陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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Drei

 病院が戦場となっていた。

 マーキュリ・メイガスのアバターとして見る戦場、有田春雪は―――シルバー・クロウはシアン・パイル、彼の親友相手に中々の勝負を仕掛けている。この対戦、注目する事が少なくギャラリーはもともと少なかった。いたとしても五人、六人、その程度のマッチだった。

 だが今は違う。

 この試合はまた別の意味を持って大きな注目を集めていた。

「≪水銀の王≫(メルクリウス)」

 そこに集結していたのは十数を超える数のアバターだった。眼下、病院の中で決戦を繰り広げるシアン・パイルとシルバー・クロウは知らないだろう。今、彼らの決戦はある意味穢されている。この男、マーキュリ・メイガスに注目されている、たったそれだけの事実で。


「呼んだかね?」

 様々な色のアバターが集まっている。どれもこれもバーストリンカーとしての時間が長く、経験を積んでいる強力なプレイヤー達だ。それが殺気を漲らせ、一人の男を囲み、そしてその事態を知らぬ少年たちをも警戒する。だがこんな状況でさえマーキュリは飄々とした態度を崩さない。

「貴様、何を狙っている」

「私が、何かを狙っていると言うのか」

 秋葉原でしか姿を確認する事が出来なかったマーキュリ・メイガスが杉並区で確認されたことは衝撃に近い。これでもしかしてリアルでの場所を特定できるかもしれない、そんな思いが殺意と共に込められている。そして、第一、今まで大人しく秋葉原の、対戦の聖地でしか姿を現さなかった存在が急にそれ以外で場所を現したのだ。

 何かがなければおかしい。

 だが、

「ふふふ、奇異な事を言うものだ。諸君らにとって非常に残念な事実となり、私としてはこれを伝えるのに心もが痛むが―――私は何も狙ってはいないよ。そう、私はこの人生たったの一度でも何かを”狙った”事なのありえないのだよ。故に再び言わせてもらおう。私はこの場においていかなる狙いもなく参上したと」

「貴様の口が信用に足るものだと思っているのか?」

 赤のレギオンの銃口が向けられ、青のレギオンの刃が向けられる。多くのレギオンでも一番先頭に特化したカラーのレギオンの武器は対戦観察中だというのにも関わらず光を守っている。

 心意の光だ。

 オーバーライド現象。

 このゲーム、ブレイン・バーストにおける一つの最終奥義ともいえる技だ。この加速世界内における全ての現象をイメージによって上書きすることを許す奥義はたとえそれが他人の対戦であろうとも干渉し、感染者を裂く事を許す。あくまでも心意がそういう方面に特化していれば、という言葉が付くのだが。

「戯言を言うかメルクリウス」

 水銀の蛇。

 それこそがマーキュリ・メイガスの与えられた称号であり、呼び名の一つ。大量の”卒業者”を生んだ元凶に対する侮蔑の言葉。しかしマーキュリは気にしない様に肩を揺らし、

「私を信用しろというのは難しい話であろう。だが真実、今日の私は一切の策や狙いを持たずにここに来たのだよ。なぜなら私はこう思うのだ―――友情とは実に美しい、と」

 マーキュリのその言葉に多くのアバターが吐き気を感じる。このおt子がそれを語るにはあまりにも場違いすぎる。たとえ目にしている劇が一流の脚本により作られ、一流の俳優によって演技されたとしても、それはまるで完成された劇を寸劇へと貶めるような言葉だった。

「黙れ―――」

 音よりも早く振られた刃がマーキュリを両断し―――たように思えた。

 が、切られた体は影となって消え去り、少し離れたビルの上に影として出現する。その姿に傷は一つもない。心意の刃でさえ影を捉える事は出来ない。いや、違う。

「貴様……本体ではないな!?」

「私も争うなどと野暮なことはしたくないからね。見給えあの二人を」

 建築物内での戦闘がある場合、観戦者にのみ許された観戦ウィンドウを通してシルバー・クロウとシアン・パイルが戦っている姿が見える。その言葉は聞こえない。が、しかし、その情熱、思いはつ様伝わってくる。

「それはまだまだ生まれたばかりに情熱。若く、猛々しく、そして美しく輝いている。感じるかね? 心意ではない情熱を。それを戦力だと、武器だと思わずに、それが真実だと思いぶつける言葉が。戦いには一切関係ないと解っていつつも放つあの言葉が。諸君らは感じられぬかね、胸の奥を打つあの感動を、喜びを。あぁ、私は今歓喜している」

 芝居がかった口調も動きも変わらない。それでこそマーキュリ・メイガスは―――≪水銀の王≫と称され、何にも従わない従えない孤独の王として君臨している。彼が唯一ひざを折るのは彼が定めた女神だけで、彼女も彼を拒絶する。故に孤独のレギオン。故に引っ張るものも引っ張られる存在もおらず、唯一にして絶対。

「これだ、これこそが正しい友情の在り方だ。青臭い。みっともない。そうやって言葉で泥を塗るかね? よかろう。それも間違っていない。なぜならこれは未熟な相対だからだ。だけど未熟だからこそあり得る美しさがそこにはある。私はそれが愛しいのだよ。加速世界で歩廊氏戦い続ける我らにはないものをこの未熟な加速世界の住人は持っている。あぁ、妬ましい。あぁ、羨ましい。故に愛しい。どうだね? 諸君もそう思わぬかね?」

 誰もが答えない。その代り視線は銀と青の戦いに注がれる。確かに、その戦い派からは情熱が溢れ出し、ぶつかり合っている。心意を習得してからは決して見れるような戦い方ではない。必殺を叫び、言葉を乗せてぶつかり合う、野蛮な戦いだ。だが確かにそれは胸を打つ”何か”がある。それでも戦闘は青、シアン・パイルが優勢に進み、

 シルバー・クロウが空高く吹き飛ばされる。観戦者達が見下ろすビルの高さまで吹き飛ばされたシルバー・クロウはその体力をギリギリのところで残し、その高さまで吹き飛ばされた姿に向けて、手を広げる。

「故に―――喜んで学びたまえ鴉よ。今こその銀翼の翼を広げ羽ばたく時だ。女神の為にその翼存分に振るいたまえ。今、貴殿の覚醒を持って―――」

 シルバー・クロウの背中から翼が現れる。今までの発見されたことのない飛行アビリティ。この世界においてありえないとされてきた飛行能力。その出現は生気の瞬間であり、同時人マーキュリ・メイガスの言葉は、

「貴様これを狙ったのか!?」

「―――新たな時代の幕開けとする。生態系の頂点を形作るピラミッド。それが崩れ去る時代が再び到来しつつある。留意なされよ、これから加速世界は再び混沌の時代を迎えつつある。そして私は狙ってなどいない」

 シルバー・クロウが翼を使い、一気に降下をを開始する。同時に水銀の姿が消え去る。

 残るのは空に響く声のみで、

        「私に狙う必要などない。全ては既知であり決定しているのだから」

「どういうことだ、答えろメルクリウス―――!!」

 それに応える姿も声も存在しない。

 ただ、そこには舞台を完全に汚された戦いが残った。
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| 短編 | 22:12 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

この子のウザさはイイウザさ。

そう考え込むようにしてもウゼェもんはウゼェ……!

今回も楽しませて貰いました!

次話期待して待ってます!

| オベリスク | 2012/08/31 22:42 | URL |

更新が早すぎる……! すげえ。
そしてこのメリーさん、本家とはかなり違うような。
蛇と台詞は似てるけど。
たぶん本家をウザいと思う根本がまだ無いから、なのか。

面白かったです。

| 羽屯十一 | 2012/08/31 23:13 | URL |

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| | 2012/10/19 23:53 | |















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