、弟や妹たちの世話をしたり、父達から色々と勉強を見て貰ったり、そんな、なんでもない日々が続いていた。特別楽しい事があったわけでもなく、特別悲しい事があったわけではない。

 庭の野菜が上手く育った。

 今朝は鳥が枝に止まっているのを見つけた。

 間違えて指を切ってしまった。

 少し安く肉を買う事が出来た。

 うまく洗濯する事が出来た。

 少し寝坊してしまった。

 小説として読めば確実に売れる事はない三流、いや、ドのつく四流小説だ。なぜならそこに書かれている内容だ誰が読んでも経験した事のある日常しか書かれてないのだから。だけどそれでいい。それで十分なのだ。こうやってみんなで過ごしている日々が何よりも大事で愛しいと思うから、ずっと過ごしていたかった。時は進み、俺も年を取って弟も妹達も成長する。でもこの日々は変わらない。

 そう信じてた。

 なのに。

『悪いな』

『ごめんね、最後まで見てあげられなくて』

『僕たちももう限界なんだ』

『すまないわね』

『我々をここまで残してくれた第七天に感謝するべきなのでしょうが』

『もう少し面倒を見てあげたかったわね』

『バイバイ、また来世で会おうね』

『少しはマシな顔になったな』

『お前ももう立派な男だ。心配はいらないな』

 待ってくれ。なにを言っているんだ。そんな最後みたいに言わないでくれ。消えないでくれ。お願いだから。何で消えてしまうの? まだ、もっと一緒に過ごしたいのに。お願いだから消えないで。俺も、俺の家族もまだ皆を必要としているのに。

『こら、我が儘を言わない』

『お兄さんでしょ?』

『男ならメソメソしてんじゃねぇよ』

『いつかは独り立ちしなきゃいけないんだ。その日が来たって事よ』

 その日は大泣きした。今までないくらいに大泣きした。それなりに年を取って、もう大泣きするような年でもないのに泣いた。恥の一切を捨てて泣いた。いなくなってしまうのが悲しくて、認めたくなくて、引き止めたくて、大声で泣いた。困らせるのもかっこ悪いのも嫌だが、それでもこれで止まってくれるのならと思って泣いたのに、

『大丈夫』

 母に抱きしめられたとたん、その温もりに安心して泣き止んでしまった。今にも消えそうなほど弱い抱擁なのに。なのにその暖かさは本物で、頭では仕方がないと理解してるのにそれが認められなくて頭がごちゃごちゃになって、

『私達は消えてしまうけど―――』

『―――それは決して終わりではないんだ』

 父が目線を合わせ、正面から話しかけてくる。

『俺たちは幻想なんだ。本当は存在しちゃいけないんだ。もう止まってしまって、もういなかったはずなのに特別にチャンスが与えられたんだ。君の様によくできた息子たちを持てて俺たちは幸せだった。だからこうやってタイムリミットが来てしまった以上、消えるしかないんだ』

 でも、

『終わらない。俺たちはまた巡り巡って生まれ変わる。そうやって命は続くんだ。だからめいいっぱい長生きすればまたいつか、俺達と出会える。その時はもう覚えてないかもしれないけど、それでもまた会えるんだ。この空の下で』

 本当に? 本当にまた会える?

『あぁ、約束だ。でも、それでも俺たちに会いたかったら―――強くなれ』

 強くなって会いに来い。そう父は言った。ここにあるのは残滓で、全ての残滓ではないかもしれない。まだこの宇宙のどこかには自分たちの残滓が小指の先ほどだけでも残っているかもしれない。それを見つけ出せば―――

『―――また会える。皆を頼んだぞ、お兄ちゃん』

『皆愛してるよ。応援してるから、あきらめないで。人生は悪い事ばかりじゃないから』

 そう言って、

 父達は笑顔を残して消えた。満足して、幸福に包まれて消えた。最期は光に溶けるようであまりにあっさりしすぎていた。残されたのは最年長の俺と、年齢的に小学一年程度の兄弟達だけだった。幸い後のことも考えて父達は知り合いに後の事を頼み、俺達兄弟は麻帆良という都市へ移り住む事が出来た。そこの孤児院に引き取られ、学費等は既に払われていると、学校に通う準備までされていた。

 結局、俺に残されたのは皆に教えられた知識と、少し特別な魔法と、そして暖かい思いだった。中学に入ると寮生活が始まり兄弟達とバラバラになってしまったが、それでも俺の故魔h、いや、目標は決まっていた。

 あきらめられない。

 また会いたい。

 だから、探しに行こう。

 学校を卒業して、お金をいっぱい貯めよう。兄弟たちの面倒も見なきゃ駄目だが、それをこなしながらなんとかお金を貯めて父達の残滓を見つけよう。きっと、きっとどこかにあるはずだ。世界中を歩き回ってでも見つけ出そう。話したい事はいっぱいある。どれから放せばいいかなんてわからない。だけどあんな風に消えるのだけは嫌だ。

 せめて、さよならだけは言いたかった。

 だからその一言を言うために探そう。先ずは地球を。そしてその次に魔法世界を。

 教えられた事を、あの頃の幸せを絶対に忘れないようにしながら日々を大事にし、理想を掲げて生きる。目標を持って邁進する日々は充実して、とても豊かで、だからこそ―――後悔が残る。小骨が喉の奥に引っかかる感じだ。忘れられない後悔が忘れられず、ほんの少しだけ生活にチクリとした罪悪感を感じる。

 だが、それでも俺は美しい日々を過ごし、毎日を懸命に生きて、中学高校と卒業して、目標へと向かって進んでいる事を自覚し、旅の為のお金を貯める為に校長に頼んで何とか雇ってもらい、そして、

 ―――二十になる。
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| 短編 | 19:38 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

とりあえず、二言。

波旬タヒね・・・って既に覇吐の手で倒されてるか。

んでもって第七天GJ!!
練炭達に救いがあってよかったです。
蓮達の志を継いだ主人公がネギま世界でどう活躍するか楽しみです。本編同様、更新頑張ってください。

| 断章の接合者 | 2012/09/06 19:15 | URL | ≫ EDIT















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