陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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IF外伝 境ホラ9

推奨BGM:尸解狂宴必堕欲界


『―――誰が最強か決めようぜ』

 処刑場で、トーリが宣言した。これから極東は全世界と向き合うと、全てと争い末世を超えて進むと。トーリはホライゾンの手を再び握る覚悟ができている。だからあとは下にいる教皇総長から淫蕩の御身を奪えばホライゾンを淫乱にできるのだが、

 その前に問題ができた。

 炎上し、高度を少しずつ下げる三征西班牙の護衛艦の上で、目の前に立つ存在が邪魔なために動けない。武者だ。服装は三征西班牙の物、腰には刀が差してあり、それ以外には特徴と呼べる特徴を持たない女武者だ。緑色の髪が顔を隠しており、その顔を見る事が出来ない。少々面倒なことになった。

「そろそろウチの馬鹿を拾いに行きたいんだが―――」

 首を逸らす、

 瞬間、斬撃が横を抜け、甲板を切り裂く。刀が鞘に収まったままなので居合なのだろう。だが問題は目の前の相手が自分を引き留めるだけの戦闘力を持っていることでも、この燃える艦上に釘づけにされている事でもなく、

 ……見えないなぁ。


 攻撃が、ではなく動きがだ。今攻撃を回避できたのはあくまで攻撃による斬撃が見えたからで、攻撃モーションの”入り”と”抜き”が見えたからではない。攻撃の防御や回避というのは相手の動きを見て、覚え、そして予想する事が基本であり、全ては見える事が前提だ。相手の攻撃を見えるからこそ、動きのタイミングを掴めるのだ。

「これもお仕事ですから通すわけにはいきませんね」

 女武者がそう返答するのと同時に十の斬撃が放たれる。処刑刃を使い、飛来する斬撃を叩き落とす事ができるのは斬撃自体が可視可能な存在だからだ。完全に動作の見えない攻撃モーションとは違い、攻撃自体は見える。だがモーションが見えないのは不可解だ。おそらく何らかの術が動いているのだろうが、

 ……俺以外は、今戦わせたくない。

 誰もが今、消耗している。武蔵の学生も戦えない者は既に救護班が回収しているのが解る。マルグリットも救護班で手当する側の人間だ。傷ついて帰還した者を癒している。それが彼女の戦争だ。そういう戦いもあり、俺の戦いはここで刃を振るう事だ。副長として敗北は許されない。

「おい、ホライゾンまだかよ」

『今いーところなの!』

『ナイちゃん思うんだけどこれ望み薄くない?』

 んじゃあイケルな。基本的に望みの薄い事を成功させるような馬鹿だし。

 ある種の歪んだ信頼だとは思うけど、信頼しないのよりはいいと思う。まぁ、馬鹿だから仕方がない。ともあれ、どうにかすべきは目の前の存在だ。超音速、そしてそれ以上を目で追えるだけの自信はあるのに―――それでも捉えられない攻撃のモーション。先程も思ったが、これは……

「―――居合か?」

「正解です」

 やぼったく伸びた髪をかき上げ、顔を見せる。別に酷い顔ではなく、少し目の細い、鋭いイメージを見るものに与える女性だった。その時だけ手を柄から放し、

「三征西班牙に客将として身を置かせてもらっている林崎・甚助と―――」

 言い終える前に加速から攻撃を叩き込む。


                           ◆


「……ふむ」

「せめて最後まで言わせて頂いても宜しいんではないかと」

「戦争だしなぁ」

 叩き込むはずだった攻撃は衝撃を受けて一気に減速し、その間に回避されてしまった。首を断つつもりで放った一撃だ。それなりに力が入っていた。だが感じた感触、まるで刹那に数百発の短い一撃を一か所に受け、力を殺された感触がした。そして柄から放したはずの手は既に戻されている。つまり相手の油断に期待するのは無意味。まあ、最初から期待はしてなかったのだが。

「……林崎・甚助……居合の祖と言われる人物だな?」

 少し距離の開いた甚助へと言葉を投げる。

「Tes.史実では戦国時代から江戸時代を生きた剣豪です。諸国修行し、後に加藤・清正に招かれ加藤家の家臣に剣術の指南をするのですが―――」

「三征西班牙にいる事は歴史再現の途中、林崎・甚助の修行時代を再現しているという事か」

「Tes.修行という事で各国を回らせていただいております。こうやって今、武蔵に相対できる貴重な経験を得ている事から三征西班牙に来てよかったと思っています。中々に充実した武者修行だと」

 林崎・甚助(はやしざき・じんすけ)は居合、抜刀術の祖とされている人物で、剣豪と謳われた程の腕前の持ち主だ。だとすれば、このモーションのない甚助の動きは居合に含まれる術なのだろうか。

 たぶん、そうなんだろう。

 確実に林崎・甚助である事に起因している。居合や抜刀術は礼儀作法等の方がよく思いつくが、実際は一撃で敵を断つか、もしくは攻撃を受け流し、二撃目を叩き込む、そんな技術だ。刀は本来抜いてからではないと全く戦う事が出来なかった。そしてそれが常識であった戦国時代に、居合、そして抜刀術という概念を持ち込んだキチガイが林崎・甚助だ。だとしたら目の前の襲名者がある種のキチガイ染みた術式を使っても問題はない。

「なるほど、総じてすっごいキチガイなのか」

「もしかして今、私凄い貶されていません?」

 気にする必要はない。たぶん真実だから。ただこれが術なだけだとしたら―――問題はない。

 踏み込みから刃を振るう。一直線、防御を完全に捨てて切り込みだけを意識した動き。

「―――ッシ」

 短い息が吐き出されるのと同時に生まれたのは五十を超える斬撃だった。正面から迫る此方を切り倒すための動きで、迎撃のための斬撃。だがそれに躊躇うことなく、

 正面から受け止める。

 体に無数の斬撃が刻まれるが、

「その程度では止められんぞ」

 その程度では動きは止められない。確かに動きは見えないし、攻撃が放たれてからやっと認識できるというのは厄介極まりない。普通に考えて回避は困難だ。だがそれはあくまでも普通の場合だ。攻撃が発生してから回避できる様な存在に対しては―――あまりにも無意味だ。

 正面から斬撃を受け止め、全身に力を込めて斬撃を風を抜ける。迷うことなく首を跳ね飛ばすために刃を動かす。

「来世では修行のやり直しだな」

「果たして本当にそうでしょうか? この程度を居合だと思われても困りますよ―――」

 瞬間、

 千を超える斬撃が一気に体に叩き込まれた。


                           ◆


 ……っ、今のは……!

 斬撃を頭上から受け、一気に体が甲板に叩き込まれる。陥没するように体を甲板に倒しながらも、素早く動かそうと両手をつき、顔を持ち上げようとする。そして視界に入ってくるのは、

「墜ちてもらいます」

 何も見えなかった。

 モーションも、斬撃すらも完全に消えていた。背中に叩き込まれる追撃の斬撃を受けて体が一気に甲板を貫通し艦内へと突き落とされる。背中から伝わる衝撃の感触からして、確実に四桁を超える斬撃が叩き込まれた。

 ……あぁ、畜生! 世界は広いなぁ!

 貫通し、体の動きが止まった先で、体を持ち上げながら痛みを訴える頭を押さえ、口から血の混じった唾を吐き捨てる。視線だけで表示枠を呼び出す。

「クソ、まだか!」

 予想以上に居合の祖はキチガイだった。これ以上戦うとなると手札を晒す必要性が出てくる。今見せた攻撃はモーションどころか斬撃さえ見えなかった。攻撃の動作も攻撃自体を見せぬ、鞘に隠した斬撃……それを四桁を叩きだせるレベルで使えるのは化け物、いややっぱりキチガイ以外のなんでもない。

 ホライゾンの救出を祈ってみた表示枠の中では、

 ホライゾンのオパーイを揉むトーリの姿だった。

『エロ不注意だぁー!?』

 自分を含める全員の声が重なった。ついでにトーリとホライゾンが処刑場に飲まれた。

「えぇー……。死因:エロ不注意ってなんだよこれ……今急速に俺のモチベーション的なアレが死んでるんだが」

『体張るよね、葵君』

『おいお前らそれでいいのか? 葵は総長だぞ? 今確実に死んだぞ!?』

『新しい総長と生徒会長適当に見つけなきゃね』

『いい笑顔してるな貴様ら!』

「ま、過去の後悔ぐらいあの馬鹿なら笑って切り抜けるだろ」

『違いない』

『これは信頼されているのか、信頼されてないのかどちらなのだろうか……』

 まぁ、正純もそのうち染まると思うから今の所は気にしない方がいいと思う。コツとしては少し真面目になるのを止めて馬鹿になる事だと思う。だが、

「そんな事よりも敵が予想外にキチガイだったことで俺のモチベーションがダウン」

『おい、頑張れよキチガイ』

「てめぇ喧嘩売ってんのか」

『アキががんばったらご褒美用意して待ってるよ』

「いよっしゃああああ!!!」

『何で男ってこんなに単純なんでしょうね』

『俺たちは浪漫に生きてるからな』

 モチベーション復活。

「あ、話終わりましたか?」

 少し長話が過ぎたようだ。

「これも戦争という事で―――」

 言い終わる前に千の斬撃が再び叩き込まれる。


                           ◆


 防御の為に処刑刃を持ち上げて交差させた。しかしその結果、

 胸には斬痕が刻まれていた。

 防御は無意味って事か……!

 厄介だ。今のところ把握した情報ではモーションが見えず、攻撃も見えない。ついでに四桁の斬撃を生み出せ、そして防御行動をすり抜けて体に攻撃を叩き込んでくる。もしこれが俺の様に肉体が超硬化していない存在であればあっさりと倒されて終わったことだろう。千の斬撃を一撃に束ねて放ってくるこの居合は、恐ろしい破壊力を持っている。

 簡単に言うとピンチだ。

 迷う。

 進むか否か。使えば勝てる。確実に。それは確信できる。それだけ卑怯な能力である自覚はあり―――同時に隠すべきものであると判断する。一つはそれが切り札であるから。そして二つ目は、開示した際のペナルティが予想できるからだ。確実に言えるのは聖連だけではなく各国が過剰戦力として武蔵を糾弾する姿だろう。だから武蔵が国力をつけて、発言力をある程度確保するまでは―――完全な形で解放することはできない。

 斬撃を受けた体で素早く思考しつつ、

「血、血、血、血が欲しい」

 謳う。


                           ◆


「ギロチンに注ごう飲み物を」

 アキが―――謳ってる。

 久しぶりに彼の歌う姿を”見る”。長い間歌っていなかったからこそ、懐かしく感じる。ブルイユ・明広となってから多分初めてかもしれない。だから声に合わせて、此方も謳い、心を重ねる。

「ギロチンの乾きを癒す為」

「マリィ、届けますか?」

 横で浅間が表示枠や通神を通して声を届ける必要があるか聞いてくるが、その必要はないと首を横に振る。

 だって、

 私たちは何時だって繋がってるんだもの。


                           ◆


「欲しいのは血、血、血―――!」

 聖遺物が活性化し、彼女の鼓動を感じる。つながりを感じて、少しだけ彼女の力が此方へと流入している。出せるものを出せば頼る必要などないのだが―――彼女の温もりに感謝し、

「死ね―――」

 一瞬で到達し首を落としにかかる。狭い艦内の通路での攻撃、刃は壁を切り裂きながら動く。だがそのせいで生まれるラグなど存在しない。

 なぜなら刃に触れる存在は全て消失しているから。

 ただの壁は意志のとおてない強度の低い存在だ。それが欠片とはいえ流れ出す渇望に抗えるはずもなく、消滅し、道を阻むことなく消える。そのまま振りぬかれる斬撃を甚助は回避する。後ろへ、まだ逃げ道のある方向へと下がりながら、

 刃に千の斬撃が繰り返し叩き込まれる。その感触に相手が顔を少し困ったように歪ませる。

「中々面白いですね」

「お前のそれも中々面白いぜ……!」

 刃に当たった斬撃は片っ端から消滅しているとはいえ、それでも此方の動きを少しだけ鈍らせる。それは実力者にとっては避けるには十分すぎる時間で、甚助を逃がす結果となる。それに欠片とはいえ貫通した斬撃―――相手は準神格武装クラスの何かを使用していると判断する。

「消えろ」

 処刑刃を振るい無数の斬撃を生み出す。そのすべてが見えざる刃に迎撃され、逆に余剰の斬撃が此方の体に突き刺さる。だがその威力は最初のと比べればおおきく減退している。すくなくとも体を止めるだけのレベルには至らない。故に壁や斬撃の障害を無視し、

 ひたすら攻撃を叩き込む。

 床だけではなく壁や天井を足場に、甚助の死角を狙い、何度も高速で移動を繰り返しながら動き回り、斬撃を叩き込む。斬撃が斬撃によって叩き落とされ、破裂音が狭い通路内で発生する。更に狭い通路を飛び跳ね、回転し、滑りながら斬撃を何重にも重ねて放つ。

「ッハ」

「ッシ」

 通路を破裂音が満たしていた。斬撃が相殺し、破裂する衝撃で通路内では暴風が吹き荒れている。だがそれに揺らぐ様子を見せず、自分も、相手もひたすら得物を振るう。千を超える斬撃を束ね放つ一撃、そしてそれを一撃破壊する斬撃。それは完全に質と量の戦いだ。それが何合も続き―――

 先に攻撃を受けたのは、俺だった。

 肩口からバッサリと切られ、肩から血が噴き出す。斬撃を重ねるうちにヒートアップした斬撃の応酬はその威力を高め合う様に増していた。その結果、致命傷とはいかずとも大きなでダメージが体に出る。

 互いに本気ではない。それがおそらく共通する意見だろうが―――このまま付き合う必要はない。十分に戦った。そして、目的は達せられたからここまでだ。

 攻撃を体で受け止めつつも、次の斬撃で艦を真っ二つに裂く。

 既に限界だった艦はそれで爆沈を開始する。迷わず甚助に背中を向けて走り出す。

「逃げる気ですか!?」

「馬ぁー鹿! 通神を見ろ!」

 切り裂いた隙間から飛び出しつつ、下に浮かぶ輸送艦へと飛び降りる。そこで通神を開いた甚助が聞いたのは―――

『帰るまでが遠足だぁ―――!!』

 なんてことを叫ぶ教皇総長の声だった。

「勝負は預けたぞ林崎・甚助……!」

 姫は奪還され、武蔵の逃亡が始まる。
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| 断頭の剣鬼 | 10:21 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

女神キタ―――――――――!

そりゃ「がんばったらご褒美用意して待ってるよ」なんて言われたら妖怪閣下でなくてもヒァッハーしますよ。

| tom | 2012/08/30 22:00 | URL |

女神だけでなく新キャラキタ―――――――――――!
居合キチガイとか俺得

| 雑食性 | 2012/08/30 22:17 | URL |















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