陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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新世界 ―――ビギン・アドベンチャー

 トリファ、リザ、玲愛と少し喋ってから教会を出る。道中は特に何もなく、そのまま家へ帰る。

 家に到着しても迎えてくれる人間はいない。母は買い物へ、父は会社で仕事をしている。だから母が帰ってくるまでは基本的に一人で家を使う事ができる。と言っても使うのは自分の部屋とコンセントぐらいだ。

「ただいま」

 返事がないのは解っててもついつい呟いてしまう。コートとマフラーを脱ぎ、それをコートかけに掛けてから二階にある自分の部屋へ向かう。昔は兄と二人で使っていた部屋だが、兄が出てからは自分一人の部屋になっている。昔から使っていたダブルベッドはそのままだが……少しだけ、小さく感じるようになってきた。近いうちにベッドを解体して新しいのをを買ってくる必要がある。

 部屋の隅の机の上にはアミュスフィアが置いてある。内臓バッテリーが存在しないアミュスフィアはナーヴギアとは違い常にコンセントでつないでおかないと起動しない。そのおかげでナーヴギアの問題の多くを改善できたらしいが―――

「よし」

 とりあえず喉も乾いてないしおなかも空いていない。トイレに行く必要はない。仮想世界へダイブする準備は出来ている。アミュスフィアを被り、コンセントをベッドの近くに差し込み、ベッドに仰向けに倒れる。

 目を閉じ、アミュスフィアに電源を入れ、

「―――リンクスタート」

 この先、キリトから連絡を待つ以外はまずはやることがないな、等と思いながらも、

 視界が白に染まる。


                           ◆


「うおっ―――」

 気が付いたら落下していた。確か自分はALOの初回起動で種族選択でスプリガンを選んでログインをして、スタート地点へ飛ぼうとした瞬間にエラーが起きて、それで―――

「なんで落ちてるんだよおおおおおおぉぉ!?」

 普段ではありえないぐらいに大きな声で叫ぶ。なぜログインしたらいきなり空からのフリーフォールが始まっているのだ。何なんだろう、この異常事態は。とにかく、とりあえずは、この落下をどうにかする必要がある。

「って、どうやって飛ぶんだよ!?」

 基本的にマニュアルを読まずに遊ぶタイプだから今回ももちろんALOのマニュアルは飛ばし読みでログインしてきた。だから空を飛ぶ感覚は解らないし知らない。下へと視線を向ける。そこに見えてくるのは緑色の森だ。確か選んだスプリガンという種族の領地にこんな森はなかった気がする。何かおかしなものに干渉を受けていると思いつつ、

 特にできる事もないので、

「うわああああああ―――!?」

 空から木々に衝突し、何度も体を枝や葉にぶつけながら地面に落ちる。この世界もSAO同様ペイン・ジェネレーターが存在しないため鈍い感触として痛みが表現されている。ナハト達相手に経験した痛みを一度覚えてしまうと、この程度の衝撃ではあまり驚きを得られないのは理なんだろう。少し人間としては不味いのではないだろうかとは思う。

「あぁー……昔を思い出した……」

 アインクラッドの外壁を上って上へ行こうとした時を思い出すなぁ。あの時も落下で死にかけたなぁ……。

 一体ここはどこなのだろうか。

 体についた葉を払い、周りを見渡す。灯り一つない広大な森の中に落ちてきてしまったようだ。何やら嫌な予感しかしないな、等と思いつつシステムウィンドウを呼び出す。

「……よかった」

 そこにはちゃんとログアウトボタンが存在している。あのデスゲームの経験はもはや癒せないトラウマとして傷を刻んでいる。ダメージを確認する前に見てしまうのはこのログアウトボタンの有無だ。ちゃんとそれが存在する事に安堵し、今度は自分のライフバーを確認する。

 それは一ミリたりとも減っていなかった。

「高所ダメージが存在しないのか?」

 飛行が売りのゲームらしいし、高所落下によるダメージは廃止しているのかもしれないな、等と思いつつシステムウィンドウを閉じてステータスウィンドウを開く。ライフポイントにマナと表示される数値は四百や五百と、実に初期値らしい数値となっているが、

「に、二百三十九万……? な、なんだこれ」

 スキルアップポイントと表示されるそれは数字がおかしかった。流石にこれを初期値と言い張るには難しい。この数字はなぜこんなにもあるのか―――


                           ◆


『アルヴヘイム・オンラインはSAOのコピーサーバーから生まれたゲームだ。あの程度だったら向こうのデータを持ってくる程度造作もない―――第一、私があの道化に対する切り札を用意しないわけがないだろう』


                           ◆


「……あ」

 そうだ、ヒースクリフが言ってた。アインクラッドの最終決戦で、このALOはSAOをベースに作られたゲームだと。そしてこのスキルアプポイント、その数字は確かに見覚えがある。これは―――SAO内で”キリト”が稼いだ経験値と同じ数値だ。そしてこのアバターの名前もキリト。

「……ヒースクリフはコピーサーバーって言ってたけど、数字は俺が知っている最終的な数字だ。コピーじゃなくて……そのままを使っている? いや、だとしたらアインクラッドで冒険は出来なかった。……SAOとALOは繋がっている?」

 データ的なつながりをSAOとALOは持っていると考えるのがいいかもしれない。このアバター、”キリト”は名前をトリガーとしてSAO側のデータが呼び出された……そんなご都合主義がおきているのだろうか。


                           ◆


             『キリト、ご都合主義を疑え。絶対に信じるな』


                           ◆


 昔言われた言葉を思い出す。都合がいい事を疑って行動しろ……その意味は解るが、同時に今の状況では感謝しておきたい。完全に新しいスタートをもってアスナとマリィを探さなきゃいけないから、スキルアップポイントが自分の前のアバター程あるのであれば少し楽になる。助言してくれたアイツには悪いが、今はこのご都合主義に感謝し、アイテムウィンドウを開く。

「うわぁ……」

 見事に文字化けの塊となっていた。まぁゲームが違えば存在するアイテムと存在しないアイテムが出てくる。となると文字化けしているアイテムはこの世界に対応できない、存在しないアイテムだ。

「あ……!」

 素早くアイテム欄をスクロールし、鼓動が早くなるのを抑えつつ、目的のものを探す。お願い、頼む、そこにあってくれと。そう祈って見つけたアイテムは―――MHCP001X.zip。一瞬呼吸を忘れそうになるが、つばを飲み込みながらインベントリからアイテムを取り出す。

 クリスタルとなって出現したそれを指で二回叩く。

 光がクリスタルから溢れ出し、そこから一つの姿が現れる。白いワンピースに黒い髪、すらっとした手足の少女―――その姿をすべて見なくても確信できる。その存在が誰か、何なのかを。流れそうになる涙を堪えながらふわりと浮かび、降りてくる姿の少女の名を口にする。

「ユイ」

 その言葉に少女は笑みを浮かべ、

「また会えましたね、―――パパ」

 少女はそれで限界だったのか笑みを歪ませ、大粒の涙を零しながら抱きついてくる。その華奢な体を受け止めつつ、ユイを、娘を抱擁する。たった三日だけの娘。自分とアスナの唯一の娘。三日という短い間だけだったが、それでも、確かに娘だったのだ。また会えた。もう二度と会えることはないと思っていたユイとも、また会えた。

 だから、きっと、アスナとも―――。


                           ◆


「さて、どうするか……」

「?」

 そのまま歩く気にもなれず、近くの木の根を椅子代わりにし、膝の上にユイが座っている。頬を胸に摺り寄せてくるあたりがアスナに似ているな、と感想を持ちつつ今までの経歴をユイに話す。ユイを圧縮保存した事、再び前線に戻ったこと、最終決戦で心意を使いヒースクリフに勝利した事、そしてアスナがこの世界にいるらしいこと。それで一番最初の疑問をユイに質問する事とする。

「ユイ、ここはSAOなのか?」

「ちょっと待っててくださいね」

 ユイが目を閉じて検索を開始する。そこらへんの機能は世界が変わっても損なわれていないようだった。

「ここはソードアート・オンラインのコピーサーバーのようです」

「……という事はSAOが終了した後で改めてコピーを取り直したわけか」

「ほぼパパの予想通りですね。パパの言う心意システムが検索しても見つからないのでちょっと判断に困るところがありますが、おおむねパパの予想通りです。このゲームとSAOのセーブデータのフォーマットが共通なのでパパのデータが名前をきっかけに呼び出されたんだと思います。ただ……この世界に存在しないアイテムはエラーチェッカーに」

「引っかかるか?」

「はい。全て破棄した方がいいです」

 レアアイテムは財産であり、VRMMORPGプレイヤーとしてはステータスだ。二年間集めたアイテムが文字化けして使えなくなっているのも悲しいが、それを捨てなきゃいけないのは地味に心臓を抉る。回復アイテムや転移結晶、装備まで完全にアウト。溜息を吐きながら一つ一つ破棄していくと―――文字化けしていないアイテムが二つも残った。

「お、ラッキー」

 その二つを捨てずに実体化させる。

 現れたのは二本の剣だった。どちらもよく見覚えのある得物だ。

「あ……それは……」

 実体化し、地面に突き刺さった得物の内、まずは白い方の得物を手に取る。刀身が白く、専属の鍛冶師にして最高傑作と言われた出来の片手剣だ。SAOでは愛剣として最後の戦いでは活躍してくれた半身ともいえる存在だ。そしてもう一本は―――大太刀だ。刀身も柄も全てが黒く染まり、大きい。自分の身長をも超える巨大な刃は何人ものプレイヤーを殺してきた処刑刀だ。それが振るわれる様子は何度も見てきた。握ろうとした瞬間に此方側へと向かって倒れてくる刃はまるで握れと言うばかりのタイミングだった。

 ステータスは初期値のはずなのに。

 二刀からは重さを感じない。そして、

 大太刀にも、白い片手剣にも―――見慣れない文様が浮かんでいる。

 二刀を握ったところで文様は消える。が、それでも重さは来ない。いや、重さなんてないのだ。

「≪ダークリパルサー≫と≪羅刹≫……ですよね?」

「あぁ。リズベットが作ってくれた俺の剣と―――サイアスが俺に託した剣だ」

 文様は見た事がある。アレはサイアスの刃に刻まれているものだった。幾何学模様というか、法則性の全くつかめない不思議な文様だった。だがそれが刻まれている間のサイアスは攻撃を受けても一切怯まないし、傷つかなかった。

「守られた……のか?」

 ≪羅刹≫に残された力の欠片が世界の壁を越えた? もしかして、ユイも守られたかもしれない。

「……馬鹿野郎」

 力になるんだったらもう少し解りやすい形で手伝ってくれよ。いつもそんなに風に黙って勝手にやってちゃあ解らないだろ。いつも勝手に一人で突っ走って勝手に終わらせてそれで満足しやがって……今度は俺がお前を助ける番だ。アスナを助けるついでにお前の目を覚ましてやるから、

 覚悟しろ。

「パパ、その剣、内部データがブラックボックス化して読めなくなっています。それに―――」

「解ってる」

 ダークリパルサーはともかく、羅刹の方は当分使う事は出来ない。二刀用の鞘を召喚し、鞘に納めてから背中でバツの字を描くように装備する。おそらくこの二つを握っても重さを感じないのはサイアスと同じ原理だ―――何らかの能力が働いている。おそらく大太刀、羅刹の影響だろう。本当に余計な事をしてくれる。

「ユイ、スキルポイントも振った方が」

「いいですね。数値が大きすぎるとこっちも怪しまれます」

「だよなぁ」

 スキルウィンドウを開き、ためしに≪HP上限≫の項目にスキルポイントを十程消費してみる。

 ファンファーレと共に”最大HPが100上昇しました!”と出現する。

「……えっ」

 これを二百万もやるの?

「パパ」

 ユイの方に視線を向けると可愛らしくウィンクし、

「頑張ってください」

 どうやらウチの娘は中々いい性格をしているようだ。

 ともかく、

 ここから動く前に―――まずはポイント配分だ。
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| 断頭の剣鬼 | 14:04 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

羅刹がガチの魔剣化しました
まさか常時発動じゃないですよね

| ぜんら | 2012/08/31 14:14 | URL |

エリュシデータさああああああああああああああああん!?

――エリュシデータはログアウトしました。

羅刹をキリトさんが握るとかテンションの上がる展開だなぁ!?

| ろくぞー | 2012/08/31 14:26 | URL |

まさかの羅刹継承ですか・・・。
なんかKKKの獣殿の聖槍を思い出しますね。

そーいやユイちゃん、今作では今回が初出?

| 断章の接合者 | 2012/08/31 15:49 | URL | ≫ EDIT

ああ、キリキリの人外化進行速度が順調すぎる(笑)

こんどこそ、閣下の出番は約束されてるようだし、黒円卓メンバー増加に弟君の活躍とか、楽しみが多すぎで――ぁあもうっ、早く明日になれ!

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/08/31 17:40 | URL | ≫ EDIT

スキルポイントを吟味して連打する作業が始まりますね・・・
連打楽しいです^p^

| おk | 2012/09/01 04:40 | URL |

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| | 2012/09/02 20:36 | |















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