陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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新世界 ―――レッツ・スタート・ザ・ムーヴメント

推奨BGM:Burlesque


 数十分かかってスキルポイントの配分、つまりキャラクターの強化は終わった。ALOのスキルの知識はほぼ皆無に近いので分岐やルートを把握できるユイと相談しながら配分した結果―――このALOにおけるキリトはSAOにおけるキリトと遜色ないパラメーターを保持するキャラクターとなった。新しいビルドに挑戦するのもまた中々魅力的な案なのだが、それを無視してSAOと同じビルドにしたのには理由がある。

 ブランクだ。

 SAOが終了してから二ヶ月、その間、トラウマの象徴とも言うべきナーヴギアに俺は一度も触れていない。そこには体を動かすブランクが存在する。

 不思議と体の鈍りを一切感じないが、勘が働くどうかはまた別の問題だ。一番慣れた体、慣れた動きで早急に失ったものを取り戻すのが先決、そういう判断のもとで”キリト”の再現が行われた。軽く体を動かした結果満足の行く出来になり、ここでやっと思い出す。

「あ……」

「パパ?」

「れ、連絡すんの忘れてた……」

「パパ……」


 確実にログインしてこっちの連絡を待っているはずだ。ダイシー・カフェではそうするように決めたからだ。まだALO初心者の俺を迎えに来てくれるとの話だった。

「確かアバターネームは≪Alec≫……アレク、っと」

 フレンドリストを取り出し、そこにアレクと入力する。数秒後フレンド登録承認のメッセージが浮かび上がり、アレクからフレンドを通して送られてくるメッセージが届く。

『お そ か っ た で す ね』

「あ、これ確実に怒ってる」

「数十分も連絡なしに待たせれればそうなりますよ……」

 だよなぁ……。

 とりあえず謝罪の文をメッセージとして送ろうとし、一旦ホロボードをタイプする指の動きを止める。

「ユイ、ここっていったいどこなんだ?」

「ちょっと待っててください」

 少しの間だけ目をつぶり、ユイが周りの情報を取得する。

「南のシルフ領の森ですねここは。多分パパがここへ飛ばされたのは”キリト”のアバターの位置情報が存在しないエリアにあったから、ランダムに排出されたんだと思います」

「あぁ、なるほど」

 最初に見えたグラフィック異常はいわゆる石の中にいる的な状態だったのか。残念、君の冒険はここまでだ、的な展開へとつながらなくてよかった。このキャラは移動不能状態になっても、運営へ頼んで修正してもらう、何て事は出来ないから本当に助かった。

 まずはアレクに謝罪と位置情報を伝える事とする。

 すぐに返答が返ってくる。メッセージの内容は気にしてない事、そして露店巡りで時間を潰してたからそこまで問題はないという内容で、こっちとの合流できる場所を指定してくる。アレクはALOの中心、央都アルンにいて、俺は南のシルフ領近く。アルンとシルフ領の間には洞窟があって、その中には街があるらしい。そこでの合流となる。

「世界樹は今の位置から北……」

「北西にシルフの街の≪スイルベーン≫がありますからそこで一旦準備を整えましょう。幸いもってたコルは全部ユルドになっていますからお金に余裕はありますよ」

 ユルドとはこのALOでの通貨で、SAOで所持していたコルはすべてこのユルドに変換され、インベントリの中にある。これだけあれば食料等を揃える事も簡単だろう。まずはユイの提案に従いスイルベーンへと向かうのがいいだろう。

「えーと、空の飛び方は……」

「左手で―――」

「いや、大丈夫だ―――なんかいける気がする」

 背赤から虫の様な翅が生える。スプリガンの種族の特徴を反映してか、薄グレーの翅だ。肩甲骨を動かすイメージで翅をはばたかせ―――体を浮かす。

「うん、出来た」

「パパは相変わらずデタラメと言いますか……」

「あはは……」

 根拠はないが、”こうやればできる”的な感覚があった。最近その頻度が加速的に増え、戦闘以外、日常でもその感覚をたびたび味わう事がある。まるでこれは既に経験した事だ。だからできないはずがない。そんな、恐ろしい感覚だ。デジャヴとでも言うのか、言葉として表現するのならそれが一番正しいと思う。が、今の所実害どころか益になっているから頭の中から追い出し、

 少し離れた位置から戦いの音が聞こえる。

 懐かしい。剣と剣がぶつかり合う鉄の音だ。

「ユイ、近くで戦いが起きてないか?」

「え? 今調べます―――あ、はい。少し離れた場所で一人が三人に追われていますね。パパ、まさか……」

「そのまさかだ」

 少しだけ好奇心が湧く。アレクには悪いことをするが、寄り道も悪くないだろう。なにせ娯楽のない人生とはかなりつまらないのだ。何事にも余裕を持って接する、その態度は必要だと思う。久方ぶりに聞こえる剣の音に少しだけ興奮を覚えながら、

 飛翔する。


                           ◆


 飛翔し、目に入ってきたのは三人の戦士が逃げ惑う一人の少女を追いかける姿だった。PK推奨のゲーム内でこういう姿はあまり珍しくない。珍しくないのだが、それでも少々いい気分にはなれない。SAOから帰還した人間の一人として、そして、仲間を救えなかった者として、無意味な殺人行為はたとえ本当ではないと解っていても……あまり見れたものではない。

「パパ」

「あぁ、解っているさ」

 ユイの姿は先ほどまでの少女の大きさではない。妖精と呼べるような、小さいサイズに変化している。それがこのALOにおけるユイの姿、≪ナビゲーション・ピクシー≫だ。どんな形であろうと自分の愛娘と一緒にいられるのは良い事だ。胸のポケットに入っている娘にしっかり掴まるように言いながら、

 加速する。

 少女と重戦士に向けて一気に加速すると、地上に座り込む少女と軽く浮かんでいる戦士三人の間に割り込み、

「おいおい、男が三人そろって女の子のケツを追い回すのはあまり紳士的じゃないなぁ」

「なっ」

「誰だてめぇは」

「くっ……」

 背後で少女が声を漏らす。まあまあ、と手を振って抑え込みながら肩から背負う剣―――ダークリパルサの柄に手をかける。それを挑発だと見た三人のうち一人が、

「どう見ても防具が初心者じゃねぇか! 一人でノコノコ出てきやがって馬鹿じゃねぇのか? 望み通りお前も狩って点数にしてやるよ!」

 ランスを構えた戦士が羽を羽ばたかせ一気に加速する。赤いエフェクトを纏いながら突進する姿はこのシステム上の動きなのだろう。素早く、此方を仕留めにかかっている。だが、

「欠伸が出るぜ」

 余裕をアピールするために左手をポケットに入れたまま、ダークリパルサーの柄から手を放し、

 右手人差し指と中指でランスの先端を掴み動きを止める。

「真剣白羽取り……!」

「……はぁ?」

 できるような気がしていたが、まさか本当に成功するとは思わなかった。二年間鍛え続けて来た”キリト”のアバターであっても、指だけで抑える何て気が狂った芸当は出来ない。明らかに何らかの要素を受けて、俺自身がパワーアップしている。それが心意なのか、もしくはサイアスの置き土産かを判断する事は出来ないが、

「てい」

「わああああ!?」

 そのまま掴んだランスを投げ飛ばす。武器を失った戦士はその一瞬呆けるが、アインクラッドならその一瞬が命取りだ。再び手をダークリパルサーの柄に手をかけ、一瞬で抜き打ちを放つ。最短、最速、あの最後の戦いを思い出す様に、自分に出せる今の最高を放つ。

 結果、

 エフェクトが発生するよりも早く戦士が両断される。言葉を一言も漏らせず、アバターが砕け散る。恐れる必要はない。ここはアインクラッドではない。ここで敵を殺しても―――本当に死ぬわけじゃない。だから遠慮する必要はない。

 攻撃の為にもう一人の戦士が攻撃体勢に移る。

 が、それよりも早く加速し、

 ダークリパルサーで首を跳ね飛ばす。今の動きで自分がアインクラッドでの最終決戦程ではないが、かなりいい調子であることを把握し、ダークリパルサーの刃を残った一人に向ける。

「で? どうする? あんたも戦うかい?」

 その言葉に残った最後の一人は両手を持ち上げて降参の意志を見せる。戦う気はない様子だ。

「いや、確実に勝てないからやめておくよ。アイテムを置いていけというのなら置いていく。ただもう少しでメイジスキルをあげられるんだ。デスペナは勘弁して欲しい」

 その言葉に軽く苦笑してしまう。模範的なゲーマーの言葉だ。だが、だからこそゲームと現実を混濁しない。これ以上の戦闘をするつもりがないのは真実らしい。剣を背中の鞘に戻す。

「正直な人だ。で」

 視線を少女の方へと向ける。ネットゲームのアバターらし、可愛い少女のアバターだ。金髪に、緑色の服装、そして片手に握られているのは長剣だ。未だに大地に座り込んでいる姿に、

「そこのお姉さん的にはどうなのかな? 彼と戦いたいのなら邪魔しないけど?」

 場の緊張した雰囲気をほぐすためにも放った言葉に返ってきたリアクションは、少女の溜息だった。

「あたしもいいわ。今度はきっちり勝たせてもらうわよ」

「正直タイマンで勝てる気はしないから遠慮しておく」

 そう告げると赤い戦士は翅を広げ、赤い燐光を残しながら飛び去って行く。おそらく拠点へ。二度と会う事はないだろうという感想を抱きながら、少女の前に降り立つ。男が視界から完全に消えたとこで気配を追うの止めて、目の前の少女に意識を向ける。

「で、あたしはどうすればいいのかしら? お礼を言えばいいの? それとも戦う?」

 ……少し、好戦的だな。

 まぁ、それも仕方がない。いきなり見ず知らずの存在に戦闘を邪魔され、助けられたとあってはリアクションに困るだろう。まずはこの空気をもっと軽いものに変える事から始めるとする。

「俺的にはナイトがお姫様の救出に来た、何てシチュエーションが好ましいと思うんだけどな。―――姫の熱い口づけとか中々お約束でいいんじゃないか?」

「ば、バカじゃないの!? 何言ってんよ! それだったら戦った方がまだマシだわ!!」

 驚き、焦り、そして激しく言葉を放ってくる少女の姿に警戒はない。これで少しは話しやすくなったと思った時に、

「そ、そうです! パパはママと私以外にはキスしちゃだめです!!」

「お、おい!」

 いきなりポケットから飛び出てきたユイを捕まえようとするが、勢いよく出てきたユイは手を避け、目の前で浮かびながら抗議の言葉をものすごい勢いで放ってくる。いきなり現れた姿に少女が硬直し、マジマジと視線をユイへと送るが、

「ねえ、それってプライベートピクシーってやつよね?」

 確かユイが自分の事をそんな風に分類できる存在だと言っていたはずだ。だから肯定する。

「確かプレオープンキャンペーンの時に抽選配布されたって話だけど……へぇ、初めて見るなぁ」

「俺は”運”だけは何故かいいからな」

「ふぅーん……」

 疑いの視線で頭の先から足の先までをじっくりと観察される。その視線と短い沈黙が少しだけ気まずい。

「変な人ね。プレオープンからの参加者の割には防具が初期装備だし、これでアカウント放置してるだけだったら解るけど武器はレアリティ高そうで、めちゃくちゃ強いし」

 どうせなら防具まで守ってくれれば嬉しかったのだが、サイアスの大太刀はそこまではサービスしてくれなかった。サービス精神がこいつには足りない。次話す機会があったらサービス精神についてレクチャーが必要かもしれない。

「昔にアカウントはつくったんだけどALOは遊ぶ機会がなくて貸してたんだよ。文句は俺じゃなくてこのアカウントで遊んでたやつに言ってくれ」

「へえー」

 まだ若干疑いの視線はあるが、どうやら概ね納得してくれたらしい。ならここら辺で分かれてスイルベーンに向かうべきなのだが、

「それはいいけど、なんでスプリガンの君がこんな所をうろついてるのよ」

 すごく答えづらい質問をされる。馬鹿正直に答える事も出来ないのでやはり、

「み、道に迷った……」

「迷ったぁ!?」

 まぁ……そんなリアクションになりますよね……。

「パパぁ……」

 ユイちゃん、もう少しパパに協力的でもいいんじゃないかな? パパ困ってますよ?

 そんな事を思いつつも、目の前の少女と握手を交わす。

「はぁ……とにかく、ありがとう。助かったわ。私はリーファ」

「俺はキリトだ、この子はユイ」

 まずはこの世界の冒険を、この出会いから始めよう。
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| 断頭の剣鬼 | 16:31 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

キリキリのチートっぷりがシャレにならない件について。


ま、SAO最強(表)だし仕方ないか。

次回も楽しみにしています。更新頑張って下さい。

| 断章の接合者 | 2012/09/02 00:30 | URL |















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