陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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Zwei

 一人で昼を食べる。

 小学校もそうだったが。

 自分は極度のコミュ障だ。友人と呼べるような関係の人間はリアル側には一人もいない。加速世界にもいるにはいるが、簡単に会えるような人物でもないのでぼっちが酷い多い。自分をバーストリンカーにしてくれた”親”も”大戦”の時に真っ先に裏切って絞れるだけポイントを絞り出してからもちろん全損に追い込んだ。恨まれる原因は排除しなければならない。ただ若干やりすぎて”親”が所属していたレギオンまで敵に回った。

 この時点で若干ロールプレイにのめりこみすぎたと気づくべきだった。

 当時超厨二時代が到来した俺は退きも媚も省みもしなかった。


 つまり自重をしなかった。レギオンを倒すにはレギオンしかない。だから策をめぐらせて別のレギオンと憎み合う様にして潰し合わせた。それが思いのほかなんだか楽しくて、本格的に始まった”大戦”、今までの厨二ロールを続けた結果それがもうすでにもう一人の自分となってしまった頃に、

 俺は、戦争を混乱させるように更に引っ掻き回した。

 おかげで必要のない犠牲までたくさん出た。おかげで今ではどのレギオンのブラックリストに乗っている。唯一女神の存在したレギオン、ネガ・ネビュラスだけには手をださなかった。それが更に全レギオンからの風当たりを辛くするものだが―――起きてしまった事を悔やむことはやめた。今でもかなりノリノリの分があるし。

 そう、人生ソロプレイにはもう慣れたのだ。

 こうやって、一人で食べる昼にも慣れた。

 人生ソロプレイ万歳!

 ぼっち万歳!

 たまにクラスメイトにアイツ誰だっけ的な視線送られてくるけど大丈夫!

 人生縛りプレイ!

「……はぁ……」

 いや、本当にソロプレイが好きなわけではない。話せる相手の一人や二人はいるし、赤のレギオンで殺意が酷いのは古参組だ。新しくヘッドとなった赤の王は幸いそこまで毛嫌いしてないおかげか赤の領地なら無制限フィールドに入れる。それでもウロウロしすぎると砲撃が飛んでくるわけだが。

 もっと、こう、女神ときゃっきゃうふふしたい願望はそれはある。他の女どもは塵芥の様なものだから性欲も情欲も一切湧かないが、毎日間近で女神の笑顔を見る事の出来る生活にはあこがれる。これから女神に鴉をあてがう予定だが―――もう少し計画を速めるべきだろうか。

 ぶっちゃけ誰を相手に睦み合おうと女神が救われれば俺はそれでヘブン状態だし。

「はむっ」

 食堂で食べるカレーの何て味気ない事か。加速世界で酒の味や、ポイントを使って購入できる高級料理のデータ、そういったものに慣れてしまうと日常生活で食べるものがものすごく安っぽく見えてしまう。中々なれとは怖いものだ。向こうで数十年と暮らしてしまった自分たちの様な人間に今更ブレイン・バーストを捨てて生きる選択肢は無理だろう。生活をブレイン・バースト基準で考えすぎている。

「ビール、欲しい、な……」

 どうしてもカレーというとビールのイメージがある。とは言え飲んでるのはほとんどワインだからそっちの方だったら割と種類とか解るのだが、まぁ、やっぱりカレーにはビールだと思う。というか中学生でビールとかないわー。

「はむっ」

 カレーとご飯を混ぜ、混ざった部分をスプーンデ掬い上げる。目の高さまで持ち上げたステンレスのスプーンにはカレーと混ざったご飯が乗っている。あげているスプーンの端からどろ、っとカレーとご飯が落ちる。加速世界で食べても得られるのは満腹感だけで、実際食べている訳ではない。故に食事は必須だ。しかし学食、もう少しクオリティをどうにかできないのだろうか。

 少し前のアキハバラ・バトル・グラウンドで手に入れた賞金を使って少し高級なレストランへ行くのも悪くないかもしれない。趣味的にフレンチかイタリアン、もしくはスパニッシュ……あるいはメキシカン、と言ったところだろうか。幸い賞金で余裕はあるので、此処は誰かを誘うべきだろうか。

 と、

「あ、あのぉ……」

 声がする。こんな縛りプレイ人生を送っている人物に話しかけてくるような奇怪な人物を確かめてみるためにも顔を持ち上げ、

 思わずスプーンを落としそうになる。

「あ、あの、先輩……ですよね? その、他の席が空いてないので座ってもいいですか?」

 有田春雪。

 女神に捧げるべき首輪が何故か目の前で同じテーブルに座っていいか質問してきていた。

 ……えぇ―――。

 この水銀の目を持ってしてもこの展開は読めなかったわ。いや、これはやめておこう。多分そのうち節穴扱いされる。ともかく目の前の少年と自分の間には一切の接点はない。学食を見渡せば他のテーブルは満席となっており、どこにも座る場所がない。ならここはひとつ年上の先輩としての威厳を示さぬばなるまい。

「ど、どどど、どう、ぞ」

「ほ、本当に大丈夫なんですか……?」

「だ、だだ、だい、じょう、ぶだ。も、もも、問題、ない」

 言えた! やった! 今日は間違えずにストレートの言葉を言えたよ!

 コンビニの店員相手にレシートいらないですと言い続けて修行した成果が発揮され、軽く心の中でガッツポーズを決める。いかんいかん、目の前の少年に自分の正体や何か印象付けるような行動をしてはいけない。あくまでもその他大勢という印象だけを残さぬばならない。

 皿の上のカレーを、ご飯共々ぐちゃぐちゃに混ぜる。目の前、未覚醒の鴉が此方の皿を眺めているようだがアレだ、隣の芝は青く見えるという理論でカレーがおいしそうに見えているのだろう。可哀想に。何でも食べればいいというわけではないぞ鴉。

「あんむっ」

 餓死するのは趣味ではないからカレーを口に運ぶ。

 と、

「あ、あの」

「な、な、なん、だ?」

「え、い、いや、なんでもないです! ただ、珍しい食べ方をしているなぁ、と……」

 ……あれ? 普通に食べてたつもりなんだけど何かマズった?

 日本人は基本的に几帳面な生き物で、なんでも綺麗にしているのが好きだって話を聞いた。そういえばカレーを混ぜて食べるのは少数派だ、基本的には食べる分をご飯にかけて、それを食べるのが主流だったか。まぁ、

「こ、ここっこ、こんど、た、ため、す、が、いい、さ……!」

 よし、イケル。今日は調子がいいぞ瑞星銀二。今のお前は普通の先輩だ。少し食べ方が特殊なだけの先輩だ。印象的には一日も残らないだろう。それでいい、俺のリアルはモブキャラとして存在しなくてはならないのだ。さっさとカレーを口に運び、食べ終わる。時計を見るとまだまだ授業の始まりまで余裕がある。授業までどっかで寝てるふりをしながら加速するのも悪くないかもしれない。

「さ、ささ、さ、さような、ら、こ、こ、後、輩、くん」

「あ、はい、さようなら……」

 Perfect……!

 鴉に背を向け、食器を開始に歩き出す。


                           ◆


 去って行く先輩らしき人物の姿を見送りながら思う。

 ―――変な人だったなぁ。

 カレー混ぜるし。すっごい言葉おかしいし。物凄いに無表情だったし。キャラの出来すぎてる人間とはああいう人間の事なのだろうか。ともあれ、

「今度試してみようかな」

 意外と忘れにくい印象の人物だった。




原作の水銀がこんな可愛ければまだよかったのに。一応言っておきますが男ですよ?
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| 短編 | 18:47 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ふっ…前の話とのギャップがハンパない…うっかり水銀に萌えちまったぜ……。

| ろくぞー | 2012/08/31 19:25 | URL |

親しみが湧く――とはこういう者を言うのだろうか。

| 羽屯十一 | 2012/08/31 20:00 | URL |















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