陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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IF外伝 境ホラ10

「どっこぉらぁ!」

 両足で輸送艦に着地する。その衝撃で輸送艦が激しく揺れ、一瞬下へと沈む。

『何をやってんだ馬鹿ぁー!? 落ちるかと思ったぞ!』

 表示枠を通して正純の怒りの顔が映るが、それをチョップで叩き割る。

「そんな事より武蔵へハリーハリーハリー! 武蔵で俺の嫁がご褒美用意して待ってんだよぉ!」

『おい、少しは落ち着けよハッスル副長』

「上空十キロからのスカイダイビングで若干テンションがハイなんだよ! 許してね!」

『駄目だ、テンション振り切れてやがる』

『珍しいものが見れたな……』

 そろそろいい加減に落ち着くべきかもしれない。


 聖遺物の特性を解除し、形成の能力を抑え込んで行く。肌が元の色へ戻り、両手に握られたギロチンの刃が消える。数秒深呼吸を繰り返し精神を落ち着かせたところで、

「うし」

 精神状態の復帰を完了。

「報告よろしく」

 とたん周りに複数の表示枠が生まれる。

『Jud.! 前線に残ってたのは全員回収しました!』

『負傷者は既に武蔵へ収容済みです』

『武器の損耗は予想してたよりも少し大きかったです』

 聞こえる部下たちの言葉を聞きながらそれを整理する。やはり初の戦争だったせいか、予想よりも全体的な損耗率が高い。侮っていたわけではないが、戦いを熟知している三征西班牙やK.P.A.Italiaと違って戦争処女だった武蔵では知識、そして経験に圧倒的な差があったという事だ。この先も武蔵は戦争を、戦う事を強いられる。その事を考えると初戦は勝利だけではなく、もう少し損耗を押さえて結果が欲しかった。

 ここら辺は後々ネシンバラと相談するべきとこかな……。

 現状軍師として働いているのはネシンバラだから、アイツ以外にこういった事を話せる相手はいない。二代はどう見ても脳筋タイプだ。期待するだけ無駄だと思う。だから軍事的な話をできる相手がもう少しいればよいのだが、そこらへんは武蔵の成長と共に期待するべきか。

 いや、役職者がいたか。

 総長連合、特に点蔵やネイト辺りだったら話は通じるかもしれない。ネイトは騎士階級の身分を持っているために部下、従者の動かし方を覚えているし、点蔵は役割りが諜報関係である以上ありとあらゆる事に精通している。ネシンバラ以外だったらこの二人もありかもしれないな、と、そこで、

「明広殿!」

 甲板に二代が上がってくる。その背には悲嘆の怠惰が背負われている。蜻蛉切を構え、握ってない方の手で後ろを指さす。その方向に顔を向けて見えるのは白いヨルムンガルド級の戦艦が此方を追い越す速度で武蔵へと向かう姿だった。間違いない、K.P.A.Italiaの栄光丸だ。

「武蔵を潰す気か! おい、浅間!」

『すみませんそれってもしかして私に何か期待してませんか!?』

「ぶち抜けないのか!?」

『私は巫女ですよ! 巫女!』

『え?』

『え、いや、なんですかほぼ全員そろってその何言ってんだこいつ的な顔は。みなさん忘れているようですけど私巫女ですから破壊目的の射撃は出来ませんよ?』

 何やらズドン巫女があり得ない事を口にしている気がする。入学式で散々射殺したというのにそれでもまだ人畜無害な巫女を名乗っているとは何て恥知らず。一旦マリィの巫女姿を見て自分がどんなヨゴレキャラなのか再認識するべきだあの女は。

 しかしズドンが使えないとなると、

「”武蔵”さん! 重力障壁で衝突した場合は!?」

 表示枠が出現し、自動人形の”武蔵”が映し出される。

『栄光丸はガレー艦です。おそらく質量に押し負けて破砕されるかと。そしてそのまま主砲で壊滅する可能性が九割ほど。―――以上』

「メガネ!」

『いい加減名前で呼んでよ。いや、こっちでも今何とかしてる!』

 ネシンバラの焦った声が表示枠を通して聞こえる。何らかの追撃があっておかしくないが、まさか栄光丸が突進してくるとは思わなかったのだろう。だから駄目なんだあのメガネ。俺も人の事言えないけど。

「銃をよこせ」

「Jud.」

 甲板へと上がるハッチから半身だけ出した警護隊の隊員から長銃が投げ渡される。栄光丸と輸送艦の間にはそれなりの距離がある。また栄光丸へと乗り移って解体を始めるのも選択肢の一つだが、その場合焦った栄光丸が主砲を武蔵へと向けて放つかもしれない。突進の体勢に入った栄光丸をそこで変に焦らせたくない。故に、

「結べ、蜻蛉切!」

「止まれ……!」

 二代が蜻蛉切の刃に栄光丸の姿を映し、俺は聖遺物の特性を乗せた弾丸を栄光丸の側面へと向けて放つ。蜻蛉切の割断が走り栄光丸の装甲が割れ、また別の所に弾丸が衝突し爆発を起こす。栄光丸が装甲を落としながら進んでいる。更に弾丸を放とうとしたところで、

「っく、すまぬで御座る」

「限界か!」

 二代が膝をつく。立花・宗茂との戦闘に続いて短距離走者がホライゾンのいた処刑場までダッシュで移動したのだ。かなりの疲労が体に溜まっているはずだ。長銃を降ろし膝をつく二代に肩を貸す。

「かたじけのう御座る」

「気にするな、俺達はもう戦友だ」

 輸送艦が栄光丸の動きに合わせて加速する。栄光丸も更にその速度を上昇させる。表部装甲しか破壊できなかったのか、栄光丸自体は特に問題もなくその船首を武蔵に向かって加速し、突き刺すために動かす。だが武蔵もただやられるわけではない。艦全体を回避のために動かしつつデリックからフックを伸ばし、ひっかける事で強引に牽引し、動きを変える。

 武蔵を掠めながら栄光丸の突撃は外れ、

「どうだ!?」

 梅組の皆が甲板に上がってくる。そこで輸送艦もようやく武蔵、武蔵野へと到着し、その先端の上で浮かぶ。肩を借りていた二代が自力で立ち上がり、上ってきたホライゾンに、

「姫、これを―――」

 悲嘆の怠惰を渡す。黒の大罪武装を手渡され、ホライゾンがそれを見ながら呟く。

「これは……」

「姫の”感情”に御座る。どうか恐れずにお進みを……」

 そう伝えたところで再び二代の体が揺れる。倒れそうになる体を警護隊の副隊長が支える。

「最後ぐらい、俺達で決めようぜホライゾン!」

「トーリ様」

「失礼!」

 何やら話し始めようとしている二人の腰を抱き、輸送艦から飛び降りる。奇声を上げる馬鹿はこの際完全に無視するとして、降り立った武蔵野の先端、その正面には主砲を構え放つ準備の整った栄光丸があった。トーリとホライゾンをそこで降ろし、

「武運を祈るぜ」

 輸送艦に跳び戻る。

 そこで、

 少女は感情を取り戻し、その創造によって新たな世界へと進む。


                           ◆


「ま、マリィ……?」

「ふん」

「え、ちょ、マリィ……」

「知らない」

「いや、ほんと、やましい気持ちなんてなかったんです。本当なんです。これっぽっちもなかったんです。マリィ以外の女なんて石ころも同然だから。性別も存在しないに等しいから。だからほら、マジで許してくださいよ。ご褒美だけを楽しみに頑張ってた俺が泣きそうです……」

「うわぁ……」

「アレを見ると何も言えないわよね」

「フフフフ―――あの二人割と昔からあのペースよね。いやん、マリィ可愛いわね!」

 栄光丸はホライゾンの大罪武装によって退けられ、武蔵は三河から脱出する事が出来た。初の戦争を勝利で逃げ切れたことに武蔵全体がお祭りムードに突入し、誰もが生還を喜んでいた。もちろん、全員生きて帰ってきたわけではない。敵も殺す気で戦ったのだ。命を失い、幽霊になったのもいればそのまま成仏したのもいる。だがそれでも、武蔵の住人達は決して必要以上に悲しまない。悲しみは喪失の証ではあるが、浸るものではない。

 俺たちに後はない。

 だからこそどんな時、どんな状況でも笑っていなければいけないのだ。そうすればせめて気持ちだけなら負けていないと思えるから。気持ちだけならどんな大国にだってさえ負けていないと信じているから。だからどんな時でも馬鹿になって、笑って、死んだ人にはさよならを言って更に馬鹿をする。そうやって笑っているのが供養になると信じているから。

 だから、

「マリィ様お許しください……!」

「つーん」

 武蔵野の青雷亭前で、集まった梅組や戦闘に参加した学生達で大規模な戦勝会が開かれている。料理に酒が並び、誰もが勝利を喜んでいる。ただ、何故か、

 何故か副長……俺はマリィに向かって土下座していた。

 なぜだ。

 いや、確実に二代に肩貸したのがいけないんだろうが、

「マリィさん少し嫉妬深くないですかねぇ……」

「……」

「あ、あの、いえ、その……私が悪かったです……」

「ラウンド2もブルイユ君の負けか。弱いねぇー」

「あの二人の力関係は変わらないさね」

「金髪巨乳になる可能性を幼少期に見出した明広殿の眼力には感服で御座るなぁ」

「オメーは一人だけ見てるところが違くねーか?」

 というか忍者後で泣かす。

 好き勝手に飲んで食っている武蔵には問題が山積みだ。先ず第一に武蔵の学生、そして三河の学生の連携、武装の少なさ、各国から追われ、狙われている状態と、戦闘面で副長として考えるべき部分は多い。それだけならまだましだが、武蔵には政治的立場もある。そこらへんを考えるのは正純に仕事だが、それでも武蔵のこの先の苦難を考えると―――若干憂鬱になる。

 やはり、問題は多い。

「アキ」

 ぽんぽん、と道路に敷かれたマットの上に座るマルグリットが自分の太ももを叩く。そのジェスチャーの意味は解るのだが―――いや、まぁ、もういいだろ。

 体をマットの上に倒し、マルグリットの膝に頭を乗せる。世間一般では膝枕と呼ばれるそれだ。決して人前でやるようなことではない。

「あっつ! 熱いですよぉー!」

「フフフ、ヒートアイランド現象よ!」

「それ、言いたい事は解りますけど使い方完全に間違っていますよ? というか副長物怖じしませんね……」

「く、クソ! 俺コクって主役のはずなのに食われてる気がする! ホライゾン! 俺達も膝枕しようぜ!」

「Jud.まずは頭を取る事から始めましょう」

「頭だけ乗せるのかよ!?」

 周りが中々に愉快な事になり始めている気がするが、今は気にしない。後頭部から感じる柔らかい心地よさに身を委ねて、ゆっくりと堪能する事とする。

「アキ」

「ん?」

 上から覗き込んでくるマルグリットが笑顔を向けてくる。

「お疲れ様」

「おう、疲れたぜ」

 たぶん”用無し”と言われ始めてから、一番働いた日だと思う。未だに甚助に斬られた個所が熱で痛みを訴えてくるが、永劫破壊の事もあって既に傷だけはふさがっている。本当にデタラメな体だ。デタラメな体だが、これでも守れるものがあるのだ。人間と呼ぶには怪しい存在だが、カテゴリー上俺は人間として分類されている。だから、まあ、人間なのだろう。

「まだ悩んでるの?」

「いや」

 悩んではいない。迷いももうない。ブルイユ・明広として、

「君を愛し、この武蔵を愛し、そして守る。それが今と、これからの俺だ」

 そう、それが”ブルイユ・明広”だ。最上でもサイアスでもなく、この世界に漂着した俺の役目だ。俺を仲間として受け入れてくれたみんなの為にも、俺は全力を尽くして、トーリを王にしてみせる。

 少し、眠くなってきた。

「アキ、疲れたんでしょ?」

「悪い……」

 そう言えば昨日から一睡もしてない事を思い出した。今寝ても完全に疲れは取れないと思いつつも、目は閉じる。

「お休み、アキ」

「お休みマリィ……」

 目を閉じて、今はこの幸福を噛みしめる。
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| 断頭の剣鬼 | 09:41 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

女神の抱擁…もとい、膝枕、悪くはなかろう?―――って、言ってる場合か! ちょ、アスアスそこ代われ、もしくは爆死でもk――ザシュ――

ふ。 ←斬首された人の構図

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/08/31 12:01 | URL | ≫ EDIT

その後ろでホラ子が首抱えてるとか
それなんてnice boat

| ぜんら | 2012/08/31 13:35 | URL |

女神の膝枕・・・
なんかいい感じだけどこの後すげえ書き込まれてるよな絶対

| 雑食性 | 2012/09/01 15:58 | URL |















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