陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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プロローグ ―――イン・ナイトメア

推奨BGM:Ewige Wiederkunft


 花束を手に、薄く雪の積もった道を歩く。

 少し前から道はコンクリートではなくレンガ造りとなっている。目的地までの道がレンガの道路となっているがこれ、建設時にそれなりにお金がかかったのではないかと疑問する。今度まだ覚えていたら質問するのもいいかもしれない。だが今は色々と考えるべきことが別にある。だがとりあえずは、

 来ているコートとマフラーをもう少し体に寄せる。

 朝も寒かったが、午後から雪が降るとは聞いていない。これなら傘を持ち歩いていた方が良かったのかもしれないが、事前に天気予報をチェックしなかった自分が悪い。花束に雪が積もらない様に軽くかかった雪を振り落とし、前方に見えてきた教会の姿にほっとする。歩くペースを速めると滑って転ぶ可能性があるのでそのまま速度を変えず、しっかりとした足取りで教会の前へと到着し、扉を開ける。


 扉を開けるのと同時に教会の中から暖かい空気が体にかかる。短く切った髪が揺れ、暖房の効いている礼拝堂に素早く身を入れると熱を逃がす前に扉を閉める。寄せたばかりのマフラーとコートを少し緩め、

「すいませーん!」

 礼拝堂の奥へ響くように声を出す。よく響く礼拝堂の中で声を出したわけだから、それが奥に響かないはずがない。

「はいはい、少々お待ちください」

 声と一緒に足音が返ってくる。十数秒静かに教会に入った扉の前で待っていると、奥の扉から一人の男が現れる。短い茶髪の、神父服姿の男だ。見るからに気の弱そうで、優しそうな男だ。ただ少々寝不足なのか目の下に隈ができている。扉を通って表れた人物に頭を下げる。

「こんにちわトリファさん。いつもお世話になってます」

「いえいえ、正樹君もいらっしゃい。そろそろだと思ってお待ちしておりましたよ」

「トリファさん、少し疲れてません?」

 ここ最近見るトリファの目の下のクマが若干酷く感じられる。もしかしてだが、

「―――兄の事で、負担をかけてますか?」

 教会に預けたのはトリファに押し切られる感じだった。普段はおとなしく、義娘の玲愛と妻のリザにからかわれてばかりいるのが特徴的な神父だ。なのに妙に口が回るというか、真剣にディベートとかで勝負を申し込むと絶対に勝つことのできない不思議なところを持っている。まるでこっちの考えを読まれているような、的確な話術だ。若干強引にも感じられたが安心して預けられる人物だからこそ兄の事を頼んだのだが―――

「あぁ、いえ」

 トリファが苦笑しながら否定してくる。

「恥ずかしながら最近ネットに熱中してしまいましてね。寝る間も惜しんでやっていたらリザやテレジアの怒られちゃいまして……自業自得なんですよ、ははは」

 あまり大人がネットしている姿は想像できないが……ネットのユーザーは基本的に三十代四十代の方が多いらしいので、そう珍しくもない話なのかもしれない。だが徹夜して怒られるとは、

「なんだかトリファさんらしいですね」

「それは私が毎回リザ達に怒られているって事になりませんか?」

「ははははは」

「……今、笑ってごまかしましたね?」

「はははは……」

 流石に笑ってごまかすのには限界があった。目線をそらしてトリファと目を合わすのを回避しながら、

「兄の見舞いに来たんですけど、今大丈夫ですか」

「露骨に話題を逸らしてきましたが……まぁいいでしょう。問題はありませんよ」

 許されたことにほっとしつつ先導する神父に従い礼拝堂の奥、少し構造が複雑になっている居住区に入る。そこそこの大きさを持っているこの教会は十人以上一度に泊まることができるだけの部屋を持っているのだが、それが満室になったところを見たことはない。トリファも無駄に広いと評価するこの教会の中を歩く。

「正樹君も、昔と比べてだいぶ賑やかになりましたね」

「そうですか?」

「えぇ、最初は明広君の後ろに隠れていましたからね。大人しい子でしたが……やっぱり付き合いでしょうか、今では見るも無残な……」

「ちょっと待ってください。見るも無残ってどういう事ですか見るも無残って」

「ははは、ちょっとしたジョークですよ、正樹君」

 ジョークにしてはかなり笑えない。もし、自分が自分の知らないところであの破天荒な兄達の影響を受けて、あんな風に育っているのなら大問題だ。兄達を反面教師として育ったはずなのにそれを超える影響力とは中々に恐ろしい。

 い、今は平和な学生生活だから大丈夫……なはず。

 確信を持てないのはなぜだろう。

「ふふふ」

「笑わないでくださいよ、結構深刻な問題なんですから」

 軽く笑うトリファはまるで眩しいものを見る表情だが、トリファも別段そこまで年を取っているわけではないだろう。老け込むのは少し早いと思う。


                           ◆


 その後もいつも通りのくだらない話を二三と交わしているうちに、一つの扉の前に到着した。トリファはそこで頭を下げて、

「兄弟水入らずで語ることもあるでしょう」

 そしてそのまま去った。ほぼ毎日会いに来ているが、会うときは毎回と言っていいほど兄弟二人っきりにしてくれる。やはりトリファは人格者だな、と思い、

 少しだけ緊張する。

 この瞬間、

 兄のいる部屋を開けるこの瞬間。

 どうしても期待してしまう自分がいるのだ。扉を開けたらプラカードにドッキリと書かれていて、実は全部演技でしたとか、特殊メイクでした、とか。そんな事を言って起きてくれるのを期待している。それがあり得ない幻想だと知りつつもそれに縋りたくて、毎回ここに立つたびに考えてしまう。そして、動きを止めてしまう。

「馬鹿だよなぁ……」

 そんな事を呟きつつ止まった体を動かす。手をドアノブへと伸ばし、

「……!」

 そこで部屋の中から物音が聞こえる。

 ……もしかして……!

 そんな期待を込めてドアを素早く開けたところで、

「兄さん!?」

「ん、いらっしゃい」

 ベッドで反応することなく寝ている兄のズボンに手をかけている女が―――氷室玲愛がいた。

「兄さぁーん!?」

 先ほどとは別種の叫び声が口から洩れる。

「何をやってるんですか先輩!?」

 いったんズボンを弄る動きを止めて、玲愛が此方へと向く。もう年齢は二十三ほどだろうに、その姿は高校時代から一切の変化がない。若いそのままだ。ただシスター服姿でズボンを握っている姿はものすごいアレだ。駄目だ。放送禁止モノだ。情操教育に悪い。というより、

「マジで何をやってるんですか!?」

「いや」

 ズボンを握ったまま、

「最上君ずっと介護生活だからたまってるんじゃないかと思って」

「余計なお世話ですよ!?」

「ついでに私の処―――」

「聞こえませーん! 聞こえませーん!」

 耳をふさいで声を出しながら前進する。

「と、に、か、く! 兄に変な事をしないでくださいよ先輩!」

「ッチ、もう少し話を長引かせられなかったのかあの駄目神父」

「自分の父親に対してそう言うの止めましょうよ! 多分トリファさん泣きますよ!?」

 むしろ愛娘にここまで言われてまだ泣いてない方が不思議だ。このペースで毎日弄られているらしいので心が折れてもおかしくないのだが……もしかしてあの神父はマゾの化身かなんかだろうか。

 自分の考えが玲愛の影響を受けてか段々と愉快な事になっているのが解ってきた。これだから兄の交友関係はあまり関わりたくないというか……。

 玲愛を兄の体から引きはがし、持ってきた花束を押し付ける。

「見てないところで兄を襲わないでください!」

「見てるところならいいの? 最上君弟も中々歪んだ性癖してるね」

「違います!」

「じゃあ見てないところでヤるね」

「見てないところでも駄目です! アウトです! ストップです、身内ストップです!」

「テンション高いね、血圧上がらない?」

 若干頭が痛くなって抑える。そう言えばあの面子の中で唯一玲愛だけはだれにも止められなかったことを思い出す。これで学園の裏ミスコン一位……性格を知っていれば誰も投票しないだろうに、現実とは残酷だ。綺麗な幻想をを持たせてくれない。

「もう……好きにしてください……」

「うん。じゃあ私は花瓶の水を入れ替えるついでに花を変えるね」

「はい」

 玲愛が部屋を出る前に飾ってある花瓶を取り、花束と共に部屋を出る。背後でパタン、と扉が閉まる音を聞きながら近くの椅子を引っ張り、兄が横たわり眠るベッドの横に座る。

「こんばんわ、かな? とにかく今日も来たよ兄さん」

 目の前にはパジャマ姿で、昔に比べて痩せ細った姿の兄がいる。


                           ◆


 髪は整えられ、体も清潔にされている。おそらくリザか玲愛がやってくれているのだろう。自分たちがやらない事をやってくれている事に感謝する。ただ兄はこれ、起きた時は羞恥で死ねるじゃないだろうか、等と思いつつ、

 兄の手を持ち上げる。指を手首に当て、脈拍を確かめる。

「……まだ生きてる」

 まだ生きている、でも、

「兄さん、また痩せたかな?」

 骨と皮、って言う程ではないが段々とだが兄の体から筋肉が落ちているのが解る。瞳を閉じ、生気のない顔には表情がなく、まるで死んでいるように安らかな表情で眠り続けている。

 その頭にはVRギアであるアミュスフィアがついている。

 トリファの話によると病院の方から医療用プログラムを貰い、それを使って脈や脳波を調べられるらしい。中々便利な時代になってきたと思う。しかしこうやって死んだようにしか見えない兄を見ているとどうしても不安になってくる。本当に兄は帰ってくるのか。司狼は兄の帰還に一切疑いを抱いてなかった。信じている、というよりも確信していた。

 そしてキリトも、

 この程度では死なないし、死ねないと言っていた。

 兄弟であるはずの自分と、友人であるはずの彼らとの間にあるこの自信の差はなんだろうか。それは兄への信頼の違い、なのだろうか。

「うーん、文句の一つや二つは言いたいんだけどなぁ……」

 それも全部兄が起きた時、直接言うべき事だ。あの時倒れた母の苦労とかも少しは知るべきだ。アインクラッド解放の陰の功労者だとかキリトは言っていたが、自分にそれは関係ない。兄は兄で、どんなに姿が変わろうが―――血縁という絆で結ばれた唯一無二の存在なのだ。

「兄さんを起こしに行くよ―――待っててくれ」

 キリトが見せてくれたのはALOの写真だ。そしてALOは運がいい事に発売当初からプレイしていて、しっかり遊びこんでいるのでそれなりのプレイヤーだ。SAO帰還者であるキリトと組めばよほどの事でもない限り問題はないだろう。

 だから待っててくれ。

「兄さんを起こすために―――マリィさんを見つけ出して連れてくるから」

 キリトは言っていた。

 マリィという女性が全ての鍵で、彼女こそが今の兄の全てだと。そして彼女なら兄の意識を現実へ連れ戻してくれると。だからそれを信じて動くしかない。この後ALO内でキリトと会う約束になっている。だから、

「もうそろそろ行かなくちゃ。また明日来るよ」

 そう伝え、立ち去ろうとした時、

「―――マ、リ……ィ……」

「ッ! 兄さん!?」

 一気にベッドに張り付き、初めて人間らしい反応を見せた兄へ顔を寄せる。

 いや、待てよ。

「アミュスフィア……が……起動してる……?」

 なら、

「なんで兄さんは……話せたんだ?」

 今起きた不可解な事実は、胸の中に新たな疑問と恐怖を生んだ。


                           ◆


「―――今回の役者には少々自信があるのだよ。趣向も少し凝らしていてね。ただの舞台では飽きるから少々手を入れさせていただいた。なに、貴方を飽きさせることはないと約束しよう。フィナーレにはもちろん貴方の出番も用意されている。故に今はご静聴いただきたい。あぁ、それでは―――」

 全てを嘲笑いながら。

                「―――今宵の恐怖劇を始めようか」
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| 断頭の剣鬼 | 13:41 | comments:7 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ニートうぜぇ!
というか神父も本格参戦なのかな?

| | 2012/08/30 13:47 | URL |

ヒャッフウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!
玲愛さんキタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
クソォ……! 明広め……あんないい女を放置プレイにするとは……!
羨ましいんだよチクショオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
玲愛さんいいぞもっとやれ!
P.S.
ニートうざい

| ろくぞー | 2012/08/30 14:06 | URL |

ここの玲愛は神父の娘だったんですか…
そもそもゾーネンキントじゃなさそうだし、獣殿と血はつながれているんだろうかな?

| 渚 | 2012/08/30 14:12 | URL | ≫ EDIT

せんぱい、なにしてはるんですか……
食ってたモン噴いたし。どうしてくれるw

| 羽屯十一 | 2012/08/30 16:49 | URL |

あれぇ・・・?
明広も、未帰還者ですか。
早い復活を祈ってます。君がいなきゃ始まんないだろ。

それはさておき、Bカップ先輩ェェェ。
なにしてるんですか、いいぞもっとやれwww

執筆頑張ってください。楽しみにしてます。

最後に一言。
ニートうぜェーー!!

| 断章の接合者 | 2012/08/30 18:26 | URL | ≫ EDIT

もう先輩がヒロインで良いと思うんだ

ニートウゼェ

| 装甲悪鬼 | 2012/08/30 23:30 | URL |

ニートは安定のうざさを維持(笑)
そして、先輩ナニしてるんですか。患者を襲うシスターとかなにこの教会怖いw

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/08/31 10:43 | URL | ≫ EDIT















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