陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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Beschleunigung Merkur プロローグ

 アキハバラ・バトル・グラウンド。

 バーストリンカー対戦の聖地とも呼べる場所である秋葉原は領土でいえば黄の王が支配する領土。だが、このアキハバラ・バトル・グラウンドを含める秋葉原、台東区は黄の王、イエロー・レディオでさえ手を出す事が出来ない場所となっている。だからこそこの地はバーストリンカーにとっての聖地であり、そして同時に、

 何らかの理由で加速世界に入れなくなった者たちにとっての天国でもある。

 ルールさえ守れるのなら中立。

 ルールを守れないのであれば敵。

 楽園であり、地獄である。中立を謳えるのはそれだけの力がそこには存在するからだ。

  アキハバラ・バトル・グラウンドは今日もバーストリンカーによる勝負を見せる。


 片や青のアバター。全身が鋭い刃物の様な体をしており、片手に握られる大剣は無骨ながら凶悪性を秘めていることが一目で解る。青のアバター―――ターコイズ・ブレイダーは握る大剣を更に強く握り、

「ォオ―――!!」

 咆哮と共に大剣を前に振り下ろす。振り上げるモーションから振り下ろすまでのモーションがほぼ存在しないほどに高速で行われるのはターコイズ・ブレイダーがレベル7と高レベルのバーストリンカーなだけではなく、彼がレベルアップによって得られるポイントの全てを身体能力、特に筋力ステータスにつぎ込んでいるからだ。シンプル・イズ・ザ・ベスト、その言葉を体現するターコイズのパラメータの振り方は変にとがらず初心に基本であり―――

「であるからして王道である」

 対する対戦者は―――頼りない姿をしている。

 金属質のアバターの上から布のマントを被っている全身を覆うようにし、唯一露出しているのは顔で、特徴らしい特徴がない、しいて言うのであるば、このアバターは信用のならない顔をしている。若干色褪せた黒のマントを纏うアバターが見せる金属の色はターコイズと同じ、青だ。だがその色は深く、まるで深淵を表すかのような深い蒼。そこまで溺れれば這い上がれない蒼。全てを多い、真相を隠し去るような油断ならぬ蒼。

「王道であるからこそそれは基本に忠実でありまた、悲しいかな。それはもう見飽きているのだよ」

 同じレベル帯のバーストリンカーからして高速と言わしめるほどの斬撃を軽い動作でボロマントのアバターが回避する。影の様に揺らぐ動作はまるで剣では絶対に届かぬと、言葉を合わせターコイズを完全に挑発していた。

「滅べ道化……!」

 振り下ろしから完全に直角に武器の軌道を変える。筋力を使用した動きではなく、技術的な重臣の位置の変化、細かい動きを含め、神業と呼べるレベルの荒業をターコイズが成す。そこから繰り出されるのは刹那の連撃、大剣のリーチとバーストリンカーの技量、そしてアバターのステータス。それら全てを合わせたターコイズの放つ連撃はシステムに登録されてなくとも必殺と呼べるにふさわしい攻撃だ。

 それでも、

「あぁ、悲しき事か―――」

 回避する。全ての斬撃を紙一重で回避する。その光景はまるで先が読めているようにしか思えないほどの精密性を持っておこなわれている。ターコイズが刃を振るうのであれば既に振り下ろされる位置の横に立ち、薙ぎ払うのであればその範囲の外で待つ。攻撃の全てが全て、事前に回避される。

「―――故に私は言おう、この刹那を存分に楽しみたまえ、貴殿の終わりは近い」

「ハァ―――」

 攻撃を繰り返し必殺技ゲージのたまったターコイズ・ブレイダーがその能力を解放する。強化外装である大剣が一気に輝きを得る。連撃を踏み込む事で一瞬だけ途切れさせ、

「メテオバスタァ―――!!」

 目前の存在に叩きつけた。やはりまるで予想していたかのように回避するボロマントの存在にターコイズは笑みを浮かべる。その必殺技、メテオバスターとは彼が保有する唯一の範囲攻撃技。レベル7になった初めて習得できたそれは大剣を通して地面に刃を叩き込み大地を爆発させ、岩塊や爆発を広範囲に渡ってまき散らす回避不能の必殺技。今まで無駄だと知りつつも何度も何度も攻撃を繰り返してきたのはこの必殺技ゲージを貯めるため他ならない。

「儚き青の兵士よ」

 既に発動を感知していたボロマントのアバターは大きく、しかし高く跳んでいた。ゆっくりとした、回避する気のない動きだが、そこでターコイズは気づく。

 敵の体力が減っている事に。

 僅かにだが、攻撃を命中させてないにも関わらずライフポイントが減っている。何故だ。そう思い―――気が付く。

「初めから舞台の上で踊っていたと気づかぬ愚かな青の兵士よ。良く踊った」

 攻撃は回避されていたのではない。全て紙一重で”受けて”いたのだ。素の戦闘力が圧倒的に劣っている分、異常なまでの性能を必殺技につぎ込んだ超特殊型のアバター、マーキュリ・メイガス。全て自分の武器を得る為の演技と挑発だったのだ。だとすれば、硬直だけはしてならない。盗み見るマーキュリの必殺技ゲージは十分の一ほどたまっている。効果の短い、もしくは威力の低い必殺技であれば十分に放てる量だ。メテオバスターを止めるにも既にモーションに入り動きは止まらない―――

「―――恐れは望みの後ろからついてくる」

 これだ。これがこのアバターが、バーストリンカーが恐れられ、嫌悪されている理由だ。全てを見通す様な発言と行動、見下すような目、そして必殺技の行使にさえ嘲笑うに投入してくる言葉、これこそがマーキュリがどのレギオンからも嫌われる所以だ。

 単純に、信用できない。

 メテオバスターが発動し、フィールドの大地が割れてそれがマーキュリに命中する。飛び上がったマーキュリの体に岩塊や爆発が命中するが、マーキュリの体力は予想以上に減らない。その代りに、必殺技ゲージの伸びが高い。

「マーキュリ・メイガス、強化外装か……!」

 おそらくあのマントが防御力の上昇と必殺技ゲージの上昇値を上げているのだと思考した瞬間、

「喜んで学べ」

 初めてボロマントのからから手を出したマーキュリが、その手を振り下ろす。ゆっくりと、死刑を宣告するかのように振るわれた手は爆発も岩塊も大剣もターコイズも飲み込み、そのすべてを押しつぶす。

 重力による圧倒的プレッシャー。

「っがああ!!」

 巻き上がった岩塊が重力による強化を得てターコイズに突き刺さり、体を床に叩きつける。マーキュリはゆっくり着地しながら、

「然り然り、強化外装であるとも。別に貴殿程度の雑兵であれば使用の必要はないのであるがね」

 ターコイズを重力で押しつぶしライフポイントを一気に空にした。瞬間ターコイズが蘇生までのタイムカウントに入り、戦闘フィールドに声が響く。

『勝―――利ッ! 強い! 強すぎる! やはりマーキュリ・メイガス圧倒的過ぎる! どのレギオンにも所属できない最強のヒール、今日もそのウザさと共に健在だぁ―――!』

 ボロマントを揺らしながらフィールドから去るマーキュリの姿を追いかけるように言葉が放たれる。

『これにてアキハバラ・バトル・グランドレベル無制限大会終了! 多くの希望を打ち砕いてチャンピオンの座はマーキュリ・メイガスがとったぁ―――! この芝居がかった道化師を引き摺り下ろす猛者を俺たちは何時でも待ってるぜぇ!!』

 マーキュリ・メイガス。

 原色の王から嫌われているために中立フィールド、秋葉原でしか活動のできないバーストリンカはその理由となった口調も態度も過去も悔やまず、その名を秋葉原にて轟かし続ける。道化師、影法師。そんな風に呼ばれるマーキュリ・メイガス。が、その一番有名な呼び名は、

 ―――水銀。


                           ◆


 カドタワーのローカルネットとの接続を完全に解除する前に、軽く銀行の口座を確かめる。アキハバラ・バトル・グラウンドでのバトル、その勝者にはファイトマネーとして500円支給される。正直しょっぱい金額だとは思うが、たまに開かれる大会では数万円が賞金として出ているので侮れない。今日の大会でもまたお金が振り込まれている。何回か段階に分けてそのお金を個人の口座へと移すと、完全にネットへの接続を解除する。カドタワーのネット接続用のレンタルブースから体を出すと店員と目が合う。

「お帰りですか?」

 質問してくる店員に対して、

「あ、あ、そ、そ、その、そ、そ、そうです」

 俺、瑞星銀二はレベル8のバーストリンカーであり、進級を控えた中学二年生だ。加速世界では誰にも嫌われ友人など皆無の最悪のバーストリンカーマーキュリ・メイガス。しかし、そのリアルの正体は―――極度のコミュ障だった。

 少しうまく話せるようになったらいいと思って始めたロールプレイがどうしてこうなった。

 どうしてこうなった。

 どうしてこうなった……。



某所で「おい、アクセルワールド書けよ」って話になったので。
コンセプトはアバター:水銀 リアル:コミュ障
つまり酷いギャップがやりたかっただけです。えぇ、あとニートっぽくさせたかった。
タイトルはドイツ語で加速する水銀とかそんな感じの意味です。
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| 短編 | 18:33 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

やだすごいギャップ。
最後の段落の部分だけで水銀のうざさが緩和。水銀が出てきてスッキリした読了感を覚えたのは初めて(

| ろくぞー | 2012/08/30 20:21 | URL |

なにこの中身かわいい

| 11 | 2012/08/30 20:57 | URL |

おおう。
そう考えれば、本編の水銀もこういう経験したんだろうね。
既知ってんだろうから。

| 羽屯十一 | 2012/08/31 00:16 | URL |

あせった。
とうとうAWにまでニート進出かと超焦った。

つかニートロールって、それこそどうしてそうなった。
本編のニートもこれ位可愛げがあればなァ・・・。

いや、可愛げあるニートなんてニートでは無いか。

| 断章の接合者 | 2012/08/31 06:20 | URL | ≫ EDIT

いやいや、水銀加速してどうするよ。これ以上ウザさに拍車がかかったらどうしてくれる(笑
つーか、ニートロールじゃコミュ障悪化すんじゃね?

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/08/31 10:57 | URL | ≫ EDIT















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